奥浩哉の大ヒット漫画『GANTZ(ガンツ)』の初の舞台化である舞台「GANTZ:L ACT & ACTION STAGE」が1月26日(金)に開幕する。
平凡な大学生・玄野計(百名ヒロキ)が、偶然再会した同級生・加藤勝(高橋健介)に巻き込まれ地下鉄事故で死亡したはずが、気付けば「GANTZ」と呼ばれる謎の球体に指示され"星人"と戦うミッションに参加することになり――というストーリー。舞台版の演出・脚本は鈴木勝秀が務める。
稽古場にて、主人公の玄野計を演じる百名ヒロキと、玄野に「GANTZ」にまつわるある計画を持ちかける大学生・和泉紫音を演じる久保田悠来に話を聞いた。
舞台版は、芝居でみせる作品
――『GANTZ』という非現実的な世界を描く作品で、同じ実写化でも映画版はCG満載でしたが、舞台は一体どんな表現になるのでしょうか。
久保田 僕が飛び散ります。
百名 そんなシーンありました!?(笑)でも、CGや3Dマッピングは使わず、本当に芝居でみせる作品になります。
――人間の心理面が強く描かれるということでしょうか?
久保田 そうですね。アクションもありますが、一番は人の心理的な面を描いているところが大きいと思います。
百名 ほとんどお芝居中心ですよね。
久保田 特に玄野は紆余曲折がある役柄で。
百名 和泉がめっちゃ翻弄してくるんですよ。
――紆余曲折を体感する百名さんから見ると、この舞台はどんな作品になっていますか?
百名 いろんなメッセージが隠れてると思いました。この世界に無慈悲に巻き込まれていく登場人物の姿に、直接的には言わないですけどメッセージがあって。僕はそれが戦争だったり、テロだったりするのかなって。そういう風に感じています。
――非現実的な世界を通して、現実を描いているというようなイメージですか?
久保田 そうですね。人間の本質が見えてくるっていうところが一番かなと思っています。
――オリジナルの要素もあるんですよね?
百名 そうなんです。オリジナルの登場人物もいて。でも原作は崩してないので。
――どの辺りが違うんですか?
百名 玄野の普通の大学生である感じが強調されているかな。だからこそ殴り合いとか残酷なシーンも際立つんだと思います。
――アクションも激しいのですか?
百名 激しいですね。おおきなねぎ星人(竹之内景樹)とかは特に大変そうで。
――ねぎ星人のシーンは原作でもショッキングですよね。
久保田 そういう人間の部分を描きたい、というのがあると思いますね。
まずは自由に動いてみる、"スズGANTZ"の世界!?
――ご自身の役はどういう風に感じてますか?
百名 玄野はかわいいです。等身大のすけべ男子(笑)。普通のよくいる大学生です。その玄野が「GANTZ」の世界の中で、惑わされたりしながら、それでも成長していくっていうか。だから一番人間らしい役なんじゃないかなって思ってます。
久保田 和泉はなんでも器用にできる人間なんですけど、それもあって、日常に辟易してるといいますか。刺激のない毎日を送っている。その中で自分の人間らしさをなんとか保っているのですが、本質ではもっと刺激を求めてる人間っていう感じですかね。
――その刺激というのが...
久保田 玄野であり、「GANTZ」という世界への想いかなと思います。
――ふたりの心理戦があるそうですが、そのシーンはもう稽古しましたか?
百名 しました。もう何度も通してるんです。
久保田 いつのまにか常に通す流れになってたよね。気づけば。その流れに気づいたら巻き込まれてた。それも「GANTZ」っぽい。スズカツさん(脚本・演出の鈴木勝秀)の中の"スズGANTZ"が。
百名 (笑)。かなり早い段階から通してましたよね。
久保田 "通し"という言葉こそ使わないけど、いつのまにか通してるっていう世界観です。
百名 "スズGANTZ"の世界観(笑)。
――それは感情を描く芝居だからこそ、ぶつ切りじゃなく通すってことなのでしょうか。
久保田 多分。感情の流れをみんな掴めっていう。あとスズGANTZさんも流れで見てるんじゃないかと思いますけどね。
――どういう演出をつけられましたか?
