■『レベッカ』特別連載vol.6■
『エリザベート』『モーツァルト!』『レディ・ベス』『マリー・アントワネット』で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のゴールデンコンビが手掛けたミュージカル『レベッカ』 が、現在8年ぶりに上演中です。
▽ 山口祐一郎、大塚千弘
▽ 左から大塚大塚、保坂知寿
物語は、ヒロインの「わたし」がイギリスの大金持ちである上流紳士のマキシムと恋に落ち結婚するも、彼の所有する広大な屋敷 "マンダレイ" に色濃く落ちる前妻・レベッカの影に追い詰められていき......というもの。
アルフレッド・ヒッチコック監督映画でも知られる名作ですが、このミュージカルではサスペンスフルな展開に、巨匠リーヴァイ氏の流麗な楽曲がマッチし、独特の世界を生み出しています。
これまでもキャストインタビュー、稽古場レポートなどで本作品をご紹介しているげきぴあ、今回はフランク・クロウリー役の石川禅さん、ジャック・ファヴェル役の吉野圭吾さんのインタビューをお届けします。
2008年の初演、2010年の再演でも同じ役を演じているおふたりならではの深い役の解釈や、2018-19年版の見どころなどをじっくりお話くださっています!
◆ 石川禅×吉野圭吾 INTERVIEW ◆
▽ フランク役、石川禅
▽ ファヴェル役、吉野圭吾
● 初演から10年経ちました
―― 初演が2008年。再演を経て三度目の『レベッカ』ですが、おふたりは10年前の初演にも出演されているオリジナルキャストです。
石川「初演、10年前だよ......、若かったよね、ふたりとも(笑)。でも、10年経った感じがしないよね?」
吉野「そうですね......10年かぁ......。でも今回、僕はファヴェルをとても自然にやれている気がします。彼は自分の欲のためにガンガン行く男なのですが、今までは年上の方を相手に若造が頑張ってるってところがちょっとあった。でも今回その感覚があまりない。やっとファヴェルをやれる年になったのかな、と思っています」
石川「圭吾ちゃんの芝居を見ていても思うけど、やっぱりみんな、大人になっていますよね。今回、すごく大人の雰囲気を感じます。皆さん10年分の経験を踏まえて新たに挑んでいるから、作品全体が、しっとりと落ち着いている。「......いいじゃない、リアルで」って頷いちゃうような、そんな進化を遂げていますよ」
―― 石川さんがフランク・クロウリー、吉野さんがジャック・ファヴェル。今回の公演が発表になったときにおふたりのお名前があって喜んだファンは多いと思います。
石川「本当ですか(笑)」
吉野「でも祐さん(山口祐一郎)が出るなら、僕らもやりますよね!」
石川「うん。大塚千弘さんや、2010年から参加している涼風真世さんと、ほかにも続投メンバーも多いし、目に映る風景は10年前と同じだよね、みんな平等に年をとっているから(笑)」
吉野「なんというか、みんながそれぞれ10歳大人になって、改めてこの『レベッカ』と対峙すると、ものすごくシンプルになりましたよね。内容も、それから舞台セットとかも」
石川「なりましたねぇ。大変シンプルです」
吉野「レベッカってこれでいいんだ、って感じがする。ドーン!と派手に見せるだけじゃなくて。ミュージカルなんだけど、ストレートプレイっぽい部分もある作品だなって今回、思っています」
石川「初演の時は、(オリジナルである)ウィーン版の絢爛豪華さに対抗するために、あえて日本的な侘びさびの世界で表現する、ってところがあったけど、今回はウィーンとの比較じゃないよ、っていう。作品にシンプルに向き合って、シンプルに研ぎ澄ましたら、こんな美しいやり方があるんだ......っていうのが今回の日本版。美術も演出も、とっても素敵だと思います」
吉野「振付、ステージングも変わって。それもまた、良い方向に作用していますね」
● 2018-19年版はどう変わった?
