【レベッカ #5】「このサスペンスは、毎日同じ物語ではない。日によって違います」――『レベッカ』マキシム役、山口祐一郎インタビュー

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■『レベッカ』特別連載vol.5■
 
 

『エリザベート』『モーツァルト!』『レディ・ベス』『マリー・アントワネット』で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のゴールデンコンビが手掛けたミュージカル『レベッカ』 が8年ぶりに上演されます。

物語は、ヒロインの「わたし」がイギリスの大金持ちである上流紳士のマキシムと恋に落ち結婚するも、彼の所有する広大な屋敷 "マンダレイ" に色濃く落ちる前妻・レベッカの影に追い詰められていき......というもの。
アルフレッド・ヒッチコック監督映画でも知られる名作ですが、このミュージカルではサスペンスフルな展開に、巨匠リーヴァイ氏の流麗な楽曲がマッチし、独特の世界を生み出しています。

主人公である大富豪、マキシム・ド・ウィンターを演じるのは、初演から変わらず、山口祐一郎

「わたし」を優しく包み込むようでいて、謎めいたところもある上流紳士のマキシム。
8年ぶりにマキシム役に挑む、山口さんにお話を伺いました。
 

◆ 山口祐一郎 INTERVIEW ◆

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―― 8年ぶりの『レベッカ』です。ずいぶん久しぶりの上演ですね。

「本当に光栄なことだと思います。よく生きてこの日を迎えることが出来ました、という感じでしょうか(笑)。また皆さんとこの『レベッカ』という作品を通じて、劇場空間で、時をともに過ごせる。それは一体どんなことが起こるんだろう、そういう思いでいます」


―― 日本初演は2008年4月。シアタークリエのオープニングシリーズでした。何か思い出深いことはありますか?

「人の鼓動をマイクを通じて聴いた......という、生まれて初めての体験をしました。どなたのかは、申し上げられませんが」


―― それは......何らかの効果ということではなく?

「いえいえ、偶然の産物です。でもサスペンスなので、それもアリかもしれません。その時は、マイクって人の鼓動まで拾うんだな、と思ったのですが。今考えるとその心臓の音が、この作品に命を吹き込む何かの合図だったのかもしれません」
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―― ミュージカルで、ミステリータッチ......誰もが怪しい、というストーリーなのは面白いな、と思って拝見していました。

「ミュージカルというものが、色々なものを表現できる演劇様式であるということですよね。音楽やダンス、芝居、そして昨今では映像なども凄いものになってきましたが、そういうものすべてを使い、総合的に作っていくのがミュージカル。といっても、スクリプト(台本)の要素としてサスペンスが色濃くある、これを果たして音楽でどう表現するのか。僕もそれは思いました。あのマキシムの「告白」の場面を、歌っちゃうの!? ちょっと待って、と。「生か死か、それが疑問だ」みたいな、登場人物の懊悩を歌にするのなら、まだわかる。あるいは、セリフで言うならまだわかる。でも、あの告白を、歌で!? と。でもクンツェさんとリーヴァイさんはすごいですね。なるほどそうきたか、そうするのか、面白い! と思いました。ただ、「そうきたか」を「こうするんだ」に持っていくのは、大変でした」


―― 大変でしたか......。

「技術的な意味では、全員がその瞬間ごとに、このサスペンスの密度と緊張感を高める方向に持っていくんです。そのためにはどうするか......ということを、それぞれの思いとテクニックでやり、それを重ねていく。本来、舞台上で俳優は、自分がリラックスできる方向に自分の精神を持っていくのですが、『レベッカ』の場合は自分で自分をあえて緊張させていく。『貴婦人の訪問』(2015・16年)などもそうでしたが、僕はひとりで勝手に興奮して、追い詰められていきます。『レベッカ』はそれを全員でやっていくから、大変ですよね。だからさっきの心臓の鼓動の話に繋がるのかもしれません」
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―― ミステリーやサスペンスは、特に話の核を知ってしまうと魅力が半減する、いわゆるネタバレになってしまうジャンル。一方、ミュージカルはリピーターも多い文化。そういう意味でも、成立させるのが大変ではありませんか。

