浪漫活劇譚『艶漢』第三夜スペシャル座談会 櫻井圭登×末原拓馬(おぼんろ)×三上 俊

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2016年3月に初演、2017年12月に第二夜を上演した人気シリーズ・浪漫活劇譚『艶漢』の第三夜が、2019年4月に上演されます。

原作は、「ウィングス」(新書館)で連載されている尚 月地の人気漫画。ノーフン(フンドシをはいていないってこと!)がちで柳腰の美少年で傘職人の吉原詩郎(女ったらしの助平)と、熱血正義感の巡査殿・山田光路郎(筋肉質で無類の猫好き)、そして詩郎の兄貴分で無敵な色気を放つ吉原安里の物語を軸にした、エログロナンセンスな昭和郷愁的アンダーグラウンド事件簿です。

舞台版は、ストレートプレイの「浪漫活劇譚」と、歌謡エンターテインメントショーの「歌謡倶楽部」という2パターン(いずれも同キャスト)で展開されていて、「浪漫活劇譚」は脚本・演出をほさかよう氏が手掛けています。

そんな本作に初演から出演する主人公・吉原詩郎役の櫻井圭登さん、山田光路郎役の末原拓馬(おぼんろ)さん、吉原安里役の三上俊さんにお話をうかがいました!息の合ったトークをお楽しみください!!


*****

――浪漫活劇譚『艶漢』の第三夜が動き始めるということで、今、どんな気持ちですか?
三上:実は三上、もう身体できあがってます。
末原:まだ5か月前なのに。
三上:ええ。
櫻井:(笑)
三上:もうね、楽しみで楽しみで。
櫻井:1年ごとに上演できるのが嬉しいですよね。
三上:単純に集まれることもうれしいし。
末原:うん、そういう感じになってきたよね。
櫻井:地元に帰ってきたみたいな(笑)。

――今回、なにをやるんですか?
三上:僕らもまだ知らないんですよ(笑)。でも既に発表されているキャストで、早乙女水彦役堀越 涼(花組芝居)くんは初演ぶりなので。
末原:みんな反対したんですけどね。
櫻井:みんな待ってましたよ!(笑)
三上:佐倉春澄役の(村田)恒も出るから。
末原:その辺りからどの辺りのお話になるのか仮説を立ててるけど。
三上:まだわからないね、本当に。
櫻井:でも、(初演の劇場である)シアターサンモールに帰ってこれるのはすごく嬉しいです。成長して帰ってきたいと思っているので。
末原:うん同じ場所だと変化を感じそうだよね。

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――第三夜と言っても、歌謡倶楽部も2回やっているので、合わせると5回目の『艶漢』になるんですよね。変化もしていることもあると思いますが、どうですか?

三上:もちろん原作への理解は深まっていますし、単純に初演のときは拓馬のことは嫌いでしたから、その辺も。
末原:(笑)有名な話! 挨拶くらいしかしてなかったですし。
三上:でも今は一番仲がいいので。
末原:公私ともにね。
三上:もう信頼度がすごくて。圭登は圭登で、初演は(直前に出演が決まったので)時間のないなかで仕上げてくれたんだけど、そこから2年半、役者として確実に伸びているわけですよ。だからもうこれ、追い抜かれちまうなって。
櫻井:いやいや!
末原:最初はちんちくりんでね。
櫻井:あはは!
三上:俺はそこまで言ってないよ(笑)。でも第二夜から引っ張ってくれていたので。だからもう必然的に上がるよね。
末原:そうだよね。前よりも演劇っぽくできると思う。
三上:役者同士で仕掛け合えるというか。
櫻井:僕もこの1年で積み上げてきた自分の経験を、みかしゅん(三上)さんと拓馬さんにぶつけたいなっていう気持ちはすごくあるので。そこは楽しみたいです。

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――やるうえでの苦労みたいなものもありますか?

櫻井:浪漫活劇譚は準備しないとできない作品っていうのはあります。3か月くらい前から詩郎とイチから向き合って、今の自分で演じたいなと思いますし。

――3か月も前からですか?

櫻井:『艶漢』はちょっと特別で。時間が必要なんですよ。1か月では到底、詩郎には追いつけないので。その間は、他のことを全く考えられなくなります。
末原:「前にやったアレを思い出そう」ってやると失敗するよね。
三上:そうね。
末原:「こんな感じだったかな」でやると外っつらになるから。"ぽい感じ"はわかってるんだけど、そうなるとスカスカでやれなくなっちゃうから。圭登が言ったように「今の自分で向き合って」って、もう一回イチからやらないと。

――それはどうしてなんですか?

末原:内側からつくれないとできないキャラクターなんだろうね。
三上:原作で描かれるキャラクターが、本当に血が通ってるというか。
末原:思考回路が特殊な人物ばっかり出てくるから、ちゃんと通していかないと。
三上:安里なんて表面だけやると、ただの狂った人だから。人間的な部分って原作でもほとんど描かれてないんですけど、そこを持ってないと表面だけになっちゃうんですよね。
末原:行間を演じられない

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――このまま役柄について、第三夜だから言える魅力を聞きたいです。櫻井さん演じる詩郎はどうでしょう。

櫻井:詩郎には愛のカタチがいろいろあるんですよ。巡査殿(末原演じる山田光路郎)に対する愛、兄や(にいや・三上演じる安里)に対する愛、その繊細な違いが詩郎の魅力かなと思っていて。でもその繊細な部分の表現って、一緒にいる時間が長ければ長いほど表すのが難しくなっていくので。第三夜は苦戦するんじゃないかと思っています。

――一緒にいる時間が長いほど難しいってどういうことですか?

