インタビューの最近のブログ記事

チケット情報はこちら

現代演劇の手法で古典の可能性を探る木ノ下歌舞伎がKAAT神奈川芸術劇場に初登場する。

上演するのは歌舞伎十八番 『勧進帳』
兄・源頼朝と不仲になり追われる身となった義経ら一行が山伏と強力に変装して安宅の関に差し掛かり、頼朝の命を受けた富樫左衛門と対峙するさまを描いた歌舞伎の中でも上演頻度の高い人気の演目だ。
木ノ下歌舞伎では2010年に初演後、'16年に完全リクリエーション版として上演。今回はその1年半ぶりの再演となる。演出・美術の杉原邦生に、創作の意図や作品の狙いを聞いた。

043.jpg

ーー'10年に初演した 『勧進帳』 を、6年後に作り直した理由は何ですか?

 
 '10年の 『勧進帳』 は、木ノ下歌舞伎で初めて完コピ(歌舞伎の舞台映像の動きや言い回しを完全にコピーして演じること)を稽古に取り入れた一方、台詞の一部を現代語にした最初の作品でもありました。それまでは、演じるのが現代劇の俳優なのでイントネーションは現代的にしていたものの、台本は全て原語のままで上演していたんです。
でも、僕はそこに違和感を覚え始めて、完コピ稽古を提案しました。だから、僕と(木ノ下歌舞伎主宰の)木ノ下(裕一)くんにとって 「木ノ下歌舞伎の第二章が始まった」 と言えるエポックメイキングな作品になりましたし、初演が終わった直後からもう一度上演しようと話していたんです。ところが再演にあたり、初演の映像を見返したところ、凍えるくらいひどく思えて(笑)。
木ノ下くんにすぐ電話をして 「ヤバイよ」 と言うと、「いやいや、それは邦生さんが演出家として成長したからですよ、だいじょうぶです」 。その木ノ下くんもそのすぐ後映像を見て 「邦生さん、ヤバイですね」 って電話してきた(笑)。それで作り直すことになりました。

 

ーー具体的にはどこをどう変えたのでしょう?

 
 上演台本を全て現代語に直しました。今、僕の演出で言葉を一つ変える場合には、変えることによってその前後はもちろん、作品全体の中で何がどう変化するかを色々な方向から考えてジャッジしているんですが、初演時は言葉を変えること自体が初めてだったので、その新鮮な楽しさゆえに「面白い!」 と思ったらすぐOKを出していたんでしょうね、言葉の選択が甘かった。わざわざ台詞を現代語にした理由も曖昧でした。そこで'16年の稽古では「台本を全て口語にして、それでも歌舞伎と言えるかどうかを試したらどうだろう?僕が上演台本を書くから」 と提案したんです。やってみると、言葉を変えたことで演出の選択肢が広がり、自由になった感覚がありました。そうなると美術も、停止線が真ん中にあって矢印が書かれている"道路"を模した初演のものだとイメージや空間の持つ方向が定まってしまい、せっかく得た自由度を制限している気がしてきた。
発想を変え、初演からの舞台両側を客席が挟んでいるという空間構造は変えず、"境界線"というテーマをさらに推し進めて、細長い舞台そのものを真っ白な一本道の"ボーダーライン"に見立てて、その上で人々が揺れ動くさまを描くことにしました。

げきぴ②譚牙次驍ヲ逕・001.jpg

ーー初演からの"境界線"というテーマは、どこから来たのでしょう?
 

