ミュージカルをはじめ、歌手、女優として活躍する神田沙也加。2006年の初演以来、再演を重ねる人気ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』では「長年目標にしてきた」という、ヒロイン、サラ役を射止めた。念願が叶った今、改めて作品への思いを聞いた。
「私だったらどの役をやりたいか、と常に考えながらミュージカルを見るのがクセなんです。サラは、初演や再演のときもそういう目で見ていて、すでに役の構想だけは膨らんでいました(笑)。また、最初はゴシック調で、最後はお祭り騒ぎになる客席参加型の作品の魅力にも取りつかれたんです」
ミュージカル『エリザベート』で知られるミヒャエル・クンツェが脚本・歌詞を担当する作品は、ヴァンパイアの故郷、トランシルヴァニアが舞台だ。ヴァンパイアの研究者の老教授とその助手のアルフレート、彼らが滞在する宿屋の娘、サラたちがヴァンパイアと出会い、その世界にひかれ、巻き込まれていく。稽古に入った今、「長年夢見てきた舞台の答え合わせをしているような段階。外の世界に憧れるヒロインはか弱いイメージですが、私が思っていた以上にサラは我も芯も強い。可憐さと危なっかしさと強さが同居していて、そのバランスが絶妙なんです」。
アルフレート(平方元基、良知真次のWキャスト)と、ヴァンパイアのクロロック伯爵(山口祐一郎)もサラに魅了されていく。「自分が無知な状態のときは、知識や経験が豊富な人と話してみたいし、教わりたい。私もそういう面があるので、断然、サラと同じで伯爵についていきます! アルフレートは子どもすぎて(笑)。それに、クロロックを演じているときの山口さんが昔から大好きなんです。今回、さらに迫力となまめかしさが増幅されたと思います」
Wキャストで舞羽美海もサラ役を演じる。「努力家でとてもストイック。美海ちゃんをはじめ、アルフレート役の元基君、良知君とは同世代で、初めて会った気がしないほど皆、仲がいい。もし、大きな枠があったとしても、皆でそれをはみ出すぐらいにフレッシュで躍動感のある舞台になると思います」
昨年音楽ユニット『TRUSTRICK』を結成。「女優と歌手で頭の切り替えが大変ですが、毎日すごく充実しています」。歌手として見ても、壮大でロックテイストあふれる今作の楽曲は、「すごく歌いやすくて日本人の心に刺さる旋律」だという。「息まじりだったり、キラキラした気持ちや困惑をどう声にのせるかだったり、歌声には多彩な表現法があるので、とにかく声の質感を大切に整えたい。それが私の武器にもなると思うんです」
公演は11月3日(火・祝)から30日(月)まで東京・帝国劇場、2016年1月2日(土)から11日(月・祝)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、1月15日(金)から17日(日)まで愛知・愛知県芸術劇場 大ホールにて上演。チケットは発売中。
取材・文:米満ゆうこ
撮影:福家信哉
大人気マンガを原作に、2009年から昨年までにシリーズ4公演を上演してきたミュージカル『黒執事』。原作の持つ耽美で怪しい世界観を忠実に再現し、人気を博す舞台が、今回、古川雄大を主演に迎えて上演される。演目は、昨年上演された"地に燃えるリコリス"。コミックス初期シリーズの中でも特に人気の高い「赤執事編」を舞台化したもので、古川をはじめとする新キャスト、新演出、新たな楽曲で見せる。
同シリーズを2度観たことがあるという古川も、その世界観に魅了されたひとりだ。「原作もアニメも見たことがなかったので、漠然としたイメージしか持っていなかったのですが、舞台を観たときに、スッとその世界に入り込んで没頭することができたんです。ふと"あれ?ここどこだっけ?"って思うような、ミステリアスで、エロティックな世界観で...、それでいてコミカルなところもある。すごく丁寧に、忠実に作られているなと思いました」と、その印象を語る。
シリーズ化もされ、好評を得てきた舞台への主演。大役を任された古川だが、プレッシャーを感じるどころか、前向きに捉えている。「劇場も作品も大きいので普段ならプレッシャーを感じるはずなんですが、"よし、やってやろう!"という気持ちになりましたね。多分、自分の中で目指すところが明確になってきたというのもありますし、いろんな舞台を踏んでステップアップできているのだと思います」
