■『レベッカ』特別連載vol.1■
ミュージカル『レベッカ』が8年ぶりに上演されます。
『エリザベート』『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のゴールデンコンビが手掛けた作品で、日本では2008年に初演。この前年に開場した新劇場・シアタークリエで、最初のミュージカル公演でした。
物語は、ヒロインの「わたし」がイギリスの大金持ちである上流紳士のマキシムと恋に落ち結婚するも、彼の所有する広大な屋敷 "マンダレイ" に色濃く落ちる前妻・レベッカの影に追い詰められていき......というもの。
アルフレッド・ヒッチコック監督映画でも知られる名作ですが、このミュージカルではサスペンスフルな展開に、巨匠リーヴァイ氏の流麗な楽曲がマッチし、独特の世界を生み出しています。
主人公である大富豪、マキシム・ド・ウィンターは、初演から変わらず、山口祐一郎が演じています。
その相手役である「わたし」は、2018年版は大塚千弘、平野綾、桜井玲香のトリプルキャスト。
今回は、普段は乃木坂46のキャプテンとして活躍、今年は野田秀樹の名作『半神』に主演、本作では初のグランドミュージカルに挑戦......と、演劇界でも大注目の桜井玲香さんのインタビューをお届けします。
なおげきぴあではこのインタビューを皮切りに『レベッカ』の特別連載を実施しますのでこちらも乞うご期待ください!
◆ 桜井玲香 INTERVIEW ◆
● グランドミュージカルへ、初めての挑戦
――『レベッカ』は今回で3度目の上演となりますが、桜井さんは初参加。『レベッカ』に初出演というより、グランドミュージカルへの出演が初めて、でしょうか。
「初めてです。ありがたいことにこういった演劇系のメディアの取材も増えましたが、素人同然で何を話していいのかもわかりません(笑)」
―― そうなんですか? 他社さんのインタビュー記事などを拝見しましたが、ずいぶんしっかりした方だなあ、と思っていたのですが。もしかしてこういった取材もプレッシャーになっていますか?
「うーん......いえ、でもこういう機会をいただくたびに毎回、「本当に頑張ろう、頑張らなきゃ!」って思うので、いい刺激になっています」
―― それはよかったです。そしてまだ公演に向けては、本格的には動いていない段階でしょうか?
「今日から歌稽古が始まりました! まだ "音取り" の段階ですが、本当に丁寧に教えていただきました」
―― 普段の乃木坂46での活動でも、こういった「歌稽古」というようなものはあるのでしょうか?
「ありません。普段は "仮歌" をもらって、それを聴いて、耳から覚えるという形です。ピアノで弾いてもらって、楽譜のこの音符がこの音で......、という形のお稽古は初めて緊張しました。小さい頃にピアノを習ってはいたのですが、だいぶブランクがあるので、自分が楽譜をちゃんと読めるのか、というところから心配で。それに普段のJ-POPだと正確さよりもニュアンスを重視することが多いのですが、今日は「その音に正確に当てていく」というお稽古でしたので、まったく方向性も違う。緊張のしどおしでしたが、でもいよいよ始まるんだな、って実感しました」
● オーディション秘話
―― 今回『レベッカ』で桜井さんは「わたし」役を演じるのですが、これはオーディションだったと伺っています。最初にオーディションのお話があった時は、どう思いましたか?
「私はミュージカルというものに憧れていて、「あなたに『レベッカ』という作品が合うと思いますよ」と言っていただけたことが嬉しく、無理かもしれないけれど、せっかくチャンスをもらえるのなら頑張ろうと挑戦しました」
―― ちなみに、ミュージカルのオーディションは今までけっこう受けていらっしゃるのでしょうか。
「いえ、今回が初めてでした」
―― 初めてで合格! すごいですね。
「私からしてみると、なぜ合格したのかわからないのですが、でも本当にチャンスをいただいた、という思いです。オーディションでは少しでも印象がよく見えるように、「わたし」役を意識した洋服を着たりしました(笑)。ブラウスに長めのふわっとしたスカートを」
―― 合格の報は、事務所の方から?