 木ノ下くんからの提案です。『勧進帳』は、物語で言ったら「関」という境界線を越えるか越えないかだけのドラマ。でもそこには、義経VS弁慶たちの主従関係だとか、富樫VS義経・弁慶の対立関係だとか、たとえ心を通わせ合えたとしても越えられない様々なラインがある。さらに僕らは、初演でもリクリエーションでも弁慶役にアメリカ人俳優をキャスティングすることで、国籍や人種の要素を入れました。

リクリエーション版では弁慶をよしもとの芸人でもあるリー5世さんが演じてくれてます。また、初演では女優が演じた義経役を、リクリエーション版ではニューハーフの俳優、高山のえみさんにお願いしました。性の境界線を内包する人を新たに入れることで、より複雑で現代的な作品になったと思います。

ーー'16年のリクリエーション版を豊橋で拝見しましたが、現代的な感性での原作への言及や補足がかなり入っていると感じました。

 古典をやる際、その時代と今とではモラルも価値観もまったく違ってリアリティを感じにくいので、そこをどう噛み砕くかが重要だと考えています。一番多く書き足したのは、富樫と共に関を護衛している番卒や、義経に付き従う四天王たちの台詞。とにかく主役を目立たせるスターシステムの歌舞伎では、彼らにはほとんど台詞がないんですが、彼らを丁寧に描くことで弁慶・冨樫・義経の存在感がさらに際立つと考えました。具体的にいうと、例えば番卒たちが関所にいる間、そうしょっちゅう山伏が通るわけでもないだろうし、待っている時間が長くなればイライラもするだろうから、彼らの中で小さなぶつかり合いとかも当然あっただろうと想像して、そういう台詞を書き足したんです。その番卒たちと対になる四天王たちもキャラクターを様々に肉付けしました。これはとても楽しい作業でしたね。

げきぴ⑤譚牙次驍ヲ逕・022.jpg

ーー一方、富樫に促されて弁慶が勧進帳を読み上げるくだりなどは、現代語とはいえ、原作通りの難解な内容になっています。

 
 "勧進帳の読み上げ"と"山伏問答"の場面は、木ノ下くんが直訳してくれたテキストをもとに、できるだけ分かり易い言葉にしました。さらにアメリカ人であるリー5世さんが言いづらい単語は変えたり入れ替えたりしていますが、それでも馴染みのない専門的な仏教用語などもたくさん出てくるので、難しいですよね。でも、そんな難しい内容を窮地に立たされた弁慶がとっさの判断ででっち上げたという凄さは伝わると思います。

げきぴ③譚牙次驍ヲ逕・038.jpg

ーー様々な工夫を凝らして作り上げたリクリエーション版。観客の反応はいかがでしたか?

 
最初に上演したのが松本のまつもと市民芸術館だったのですが、とにかくお客さんがすごく盛り上がってくれました。ちょうどその時、同じ劇場の主ホールで串田和美さん演出の『四谷怪談』を上演していたので、出演していた中村勘九郎さん、中村七之助さん、中村扇雀さん、中村獅童さんといった歌舞伎俳優や、付き人さんや裏方さんたちまで観に来てくれて、客席で大歌舞伎公演ができるくらいのすごい顔ぶれでした。

七之助さんは「歌舞伎を現代化していると聞いて、正直スカした奴らなのかと思っていたけれど、ちゃんと歌舞伎だし『勧進帳』 だった 」 と言ってくださり、2晩続けて足を運んでくれました。また、終演後に行った飲み屋で偶然お会いした扇雀さんは、いかに面白かったかを1時間ほど熱く語ってくださいました。歌舞伎俳優の皆さんに観ていただけた上に、そういう感想をいただけたことは、単純にとても嬉しかったですね。

普段から木ノ下歌舞伎を観てくださっているお客さまからは 「一つの到達点だね」 という声が多かったです。それは僕らも感じていて、ちょうど'16年は木ノ下歌舞伎結成から10周年だったのですが、10年の間に様々なことを試してきた蓄積があって、僕と木ノ下くんの中で 「ここまでやっても大丈夫、歌舞伎と言える」 みたいなラインを共有していたからからこそできた作品だったと思います。

げきぴあ④譚牙次驍ヲ逕・037.jpg

ーー今回、関東では初上演。どんなことが伝わればいいなと思いますか?

