4月に東京・東京芸術劇場シアターウエストと大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ51)』。
2015年にウエストエンドで上演された話題作の日本初演で、板谷由夏さん、神尾佑さん、矢崎広さん、宮崎秋人さん、橋本淳さん、中村亀鶴さんが出演する六人芝居。「世紀の大発見」とも言われる"DNAの二重らせん構造"の発見に貢献した女性科学者ロザリンド・フランクリンの姿を描きます。演出は、サラナ・ラパインさん。今、ブロードウエイでも注目を浴びる女性演出家です。
げきぴあでは、そのリーディング現場に潜入。※残念ながら中村亀鶴さんは公演中のために欠席
今回はそのレポート第二弾です!
作品の概要&第一弾はこちらをご覧ください!
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さてさて......一度、休憩を挟んでリーディングは続きます。
▲。台詞に引っかかるとサラナさんが「今のは大丈夫?」「疑問を逃したくない」とチェック。海外の戯曲ならではの、文化や歴史的背景の違いから生まれる疑問も、一つひとつ丁寧に説明してくれます。キャストも積極的に質問し、開かれたムードが素敵でした。
▲ロザリンドの助手のレイ・ゴスリングを演じる矢崎広さん。
博士課程の学生であり科学者でもある20代のイギリス人で、親しみやすいが少し不器用という役どころ。板谷さん演じるロザリンドと神谷さん演じるウィルキンズの板挟みになりながら、うま~く空気を和ませる調整役です。正直、台本を読んだときにどんな雰囲気の芝居になるのか一番想像しにくかったのがこのゴスリングでしたが、矢崎さんが台詞を喋って納得!出演者はもちろん日本語がわからないサラナさんも大笑いする魅力的な人物でした。ストーリーテラー的な役割を担うこともあり、そのふり幅の大きさも、さすがです!
▲アメリカ人科学者のジェームス・ワトソンを演じる宮崎秋人さん。
20代前半、自信とハングリー精神あふれる若手研究者という役どころで、中村さん演じるクリックと協力して、ロザリンドと競い合う立場でもあります。"アメリカ人"という、ロザリンドたち(イギリス人)とは違う、もっと自由な文化で生きている、野心溢れるくせもので、宮崎さんはそこを自身のリアルな若さも利用しながら演じていた印象です。チャラッとした軽さ、きつめの言葉、足りない経験値とありあまる行動力が、この物語を大きく動かしていきます。
ちなみに、矢崎さん演じるゴスリングや宮崎さん演じるワトソンは若く新しい時代を生きているので、【その1】で解説したウィルキンズほどは女性科学者に対する偏見はありません。ただ、そうやってロザリンドの仕事の素晴らしさを素直に受け止めつつも、それでも「でも女だよね」という見方も持っている。その中で研究をやり抜くロザリンドの強さを感じさせられます。
▲ユダヤ系アメリカ人科学者のドン・キャスパーを演じる橋本淳さん。
外交的で愛想がよく誠実で、ロザリンドを尊敬し慕っている若手研究者です。物語の中でキャスパーは、他の男性科学者とはどこか違う感受性や温度を持った人物という印象。ロザリンドとの交流は「研究に力を貸してほしい」という旨の手紙のやりとりから生まれるのですが、その専門用語たっぷりの文面にロマンチックが滲み出る"理系ラブレター"は、橋本さんの朗読も含め、ぜひとも注目してほしいです!
劇中では、何人かの恋心も描かれます。研究に打ち込む科学者たちの不器用な恋は本当に見ていて「うっ」と胸を押さえたくなる瞬間がたくさんあります!ただしそれは"いろどり"というようなものではなく、マーブル模様のように夢や野心や恋が絡み合う人生の一つの重要な要素として描かれているので、そのあたりもぜひ注目していただきたいです。
▲最後の最後まで丁寧に確認しながら進められた初のリーディング。最後には自然と拍手が沸き起こりました!
科学の話ですが、観劇に科学の知識はいりません。描いているのは"人間"。ここに登場する6人が、それぞれにどう影響を与え合い、なにを選び、どう生きていくか、そしてなにを悔やむのか...そんな生々しい人間の姿が突き刺さる作品だと感じました。リーディングの段階で「ぜひ劇場でご覧いただきいたい!」と言いたくなる現場でした。
【その3】では、リーディング直後の矢崎さんと宮崎さんに直撃します!
公演は4月6日(金)から22日(日)まで東京・東京芸術劇場 シアターウエスト、4月25日(水)・26日(木)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。
(ライター:中川實穗/カメラマン:川野結李歌)