―― さきほど吉野さんが仰いましたが、たしかに今回、とても心理描写が繊細になって、ミュージカルだけれどもお芝居という感じを受けました。
吉野「演出の山田(和也)さんも今回、ストーリーの細かい部分にとてもこだわっていました」
石川「私個人の役作りで言うと......、「山田さん、今回私はこういう感じでやりたいんです」と申し上げたところ、「うん、それ、初演から言ってます」って言われた(笑)!」
吉野「えー(笑)!」
石川「山田さんが最初にミステリー色、サスペンス色を強くしたいと仰って。そうするにはこうだな、ああだなと考えて今回の私なりの答えを出して持っていったんですよ。そうしたら「僕はそれを初演から言っているんですが......」って。私、泣きそうになりましたよ(苦笑)。山田さん、結構役者に任せてくださるタイプだから、あんまり言ってくださらないんですよねぇ~」
吉野「(笑)。でも実は初演から言われてたんでしょ」
石川「そうそうそう」
―― どんな点か、伺ってもいいですか?
石川「要するにね、僕らふたりが対照的な存在じゃないですか。圭吾ちゃんのファヴェルはヒール的で、僕のフランクはヒロインの味方というポジション。初演の時は、とにかくいい人にしなければいけないって思ったんですよ。"いい人ソング"(※フランクのソロナンバー『誠実さと信頼』を石川さんはこう呼んでいるようです)があるだけにね。だから最初にマンダレイに「わたし」がやってきて、玄関ホールで出会った瞬間から「あなたのことを僕はすべて認めます」って芝居をしていたんです。本当は、そのシーンから"いい人ソング"の間に、フランクがいい人であるということがわかるシーンがひとつでもあればいいのですが、僕の登場としてはそのあとすぐに "いい人ソング" なので、最初からフランクをいい人にしていないと自分の中で整合性が取れなかったんです。でも山田さんがやって欲しかったのはそうじゃなかったんだよね(笑)」
―― でも私、最初に観た時は、フランクはいい人そうな顔をしているけれど本心か?怪しい!って思いました(笑)。
石川「そうなの! 山田さんはそうして欲しかったらしい。しかも、俺の思惑に反して、そう見ている人たちがいっぱいいたようで、最終的には山田さんが求めるサスペンスにちゃんとなっていたんですが(苦笑)。悲しいかな、自分の役作りのプロセスとは違っていた......。今回はそれじゃダメだなと思った。それも大人になったからかな? 自分の主張というより、「わたし」の目線でお客さまがこの作品を観たときに、どうしたらよりサスペンス色が強くなるんだろうということを考えられるようになった。引くことをこの10年で覚えたんですね。自分の中での整合性や正当性を主張するより、作品をもっと面白くすることで自分も光る、ということを考える余裕が出てきたんです」
―― それはでも、あえてフランクに怪しさを出すということではないのですよね?
石川「ないです。つまり......、ご主人が新しい奥さんを連れてくるときいて、前妻のレベッカのように華やかな女性が来ると思ったら、雨で濡れそぼった若い娘が来たらどう思うか、というのをリアルに考えたんです。そうしたら、フランクはこの家の財産を管理する立場ですし、やっぱり「財産狙いか?」って思うはず。そう考えたら腑に落ちることがいっぱい出てきたんです。初演の時に僕が気にしていた、すぐ次の出番で "いい人ソング" になるという点については「わたし」の演技とお客さまの想像力にお任せする。フランクは(舞台上で「わたし」に)一切会ってませんが、そこまでの物語でお客さまは「けなげな女の子ね」って思って観てくれているはずなので。逆に言えば「この人、いい人だよね......ほら、こういう歌を歌った」より、「この人どっちの味方なんだろう」って思っていたのが「あ、こっちの味方ね」ってあの歌でわかる、というところに持っていきたかったんです。そこまで引っ張って欲しいというのも山田さんのリクエストでした」
―― そして吉野さん演じるファヴェルは......あきらかに怪しい存在ですよね(笑)。
吉野「怪しいですか(笑)? でも僕も、今回初めて、「わたし」を見た時の第一印象が大事だなって思った。「わたし」を見つけたときの「...あ?」っていう印象を」
―― 心情的に、初演の頃から変わりましたか?