この 『勧進帳』 には僕が演劇で表現し続けたいことが詰まっている気がするんです。例えば、僕は善/悪の二項対立が嫌いというか、そんなに単純に分けられないだろうって思うんです。それぞれにそれぞれの正義があり正解があると思う。それらがぶつかった時、相手の正義や正解を受け容れることができないから争いが起きるわけですよね。そうした対立が取り払われた平和な社会、つまり人間同士が互いを尊重しあえる社会の実現に、演劇が力を持てたらいいな、というのが、僕が演劇を続ける理由。と言いつつ、実際には、この世界に人間がいる以上、そんな社会が実現することはないとうこともわかってます。でもきっと、『勧進帳』の登場人物たちもどこかでそういう平和な世界を望んでいたんじゃないか。様々な境界線を越えた先に、皆が輪になって踊れるようなハッピーな世界があると思いたかったんじゃないか。そんなことを現代のお客さまにも感じてもらえたら嬉しいです。それが古典の面白さであり、カッコ良さだと思うので。

取材・文:高橋彩子

=====

木ノ下歌舞伎

『勧進帳』


【公演期間】
2018年03月01日(木)~2018年03月04日(日) 

【会場】

KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

【監修・補綴】
木ノ下裕一

【演出・美術】
杉原邦生[KUNIO]

【出演】
リー5世
坂口涼太郎
高山のえみ
岡野康弘
亀島一徳
重岡 漠
大柿友哉

チケット情報はこちら

チケット情報はこちら

■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(3)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。映画で慣れ親しんだ名曲たちはもちろん、舞台ならではのダンス、演出を楽しみにしている方も多いのでは?

げきぴあキャストインタビュー第三弾は、Wキャストでバート役を演じる大貫勇輔さん!海外のスタッフからも「見た目が完璧にバート」、「絶対にバート役に合う」と太鼓判を押されていたそう。そんな大貫さんが自身に思う課題、そしてダンサーとして活躍してきたからこその目標について語ってくれました。

3.jpg

"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表より"

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

――本作のオーディションは非常に長期間にわたって行われたそうですね。

「はい、正直1回目のことはあまり覚えていないくらい(笑)。でもこれだけやったからこそ受かりたいし、最後の方は必ず受かるつもりでいました。向こうのスタッフの方にも、『君は見た目は完璧にバートだし、絶対に合うと思う』と言っていただいていましたし。ただ僕の課題はとにかくずっと"歌"だったんですよね。歌の先生にも、『芝居をするように歌って欲しい』と言われていて。それはマシュー(・ボーン)の振付にも通じるものだと思うので、しゃべるように歌ったり、しゃべるようにタップを踏んだりってことはこれからも意識していきたいです」

――長いオーディションを経て、ついにバート役に決まった時の心境は?

「本当に素晴らしい作品ですし、しかもその日本初演に参加させてもらえることがとにかく嬉しかったです。今この役をやれるか、やれないかっていうのが、僕のこれからの人生を大きく変えるんじゃないかとすら感じていたので。ただ今はまだスタートラインに立ったばかり。これからいかに結果を残せるのか、お客さまに感動を与えられるのか。そして『世界を通して一番動けるバートだったね』と言ってもらえるよう臨んでいきたいです」

――演じられるバート、現段階ではどんな人物だと捉えていますか?

「ものすごく出番が多いというわけではないんですが、そのかわり強い印象を残す大事な人物だと思うんです。とても愛されるキャラクターでチャーミングだし、おバカなことを言っていたかと思うと、とても大切なことを敬意を持って伝える紳士だったり。家族が崩れてしまいそうな時にうまくサポートをしてくれる存在でもあって。そんなバートをいかに魅力的に演じられるか。それが大きな課題であり、自分自身楽しみなところでもあります」

――バートは本作で、ユーモアの部分を担うキャラクターでもありますね。

「ええ。ただバートって、いわゆるコミカルな動きをしてはいけないんです。つまり外側からのユーモアではなく、内側からにじみ出るユーモアでなければいけなくて。そこはやっぱりイギリスの作品であり、まずはお芝居ありき。僕はダンサーであるがゆえに外側からやってしまう癖があるのですが、バートの内面にしっかり目を向けて、なぜそこにユーモアがあるのか。これからじっくり読み解いていきたいと思います」

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

MP_Hamada&Oonuki.jpg

"ミュージカル『メリー・ポピンズ』より 大貫バート&濱田メリー"

