■見なきゃ損!話題の公演■
優れたクリエイターは、野性的な直感が発達している。蜷川幸雄がまさにそう。プロデューサーや劇場から「この作品をやりませんか?」と提案される形で演出した作品も、あとから軌跡をたどると、コンセプトが浮かび上がる1本の線でつながっていたりする。
間もなく幕が開く、さいたまネクスト・シアターの第2回公演『美しきものの伝説』。この作品もまた、劇場サイドから提案された部分も大きいが、この4~5年の蜷川ワークスの軸上に見事に乗っている。それは、ネクストから先んじること3年、同じ彩の国さいたま芸術劇場がスタートさせた中高年の演劇集団、さいたまゴールド・シアターの歩みと照らし合わせるとはっきり見えてくる。
若手の俳優を育成することを目的に設立されたネクストは、高齢者の演劇集団として立ち上げられたゴールドと対の存在。ゴールドといえば、今年9月の『聖地』が新進気鋭の松井周、その前がケラリーノ・サンドロヴィッチ、第1回公演は岩松了と、現代演劇界の先端を担う人気劇作家が新作を書き下ろしている。それに対してネクストは、ちょうど1年前の第1回公演が、福田善之が62年に発表した『真田風雲録』。そして今回の『美しきものの伝説』は68年に発表された宮本研の戯曲と、現代演劇ではあるが、メンバーは生まれてもいない時代のもの。しかもどちらも、日本の激動の歴史を題材にした作品だ。