【マタ・ハリ通信(14)】マタ・ハリ役、柚希礼音インタビュー

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■ミュージカル『マタ・ハリ』特別連載(14)■

まもなく開幕する、日本初演のミュージカル『マタ・ハリ』
当連載では様々な角度から本作の魅力を追っていますが、キャストインタビューの最後は、
マタ・ハリ役 柚希礼音さんの登場です!

パリで人気を博したダンサーであったがために、ドイツやフランスのスパイとして利用されようとした悲運のダンサー、マタ・ハリ。
自身も名ダンサーである柚希さんが、この謎めいた女性に、体当たりでぶつかっています。



柚希さんに、マタ・ハリという役にかける思いを伺ってきました。

● 柚希礼音 INTERVIEW ●

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―― お稽古も佳境の中、ありがとうございます。いま作品を作り上げている稽古場は、どんな現場ですか?

「演出の石丸さち子さんが本当に情熱的。私、宝塚を退団してから初めて女性の演出家さんとご一緒するんです。女性目線でマタ・ハリを見ていて、「こうであってほしい」「こんなわけがない」という強い思いを持っていらっしゃるのでとても心強く、日々感動しながらやっています」


―― 石丸さんの演出を見ていると、とても深くて、そこまで見えてるの? と驚くと同時に、言われてみると確かに納得......ということばかりで、私も拝見していて面白いです。

「そうなんです。私だけでなくほかの方へのアドバイスでも、そのひと言で1曲がガラリと変わったりする。大きな表現を足すのではなく、真実のところを突いてくださるので、演じる側も色々なことをしなくてもシンプルに中身が変わっていく。ただ、そこを追求しすぎちゃうと客席の3列目くらいまでしかわからないかも、というよう表現をしてしまう危険もあるので、石丸さんの仰る "真実のところ" をしっかり膨らませて、感情が身体の動きになるように、いま試行錯誤しています」


―― マタ・ハリを演じていて、いかがですか。

「マタ・ハリって、本当に壮絶に生きた人なんです。私はちょっと......石丸さん曰く「親近感のあるスター」なんですって(笑)。「柚希礼音さんは "高みにいて人を寄せ付けないスター" ではない。オープンなところがマタ・ハリっぽくない」と言われて、そこが一番難しいところです。役作りとしては、自分の力で這い上がった "大女優感" みたいなイメージをプラスしてやっていこうと思っています。だからこそ近寄りがたい時もあるでしょうし、自らガードを作ってしまうこともある。そこを根本としつつ、アルマンに出会った時にパカっと本当の心が開いてしまう......。そんなところを、研究しながらやっています」mata14_2_DSC5806.JPG

―― 確かに "楽屋のシーン" など、普段の柚希さんの状況と共通するところもあるだけに、逆に難しそうです。

「そうなんですよ。とっかかりは、自分も舞台をやっているということで共感できるところがいっぱいあったんですが、それで役作りをしすぎると、マタ・ハリさんになっていくのが難しくなってくるんです。そこが苦労しました。あと、この前にやっていた『ビリー・エリオット』では、身振り・手振りが一切なし、と演出で言われていたんですよ。「芝居っぽい」ということで。それを結構長い期間やっていましたので、そのくせが染み付いてしまっていたんですが、今度はフランスで活躍している大女優。やっぱり身振り・手振りが出てくる方がいいかな、と。そのあたりももう少し自然に出来るようにならないと、と思っているところです。かといって、"鼻持ちならない大女優" ではない。難しいですね(笑)。苦労しながらやっています」


―― マタ・ハリという女性は、今、どんな女性だと思ってますか。

「あの時代を生き抜くには、そうしかないよな......って感じがします。昨日、マタ・ハリの実際のバレエの映像を観ていたんです。生きるために、ああいうスタイルのダンスになっていったんだな、って思います。オランダ生まれだけど、ジャワで現地の踊りを見て、そしてパリに行った時に「何だったらウケるのか、何だったらパリで生きていけるのか」をすごく考えて、あの踊りに行き着いた。元々のスター性で有名になっていた人ではない、というところにグッときます。だからこそ、きちんとパトロンにはお礼のカードを出したり、舞台の上だけでないフォローもしている。自分の力で生きている女性、という感じがすごくします」


―― 石丸さんに言われた言葉で印象的だったものがあれば、教えてください。

「彼女はとても生きようとする思いが強い。いたるところで、生きること、戦うことへの覚悟を歌います。それがなぜかというと、パリに出てくるまで、戦わずに失ったものがたくさんあったから。だから今度こそは自分の力で掴んだものを絶対に離さない。単に、もともと生命力のある人だということではない、「もう絶対にあんな思いはしたくない」という後悔から来ていると思う......そのあたりのアドバイスも、とても感動しました。そこをきちんと実感のあるものとしてやっていけたら、説得力のあるマタ・ハリになると思います」
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―― ところで、マタ・ハリというとやはり官能的なダンスのイメージがあります。この役のオファーがあったときに、戸惑いはありませんでしたか?