――バートの好きなシーン、ナンバーを教えてください。

「『ステップ・イン・タイム』という映画版にもあるナンバーですが、舞台版ではバートが逆さまに吊られつつ、天井でタップをするという大ナンバーなんです。命の危険ももちろんありますが、吊られてタップを踏むなんて経験そうないですからね(笑)。すごく楽しみです。ただ僕のダンス人生の中で、最も苦戦しているのがこのタップでもあって......。タップってダンスというよりも楽器なんですよね、足の打楽器。正確にリズムをキープしつつ、ダンスとしての表現もしていく。すごく大きな挑戦ではありますが、特に『ステップ・イン・タイム』は盛り上がるナンバーなので、お客さまが熱くなれるよう頑張りたいです」

――柿澤勇人さんがWキャストでバートを演じられます。

「カッキー(=柿澤)とのWキャストというのは、間違いなく大きなプレッシャーのひとつですね。絶対に比べられるものですし。ただ僕はダンスが得意なので、そこをうまく伸ばしつつ、歌の部分でいかにカッキーに近づけるのか。さらにカッキー以外にも素晴らしいキャストの方が大勢いらっしゃるので、皆さんのいいところはどんどん盗みつつ、この作品での経験を通して自分も成長していきたいなと思います」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

チケット情報はこちら

チケット情報はこちら

――倉持裕さん作・演出の舞台へは、なんと6年連続の出演になるとか。
竹中 本当に大好きなんですよね、倉持さんの世界観が。倉持さんの書く言葉やリズム感も好きです。あと演出中に「うん、いいです」って言ってくれる声の音色とその横顔も好きで(笑)。倉持さんの描く世界に本能的に惹かれます。これからも倉持さんの世界を追求していきたいですね。

035a_竹中直人.jpg

――上白石さんは倉持さん作品をご覧になったことはありますか?
上白石 はい。竹生企画では『ブロッケンの妖怪』(15年)を観に行ったんですが、本当に感激して! すごくシンプルなストーリーでありつつ、人間味もあり、しかもひと筋縄ではいかない。いろんなところに寄り道しながらも、最後にストンと落とし込む、みたいな。舞台にしか出来ないこと、舞台の素晴らしさを、倉持さんの作品にはいつも感じます。

065c_上白石萌音.jpg

――おふたりの共演は映画『舞妓はレディ』(14年)以来ですが、今回上白石さんを客演に呼ばれた理由は?
竹中 いつも僕は女優さんをメインに考えるんです。萌音ちゃんとは初共演した時にいつか一緒に舞台をやりたいと思っていました。倉持さんにもそのお話は以前からしていました。だから今回、願えばちゃんと叶うんだなって思いました。
上白石 本当に恐縮です・・・竹中さんとはまたお芝居したいと願い続けていましたし、倉持さんの舞台にもずっと出たいと思っていて。だから今回一気に夢がいくつも叶ってしまって、お声がけいただいた時は天にも昇る思いでした。
竹中 そこまで言ってもらえるなんて本当に嬉しいなぁ。
上白石 前の映画の時は、私が初主演ということでガチガチだったんですけど、それをいつも柔らかく、楽しく、面白くほぐしてくださったのが竹中さん。だから私にとっては、本当に恩人のような存在なんです。
竹中 かたじけない。

――初めて倉持さんの舞台に挑む上で、竹中さんに聞いておきたいことはありますか?
上白石 すべてが未知数なんですが......、倉持さんのお稽古って、みんなでいろいろ模索しながら進めていく感じですか?
竹中 そうだね。昔は岩松(了)さんが倉持さんの師匠みたいな時期もあったから、何度も何度も同じところを繰り返しやっていた時期もあったとは思う。ただ何度も繰り返しやるって、理屈じゃなくなくなってくるから、楽しいことだと思うんだよね。僕は稽古が大好きだけれど生瀬くんは飽きやすいよ (笑)。
上白石 そうなんですか?(笑)
竹中 うん。いや、だったと思う(笑)