櫻井:家族とかもそうかなって思うのですが、ずっと一緒にいると愛を意識することってないじゃないですか。だからそこをちゃんと考えて、繊細にやっていきたいです。

――末原さん演じる光路郎はどうですか?

末原:光路郎は第一夜では"強さ"を描いたと思います。メンタル的にスーパーマンだから、「問答無用だ!」っていう強さ。第二夜は"弱さ"を描きました。実際フィジカル的には超弱いんですけど、でもこんなに苦しんでるんだなっていう。それを経て今回どうなるか。彼は弱いのに強いから、痛いのに踏み出す。それを当たり前にできる人がやってても何も動かないんだけど、覚悟が持てるから強いっていう。

――強さと弱さが同じ人間の中にあるから。

末原:そうそう。例えば詩郎を失うことは、ものすごく怖がっているし。脆いし危なっかしい人なのに、表に出てるのは強さとか自分の意志を持っている人だから。そのやわらかい部分をちゃんと自分のなかにつくっておくと、爆発が起きる感じがしますね。

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――三上さん演じる安里はどうですか?

三上:これは第一夜から漠然と思っていたことではあるのですが、安里は誰とでも喋るし、誰彼構わずなところがある、なのにどこか孤独なところがあるなと感じていて。その孤独はだんだんと本当にそうなんだと感じられるようになりました。詩郎への愛もホンモノかニセモノかわからなかったけど、本物だと思うようになったし。どれが本当の彼でどれが演じているキャラクターなのかの区別もちょっとつくようになったかなと思います。

――演じているうちに。

三上:はい、原作の尚 月地先生とも相談しながらですけど。

――先生からアドバイスされることもあるのですか?

三上:先生からおっしゃることはないですけど、こちらから相談すると乗ってくださるんですよ。
末原:先生の中で設定がすごくあるから、そこは聞いておきたいもんね。
三上:そう。でも先生は、最終的にはこっちに任せてくれるんだよね。やりたいようにやってくださいっていう。
末原:うれしいことですよ。

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――櫻井さんも相談されますか?

櫻井:僕、実は先生とあまりお話させていただいたことがなくて。
三上:ふたりとも人見知りだから(笑)。
末原:圭登は自分から話しかけることが少ないもんね。特に目上の人には。
櫻井:そうなんです。でもずっとお話ししてみたいと思っていたので、話してみます!

――今話していただいた役のことは、長く演じたからこそわかることなのですか?

末原:役との付き合いが長いほどわかってくるものはあります。漫画を読んでいてもわかるけど、やっぱり演じてるほうがわかる。芝居中に圭登の顔を見て、「あ、こんなに辛いんだ!」と思うこともあるし。
三上:原作ものをやるときに心掛けているのは「コマとコマの間」を生きなきゃなということで。それがだんだんスムーズにこの作品は繋がるようになったなって思います。

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――そういうことから変化も生まれてくるんですね

櫻井:でも単純に、1年前の自分と今の自分の考え方が変わっていて、解釈が変わることもあって。今回も、今までつくりあげた詩郎も大事にしながら、新しく自分でつくっていかなきゃなとも感じています。

――それはご自身の感受性が成長していってるから解釈が変わるということなんですか?

櫻井:感受性というよりは、ものごとの捉え方かな。だからそこは実際にやってみるまでどうなるかわからないというか。楽しみな部分でもありますし、怖い部分でもあるなと思っています。

――今までの解釈が思いっきりひっくり返るかもしれないですよね

櫻井:そうなんですよ。

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――そうなったときにおふたりは......

櫻井:(笑)
三上:受け止めます。
末原:結局お互いでつくるからね。
三上:圭登は今まで必死だったんだけど、それが楽しめるようになってきたんじゃないかなって思うし

――最後に、台本がないからこそ言える、お互いの「今回はこんなところを見たい!」を聞いてみたいです。

末原:完全に思い付きですが、詩郎にはなんか歌ってもらいたい。安里が三味線で歌うじゃん、あれが好きなんですよ。
三上:ああ、なるほど。
末原:兄弟で歌ってもいいしさ。
三上:僕は詩郎の女装が見たいな。
末原:わかる(笑)。まだやってないよね。俊ちゃんはいろいろやってるけど。
三上:でも俺逆に全裸はやってないんですよ。
末原:ほんとだ。
三上:そろそろやってもいいかな(笑)。
櫻井:僕、安里には舞ってほしい。
三上:あー、今度こそエアリアルがやりたい。サンモールじゃできないけど(笑)。
櫻井:巡査殿はめっちゃ戦ってほしい。
三上:あ、それ観たい!
末原:アクションか。
三上:めっちゃ強いやつね。
末原:でも3人でもなにかしたいね。ストーリー的にはそうならないと思うけど、小さな共同作業でもいいから、3人で同じ方向を見てみる場面があったらいいな。

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――ここまで積み重ねた3人だから見られるものですよね。

三上うん、それはいつかやりたい。楽しみ。もうあったまってるし!

――では最後に櫻井さんから読者に一言お願いします。

櫻井:浪漫活劇譚は今までの2作も、ある意味色々な方に衝撃を与えられた作品なんじゃないかなと思っています。第三夜、どうなるかわからないですが、今回もそうなるように。新たなアプローチをしながら、たくさんの方に『艶漢』の世界にどっぷりと浸かっていただけたら!

浪漫活劇譚『艶漢』第三夜は2019年4月20日(土)から4月29日(月・祝)まで東京・シアターサンモールにて上演。チケットぴあでは抽選先行受付を、1月21日(月)11:00~2月3日(日)23:59まで受付中。

取材・文:中川實穗
撮影:川野結李歌

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