■『トロイラスとクレシダ』vol.2■
シェイクスピアの"問題作"である、愛と戦いの物語『トロイラスとクレシダ』。
上演機会の少ない戯曲ですが、速報チラシにある「『ロミオとジュリエット』より"濃密"な!?」というキャッチコピーに心惹かれている方も多いのではないでしょうか。
そのキャッチのとおり、有名なトロイ戦争を背景に、"愛"と"戦い"を描いた物語ですが、戦いの中で"愛"を紡ぐのが、タイトルにもなっているトロイラス王子と神官の娘であるクレシダ。
永遠の愛を誓ったふたりですが、戦いに翻弄され、クレシダの心は揺れ動いていくのです...。
そんなクレシダを演じるのは、ソニンさん。
ミュージカルからストレートプレイ、そして純粋な女性からアッパーな役柄までなんでもござれの実力派。
本作と同じ、鵜山仁演出・浦井健治主演で大評判となった『ヘンリー六世』にも出演、この時は3役を演じていました。
その彼女がふたたび挑む"鵜山シェイクスピア"で、どんなクレシダを見せてくれるのか、注目です!
ソニンさんにも、お話をお伺いしてきました。
【『トロイラスとクレシダ』バックナンバー】
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
撮影はこんな感じで進められています。
「基本、笑顔はなくていいです」
とのカメラマンさんの言葉で、憂いのある表情に。
アイボリーの衣裳とあいまって、色気と透明感が伝わってくる素敵な雰囲気をソニンさんが作り出していました!
その後、浦井さんとの2ショット撮影も。
全体的にかなり光量を抑えた中での撮影でしたが、浦井トロイラスとの2ショットはその中でももっとも暗く、暗幕に覆われた状態での撮影でした。
ドラマチックな陰影で、絵画のようなカットに。
時が止まったかのように"ふたりの世界"が出来上がっていくのですが、気心の知れたおふたりは実は時々大笑いしてしまったりもしていて、それもまた良い雰囲気となり撮影は進んでいくのです。
ソニン「幸せに撮影しようね!」
浦井「いやいや、そういう話じゃないでしょ!?」
ソニン「いいじゃん、まだ幸せな頃のふたりってことで...」
なんてやりとりは、見ていても可愛らしかったです。
浦井トロイラスとソニン・クレシダの2ショットカットは、本チラシに使われていますのでそちらもチェック!
◆ ソニン INTERVIEW ◆
――『トロイラスとクレシダ』はシェイクスピアの中でもなかなか上演機会がない作品です。この作品にはどんな印象を持っていますか?
「まだ稽古前でもあり、深く語れはしないのですが、シェイクスピアの中でも問題作と呼ばれている作品です。何が問題作なのかというと、悲劇なのか喜劇なのかわからずお客さんも混乱するというところ。終わり方も良い言い方をすればすごく斬新...まぁ、言ってしまえば後味が悪い(笑)。ヒロインであるクレシダもよくわからないキャラクターといいますか、悪女なのか、本音がどこにあるのか、つかみ所がない。そういったところが私にとってはすごく魅力的に映ります。もちろん『ロミオとジュリエット』などの名作も魅力的ですし、若い頃にはジュリエットをやってみたいなと思ったこともありますが(笑)、この作品には"チャレンジする面白さ"を感じています。
さらにこれが鵜山さんが演出ということで、もう「どんな風になるんだろう」「どんな話題作になるんだろう...!」という気持ちです。しかも小田島(雄志)さんの訳で、このキャストで...って、もうワクワクしかなくて、(出演を)即決断しました。
鵜山さんの作品では私、2009年に『ヘンリー六世』に出演していますが、あの時も演出は素晴らしかったですし、反響もすごかったんです。稽古は大変でしたけど...私、3役もやりましたし...でもなんか、楽しかったんですよ。結果、お客さまに新しいものを届けられたという実感がありましたので、今回も楽しみなんです」
――いまのお話にもありましたが、『ヘンリー六世』は鵜山さんの演出で、ソニンさん、そして浦井さんも出ていらっしゃいました。そのキャストが再集結しているということは、それだけ俳優の皆さんへの信頼があるからこそだと思います。
「そうなんです、また呼んでいただけたことが、すっごく嬉しいです! あの時のキャストが揃っていますからね。実はこういうパターン...同じ座組が別の作品で集結するというのは私、初めての経験なんです。『ヘンリー六世』のあと同じ座組で『リチャード三世』がありましたが、その時は(『ヘンリー六世』で演じた)ジャンヌダルクの登場シーンもなかったので私の出演は叶わず、焼きもちをやいていました。いいなぁ、あそこに入りたい、みんなずるいよー!って(笑)。だから今回またこの中に入れてすごく嬉しかったし、しかも『ヘンリー六世』のカンパニーは私にとってとても特別でしたので、とってもとっても嬉しいです」
――観る側からしても、過去の作品とのリンクや、俳優さんたちの関係性もすべてひっくるめてドラマを観ている気持ちがします。演劇界の大河ドラマのようですね。