――先日の取材で生瀬さんは、「竹中さんは僕のことが苦手だと思う」とおっしゃっていました。
竹中 そんなこと言ってた!? おかしいね。だって怖いんだもん、生瀬くん(笑)。圧がすごいし、"男"って感じがするんですよね。役者としても全然違うタイプだよね?だからこそ竹生企画はいい距離感といいバランスなんじゃないかしらん(笑)
上白石 これまでは私、竹中さんも生瀬さんも芝居に対して同じような取り組み方をされていらっしゃると思っていたんです。でも実は逆で、お互い違うからこそ生まれる波長があるんだなって。今すごく腑に落ちました。

――倉持さんいわく、「過去2作に比べて、最もおふたりのやり取りが多い芝居になる」とも。
竹中 本当ですか? うわぁ、ものすごく緊張するな。
上白石 倉持さんの作品っていつも会話で紡がれていく感じですけど、今回はそれがより色濃い感じになりそうですよね。仮チラシにも"果てしなき口論"って書いてありましたし。
竹中 それは頑張らなきゃな。生瀬くんに負けちゃいそう......(笑)。
上白石 一ファンとしては、おふたりのやり取りを間近で体感出来るのが本当に幸せです。早く稽古に入りたい!

――では最後に、チケット購入を迷われている方の背中を押していただけるようなひと言をお願いします。
上白石 倉持さん、竹中さん、生瀬さんというメンバーで、面白くないわけがないと思います。すごく魅力的な世界になるはずなので、絶対に観に来てください!
竹中 水と油のようなふたりがまた芝居をやるぜ! 尋常じゃないぶつかり合いをまるで透明の水のようにみつめるのは上白石萌音!! これを観ないでいられるかっ!!

021b_上白石萌音_竹中直人.jpg

「火星の二人」東京公演は、2018年4月10日(火)から25日(水)までシアタークリエで行われる。

(取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己)

チケット情報はこちら

チケット情報はこちら

■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(2)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。様々な舞台機構、そして誰もが映画で慣れ親しんだナンバーに期待が膨らみます!

げきぴあキャストインタビュー第二弾は、Wキャストでメリー・ポピンズ役を演じる平原綾香さん!歌手、そして近年はミュージカル女優としても活躍する平原さん。イメージするメリー・ポピンズのお手本は意外な"あの女性"だという、独特の役作り(!?)にも注目です!

2.jpg

"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表 より"

メリー・ポピンズは困った時に助けてくれるヒーロー

――ミュージカルへの出演は3作目になりますが、本作のオーディションを受けようと思ったきっかけは?

「オーディションを受けるのは初めてで、正直お声がけいただけなかったら今回も受けることはなかったと思います。でも(映画版のメリー・ポピンズ役の)ジュリー・アンドリュースさんが大好きだったことと、ちょうど『サウンド・オブ・ミュージック』の日本語吹き替えをやらせていただいたばかりで。これも何かのご縁かなと、思い切って受けてみようと決めたんです」

――『メリー・ポピンズ』という作品の魅力をどんなところに感じていますか?

「メリー・ポピンズは女性ですけど、やっぱりヒーローって感じがするんですよね。彼女が来たらもう安心、みたいな。困った時に助けに来てくれる存在だなって。だからこそ家族の絆が取り戻され、本来の家族の姿に戻った時に、彼女は次の家族のもとへと傘で飛んで行ってしまう。それが寂しくもありますが、観ていてキュンとするところでもあって。そして子供から大人まで世代を問わず楽しめるところが、この作品の一番の魅力かなと思います」

――メリー・ポピンズを演じられる上で大切にしていきたいことは?

「まずは彼女の姿勢かなと思います。常に背筋がピンと伸びていて、それは彼女の心の姿勢でもあると思うんですけど。あと私の中ではやはりジュリー・アンドリュースのイメージが強かったのですが、演出家が求めているのはそれとはまた違う、ちょっと新しいメリー・ポピンズ像のようなんです。人の話を聞いていない感じとか、結構ゴーイングマイウェイなところとか、実は結構笑いのセンスがある。私がイメージしているのが芸人の友近さん(笑)。友近さんが誰かを演じられている時のリアルさ。リアルだからこそ面白い、みたいな。そういう感覚がこのメリー・ポピンズを演じる上でも必要なのかなと思っています」

――名曲ぞろいですが、ご自身が歌うのを楽しみにしているナンバーは?

