静岡ストリートシアターフェス「ストレンジシード」の総合演出を手掛けるウォーリー木下に、本企画についてインタビュー取材した。
「ストレンジシード」は演劇、ダンス、アート系大道芸など多彩なパフォーミングアーツ・舞台芸術が一同に会し、ゴールデンウィークの3日間、いつもの街を劇場に変えてしまうという壮大なフェスティバル。
今回は駿府城公演と静岡市街を非日常空間に変貌させます。
本企画の総合演出を昨年から務めているウォーリー木下にインタビュー取材し、本企画の魅力について聞いた。【動画3分】
記事全文をエントレで観る
エントレで観る
Youtubeで観る
(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)
去年、七回忌を迎えたつかこうへい作「熱海殺人事件」は1973年の初演以来、様々なバージョンで演じ継がれてきた4人芝居。
2月に上演される最新作はタイトルに"NEW GENERATION"と冠し、若さみなぎる面々がこの傑作を受け継ぐ。
中でも主演・木村伝兵衛部長刑事役の 味方良介 は、風間杜夫、阿部寛ら名だたる男優が演じてきたこの大役を、史上最年少の24歳で挑むことに。
「テイク・ミー・アウト」などでも好演し、メキメキ頭角を現している注目株に、その胸中を訊いた。
――味方さんが「熱海」の木村伝兵衛を演じるという一報を聞いたとき、かなりの驚きがありました。
理由としては年齢と、去年の「新・幕末純情伝」に続いてつか作品がまだ2作目ということがあると思うのですが。
ご自身はこのオファーを、どう受け止めたのでしょうか?
「僕自身も 『え? いいんですか、僕で 』 というのが正直な感想でした(笑)。『やりたいです! やらせてください』 とすぐお答えしたんですが、自分が思っている以上に"木村伝兵衛"という存在の大きさを今、感じています。
『お前にできんのか?』 というのも含めて、周りからの期待を感じるし。
先日もある舞台を観に行ったとき、見知らぬ中年男性の方に、『味方くんですよね? 「熱海」楽しみにしてます』 と声を掛けられて。
『そこまで大きなことなんだな』 という実感が、日に日に増していくというか。たぶん僕の今までもこれからも全てが変わるような役なので、自分が今できる以上のことをぶつけていきたいし、見せていきたい。
今の自分の手札にないもの、引き出しにないものを使わなきゃいけない役だと思うんですけど、それもものにして、これまでに木村伝兵衛を演じてきたいろんな方々の中に、胸を張って並べるようにしたいなっていうのは、お話をいただいたときから思っていることですね」
――確かに、錚々たる先輩たちが演じてきた役ですよね。最近では、2014年に馬場徹さんが演じました。味方さんにとってはミュージカル「テニスの王子様」で同じ役(柳生比呂士)を演じたという共通点があります。
「木村伝兵衛を演じると発表した日に、演出の岡村(俊一)さんがばーちょん(馬場)さんを連れてきてくれて、一緒にご飯を食べました。
そのとき、『大丈夫だよ、楽しみにしてるよ』 って。もっと言うと 『イケるイケる、お前ならイケる』みたいな軽い感じだったので、僕は内心、『いやちょっと待ってくださいよ、そんな簡単に言いますけどね!』っていう(笑)。
でも話が進んでいくと、『これは4人の中で誰が主演だっていう作品じゃない。その日の空気やテンションでみんなが主役になるし、みんながフィーチャーされる。その中でお前は絶対負けるなよ!自分を信じて突き進んで、木村伝兵衛として勝ち残れ!』 という力強い言葉をもらったりしました」
――その共演者たちについて、現段階での印象などを聞かせてください。
「文音さん(水野朋子役)についてはほとんどお会いしたことがなくてこれからなのですが(取材時)、多和田秀弥(熊田留吉役)と黒羽麻璃央(大山金太郎役)は 『テニミュ』 で一緒にやっていて、
秀弥とはつい最近の 『テイク・ミー・アウト』 から立て続けに一緒。僕にとってはガチガチに緊張感のある空間で、秀弥というリラックスできる存在がいるのは、助かるなと思っています。人間性を知っているからやりやすさもあるし、遠慮せずに言い合えるし。
対して麻璃央とは 『テニミュ』 以来で、当時の彼は知っているけど、それ以降の経験を積んできた彼は知らないので、ほぼ初共演のような気がしています。
麻璃央はつか作品も岡村さんの演出も初めてで、秀弥は岡村さんが演出するつか作品は初なのかな。でも岡村さんが選んでいるから絶対に間違いはないだろうし、熱量のある2人なので、何も心配なところはありません」
――味方さんは、生前のつかさんに会ったことは?
「ないんです。 『新・幕末純情伝』 で初めてちゃんと知りました。でも初めて作品に触れて、いろんな資料をもらったり、つかさん本人を知っている先輩方に思い出話を含めていろいろ聞いたり。
『あの作品のこのシーンがカッコいいんだ』 みたいなことも、たくさん教えてもらいました。つかさんの作品は"泥臭い"と言われると思うんですけど、その泥臭さって、泥団子を究極まで磨くと、ものすごく綺麗な球になるじゃないですか。
僕はああいうイメージなんです。でも砕いたら泥なんだ、みたいな。本来はけしてきれいじゃないものが光っている。光らせているものは、演者や演出家やいろんな人間たちの愛じゃないのかなって」
――つか作品を経験すると、覚醒したようにひと皮むける若手は多いです。味方さんもその一人かと思いますが、どういう点が今までの演劇体験と違うんでしょう?
