名だたる文豪の名作を"朗読演劇"として、毎回独特の世界観で届ける「極上文學」シリーズの最新作が12月13日(木)から紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演されます。
今回が第十三弾となる人気シリーズの最新作は、夏目漱石の「こゝろ」。実はこの作品、お客様からのリクエストが一番多かったという、満を持しての上演です!
脚本は神楽澤小虎氏、演出はキムラ真氏。朗読劇と演劇と中間のような演出、「極上文學」節ともいえる空間や衣裳、さらにマルチキャストという日によって違う組み合わせなど、ほかの朗読劇とはまた違う魅力を持つ本作について、今回で6作目の出演となる藤原祐規さんと、初出演の白石康介さんにお話をうかがいました。
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文学作品の美しさを視覚的にも表現する
――白石さんは「極上文學」シリーズに出演するのは初めてですが、どう思われましたか?
白石 率直に嬉しかったです。2.5次元作品以外に役付きで出演するのは初めてなので、ちょっぴり不安もありますけど、平成最後の冬にこうして夏目漱石さんの名作に携われることが本当に嬉しいです。
――藤原さんは6度目のご出演ですがいかがですか?
藤原 また声をかけていただけることが本当にありがたいです。『こゝろ』という作品は、お客様のアンケートでリクエスト1位らしいので、そのぶん期待値も高いと思いますし、どんな作品になっていくのかも楽しみですね。
――以前、演出のキムラ真さんを取材したときに、藤原さんのことが大好きだっておっしゃっていたんですよ。
藤原 ええ!?(笑)嬉しいです。キムラのことはよくわかっているつもりなので、あいつをくすぐれるような芝居をしていきたいなと思っています。
――「あいつ」という仲なんですね。
藤原 「あいつ」ですね。もちろん演出を受けてるときは「はい!」って感じですけど(笑)、
でも戦友というか、一緒にいろんな作品をやってきたなと思います。
――そのうえでキムラさんが演出する「極上文學」シリーズの良さってどのようなところですか?
藤原 毎回、なにかしらのチャレンジをしているところが素敵だと思っています。文学作品の美しさのようなものを視覚的にも表現していて、だから例えばDVDや写真で観てもとても映えるシーンがある。そういう部分は作品の色にもなっていると思いますね。
――演じるうえではどうですか?
藤原 感情がきちんと見えるお芝居が好まれるなと思います。「匂わせる」というよりは「こぼれちゃった」「ぶちまけた」というようなお芝居。野球で言うと、ストライクかボールかわからない球よりも、直球ど真ん中みたいな。
白石 僕も過去作品を拝見して、すごくわかりやすいなと感じました。『こゝろ』自体は複雑で深い物語なので、そこまでちゃんとわかりやすくお客さんに届けられるようにがんばりたいです。
――白石さんはこの作品を演じるという視点では、過去作品を観てどのように感じましたか?
白石 朗読劇ではありますが、通常のお芝居と融合させたような作品だと思いました。だから例えばどのタイミングで本(台本)に視線を落とすかなども重要になってくると思うんですね。そういうところまでしっかり意識してやっていけたらいいなと感じました。
『こゝろ』は、ドロドロしてる
――文学作品が原作というのは、オリジナル作品を演じるのとも、漫画やアニメ原作の舞台を演じるのとも違うものがあるのかなと思うのですが、いかがですか?
藤原 僕は「極上文學」をやるときは、原作を読まないようにしているんですよ。ただ、基本的に原作ものをやるときに思うのは、お客様それぞれのイメージを持って観に来てくださるから、それを裏切らないようにするにはどうしたらいいのかっていうことで。そこを考えると、やっぱり物語の肝だったり、登場人物の関係性はちゃんと押さえておかないとなと思っています。その作業はすごく繊細に詰めていきます。
――では『こゝろ』もまだ読まれていないのですね。
藤原 中学生くらいの頃に読んだのであらすじは覚えていますが、細かい描写はほとんど覚えてないです。
――記憶に残る『こゝろ』ってどんな感じですか?
藤原 昼ドラみたいな、ドロドロした人間関係。
――昼ドラ(笑)。
藤原 だからあまり読んで楽しくなるようなものではなかった印象ですね。それを今回、「極上文學」の台本として読んだときにどう感じるかはまだわからないですけど、新鮮な気持ちでやれそうだなと思っています。
――白石さんは原作を読まれたそうですが、どうでしたか?
白石 僕も「ドロドロしてる」という印象です(笑)。ただ、最初に読んだのはたしか中学の教科書で、その頃は単純にそのまま理解していたのですが、21歳になって読むと印象が変わっていました。それが面白かったです。
――どう変わりましたか?
白石 教科書で読んだときは、"先生"がただ悪い人っていうイメージだったんですよ。でも今読むと、罪の中にもいろいろあると気付かされましたし、先生も考えた末にああいう行動を取ってしまったんだなと思いました。
「いいものをつくる」という一点
――おふたりは今日が初対面だそうですね。
藤原 21歳でしょ?ちゃんとしてますよね...。僕、こんなにしっかり受け答えできなかったですよ。
――藤原さんも若いときからしっかりしてそうですが。
藤原 いやいや。24、25歳で先輩にめちゃくちゃ怒られて、それを経ての今ですから(笑)。
――白石さんは2016年にデビューされて2年ですが、もともとお芝居が好きでこの仕事を始めたのですか?
白石 僕は高校生のときに芸能スクールに通っていて。そのときは歌がやりたくて通っていたんですよ。
藤原 歌、絶対うまいよね。この声、絶対うまいでしょ。
白石 (笑)。ありがとうございます。歌が好きなんですよ。でもその芸能スクールでお芝居の勉強もして。楽しいなと思っていたら今の事務所に声をかけてもらって、そこから俳優の道に進み始めました。
――実際に演じてるようになってどうですか?
白石 最近やっとお芝居の楽しさを感じられるようになってきました。芝居の中で歌ったり踊ったりもできますし、いろんな人の人生を生きられることが今は幸せです。
――先輩の藤原さんから「極上文學」をやるうえでアドバイスはありますか?
藤原 面白いことをするのは好き?
白石 嫌いではないです。
藤原 「極上文學」って日替わりコーナーがあるんですけど、そういうの大丈夫?
白石 別の作品でやったことはあります。
藤原 じゃあ大丈夫!
白石 え、めちゃめちゃ怖い!(笑)
藤原 そこさえできたら大丈夫!
白石 ......精一杯頑張ろうと思います!
――(笑)。では最後に意気込みをお聞かせください。
白石 僕にとっては今まで出演してきたものとはまた違うジャンルの作品で、今までとは違う層のお客様にも観ていただけるのではないかと思うんです。その方々の心も打てるような芝居ができたらなと思っています。
藤原 白石くんが入ることで、またお客さんの間口が広がると思うんです。それで観に来てくれたお客様が、舞台面白いなとか、「極上文學」面白いなとか、『こゝろ』って素敵な作品だなとか、最初の目的以外のところでも楽しんでいただけたら嬉しい。だから「いいものをつくる」という一点に向けて、がんばっていきたいです。
極上文學「こゝろ」
日程:2018年 12月13日(木) 〜 18日(火) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
演出:キムラ真(ナイスコンプレックス)
脚本:神楽澤小虎(MAG.net)
音楽:橋本啓一
出演:内海啓貴、櫻井圭登、白石康介、芹沢尚哉、釣本 南(Candy Boy)、東 拓海、平野 良、藤原祐規、松井勇歩(劇団Patch)