「やはり『チム・チム・チェリー』は楽しみですね。本当に有名な楽曲ですし、それをカバーではなく、メリー・ポピンズとして歌える機会なんて今後ないと思いますから。あと『何もかもパーフェクト』はこの作品を象徴するナンバーであり、彼女の笑いのセンスが垣間見えるナンバーだと思うんです。そしてこれを歌いこなせれば、ほぼすべてのナンバーは歌えるだろうと言えるくらい、私にとっては難関なナンバーでもあります」

メリーポピンズ 平原新ビジュアル1222.jpg

"ミュージカル『メリー・ポピンズ』"より こちらは平原さんバージョン!

――芝居や歌はもちろん、今回はダンスにも挑戦されます。

「実はすごく楽しみにしているのがダンスなんです。というのも平原綾香っていったらあまり"動かない、笑わない、しゃべらない"みたいなイメージがあると思うんですが(笑)、実はそれに苦しんできたところもあって......。私自身はどちらかというとそのイメージとは正反対で、踊ることも、笑うことも、しゃべることも大好き。だからやっと踊れる!って感じですし、今そういう作品に出会えたことがすごく嬉しいです」

――Wキャストの濱田めぐみさんは、平原さんの初舞台『ラブ・ネバー・ダイ』(14年)でも同じ役を演じられました。

「めぐさんの存在なしにあの舞台は乗り越えられなかったなと思えるくらい、めぐさんには心から感謝しています。人として常に優しく接してくださることが、初舞台の私にとってどれだけ大きな支えになったか! そんなめぐさんが、『今回もまた一緒に頑張ろうね』と言ってくださったことが本当に嬉しくて。またチラシ撮影時に見ためぐさんのメリー・ポピンズ姿が、すっごくかわいらしかったんですよ。私は、友近さん流の"笑い"を武器に頑張っていこうと思います(笑)」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

チケット情報はこちら

チケット情報はこちら

■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(1)■

イギリス・ウエストエンド、ブロードウェイをはじめとした世界中を魅了してきたミュージカルが、ついに日本最高峰のキャスト陣で初演を迎えます!

げきぴあキャストインタビュー第一弾は、Wキャストでメリー・ポピンズ役を演じる濱田めぐみさん!自身4作目となるディズニーミュージカルへ挑む濱田さんに意気込みをお伺いしました。

1.jpg

"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表 より"

メリー・ポピンズが植えた種が何かひとつでも成長してくれたら

――長期間にわたるオーディションで、特に印象に残っていることは?

「オーディションというよりも、まずはメリー・ポピンズの動きのレクチャーを受けたという感覚です。立ち居振る舞いや手の組み方、振り向く時の角度やあごの高さまで、メリー・ポピンズの動きはすべて厳格に決められているので。特に面白いなと思ったのは、『メリー・ポピンズはのけぞらない』と言われたこと。ちょっとでも姿勢がズレると、『はい真っすぐ、のけぞらない!』って。そんなオーディションの日々は今思い出してもヒーッ!て感じですが(笑)、あの段階からすごく熱心に、メリー・ポピンズとしての資質を伸ばそうとしてくださったことは本当にありがたかったなと思います」

――役に対する取り組み方として、普段と変わってくる部分はありそうですか?

「そうですね。まず私が役づくりですることは、役名を取ってしまうことなんです。例えば"花子"という役を演じる時、『私は花子って役なんだ』ではなく、『花子という女性の人生を私が舞台上で生きるんだ』と思うようにしています。そうでないと役名やイメージにとらわれて、それらしく演じようという意識が働いてしまうので。つまり"それらしく"と考えている時点で、すでにそれは花子の意識ではないわけです。でも今回はまず"メリー・ポピンズ"があって、自分がそこに入っていかないといけない。これまでと真逆の役づくりが必要で......」

――その難題をクリアするための手がかりは掴めていますか?

