【レベッカ #4】2018年版は、いっそう緊迫感の高まる心理サスペンス劇に――『レベッカ』稽古場取材レポート

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■『レベッカ』特別連載vol.4■
 
 

『エリザベート』『モーツァルト!』『レディ・ベス』『マリー・アントワネット』で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のゴールデンコンビが手掛けたミュージカル『レベッカ』 が8年ぶりに上演されます。

物語は、ヒロインの「わたし」がイギリスの大金持ちである上流紳士のマキシムと恋に落ち結婚するも、彼の所有する広大な屋敷 "マンダレイ" に色濃く落ちる前妻・レベッカの影に追い詰められていき......というもの。
アルフレッド・ヒッチコック監督映画でも知られる名作ですが、このミュージカルではサスペンスフルな展開に、巨匠リーヴァイ氏の流麗な楽曲がマッチし、独特の世界を生み出しています。

これまでも桜井玲香さん、保坂知寿さん、平野綾さんのインタビューを掲載してきた当連載ですが、今回は稽古場レポートをお届けします!

▽ 左から 山口祐一郎、大塚千弘
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◆ 稽古場レポート ◆

 
稽古場に伺ったのは11月上旬の某日。
まだ初日まで20日以上あるタイミングのため、脚本の理解をキャストみんなで共有したり、ステージングをひとつひとつ確認したりという段階で、いわば作品の土台を作っている最中......というところか。

この日、まず最初にあたっていたのは、2幕後半・マンダレイの「書斎」のシーン

『レベッカ』という作品は、山口祐一郎扮するマキシム・ド・ウィンターの前妻・レベッカの死の謎が全編を覆っており、そもそもその死は事故死とされていたが、物語後半、レベッカのヨットが発見されたことで、話は大きく舵を切る。マキシムは「レベッカの事故死を再調査する予備審問」に召集され、そこで、レベッカの死の真相に迫る重大な事実が発覚する。

事故死でないとしたら、自殺か殺人か。
殺人だとしたら、誰が犯人か。


▽ 左から 山口、平野綾REBECCA04_31_0599.JPG

▽ 左から 山口、桜井玲香REBECCA04_32_0656.JPG

そんな状況の中で、レベッカのいとこ、ジャック・ファヴェルが思わせぶりに「マキシムに話がある」とマンダレイにやってくる......というシーン。ファヴェルのソロナンバー『持ちつ持たれつ』が歌われる場面で、初演からファヴェル役を演じている吉野圭吾の華やかなダンスも見どころだが、今回2018年版は、ステージングが一新。桜木涼介振付のもと、一から場面を作っている。


▽ 左から 石川禅、吉野圭吾REBECCA04_11_10_0479.JPG


このシーンの登場人物はファヴェル(吉野)、「わたし」大塚千弘平野綾桜井玲香)、フランク石川禅)が中心。ということで稽古場も少数精鋭。レベッカの愛人でもあったファヴェルはある企みをもってこの場へやってきているわけだが、ナンバー自体は彼が「金さえあれば丸く収まる」と嘯く、オシャレさも漂う軽快なもの。吉野が舞台狭しと動き回り、さらに彼の長い脚の映える振付もあり......と、ミュージカルとして見どころたっぷりのシーンになっている。ミュージカルの華やかさとファヴェルの嫌らしさが同居する面白いシーンを、曲が盛り上がるにつれ、ダイナミックになっていくダンスとともに、吉野がさすがのキレで演じていく。

