◆ ビジュアル撮影レポート ◆
大坂の陣400年記念「大阪平成中村座」の製作発表が行われ、中村勘九郎、中村七之助が登壇した。
市村正親・平田満・益岡徹の3人芝居「ART」が4月28日(火)からサンシャイン劇場で上演される。
プライアム王に日本を代表するシェイクスピア俳優である江守徹、さらには岡本健一、渡辺徹、今井朋彦、横田栄司、吉田栄作らが出演。
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
今年1月にドイツで始まったイギリスの劇団、インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンによる世界ツアー。シェイクスピア原作の喜劇「ヴェニスの商人」が、ヨーロッパ各国での公演を経て、5月に東京と仙台にて日本公演を行います。
2013年に英国文学作品の普及活動の功績に対して、英国王室より勲章を授与されたポール・ステッビングス監督による作品解説をお届けします。
マイナーなキャラクターを取り除き、ユダヤ人の歴史を反映するエンディングを提言
シェイクスピアの「ヴェニスの商人」という作品では、シャイロックのヴェネチア子孫の宿命を無視することは出来ないでしょう。この舞台は我々を魅了し、悩まします。そして西洋文学において、最初に完成された満足のゆくユダヤ人像を表しています。しかしこの作品は、人道的な登場人物の反ユダヤ主義だらけなのです。現代における作品はこのことに対処していかなければなりません。実際、、過去に演じられてきた「ヴェニスの商人」の多くは、シャイロックの不適切な部分を削除し、商人の資本主義を非難することで対処しています。
では、ITCLは、この複雑でスリリングな作品をどう論じるのでしょうか?まず始めに、この作品は喜劇であるという事実に対処せねばなりません。我々の作品では、シェイクスピアが喜劇と見せ場の間で、意図している「バランス」を保つようにしてきました。そしてマイナーなキャラクターを取り除き、ヨーロッパ全体とヴェニスでのユダヤ人の歴史を反映するエンディングを勝手ながら提言しました。
シャイロック:
私の命でも何でも取り上げてくれ。許してくれとは言わない。
家を支える柱を取るのは、家を取り上げるのと同じ。
生きるための資産を取られるのは、命を取られるのと同じ。
この台詞は、彼の家や財産、生活、娘など、まさに彼のアイデンティティを奪われたら、シャイロックは生きていけないという風に私には見えます。スペイン異端審問所やナチスによる容赦ない尋問により、改宗したユダヤ人でさえも、かつてユダヤ人だったということでしばしば殺害された時代です。私達は、シャイロックの最後の台詞によって提案されたエンディングを選んだのです。
白の綿または麻のシャツスタイル。4人の体は近くにあるのに、微妙に密着していません。
シャッターが切られ始めると、それは家族4人の『夜への長い旅路』、ある夏の一日がすでに始まったような空気が生まれました。母、父、息子たち、彼らの視線はまるでバラバラ。家族の心は一体どこを彷徨っているのでしょう。緊張感を湛えながら静かに撮影は進みます。
やがて声がかかり、4人はロープで巻かれていきます。
ロープは絡んでしまった家族の関係、身動きできない息苦しさ、それでも切れない鎖のようにも見えてきます。
大きな音を立てたら、すぐにでも壊れてしまいそうな繊細な場の中で、母、父、兄、弟の関係がじわりと浮き出て見えてくるようです。
はかないけれど濃密な関係、時間の経過とともに、満島さんや益岡さんの額に汗がにじんでくる場面もあり、これもまるでじりじりとした濃い家族関係を感じさせる演出のようにも見えて。
(実際には撮影用のライトでかなり温度が上がり暑くなるのですね)
それにしても、麻薬中毒の母、金銭に執着する父、アル中の兄、病を抱える弟、というこの家族に幸せだった日はあったのでしょうか。
撮影終了の「OK」が出て、ロープが外されると、キャストの緊張感も一瞬でほどけ、場の空気がすっと緩みました。互いにさまざまな思いを抱えながら、縛り合う家族。4人のキャストによる濃密な舞台はこの先どのように作り上げられていくのでしょうか。9月の上演に注目です。
公演は9月7日(月)~23日(水・祝)東京・シアタートラム、9月26日(土)~29日(火)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。4月26日(日)11:00までチケット最速抽選「いち早プレリザーブ」を実施中!
(ライター 栗原晶子)