「そうなんですよね。私も韓国でオク・ジュヒョンさんのマタ・ハリを拝見した時「とっても色っぽくて、すごい~!」と思って、自分がやるなんて考えられませんでした(笑)。ただ、歴史上の人物って、まわりの人は色々なことを言うけれど、真実はそうではない、ということもたくさんあるかと思います。それを見つけてみたいなという興味が、マタ・ハリにも湧きました。マタ・ハリはストリッパーとか娼婦とか言われることもありますが、彼女がなぜ踊っていたのか、その真実を見つけたら、マタ・ハリの正義があるんじゃないかと思って、自分で色々調べたんです。そうしたら、やっぱり表面で語られているだけではない人物だった。一方で、あの時代を女がひとりで生き抜くには、パトロンに甘えてみたりと、必要なこともあった。綺麗ごとだけじゃないところも素敵だなと思って......。マタ・ハリのことがすっごく好きになっていたんです」


―― 熱いですね! 柚希さんがマタ・ハリのことが好きだというのが伝わってきました(笑)。同じ時代にいたら、お友達になりたい感じですか?

「いや、でも彼女は、女友だちを作らなそう(笑)。アンナ(和音美桜さん)とも友だちではないと思うんです」


―― マタ・ハリとアンナの関係性も素敵ですね。

「マタとアンナの関係性も、石丸さんが「私たちのものを作ろう」と仰ってくださったんです。アンナはマタにとって一番近しい存在で、自分のことを全部わかってくれるという信頼関係があるけれど、「お茶をしに行こう」という仲ではない。さらに今回、日本版で私たちが作り上げたふたりの関係性では、アンナも旦那さんの暴力で苦しんでいて、そこでマタ・ハリが「私の衣裳係にならないか」と声をかけた、という設定にしています。ちょっと恩人のようなところもあり、単なる仲良しではないんです。でも私も、そういう関係性ってすごくよくわかります。自分にとっても、マネージャーさんやスタッフさんって、私のことを一番わかってくれている人たち。でも、ただ単に "人間として好き" じゃ絶対に成立しない。一番は仕事が出来てくれないと。それは大事なことだと思います」


―― そして『マタ・ハリ』といえば音楽も見どころです。

「どの歌も、音楽にすでにドラマがあって、きっちりその歌に乗れば感情や思いが伝わります。といっても、芝居だけで歌おうとしてもダメだし、歌だけでやろうとしてもダメなところが難しいんですが。毎回反省することがありつつ、どの曲も本当に好きで、この音楽を歌えるだけですごく嬉しいので......頑張ります(笑)」
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―― 今回の『マタ・ハリ』、柚希さんがとてもナチュラルにマタ・ハリになっていて、柚希さんにとって女優さんとしてのターニングポイントになるのでは、と本当に思っています。ご自身では手応えのほどはいかがですか。

「もともと、大きなミュージカルであればあるほど、ストレートプレイのような中身がないといけないと思って、そのナチュラルさは宝塚時代から追求している点でした。ただ今回、演出の石丸さんがもともとストレートプレイをたくさん手がけている方ですし、ものすごくリアルなものでないと "ミュージカルの恥ずかしさ" みたいなものが出てきてしまうということをよくわかって、演出をしてくださっています。私も柚希礼音ではなくマタ・ハリにしか見えないというものを作り上げたいと思っています」


―― その柚希版マタ・ハリ、ここを見てほしいというものがあれば、お願いします。

「マタ・ハリは強い女性ですが、アルマンとの出会いによって、さらに強くなります。石丸さんは、その愛は柔らかいものなのに、彼女がずっとひた隠しにしてきた過去を再び開き、それを乗り越える力が持てたのは、その柔らかく温かいものを得たからだということを、すごく仰る。そこを大切にしながら、"とても強いけれど、とても弱い人" であるマタ・ハリ、思い切り勇敢に人生と戦ったマタ・ハリを生きたい。「色々言われているけれど、本当のマタ・ハリはこういう人だったのかも」と思ってもらえるように、マタ・ハリの人生を生きたいと思います!」

取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:源賀津己
 


【『マタ・ハリ』連載バックナンバー】
#1 顔合わせレポート
#2 芝居読み稽古レポート
#3 稽古場レポートその1
#4 演出家・石丸さち子に訊く
#5 ラドゥー/アルマンの2役に挑む! 加藤和樹インタビュー
#6 ピエール役、西川大貴インタビュー
#7 ピエール役、百名ヒロキ インタビュー
#8 稽古場レポートその2
#9 ヴォン・ビッシング役、福井晶一インタビュー
#10 パンルヴェ役、栗原英雄インタビュー
#11 アンナ役、和音美桜インタビュー
#12 アルマン役、東啓介インタビュー
#13 ラドゥー役、佐藤隆紀インタビュー


【公演情報】
・1月21日(日)~28日(日) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
・2月3日(土)~18日(日) 東京国際フォーラム ホールC

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