吉野「はい。以前は「わたし」に対してすごく好奇心を持って絡んでいたんですが、今回はあんまり、「わたし」に対して重点を置いていないんですよ。そこが僕の中の意識として前回までと全然違う。前は「かわいいな~」「よしよし」とかちょっかい出していたけれど、そういう動きも排除しています。彼女を目にした瞬間、一発でこいつは問題ではない、と。ファヴェルが欲しいのはお金ですから、それを得るためにどうこうするというリストに「わたし」は入らない。だからかまうほどの存在ではない」
―― マキシムの新しい奥さんとしてやってきても......。
吉野「こんな小娘だったら全然問題ないなって」
石川「確かに今回、そんな感じだね」
吉野「最初に「わたし」に挨拶する場面でも全然しつこくないですよね」
石川「海岸で会うところも、あっさりしましたよね~、高笑いをなさらなくなった」
吉野「いや、それはしてる(笑)」
石川「あれ、してる!? でも初演の時はもっと高笑いしてたよ、悪の権化みたいな(笑)!」
―― そもそもファヴェルはなぜあんなにマンダレイに入り浸っているんですか? マキシムの前妻であるレベッカのいとこということは、もはやレベッカが亡くなったら関係ないですよね。
吉野「そうなんですよね(笑)。でも結局はレベッカに執着しているんですよ」
▽ 左から:涼風真世、山口、石川
● レベッカ、マキシムとの関係性は...
吉野「今回、俺がもっとも重きを置いているのが「最愛のいとこが殺された」という部分。レベッカの死を利用してお金をふんだくろうとか、そういう目的もあるのですが、それよりも「最愛のいとこで愛人でもあったレベッカ」が、殺されて悔しいんです。だからレベッカを殺した相手に「ふざけんじゃない」って気持ちが強くある。前回はレベッカを殺した相手に「お金をくれたら黙っててやるよ」というところに重点を置いていたのですが、今回は違います」
―― ファヴェルは、レベッカと一緒に育てられているんですよね。
吉野「レベッカと一緒にダンヴァースに育てられたんです。なので今回はダンヴァースさんも、ファヴェルにアタマが上がらないというところも意識してやられていますね。前回までは結構、対等な感じで接していましたが、身分差をもっとつけようと。涼風(真世)さんなんかは「私、ファヴェルを愛しているのかしら......、今回、ファヴェルが気になってしょうがない」って仰っていましたよ(笑)」
石川「(笑)!」
吉野「ありがとうございます、愛してください、って申し上げておきました(笑)」
▽ 左から:吉野、涼風
―― フランクはレベッカについてどう思っていたんですか?
石川「......好ましくない女性、最終的にはそこだと思います。少なくとも、マキシムとレベッカの夫婦間に完全に亀裂が入っていたのはわかっていたし、それはどうしてなのか......ファヴェルという愛人がいたのも当然わかっていた。彼女の行動に対してマキシム自身も良く思っていないこともわかっていた。フランクはマキシムが所有する広大な土地と邸宅 "マンダレイ" の管理人ですから、多分一番近くで見ていたんです。おそらく帳簿をつけていて、この(使われた)お金は何? って思ったものがすべて「奥様が...」ってものだったというのが見えてくる。そこで「おいおいおい」って思ったところから始まっていると思います」
――そもそも「管理人」というものがちょっとピンときません。
石川「召使いでフリスという執事がいますが、おそらく当時の大きいお屋敷の執事は世襲制ですので、彼などはそういう立場ではないかと推測しています。フランクは、フリスたちとは違う。ああいう大きいお屋敷だと使用人はアンダーフロアで働いていて、一階の玄関フロアに勢ぞろいすることだってめったにないことです。掃除していてもそこにあるじが入ってくると動きを止めて目を伏せて通過するまで待っているというのが正式なので。そうすると、その旦那様に対してわりと意見が言えるフランクは、普通の召使いとは違うのではないか、と。だからフランクは、マキシムがマンダレイではない別の場所で一緒に仕事をして、「使えるな」とスカウトしてきた人物じゃないかと思っています」
―― マキシムの「私の親友だ」というセリフもあります。