途中、「わたし」とペアダンス風になるところでは、まずは経験者・大塚と組んでステージングをすすめ、隣で振付の桜木と平野が組んで同じ動きをトレースし、それを桜井が見つめ......という風。ひと通り動きが固まったら、「わたし」役を平野に、続いて桜井に......とバトンタッチし、何度も繰り返していく。ただしこのシーンの「わたし」は積極的にダンスをするのではなく、ファヴェルに無理やり「踊らされている」という状況のようで、「(やることが多くて)忙しい!」と言う平野に、「俺もだんだん(振付が)入ってきたから、(リードをするから)何もしなくていいよ」と吉野。桜木からも「まずは"リアルにステップを踏むと、こう"、という形でやっているけど、最終的にはこのとおりにやらなくてもいいから」という話も。そして前述のとおり、まずは動きを固めている最中ということで演技面は本意気ではないようではあるが、すでに「わたし」三者にちょっとずつ個性が見えていたのも面白い。初演からこの役を演じている大塚は、横にいるフランクと視線を交わすタイミングなどがさすがの巧さ。平野はファヴェルに対し、嫌悪感というよりは呆れたような視線を送っていたことで、「わたし」の余裕が感じられて面白かったし、逆に桜井の「わたし」は、ファヴェルが取り出す札束にいいようのない嫌悪の表情を浮かべていたのが潔癖さの表れのように見えて、興味深い。3人の「わたし」、自分の出番でないときは積極的にお互いの稽古風景の動画を取り合っていたりと、仲良く協力しあっているようであるのも微笑ましい。その脇では、マンダレイの管理人であるフランク役の石川が、ひとりでグラスを投げ、キャッチする練習をしている(ファヴェルが放るグラスをフランクがキャッチする振付がある)。黙々とグラスキャッチを続けているその姿が何とも言えずキュートであった。

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ダンスを中心にこのシーンを1時間半くらいかけて固めたのち、続いてその『持ちつ持たれつ』を含む「8場」全体の稽古へ。ここでは山口祐一郎扮するマキシム、マンダレイの家政婦頭でレベッカ付きの女中でもあったミセス・ダンヴァース涼風真世保坂知寿)と、メインキャストが大勢登場。ミセス・ダンヴァース役のふたりは、稽古着からすでに黒のハイカラー・ロングスカートと、ダンヴァースらしい格好だ。


▽ 左から 吉野、涼風真世REBECCA04_35_10_0473.JPG

▽ 左から 桜井、山口、保坂知寿REBECCA04_36_10_0684.JPG


この場面の稽古をやるのは初めてということで、演出の山田和也が、脚本をなぞりながら改めて細かくシーンを説明する読み合わせからスタート。それまで謎だけが提示されていたこの物語に、次々と "証拠" が出てきた、いわばクライマックスが近付いてきているシーン。山田は、それぞれのキャラクターひとりずつの心境の変化をこと細かに話していく。「ダンヴァースは、(レベッカの死の真相への証拠発覚を受けて)それまで『あの人はここにいる』と言っていたこととの整合性が崩れてきた。それによって精神に変調を来たしているかもしれない。ただ、表面上にはその変化はまだ現れてきていないかもしれない」 「ファヴェルは、観客はまだ知らないが、彼自身は証拠を握っているから強く出ている」 「『わたし』はすでに(前半と異なり)挑戦的で攻撃的な性格になっている。その彼女は、ファヴェルが証拠を握っていることは知らないから、不安になるというより、彼の行動で不愉快になっている」...等々。全員が「事態は深刻である」と認識し、それぞれがひそかに内心、用心し、警戒している状況であると話す。また、「わたし」やフランクの緊迫感に反し、ファヴェルのナンバー『持ちつ持たれつ』は狂騒的である、それはファヴェルは勝ち目があると強気になっているから......とのこと。