「距離感ではないかと思っています。特にメリー・ポピンズと大人たちとの距離感。彼女はいつ、何をすべきかすべてわかっている、とても人間離れした存在です。そんな彼女が一番寄り添わなきゃいけないと思っているのが、大人なのかなと。子供はピュアな分、ちょっと示唆するだけであとは真っすぐ突き進んでいってくれます。でも大人はねじれてしまっている分、子供たちを導いているところを見せることで、そこから何かを感じてもらわないといけない。その時の距離感を彼女がどう取ろうとしているのか。演出家に導いてもらいつつ、何とか初日までに結果を出せればいいなと思っています」

メリーポピンズ 新ビジュアル1215 h1_濵田.jpg"ミュージカル『メリー・ポピンズ』 より"

――観客にここは注目して欲しいと思うナンバーやシーンは?

「今自分の中ですごく興味があるのは、バンクス家の子供たちと初めて会うシーン。傘を持って降り立つ自分を見て、バンクス家の人たちがどんな反応をするのか、とてもワクワクしています。それから『お砂糖一さじで』がどんな訳詞になるのかも気になりますし、『チム・チム・チェリー』は大好きな楽曲なので早く歌ってみたいなと。ダンスナンバーに関しては大貫(勇輔)くんとカッキー(=柿澤勇人)にどんどん頑張ってもらって(笑)、一気に盛り上がるといいですね。中でも『スパカリ(=スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)』! みんなでどれだけ七転八倒しながらやることになるのか(笑)、今からすごく楽しみです」

――改めてこの名作を通して、どんなメッセージを伝えられたらと思いますか?

「実はとても深いメッセージが込められた作品だと思うんです。見た目の派手さとか、音楽のよさとか、すべてにおいて完璧な作品ではありますが、それにプラスして今この日本でやるべきものであり、とても心に響く作品だなと思っていて。そして劇場でメリー・ポピンズが植えた種が、ひとつでも心の中で芽を出して、成長していけるような何かを残せたら......。自分の中でもメリー・ポピンズって役がとても大事な役になるだろうと直感していますし、大事に、大事にお稽古をして、皆さまに最高の舞台をお見せ出来ればと思っています」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

チケット情報はこちら

チケット情報はこちら

元宝塚歌劇団 雪組トップスター・早霧せいなさんの退団後初となる主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、5月に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月に東京・TBS 赤坂ACT シアターで上演されます。

本作は、人気ニュースキャスター・テスの笑いあふれるラブロマンスを、ジョン・カンダー&フレッド・エッブの華やかな楽曲で描くコメディミュージカル。トニー賞最優秀スコア、脚本、主演女優賞、助演女優賞の4 冠に輝いた傑作です。(詳しくはその①へ!)

春まで待てないげきぴあは、ビジュアル撮影に潜入!
【その①】では早霧さんのレポートを、【その②】では、相葉裕樹さんのレポートを、そして、今回の【その③】では、宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)さんのレポートをお届します。

チケット情報はこちら

4月に東京・東京芸術劇場シアターウエストと大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ51)』。

2015年にウエストエンドで上演された話題作の日本初演で、板谷由夏さん、神尾佑さん、矢崎広さん、宮崎秋人さん、橋本淳さん、中村亀鶴さんが出演する六人芝居。「世紀の大発見」とも言われる"DNAの二重らせん構造"の発見に貢献した女性科学者ロザリンド・フランクリンの姿を描きます。演出は、サラナ・ラパインさん。今、ブロードウエイでも注目を浴びる女性演出家です。

げきぴあでは、そのリーディング現場に潜入。
作品の概要&第一弾はこちら・第二弾はこちらをご覧ください!