石川「はい。その親友という言葉も、初演のときは、単純に親友なんだと思っていました。でも今回はそうじゃない解釈をしています。つまりフランクは「わたし」を全面的に受け入れているわけではないので「マキシム、お帰りなさい」と言ったあとに「あの...」とちょっと口答えしようとするんです。それを牽制するように「私の親友だ」という言葉を使ったんじゃないかと」
吉野「マキシムとフランクは、ちょっと普通じゃない絆を感じますよね」
▽ 左から:桜井玲香、保坂
● 『誠実さと信頼』と『持ちつ持たれつ』
―― すでにお話に出てきてはいますが、それぞれ、とても目立つソロナンバーがあります。それについてもお伺いしたいです。石川さんが演じるフランクは『誠実さと信頼』。石川さん曰く "いい人ソング" とのことですが......。
石川「要するに、「わたし」が「私に務まるでしょうか」と言うくだりがありますが、フランクは「あなたにはレベッカとは別のお役目がある」と言う。あの言葉が出るというのは、やはりレベッカという女性を良き人物とは思っていなくて、彼はマキシムのことが大事ですから、そのマキシムを苦しめているのはレベッカだという思いがある。そして「わたし」の発言に対しては「あなたがなぜあんな女より劣っているんだ」とも内心思っている。本当は今回のフランクの役作りとしては、この歌を歌いたくないんですよ(笑)、彼は「忠実なしもべ」で常に無口であんまり感情表現を表に出さず、淡々と業務をこなす人物なので。でも実は怒りもこみ上げてきているんです。「わたし」にレベッカはそんなに魅力的だったのかと聞かれ「私が知る限りこの世でもっとも美しいお方でした」とポーンと言っちゃうのは、「わたし」が外見の美しさなど気にもとめない人物だとフランクは認識していたし、そこが彼女の美点だと思っていたからなんですね。そんな「わたし」がレベッカと自分を比較して落ち込んでいる。これはマキシムとの間がおかしくなっているんだ、誰のせいなのか、そうかレベッカの存在か、とわかったからこそ歌う歌でありたいと思ってやっています」
吉野「今回のフランクは、怖いですよね~」
石川「山田さんがあるシーンでひとつ、設定を追加したんですよ。サスペンス色を加えたんです。それによって、そこからの逆算で人物像がはっきりしました。俯瞰で見ているんですが、それはマキシムを守るためです」
吉野「グル感が増しましたよね(笑)。ファヴェルのセリフにも「おまえらグルだな」ってセリフがありますが」
石川「ハハハ! でも、みんなが同じ認識はしてないんですよ。細かいことを言えば、この『誠実さと信頼』を歌う直前に、「わたし」がボートハウスに行った、と言います。そこにはフランクだけでなくフリスも作業をしているのですが、彼も、ボートハウスでレベッカが不倫していたというのは知っているんです。だけどフランクはもうちょっと深いところまで知っている。稽古の最初の頃は、この "ボートハウス" というキーワードが出たところで僕らは顔を見合わせていたんですが、顔を見合わせると共謀しているみたいになっちゃうので、途中からやめました。ふたりともそのキーワードで反応はするけれど、自分の中だけで反応する。各々が各々の立場でお屋敷を守ろうとしている、という風に。本当は演技としては、顔を見合わせちゃったほうが、お客さまに「何かがある」ってわかりやすくお伝えできるんですけれどね。そういう意味でも大人のお芝居になったよね。謎が謎を呼んでくれたらいいな、と思っています」
▽ 左から:石川、平野
―― そしてファヴェルには『持ちつ持たれつ』というとても印象的なナンバーがあります。
吉野「僕は単純ですよね! レベッカは自殺じゃない証拠を持ってるし、マキシムとの夫婦仲が悪いのは知ってるし、おまえがやったんだろうと。しかも裁判で船体に穴があけられていたということが判明した。つまり事故じゃなく人為的なものだ、となると犯人はおまえしかいないだろうと決め付けでグイグイ行っています」
―― ファヴェルが強気で持ってくるあの手紙はそんなに証拠として強いのかと思わなくもないのですが。
吉野「強くないんですよ、ぜんぜん(笑)。でも、自殺しようって時に出した手紙ではない内容ですからね」
石川「状況証拠としては(マキシムにとっては)ヤバイには間違いないですよね。......レベッカにしてみれば、ファヴェルを目撃者にしたかったのでは、とも受け取れますよね。恐ろしい女ですよ!」
吉野「俺がちゃんと手紙を受け取れていればね。惜しかったんだね(笑)」
