『トロイラスとクレシダ』浦井健治インタビュー+ビジュアル撮影レポート

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■『トロイラスとクレシダ』vol.1■

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シェイクスピア作品の中でも"問題作"と呼ばれる作品『トロイラスとクレシダ』
なぜ問題作と称されているのか。
それは、喜劇と悲劇のあいだを揺れ動き、分類困難な異色作であるから。
逆に言えば、様々な要素が内包された作品でもあります。
そんな独特の味わいを持つ本作が、このたび名優たちが結集して上演されます。

物語は、トロイ戦争が舞台。
トロイ王プライアムの末王子トロイラスは、神官カルカスの娘クレシダに恋焦がれている。
しかしトロイを裏切りギリシャ側についたカルカスは、娘とトロイの将軍との捕虜交換を申し出て、クレシダはギリシャに引き渡されてしまう。別れ際、永遠の愛を誓ったトロイラスとクレシダだったが、後日トロイラスがクレシダのもとを訪れると、クレシダはギリシャの将軍に口説かれ、それに応じようか悩んでいて...。

キャストは豪華なメンバーが結集します。
まずトロイラスには今年、第22回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞したばかりの浦井健治
ミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍する人気俳優ですが、これまでも『ヘンリー六世』タイトルロールなど、シェイクスピア作品でも着実に評価を得てきています。

ヒロイン・クレシダには、こちらも『ヘンリー六世』では乙女ジャンヌで鮮烈な印象を残したソニン
プライアム王に日本を代表するシェイクスピア俳優である江守徹、さらには岡本健一渡辺徹今井朋彦横田栄司吉田栄作らが出演。

そして演出は、前述の『ヘンリー六世』三部作で、翌年の読売演劇大賞の大賞・最優秀作品賞・最優秀演出家賞、芸術選奨文部科学大臣賞をかっさらった鵜山仁

シェイクスピアの問題作に相応しい、磐石の布陣で挑む今回の上演、今から期待が高まります。

げきぴあでは本作のビジュアル撮影風景と、キャストインタビューを敢行してきました!
まず第一弾は、浦井健治さんの登場です。


◆ ビジュアル撮影レポート ◆


浦井さんの扮装は、黒いパンツに白いシャツというシンプルかつ現代的なもの。
この衣裳に、演出の鵜山さんはどんな意味を込めているのでしょうか...?
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撮影現場はかなり明かりを落とした(というか暗い!)スタジオで、
そのため撮影ライトで作られた陰影がドラマチックなものになっています。
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浦井さんはどんなトロイラス王子を作り上げていくのでしょうか...!
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◆ 浦井健治 INTERVIEW ◆


――『トロイラスとクレシダ』はシェイクスピアの中でも上演される機会が少ない部類に入ります。現時点で浦井さんはどんな作品だと思っていますか?

「この『トロイラスとクレシダ』という作品は、問題作とも言われています。物語はトロイ戦争が舞台で、その戦いの影で起こる男女の恋物語がメイン。恋物語と戦争という2本軸で描かれていく作品で、喜劇であり悲劇であり、複雑な味わいがあります。さらに社会風刺もあり、歴史劇であり、歴史劇でない、ユニークでつかみどころのない性格を持っている、ジャンルに収まらない作品なんです。
また登場人物はとても人間臭く、僕が思うにそれは英雄や崇高な人があまり出てこないからではないかと。卑屈だったり臆病であったりする人たちが描かれていて、そこがとても人間臭く、面白い。そういう意味では現代的でもあり、現代の日本に住む我々が共感しやすいところも含まれているのではないかと思って、いま上演する意味も感じています」


――トロイラスにしても、登場早々"なぜ自分が戦わなきゃいけないんだ"というようなことを言いますね。

「そうなんです、トロイの王子なのに。彼が英雄だったらそんなセリフは出てきませんよね(笑)。それに僕が一番気になっているのは「あれはクレシダであってクレシダではない」というセリフ。そのトロイの王子であるトロイラスが、いかにクレシダという女性に翻弄されるかというのが凝縮されています。クレシダは悪女と呼ばれていますが、その枠には収まらない魅力的な女性。17歳にも関わらず皮肉屋であって、しかも自分の行為を深く反省する人間です。だからこそ男が翻弄されていってしまう。その恋の駆け引きが、戦いでの駆け引きとあいまって、人間の憎悪、エゴ、面白さが浮き彫りになっていく。一筋縄でいかない世の中への風刺を含めて描かれている作品なんじゃないかなと思っています。クレシダって"女版ハムレット"だと思うんですよ。シェイクスピア作品に出てくる女性って、オフィーリアもジュリエットもですが、まっすぐ生きる女性が多い。それが滑稽に見えたり悲劇的に見えたりするんですが、クレシダは右往左往しながら生きている。そこに現代的な匂いを感じます。女性ならではの強さ、脆さを持ち合わせていて、それを全面に出せるある種の潔さがある。そこに男が惹かれていくのは当然ですし、それを戦いに利用して...というシステムも理解できる。ですので、クレシダを中心に、いかにトロイの王子と恋敵たちが傷つき狂っていくかというところをちゃんと自分の中で確かめながら深めていけたらと思っています」


――ソニンさんのクレシダは想像できますか?

