OSK日本歌劇団『真・桃太郎伝説 鬼ノ城 ~蒼煉の乱~』東京公演が2月23日に博品館劇場で開幕した。桃太郎のモチーフと言われる彦五十狭芹彦命=イサセリ皇子を主人公に、古代日本の政治情勢から「桃太郎伝説」を照射、歴史ロマン溢れる新たな「桃太郎」の物語を作り出した意欲作。2月22日には報道向けに最終舞台稽古が公開されるとともに、トップスター高世麻央が囲み取材に応じた。
舞台は古代日本、大和朝廷が誕生したばかりの頃。天皇の腹違いの兄・イサセリ皇子は将軍の任をとかれ、失意のなか山中で修行にあけくれている。いつしかタケル(犬飼健)、ユン(猿沢唯)、マオリ(鳥羽真織)という仲間も出来、平穏な日々を過ごすイサセリ。だがあるとき、吉備の国で温羅(ウラ)という男が莫大なタタラ(鉄)の剣を用意し、朝廷に謀反を起こす準備をしているという情報が入り......。子どもの頃に触れたような心躍る伝奇的なドラマと、権謀術数が渦巻く政治劇が上手く絡まる作劇が見事で、まずはその物語にぐいぐいと心が引き込まれる。またイサセリに扮する高世が気高く凛々しく、ウラ役の桐生麻耶が温かくおおらかな役作り。対決するふたりの個性がしっかりと際立ち、見ごたえ十分。ほか、どの俳優も芸達者で見せる部分ではしっかりと骨太な芝居をし、時にはユーモラスな顔も見せ、緩急のある芝居でその物語をしっかりと伝えている。作・演出・振付は、OSK出身のはやみ甲。出身者ならではの、俳優たちの個性や特性を見事に浮き立たせた丁寧な作りが光った。
囲み取材の場で高世は「ただの桃太郎伝説でもないですし、"桃太郎さんが鬼退治に行きます"というだけの話でもない、スケールの大きなお話」と語る。本拠地を大阪とするOSKは東京でも公演機会はあるものの、「OSKの公演として博品館劇場に私が出演するのは初めて」と話すように、東京のファンにとっては貴重な公演だ。また高世が二番手スター・桐生と芝居作品でガッツリ組むのも久々。ふたりが激突するシーンは非常にやるせなく切なく、しかし激しい殺陣とアクションで華やかさもあるシーンになっているが、「イサセリと温羅は違う出会い方をしていたら本当に良き友になれただろうなと思います。そういった裏のことを想像したら余計に感動して泣けてきます。そういうところを新鮮に感じながら演じたい」と高世。「殺陣もお芝居もダンスもあって、いろんなカラーとして見せ場がたくさんあります。まずは観に来ていただいて、新しい桃太郎伝説を一緒に楽しんで頂けたら」とアピールをした。公演は3月26日(日)まで。歌劇ファンのみならず、演劇ファン、古代史ファンにも幅広く観てほしい一作だ。
▽ 高世麻央
▽ 桐生麻耶
==舞台写真集==
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
2月23日(木)~26日(日) 博品館劇場(東京)