宝塚歌劇月組『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』東京公演が2月21日に東京宝塚劇場で開幕した。本作は月組新トップ・珠城りょうのお披露目公演。
『グランドホテル』は1928年のベルリンにある超一流ホテルを舞台に、そこに行き交う人々のドラマを描く群像劇で、トニー賞5部門を受賞したブロードウェイ・ミュージカル。宝塚では1993年に涼風真世主演で上演。ブロードウェイ版同様、トミー・チューンを演出・振付に招聘して上演され、その質の高さ、作品の奥深さが話題となり、伝説となった。今回、その作品を24年ぶりに宝塚で上演するということで注目を集めている。珠城はホテルの客のひとり、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役。身分が高く、若く、ハンサムで、一見優雅に見えるが実は借金まみれというひと癖ある男を、ダンディに演じている。相手役である愛希れいかはかつては世界的人気を誇り、今は盛りが過ぎたバレリーナ、エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ。トップ娘役としてまもなく5年目にさしかかる彼女が、成熟した魅力で実年齢よりかなり年上の役に挑んで好演している。珠城と愛希のトップコンビはこれが大劇場お披露目になるが、知的さも感じる落ち着きのある演技で、大人のふたりの繊細な恋を美しく魅せた。舞台狭しと大勢のキャストがフォーメーションを変えていく独特の演出も印象的で、見ごたえのある、質の高い演劇作品になっている。
また後半のレビュー『カルーセル輪舞曲(ロンド)』は、日本初のレビュー『モン・パリ』誕生90周年を記念した作品。世界各国をめぐるバラエティに富んだシーンは、月組の様々な魅力を味わえる。宝塚らしい美しい色彩や、宝塚ファンにはおなじみの『モン・パリ』のメロディを織り込んだテーマ曲も耳に残る。
初日前に行われた通し舞台稽古後には珠城、愛希が取材に応じた。珠城は名作『グランドホテル』の男爵を演じることについては「衣裳ひとつとってもオーソドックス。役柄としてはひと癖あり、王道とは言えないかもしれませんが、こういうスタイルの役を演じられるということは男役冥利に尽きます」と語り、また自身が目指すトップ像を「今まで背中を見てきたトップさんたちは、みなさん組の中で太陽のような存在だった。私もそういう、組の皆を照らすような大きい明るい存在でいたい」と話していた。
公演は3月26日(日)まで同劇場にて。
==『グランドホテル』==
==『カルーセル輪舞曲(ロンド)』==
珠城りょうさん、愛希れいかさんの囲み取材の様子、詳しくレポートします!
◆ 珠城りょう&愛希れいか 囲み取材 ◆
まずは珠城さん、
「大劇場で1ヵ月、公演をやってきましたが、東京公演を観に来てくださるお客様に楽しんで頂ける舞台をお届けできるよう、また新たな気持ちで精一杯頑張ってまいりたいと思います」とご挨拶。
愛希さんも
「私も大劇場で1ヵ月公演してきたものを、しっかりグレードアップできるよう、東京公演のお稽古で励んでまいりました。東京の皆さまに楽しんでいただける舞台を精一杯務めてまいりたいと思います」
と話します。
――『グランドホテル』の男爵という役は、宝塚の男役としてどういうところに演じがいを感じますか?
珠城「お衣裳ひとつとっても、本当にオーソドックスなスタイル。役柄としてはひと癖あるので王道とはいえないのですが、ああいったスタイルを演じられることは、男役としては嬉しく、男役冥利に尽きるなと感じています。役柄としては、ただ誠実で人の好い貴族ではなく、どこか陰があって、少し危険な香りが漂うような二面性をもっている役なので、そういうところにもやりがいを感じています」
――その「オーソドックスさ」を出すために、工夫されたことは。
珠城「スーツを着ることが多いので、ジャケットの丈、パンツの丈といったところも細かく意識しています。また今回、演出の生田大和先生のこだわりで、ネクタイの結び方もウィンザーノットというきっちりした結び方なんです。そういう細部にもこだわっています」
――愛希さんのグルシンスカヤという役は、実年齢と離れた役ですが、ご自身と役柄で通じるところは?
愛希「グルシンスカヤには全然満たない舞台年数ですが、でも舞台を務める上での責任というようなことは自分の気持ちにリンクさせながら役作りをしました」
――『カルーセル輪舞曲』はレビュー誕生90周年記念。お好きなシーンを教えてください。
珠城「どこをとってもすごく楽しく、選べないくらいです。でもやっていて新鮮に感じたのは、男役だけで『テキーラ』で踊るメキシコの場面。スーツ姿で、オラついた熱いシーンが久しぶりだったので、やっていても滾るものがあります(笑)」
――今回が(大劇場では)トップコンビとして組むのは初。お互いの素敵だと思うところは?
珠城「芝居でもショーでも、色々な色に染まれるというのが素晴らしい。彼女はトップ娘役として4年キャリアを積んでいます。大人っぽい役から可愛らしい役まで幅広く演じられるというのは彼女の最大の魅力じゃないかなと思います」
愛希「私はずっと一期下として拝見していましたが(珠城が2008年入団、愛希が2009年入団)、舞台に対するまっすぐさが、昔から変わらない。今回のフィナーレの黒燕尾のシーンを見て、改めてそれを感じました。男役の制服である黒燕尾がすごくお似合いになる、男らしい男役さんだなというところが、私は魅力的だなと感じています」
珠城「ありがとうございます!」
愛希「うふふ(笑)」
―― これからどんなトップスターになりたいか、どんな月組にしていきたいか。
珠城「今まで色々なトップさんの背中を見ていますが、皆さん組の中で太陽のような存在でいらっしゃった。そういう、組の皆を照らすような大きい明るい存在でいたいなということを、まず一番に思います。組としては今、下級生に至るまで、個性的な子がたくさんいますし、みんなが舞台に立つことの楽しさを感じてくれているのを、一緒に舞台を作っていてとても感じます。ひとりひとりが舞台で生きられるような組にしていけたらいいなと思っています」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
3月26日(日)まで上演中 東京宝塚劇場