ラストとなる今回は、リーディング直後の矢崎さんと宮崎さんを直撃。
感想を聞いてみました。

1.jpg2.jpg

チケット情報はこちら

元宝塚歌劇団 雪組トップスター・早霧せいなさんの退団後初となる主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、5月に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月に東京・TBS 赤坂ACT シアターで上演されます。

本作は、人気ニュースキャスター・テスの笑いあふれるラブロマンスを、ジョン・カンダー&フレッド・エッブの華やかな楽曲で描くコメディミュージカル。トニー賞最優秀スコア、脚本、主演女優賞、助演女優賞の4 冠に輝いた傑作です。(詳しくはその①へ!)

春まで待てないげきぴあは、ビジュアル撮影に潜入!
【その①】では早霧さんのレポートを、
今回の【その②】では、相葉裕樹さんのレポートをお届します。

チケット情報はこちら

元宝塚歌劇団 雪組トップスター・早霧せいなさんの退団後初となる主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、5月に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月に東京・TBS 赤坂ACT シアターで上演されます。

本作は、『シカゴ』『キャバレー』『蜘蛛女のキス』など日本でもお馴染みの作品を手掛けたジョン・カンダー&フレッド・エッブの華やかな楽曲で、笑いあふれるラブロマンスを描くコメディミュージカル。トニー賞最優秀スコア、脚本、主演女優賞、助演女優賞の4 冠に輝いた傑作です!

上演台本・演出・訳詞を務めるのは、ミュージカル『フランケンシュタイン』やオフ・ブロードウェイ・ミュージカル『フォーエヴァー プラッド』を手掛けた板垣恭一さん。

そして、主人公の人気ニュースキャスター・テスを演じるのは、昨年7月に宝塚歌劇団を退団した元雪組トップスター・早霧せいなさん! これが退団後初の主演ミュージカルとなり、これまで男役を演じてきた早霧さんがバリバリのキャリアウーマンを演じます。

早霧さんと言えば...'14年のトップ就任から'17年の退団まで、宝塚大劇場での公演全5作で"100%以上の稼働率"という劇団史上初の記録を打ち立て、本拠地でのサヨナラパレードでは約6,000人のファンが集まり見送った大スターです。その早霧さんが「宝塚歌劇退団後、一人の役として舞台に立つ事はこれが初めての挑戦になります」(公式コメントより)というミュージカル。本当にたった一度しか見られない"初"の作品ですから、早霧さんのファンはもちろん、舞台ファンも要チェックです!

というわけで、げきぴあではビジュアル撮影に潜入!
【その①→早霧せいなさん】【その②→相葉裕樹さん】【その③→宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)さん】
という連載でお送りします!
後半にプチインタビューもありますので、ぜひご覧ください。

チケット情報はこちら

日本が誇るエンターテイナー・玉野和紀と若い才能がつくりあげるショー・ステージ「SHOW HOUSE『GEM CLUBⅡ』」が3月に開幕します。

『GEM CLUB』は、吉野圭吾さんや東山義久さんらが出演するエンターテインメント・ショー『CLUB SEVEN』シリーズ(2003~)のDNAを受け継ぐ新世代のショー・ステージ。
「大人のショー」をコンセプトに掲げる『CLUB SEVEN』に対し、20代を加えた"new MEGA パフォーマンス・ショー"として、若い才能の原石(=GEM)たちが集うショーハウスを舞台に、夢を追い求め、ぶつかり合いながらも切磋琢磨するGEMたちの姿を描きます。
作・演出・振付は『CLUB SEVEN』同様、玉野和紀さん。"GEM CLUB"というショーハウスの総支配人として出演もされます。

2016年春の初演には、本公演にも続投する中河内雅貴さんや、相葉裕樹さん、植原卓也さん、矢田悠祐さんをはじめとする注目の若手メンバーがズラリと出演した本作。2年ぶりの第二弾となる今作の出演者も気になりますよね!?

というわけで、出演者の⽊⼾⾢弥さん、多和⽥秀弥さん、本⽥礼⽣さん、松⽥岳さん、古⽥⼀紀さん、そして玉野さんにお話をうかがいました!

左から_古田一紀、本田礼生、木戸邑弥、玉野和紀、多和田秀弥、松田岳.jpg

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