「僕はもともとミュージカルを目指してこの世界に入って、去年 『新・幕末』 のひとつ前に 『グランドホテル』 という大作のミュージカルに出演させていただきました。子供の頃から観てきたミュージカル俳優たちの中に自分がいて、まさに夢見ていた世界でした。
そしてもちろんすごくいい経験で勉強になったのですが、何か心が埋まらない感じが正直あったんですね。
それが次に 『新・幕末』 をやったときに、「これか!」と。ミュージカルの場合は歌や音楽や振付という、助けてくれたり補ってくれるパーツがいっぱいあるんだけど、つか作品の場合は自分の体ひとつと台詞だけで、ドン!と居なくてはならない。
自分の力量全てが試されるし、演劇における稽古の大切さも改めて感じさせてくれます。『新・幕末』はド頭、僕演じる桂小五郎の長台詞から始まるので、責任もものすごく感じたし。
でもこれだから演劇って楽しいっていうか、言い方が軽いですけど(笑)『演劇やってるな』 って実感があるんです。岡村さんとも 『どうだ、演劇やってるだろ?』 『演劇やってますね。楽しいですね!』って会話を交わしたりして」
――いろんな成長や気持ちの変化を飲み込んでの味方さんの木村伝兵衛! ますます楽しみになりました。
「 『白鳥の湖』 が大音響で流れるあのオープニングを想像しながら台本を読んでいるだけで、『わー、スゴい!』って思うんです。
木村伝兵衛は色っぽいっていうか、エロいというか。『 「白鳥の湖」......そっか、ヤラしいな 』 って。
ちょっとワケわかんないかもしれないですけど(笑)。もちろん年齢が上の人たちがやることで出る色気ってあると思うんですけど、逆に僕しかできない、若さゆえのエロさが出たらいいなと思っています」
ライター:武田吏都
--------------------------------------------
【公演情報】
熱海殺人事件 NEW GENERATION
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
会場:東京・新宿 紀伊國屋ホール
期間:2017年2月18日(土)~3月6日(月)
柚希礼音ソロコンサート『REON JACK2』の大阪・東京公演に世界の振付家に認められた上野水香(東京バレエ団プリンシパル)が登場、夢の共演が実現する。昨年4月に『SWITCHインタビュー 達人達(たち)』で対談し、意気投合した二人が再び語り合った。
...お互いの印象を教えてください。
柚希 上野さんはクラシックバレエをやっていた頃から憧れの存在。対談後、絶対にご一緒したいと思っていました。実は上野さんからもお声がけいただいたのですが予定が合わず。それが、こんなに早く実現するとは!今回、一緒に踊るということで、共に挑戦し、お互いの良いところが出るように、高みを目指します。
上野 柚希さんは宝塚というジャンルを超えた、舞台人としての大きさを持っていらっしゃる。私自身はこれまでバレエ一筋で、いろんなパートナーと踊ってきました。そこで柚希さんと一緒に踊れたら...と、ふと頭に浮かんだんです。自分の何かとシェアできたら舞台上でどう見えるのか、個人的に興味を持ちました。『REON JACK』を拝見したら、バレエのお客様と全く違う客層、雰囲気で、そこに自分が参加できることにワクワクします。
柚希 あの時、ステージ上から上野さんを見つけましたよ。
上野 振りを覚えていなかったから、浮いてたでしょ?
柚希 いや、アームがやたらきれいで目立ちました(笑)。上野さんの舞台にかける本気度、基礎を大切にストイックに取り組む姿は刺激になります。私も毎日自分自身と戦い、挑む姿勢を大切にしてきました。『REON JACK2』で一緒に踊る2人の化学反応、また世界で活躍する錚々たるダンサーたちが命がけで戦う姿、互いに刺激し高めていく熱い姿を見ていただきたいです。アーティスティックでカッコいい、ひたすら感動していただけるステージを目指します。
...セットリストの構想は?
柚希 3月1日発売の1stミニアルバム『REONISM』の5曲を含めると、持ち歌が10曲になるんです。この豪華なダンサーの方々とどの曲で何をやろうか、頭を抱え悩んでいます(笑)。
『REONISM』は中身の濃い5曲。リード曲「僕は何を探してるんだろう?」は、子供の頃に夢を持って何でもできると信じていたけど、壁にぶち当たり、過去を振り返る曲。でも最終的には希望を感じる、今の自分がとても共感できる曲です。「Yes!世界に魔法が降りそそぐ」は明るく可愛いラブの曲。意外でしょ?(笑)。「お気に召すまま」をやったからこそ、この曲を歌いたいと思いました。「太陽を射る者」は、宝塚時代を振り返りつつ、挑戦し続ける自分に重ねて書いていただいた曲。「Two Snakes」と「Witch's Mirror」は幸せや楽しいばかりが愛ではない、ラブのダークサイドについて。森雪之丞さんが「僕は〜」「Yes!」の詞を書いてくださいました。
上野 私は歌のことはわからないけど、歌っている柚希さんの輝きは、踊りやお芝居とはまた違う。柚希さんの発する声や歌から、魅せられますね。
柚希 嬉しい!昔はダンスが一番好きで、歌は難しいと思っていました。でも音程より、どんな人がどんな思いで歌っているのか、心の叫びを表現しようと考えるようになってからは、怖くなくなりました。今回、パシフィコ横浜という特別なコンサート会場では、大阪と福岡では聴けない歌を入れる予定です。ファンの皆様に色々聞きながら、参考にしようかと。