中でも興味深かったのが、石川扮するフランクの心境についてだ。レベッカが亡くなった "あの夜" 何があったのか、それを誰が知り、誰は知らないのか......、原作でフランクは「知っている」ということになっているが、このミュージカルの戯曲上はどちらとも名言されていない。しかし「ここはやはり "知っていた" とした方が、サスペンスとして緊張感が出る」と山田。石川も初演からこの役を演じているが、 "知っていた" とすることから引き起こされる効果を山田から聞き「ほうほう!」と興味深げ。さらに、tekkan扮するベン(マンダレイの海岸あたりにいる浮浪者で、精神薄弱)が発する「病院に入れないで」というひと言は、誰に向かって言っているのか? ということが議題に。前回までは「レベッカが、ボートハウスで浮気をしていたことをベンに口止めした(他人に話したら病院へ入れると脅した)」という解釈のもとやっていたそうだが、今回は......? 山田は「......こう解釈すると、別のストーリーを作れそうだよね」とニヤリ。この解釈に一同、ある人に向かって「怖っ!」。ベンのこのセリフ、誰に向かって発せられるか、注目して欲しい。


▽ 左から 吉野、tekkanREBECCA04_38_10_0532.JPG

▽ 左から 今拓哉、山口、大塚REBECCA04_43_10_0571.JPG


山田を中心に台本を読み解く作業は、10ページほどの短いシーンを、たっぷり40分以上かけて行われた。レベッカの死は自殺か、他殺か。少しずつ明らかになる証拠、証言で、一進一退していく。「ひとりひとりのキャラクターが、反応する場所、反応する方向が違うということを自覚して」と山田。この物語は、それぞれの思惑や疑惑が錯綜する心理サスペンスなのだ......ということが、改めて強く浮き上がってくるよう。ほかにも、大塚から「『わたし』が裁判中に倒れるのは意図的か」という質問がとび、山田が「8年前は『わたし』が自立してきたことを明確にするために意図的に倒れたけど、今回は "それでも耐えられない新たなストレスが出てきた" という解釈でやりましょう」と言ったような話も。三演目の『レベッカ』だが、初演・再演と、細かい部分でいくつも変更があるようだ。

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その後、「わたし」を大塚が、ダンヴァースを保坂が担当し、まずは座った状態で台本を読み合わせ。新キャストである保坂だが、椅子に座った状態でも背もたれに背をつけず、ピンと伸ばした背中から、すでに "らしさ" が伝わってくる。淡々としながらも明瞭な発声も、さすが。その前に十分な戯曲の理解を深めてからの読み合わせだったため、1回目の読み合わせですでに、ヒリヒリとスリリングな心理描写が浮かび上がる。ジュリアン大佐役の今拓哉「...面白い!」と呟いていたのも印象的。

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その後は平野の「わたし」、涼風のダンヴァースで立ち稽古。ここで山田からちょっとした爆弾発言が。「私、いつもはミザンス(舞台上の動き)を細かくつける方なんですが、今回はやめました! みんなで考えていきましょう」。もちろんどこから出、どこでどちら方面に捌けるかは山田からの指示だが、十分に脚本理解を深めた上に進めると、皆の動きがハレーション起こすことなく合うようで、さすがプロの現場である。こちらも、まずは「動きを固める」という段階でのスタートのため、真に迫ったリアルな芝居はまだお預け、という状況ではあったが、だからこそ見えるのが山口のチャーミングさ。ファヴェルに対してマキシムが激高するシーンでは、山口が場を和ませようと様々な表情をし、緊迫した雰囲気の中から一転、稽古場が笑いに包まれる。座長である山口が緊張感を持ちながも和やかな、メリハリのある環境を率先して作り出す稽古場。その中で、鋭く繊細な心理描写が組み立てられていく2018年版『レベッカ』。初演・再演を観た方も、油断しないほうがいい。きっと今までとは違うスリルとサスペンスが生まれるに違いない。
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
写真提供:東宝演劇部

 

【『レベッカ』バックナンバー】
#1 「わたし」役 桜井玲香インタビュー
#2 ダンヴァース夫人役 保坂知寿インタビュー
#3 「わたし」役 平野綾インタビュー


【公演情報】

12月1日(土)~4日(火) THEATRE1010(東京)※プレビュー公演
12月8日(土)・9日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)
12月15日(土)・6日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
12月20日(木)~28日(金)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
1月5日(土)~2月5日(火) シアタークリエ(東京)

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