「そうそう、そんなかんじ、しますよね!」
――その中でソニンさんが演じるのはクレシダです。彼女は"不実の象徴"と言われたと思えば、一方で"ロミオとジュリエットより濃密な愛"とも言われます。先ほどは「つかみ所がない」と仰っていましたが、ソニンさんは何を手がかりにクレシダに挑むのでしょう。
「難しいですね。でも結局は役者って、今の自分の中にあるものを色濃くしたり、形を変えて見せたりするもので、そうじゃないと役が成り立たないと思っています。人生の経験の引き出しから出していく。だからやっぱり"自分の中のクレシダ"を見つけていく作業だと思うんです。私も...まだ今回の顔ぶれの前では小娘のようなものですが、でも色々な役と舞台に出会ってきて、30歳を超えて、年齢的にもタイミングとしてもちょうど、女優として切り替わりの時期に入っている。私は一昨年から昨年までアメリカに行っていましたが(※文化庁新進芸術家海外研修制度でNYに留学)、生まれ育った日本から離れたところで暮らしてみて見えることがすごくたくさんあったんです。それは環境のことだけではなく、自分自身のことも。ああ、本当の自分ってこうだったんだというような発見も多く、自分の中で何かが切り替わって、次のステップに行く準備ができた気がします。そういう今の私だからこそ出来るクレシダがあるんじゃないかなと思っているんです」
――NYではシェイクスピアのような古典演劇も勉強されたのですか?
「ミュージカルの専攻で、インテンシブ(集中)クラスだったのでシェイクスピアまではいけなかったのですが、ただ日本で私は(演劇の)学校に通ったわけでもなかったので、学校できちんとやることで系統だった勉強ができました。やはりあちらではメソッドがきちんとあって、それによって演じ方がずいぶん変わります。私はマイズナー(※サンフォード・マイズナー)を学んだのですが、それが自分にはあっていたみたいです。もちろん演技の経験はありますので言っていることはわかるのですが、芝居の原点を教えてもらい、改めて「私がやってきたことはこういうメソッドから成り立っているんだ」という整理ができた。それに色々な国から俳優を目指している人たちが来ていて、その人たちの芝居に対する思いとかを目の当たりにできたのもいい経験になりました」
――おそらくその経験が血肉になった新しいソニンさんが演じるクレシダを拝見することができそうですね。最後に共演者の方についてお伺いしたいです。浦井さんとは『ヘンリー六世』以来の共演ですね。
「そうなんです、もうね、やっと念願が叶った!なんです。6年越しの念願。また共演しようね、今度は相手役でがっつり絡む役をやりたいねって誓って、の6年越し! ふたりで「やっとだね~!」と喜んでいます。しかも同じスタッフ・キャストでの座組みでというのもまた嬉しいですね。
健ちゃんとはその『ヘンリー六世』が初共演だったんですが、その時に「こんな若者がいるんだ!」という衝撃を受けたんです。すごく真面目で、芝居に真摯に向き合っていて。...私、自分より劇場入りが早い人に初めて会いました(笑)。私も相当早いんですよ。しかも(身だしなみを整える時間も少ないはずの)男でしょ、何をやることがあるの!? と思ったら、ずーっとセリフの練習してるんです。劇場でも舞台袖でずっとモニョモニョ言ってて(笑)。変わってるなあこの人って。でもこんなに芝居に真剣に取り組んでいる人と一緒に仕事をするとすごいものが出来るんだろうなって思っていました。『ヘンリー六世』では役柄的にそこまで絡みがなかったので、今度はぜひ相手役で、もっとがっつりお芝居をしたいと思っていたので、めちゃくちゃ楽しみです」
――そして江守さんとは11年ぶりでしょうか?
「江守さんは私の初舞台の時の演出家で(『8人の女たち』2004年)。共演は初めてなので、とにかく嬉しくてたまらないのと、この11年のあいだにどれだけ私が成長しただろうと思われてると思いますので、そんな緊張、ドキドキ感もあります。
...ほかの方もとにかくスゴイ方ばかり。文学座の方たちも本当に皆さん素敵で、私、大好きなんです。こんな贅沢すぎるキャストに囲まれて舞台に立てることほど幸せなことはないので、その幸せを噛みしめながら稽古を味わい、本番も楽しめたらと思っています。まだ本番は少し先ですが、これから色々と勉強して、身につけて、少しでも成長して挑もうと思っています」
取材・文・撮影:平野祥恵
【公演情報】
・7月15日(水)~8月2日(日) 世田谷パブリックシアター(東京)
・8月15日(土)・16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
※ほか、石川・岐阜・滋賀公演あり。
★先行決定!★
【東京公演「プレリザーブ」まもなく受付開始】
受付:5/2(土)11:00~5/7(木)11:00
【兵庫公演 「プレリザーブ」受付中】
受付:5/7(木)11:00まで