―― なるほど、手紙ひとつとっても、色々な解釈が出来るんですね...。奥深いです! ただミュージカルとして全体でみても、『持ちつ持たれつ』はとても華やかで盛り上がるナンバーでもあります。
吉野「本当ですね。突然、俺の欲を歌うナンバーになる(笑)。楽して大金を手に入れたいという、俺の夢を歌っているナンバーです」
石川「あの歌のあいだに、ストーリーはまったく進んでいないもんね(笑)」
吉野「とにかく、金をくれれば黙っておいてやるぜって歌です」
石川「役者冥利に尽きるシーンだよね。ミュージカル俳優の実力の見せ所。私は『モーツァルト!』の(吉野さんが演じていた)シカネーダーのシーンを見て「これはすごい!」と思ったんですが、ウィーンミュージカルの日本版関係者が集まったパーティで、ウィーン劇場協会の方たちが案の定、彼のシカネーダーをとても褒めていた。だからこの、ショーアップされたナンバーを吉野圭吾に任せるというのは、やっぱりなって思って見ています」
吉野「...てへ(笑)! でもね、今回、振付が変わったじゃないですか。これもまた、とてもしっくりきている。振付の方に「ひとりぼっちにしないで」ってお願いしたんです(笑)。あのシーンはファヴェルが歌っている間「わたし」とフランクが傍観しているんですが、もうちょっと絡んで欲しいってお願いしました」
石川「私も初演の頃はファヴェルを「ばかじゃないの」って感じで眺めていたんですが、今回はもう少しリアルに見て欲しいといわれて「何を企んでいるんだコイツは」と思いながら見ています。ショーアップされた華やかさに、ストーリー性が加わりましたよね」
吉野「そうですね。ナンバーの中で、そちらサイドの「やばい」「どうする」みたいな反応が織り込まれて」
石川「うん。大人になったよね」
吉野「だからあまり、吉野圭吾がキバらなくなったのかな(笑)。今までド真ん中にズッドーン!だったのが、枝が分かれてきた感覚です」
▽ 左から:吉野、平野綾、涼風
● 改めてふたりが感じる『レベッカ』の魅力
―― 最後に、共演も多いおふたりですが、お互いどんな存在かを教えてください。
吉野「あの...すごくお手本になる素敵な先輩です!」
石川「嘘だ~(笑)」
吉野「本当です(笑)。いつも裏で、"いい人ソング" を一緒に歌っているんです。上手だな~って思いながら。本当ですよ!」
石川「僕は、「負けてらんないぞ!」ってところでしょうか。この人は "追求し続けている" 人ですから。いつも「ああ、違う芝居を持ってきたな」と思うし、それが刺激になります。彼は踊りが上手でショーアップされた見せ方を得意としていますし、僕はダンスは全然だし、という風にタイプが違うので、そういう意味では安心していますが(笑)」
吉野「同じ役をやれちゃうキャラだと困りますよね。僕ね、今回禅さんが "いい人ソング" を歌っているのを初めて稽古場で見たとき、「わたし」に感情移入しちゃって、泣いたんですよ」
石川「えっ、情緒不安定だったんじゃないですか!?」
吉野「なんでですか(笑)。「わたし」が泣いて、出ていくじゃないですか。そのあとまたフランクがひとりで歌いだすところでさらに泣きながら見ていたのを覚えています」
―― そんなおふたりが改めていま感じる『レベッカ』の魅力とは。
石川「突き詰めれば音楽の良さ。どんなミュージカル作品も「音楽がいい」と言いますが、この作品は格別ですね」
吉野「指揮者の塩田明弘さんも、クンツェ&リーヴァイの作品の中で、一番、曲と芝居が合っていると仰っていました。そういうところからもストレートプレイ的な感覚が出てきて、魅力的な作品になっているんじゃないでしょうか」
石川「今回改めて、ファヴェルの歌も面白いなとか、気付くことがたくさんある。適材適所に、ここで欲しい! という音楽が入ってるんだよね。そんな作品を今回、演出面も、出演者も "大人の雰囲気" でシンプルに作り上げたからこそ、新たな魅力が生まれていると思います!」
▽ 中央:大塚、山口
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
写真提供:東宝演劇部
【『レベッカ』バックナンバー】
#1 「わたし」役 桜井玲香インタビュー
#2 ダンヴァース夫人役 保坂知寿インタビュー
#3 「わたし」役 平野綾インタビュー
#4 稽古場レポート
#5 マキシム役 山口祐一郎インタビュー
【公演情報】
1月5日(土)~2月5日(火) シアタークリエ(東京)