「はい。ちょうどお仕事でハワイに行く直前、空港で「決まったから!」というメールが来て。慌ててマネージャーに電話しました。もう自分でもよくわからなくて、ハワイどころじゃない! という感じ(笑)。私、相当大きな声で電話していたと思います。メンバーも「誰と何の話をしているの?」って感じで、でも「たぶんきっと(まだ情報公開前で)聞いちゃいけない内容だ」って察してくれていたような、そんな雰囲気でした(笑)」
―― ミュージカルに出たいと思っていた、憧れだった......というのは、何かきっかけがあるのでしょうか。
「やはり "東宝ミュージカル" には、観ていて憧れていました。でも私が出演するには、歌にしても、準備しなきゃいけないことがたくさんある。まだ今の私じゃダメだ、もっと舞台経験を積んでからミュージカルに出られたら素敵だな、と思っていました」
―― もともと歌がお好きだとか。
「はい、歌は大好きです。今はアイドルなので、その活動の中で歌うことが出来ますが、この先ひとりになった時に歌をやることはなかなか難しい。ひとり立ちして女優でやっていく時に、その中で歌もやりたいとなると、ミュージカルという選択が私の中でベストだと感じていました。ただ、本当に自分で思っているより早いスタートになりましたので、正直不安に思うこともあります」
―― 桜井さんに「わたし」という役が合っているとオーディションのお話が来たのも、そんな"初めての不安さ" なども含めてのことだったのかもしれませんね。
「それはあるのかもしれません。年齢も、「わたし」は21歳、私はいま24歳ですので、近いですし。ただ、「わたし」は最初こそ頼りなさそうですが、私より全然強い女の子。マンダレイのような環境でも怖気づかず、立ち向かっていけるなんて......私には絶対無理(苦笑)」
―― そんな「わたし」を演じる上ではどんなことを大切にしたいですか?
「本当にまっすぐな子だし、知らないことがたくさんあるけど、だからこそ純粋。そういう可憐さは大事にしたいです」
―― ちなみに普段の桜井さんは、どういうタイプだとまわりから言われているんですか? 乃木坂46のキャプテンでいらっしゃいますが。
「......ファンの方からは、昔から "ポンコツ" って言われるくらいリーダーシップとかはなくて(笑)。だから、「わたし」なんて、私からみたらものすごくしっかりしているんです! もう、普段の生活のテンポから変えていかなきゃ、って思っています」
● ひたすら頑張るのみです!
――「わたし」の相手役であるマキシムは、憧れの"東宝ミュージカル"の顔である山口祐一郎さんですね。山口さんとはお会いしましたか?
「先日『モーツァルト!』を拝見したときに、ご挨拶させていただきました。本物の山口さんを目の前にしたらものすごい緊張してしまって、その日の感想も言えずに帰ってきてしまいました......。でも山口さんはとても優しかったです。「楽しんでやろうね~!」って言ってくださいました。優しい空気を持った方でした」
―― ちなみにこの出演が決まって、ファンの方からはどんな反応がありましたか?
「ファンの方は、私が舞台やミュージカルに出ることについて、すごく喜んでくださる方が多いいんです。今回も、私以上に喜んでくれています。「もうチケット取ったよ!」と言ってくださる方や、熱心に予習を初めてくれている方もいっぱいいます。ちゃんと期待に応えたいな、と思っています」
――ミステリーテイスト、サスペンステイストのミュージカルも珍しいですよね。
「『レベッカ』はミステリーとして、単純にお話もすごく面白い。ただ一見、ミステリアスでダークな雰囲気なのですが、舞踏会のシーンだったり楽しいシーンでは、一気に音楽や衣裳も華やかになって、ミュージカルらしい空気になる。そういう意味では、あまりミュージカルをご覧にならない方でも観やすい作品だと思います。私個人としては、以前一度だけ殺人犯の役をやったことがあったのですが、その時に、ミステリー特有の達成感や、物語に引き込まれる感覚を覚えました。それ以来の、ミステリーテイストの作品ですので、「またあの感覚が味わえるんだ」という楽しみもあります。きっと、戦うんだと決めてからの「わたし」の反撃とかは、観ていても爽快感があると思います。物語前半のちょっとおどおどした、痛々しい「わたし」との落差は、しっかりメリハリをつけていきたいですね」
―― もうひとつ伺わせてください。この作品はタイトルになっているレベッカが実際には登場しない、それもポイントだと思いますが、桜井さんが現在思い描くレベッカは、どんな女性ですか?
「美しいからみんなが魅了されるし、結局は彼女もまた、芯がある女性。「わたし」はカトレアが嫌いですが(※劇中、レベッカはカトレアに喩えられる)、私はカトレア大好きですし(笑)。カトレアが似合う女性だから、やっぱりハリウッドスター系の女性ですよね。スタイルが良くて、華やかで、髪の色は暗めかな? それに、赤いリップ......。絶対、私が憧れるタイプの女性だなって思っています」
―― なるほど、ありがとうございます。最後にファンの方にお伝えしたいことはありますか?
「ひたすら頑張るのみです!」
―― もしかして譜面と台本は肌身離さず?
「はい、大きいファイルに全部入れて、持ち歩いています!」
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:石阪大輔
【公演情報】
12月1日(土)~4日(火) THEATRE1010(東京)※プレビュー公演
12月8日(土)・9日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)
12月15日(土)・6日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
12月20日(木)~28日(金)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
1月5日(土)~2月5日(火) シアタークリエ(東京)
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10/25(木)23:59まで