「野球に例えるならば、まずプレイするにはルールを知る必要があります。そのルールはプレイする人、チームにかかわらず基本同じです。前提として、試合の前には当然練習をしなければならない。実際に試合をし、勝つためには戦略を練り、状況に応じた戦術も事前に用意いなければならない。どういうプランで臨むかは、当日の状況によってそれこそ無数の選択肢があります。それが1試合、1試合違ってくる。まさに舞台も同じだと思います。1回の公演ごとに舞台上でおこる化学反応は、日によって変わる方が自然であり、そこがスポーツ、演劇も含めた「ライブ」の最大の魅力のひとつだと思います」


―― なるほど......。

「それに、観る側の体調や気分によっても違ってくる。同じ人でも、初めてボーイフレンドが出来た時に一緒に観る『レベッカ』と、恋人と悲しい別れ方をした時にひとりで観る『レベッカ』は、見え方がまったく違うはずです。実際、僕もお手紙をいただいたことがあります。以前見たときは、暗い育ちだった女の子に白馬の王子様のような男性が現れて、愛を武器に、彼の過去もすべて解決し、明るい未来にふたりで向かっていった、素晴らしいエンディングだった! ......と見えたドラマが、自分が旦那さんに裏切られているときに観たら、マキシムが「わたし」を一瞬たりとも愛しているようには見えなかった、と書かれていました」


―― それは、わかる気がします。何度か観ていくうちに、「本当にそうだったの?」と思うようなことも。

「この作品の中の大きな軸である「レベッカの死」の謎は、スクリプト上、一応の解決がなされます。でも、その結論が本当に正しいのか......っていうのは、議論のわかれるところだと思います。もしかしたら誰かが嘘をついていたり、本当のことを隠していたりしたのかもしれません」
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―― この物語をどう見るかは、観る側次第なんですね。ちなみに山口さんが演じるマキシムは、どういう人物だと思って演じていらっしゃるのでしょうか。再演(2010年)からはマキシムのソロナンバー『幸せの風景』が追加になっていますので、そこでもマキシム像は変わりましたか?

「観てくださる方次第だと思います。「わたし」を救い出す白馬の王子さまだと思う人もいれば、何を考えているかわからないあやしい男だと思う人もいる。新曲についても、この曲が入ったことでマキシム像が変わったと感じる方にとっては変わったのだろうし、変わらないと思う方にとっては変わらない。演じる側は、変わったと感じてくださいと提示することはしません。与えられた新曲が、作品全体の中でどういうポジションで、どういう風に演じるのがいいのか。あるいは、特に今回のようなサスペンスだと、どうやるのが一番効果的なのかを考えます。効果的というのは、何かをやる、ポイントを作るという時もあるけれど、逆に「何もやらない」ということから生まれる効果もあります。やり方としては、色々あります」
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―― なるほど......。深いお話ありがとうございます。最後に、劇中には実際には登場しないレベッカですが、たとえば誰かを想定したりはしているんでしょうか。

「それは色々あります。本番が始まるまでに、あらゆる情報をインプットしておきます。そしてその日、その公演で、その中から何を取捨選択するかはその日の思考の動きににまかせておきます。「あ、今日はこれなんだ、なるほど」と自分で気付く。たとえば、ダンヴァース夫人がレベッカに見えてくる、これは台本上も、そうとは名言されていなくても、そう見えるようになっている。「わたし」が光で、ダンヴァースが影、「わたし」が未来で、ダンヴァースが過去。それが際立つようになっていますから、そういう意味では(過去にあたる)レベッカはダンヴァースだし、初めて作品を観るお客さまが、情報がゼロでもダンヴァースをみることで、レベッカがそこにいるように感じるようになっている。......ただ、日によっては「わたし」がレベッカに見えてきたりもします。それは、僕がそうは思っていなくても、そう見えてくる。想定とは違うものが出てきたりもする。だからやはり、このサスペンスは、毎日同じ物語などではない。日によって違うのでは......、と思います」
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:石阪大輔

 

【『レベッカ』バックナンバー】
#1 「わたし」役 桜井玲香インタビュー
#2 ダンヴァース夫人役 保坂知寿インタビュー
#3 「わたし」役 平野綾インタビュー
#4 稽古場レポート


【公演情報】

12月1日(土)~4日(火) THEATRE1010(東京)※プレビュー公演
12月8日(土)・9日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)
12月15日(土)・6日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
12月20日(木)~28日(金)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
1月5日(土)~2月5日(火) シアタークリエ(東京)

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