「...今のところは出来ないです(笑)、悪女とは思えないので。ただ役に入り込む瞬発力、人との距離感、潔さは似ている部分もあるんじゃないかな」


――おふたりは『ヘンリー六世』(2009年)以来の共演ですね。また共演しようと、長いこと言いあっていたとお伺いしました。

「言ってましたね~。『ヘンリー六世』の時は僕の息子役でしたからね! ソニンさんはジャンヌダルクと、祈祷師と、少年に扮しての息子役の三役で。今回は恋人役です」


――おふたりの2ショット撮影も、とても雰囲気のあるロマンチックなものでした。

「そうですね! 撮影は、鵜山さんが「ポンペイの壁画」とか「嘆きの壁」のようなイメージで撮りたいと仰っていて、ああいう雰囲気になりました」


――そしてソニンさん含め、この顔ぶれですとやはり『ヘンリー六世』が思い出されます。同じチームが集結しましたね。

「僕の中で絶大な信頼を寄せている鵜山さんの演出でまたシェイクスピアが出来るのが嬉しいです。『ヘンリー六世』の時に、共演していた中嶋朋子さんとのお話の中で"これは日常のこと、民衆の話であって、決してシェイクスピアというのはお堅くないんだ、もっとナチュラルにやっていいんだ"という発見があったんです。400年以上前に描かれた作品だけれども、人間を描いているというところはどの時代でも共感できるものなんだなと感じたのが自分でもすごく印象的でした。その発見が僕にとってはとても大きいものでしたので、今回も楽しみです」
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――加えて、父王役に江守徹さんが決まっています。先ほどは江守さんとも一緒の撮影がありました。

「江守さんも、吉田栄作さんも、小林勝也さんも、挙げたらきりがないくらいのすごい方々の中で自分が演じられることが光栄です。江守さんとの撮影は...とても幸せに思いました。江守さんのお芝居はもちろん拝見していましたし、自分の中でも真似る部分といいますか、"どうしたらそう演じることが出来るんだろう"と思って観ていたこともあります。そういう方が父親役として目の前にいて、しかも一緒に座っていたときに、肩に触れてくれて。その瞬間になんだか僕、動けなくなっちゃって、でも何か落ち着いた気持ちにもなって。ああ演劇界ってこうやって繋がっていくんだなあ...と思って、ふと自分で自分を俯瞰してしまいました。そんな経験をいま、してきたところです(笑)」


――浦井さんは幅広くご活躍ですが、シェイクスピア作品への出演も多いですね。シェイクスピアならではの難しさを感じることはありますか?

出演は多い...かな(笑)? どうでしょうか。でも"色濃く"参加させていただいています。難しさは、もちろんあります。まず言葉の面白さ。そして、一語落としたら実はそこがどこかに繋がっていたりする危険。そこまで緻密に組み込まれているという恐怖でしょうか。
でも(翻訳の)小田島雄志先生をはじめ、色々な方がすごく面白く解説をしてくださる。その、研究している方々もとても魅力的な方ばかりで、芸術を愛していて、人間が好きな方が多くて。シェイクスピアって、そういう人を引き寄せる何かがあるんじゃないかな。それだけ登場するキャラクターがとても魅力的で、人間臭くて。面白いです」


――シェイクスピアの生家へも行かれたとか。

「はい、ストラトフォード・アポン・エイヴォン(生家)には僕、何度も行ってます。ファンクラブのツアーで行ったりもしていますし、個人的にも行っています。ロンドン塔なんて、僕、6・7回行ってますよ(笑)。ストラトフォード・アポン・エイヴォンは、まぁ田舎町で(笑)。豊かな自然の中、シェイクスピアは愛溢れる家庭に育ったんじゃないかなって思いました」


――シェイクスピア作品というのは、他の作品とは違うものなのでしょうか。

「シェイクスピアの作品を作る現場は、そこで学ぶことがとにかく多いんです。先輩方ひとりひとりが、自分の学んできたことや技術を余すことなくぶつけあっている。先輩たちの戦う姿、その背中の大きさを目の当たりにすると、いくら自分が"こうだ"と思って挑んでも足りない。そんな先輩方に出会える場としても貴重であり、かけがえのない財産であり...というのがシェイクスピアです。
...今回の『トロイラスとクレシダ』でも、先日小田島先生が「お前、この作品は正念場だぞ」と仰ってくださって。小田島先生によると、僕には毎年1回は正念場があるそうで、「それがこの作品だからな!」と(笑)。いえ、その前にもたくさん正念場(の作品)はあるのですが...とは思ったのですが(笑)、今回も正念場と思いながらやりたいと思っています」

取材・文・撮影:平野祥恵

【公演情報】
・7月15日(水)~8月2日(日) 世田谷パブリックシアター(東京)
・8月15日(土)・16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
※ほか、石川・岐阜・滋賀公演あり。


★先行受付中!★

【東京公演 「いち早プレリザーブ」受付中】

受付:4/30(木)11:00まで
※プレミアム会員限定のWEB先行抽選販売です。

【兵庫公演 「プレリザーブ」受付中】
受付:4/28(火)11:00まで



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