百名 「自由に動いて」と言われます。毎回自由にやらせてくれるんですよ。
久保田 まずは役者としてやってみなさい、ということで。そこから成長を促してくれるんですよね。ずっとそんな感じだったけど、昨日あたりから演出が具体的につけられるようになってます。
――「自由に動いて」って案外大変じゃないですか?
百名 最初はそこが一番大変でした。自由にやるっていうのが全然わからなかったので。「振り付けにならないで」「俺に位置つけられたらダメだよ」って言われて。でも今はすごく嬉しいです。
久保田 共演者のみんなの在り方にも刺激を受けますしね。
百名 めっちゃ受けますね。全てが新鮮。藤田(玲)さんとかは毎回新しいものを持ってきて、現場を荒らしてくれるっていうか。新しい風を起こしてくれるんですよ。それを見て、みんなも新しいものを持ってくるし。稽古場が動いてる感じがして。ここにいれてよかったなって思います。
百名ヒロキは自分の芝居で示していく座長
――久保田さんは、約4年半ぶりの舞台ですが、そもそもなぜ4年半ぶりに出ようと思ったんですか?
久保田 初舞台からちょうど10年が経って。久しぶりにやってみたいなと思ったのがきっかけです。
――普段は映像中心ですが、久しぶりの舞台はいかがですか?
久保田 入ってしまえばもう懐かしさというより、毎日どうやっていこうかなってところではあります。ただ、お芝居に毎日触れられるっていう楽しさはありますね。
――逆に百名さんは、今は次々と舞台に出演されていますね。
百名 僕は今出来る事をがんばるしかないと思っているので。ひとつ前に出た作品より成長した姿を見せたいですし、今回も学ぶことがたくさんあって本当にありがたい事だなって思いながらやっています。やっぱ楽しいっていうか。がんばりたい。そっちのほうが大きいですね。
――久保田さんからみた百名さんはどうですか?
久保田 毎日毎日(役柄として)向き合って、徐々に目の色も変わってきてますし。いつもチャレンジもしてますしね。すごく度胸のある役者さんだなと思ってます。
――座長としてはどうですか?
百名 何もしてないですよ!
久保田 自分の芝居で示していけているタイプなので。それだけでいいと思いますよ。
百名 一番安心する言葉です。もう必死にがんばるだけです。
久保田 それでいいと思います。周りの人間も、全力で走ってる人はちゃんとサポートするのでね。
――百名さんから見た久保田さんの印象はどうですか?
百名 かっこいいですよね。
久保田 そうだよね。
百名 (笑)。ほんとにずっとこの感じですから。独特な雰囲気があって。稽古も最初、裸足でやってましたから。
久保田 (ひょうひょうと)靴持ってなかったんですよ。
百名 あはは! でも本当に、芝居に深さがあって。玄野は和泉を怖がっているという関係性なんですけど。何を考えてるかわからない怖さが、向かい合って会話をしていると余計に伝わってくる。独特な和泉の雰囲気がすごいです。だけどユーモアも忘れず。かっこいいですよね。
久保田 記事はこの話だけでいいです。
百名 (笑)
――では最後に一言ずつ読者にお願いします。
久保田 『GANTZ』に対するイメージっていろいろあると思うんですけど、"気づけば人間たちが狂気を持っている"というところがあって。舞台でも、最初は笑いがふんだんに散りばめられているのですが、いつの間にかお客さんが笑っていることすら狂気になっているような。そういうものをそのまま世界観として体感していただくべく我々はつくっています。ぜひ劇場で楽しんでいただきたいです。
百名 舞台ならではの良さ、みんなの熱を伝えつつも、根本にある人間の悲しさとか寂しさとか、そういうものを考えさせられる作品になってると思うので。ぜひ劇場におこしください。お待ちしております!
舞台「GANTZ:L ACT & ACTION STAGE」は1月26日(金)から2月4日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。
取材・撮影・文:中川實穗