漫画やアニメを原作にした"2.5次元"の舞台はミュージカル『テニスの王子様』で経験済み。表現するうえでは「多少の違和感を意識して演じることが大事」と語る。「映像や現代劇はナチュラルに見せることで観る人がスッと入り込めると思うのですが、漫画を原作にした舞台は、その世界を再現するために、声の出し方とかも意識しないといけない。普通ならちょっと違和感のあることも沁み込ませて見せたいと思っています」
演じるのは、悪魔の正体を持つ万能執事・セバスチャン。2代目セバスチャンとしての意気込みは...。「前回までと別物を作りたいとは思いますが、それを意識して作るのではなく、自分が感じたままに作った結果、"別物のセバスチャンだね"って言われたいですね。メンバーも続投する方がいるので心強いとは思いますが、再演ではなく"新生"として、みんなで新しい作品を作っていきたいと思っています。変化を感じていただける舞台にしたいですね」
公演は、11月7日(土)から10日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。その後、宮城、東京、福岡でも上演される。チケットはいずれも発売中。
取材・文:黒石悦子
撮影:木村正史
新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」が10月30日から新国立劇場で上演される。バレエダンサーの小野絢子に見どころを語ってもらい、さらに稽古場を案内してもらった。
バレエ「ホフマン物語」は振付家ピーター・ダレルの大傑作と言われる作品。壮年を迎えた主人公のホフマンが、若かりし頃の恋の話を回想していくという形式で、3人の女性との恋の話がバレエで展開される物語だ。ストーリーがわかりやすく演劇的なため「ドラマティックバレエ」とも称される本作の魅力はどんなところにあるのか? 新国立劇場バレエ団のプリンシパルで、日本を代表するバレエダンサーのひとりである小野絢子に伺ってきた。【動画6分】
――ホフマン物語について
小野絢子(ダンサー/アントニア役)
「ホフマン物語はフランスのオペラで有名なものなんですけども、それを振付家のピーター・ダレルがバレエにしたものです。最初の場所の設定は19世紀のドイツで、50~60代くらいのホフマンという詩人が恋人の到着を待っている間に、街の人にせがまれて、若かりし頃の3人の女性との恋愛遍歴を語っていく物語です。」
「私がやらせて頂くアントニアという女の子は、とても心臓が弱くて病弱で、本当は踊ったり過度な運動をしてはいけない子なんですけども、バレリーナを夢見ている女の子なんです。そこにドクター・ミラクルというキーパーソンが登場して、彼に催眠術をかけられてしまうんです。心臓は全く良くなってバレリーナになれる夢を見させてくれるんですね。ホフマンにピアノを弾いてくれとせがみ、私は治ったのよと踊り狂ってしまうので、最後は悲劇的な結末になってしまうんです。」
――ドラマティックバレエとは?
「本来はおそらくドラマティックバレエという用語はないのですが、見せるものの主がバレエなのではなく、ドラマの要素を主において、ドラマを見せるためにバレエがある。もちろん感情や言葉を伝えるためにはテクニックは必要なんですが、テクニックそのものを見せるようになってはいけない。例えば今日私はソロのところで『形になり過ぎている』というダメ出しを受けたりしました。『踊りはあくまでせりふと一緒』ということだと思いますね。」
小野絢子へのインタビュー取材をした後に、休憩中の共演者のところに案内してもらい、さらに4人のダンサーからもそれぞれの視点で「ホフマン物語」の魅力について語ってもらった。
最初にアントニア、ジュリエッタの2役を務めるダンサーの米沢唯に話を聞いた。
米沢 唯(ダンサー/アントニア役・ジュリエッタ役)
「音楽が全幕通して素晴らしいです。私は一幕は出てませんが、一幕のお人形の踊りはオペラでも素晴らしいんです。音楽が流れると『ああ、いいな』と思うし、自分が踊る三幕の舟歌は昔から好きな曲だったので、踊れることがすごく嬉しいです。
三幕ともすごくドラマが動いていって、飽きさせない。ストーリーがスピーディーに動いていくので見ごたえがあると思います。」
――小野さんと同じアントニア役をWキャストで演じますね
小野絢子
「今回は特に役作りに関しては話合ってるよね。」
米沢 唯
「踊りも一幕を練習している間、私たちはヒマだったりするので、この稽古場に来て絢子さんと『こうやってやるといいかな』と、二人で話して研究しています。」
小野絢子
「では、次はホフマン役をトリプルキャストで演じる3人に聞いてみましょう!」
福岡雄大(ダンサー/ホフマン役)
「50代から始まって、20代、30代、...50代と年齢が変わっていくので、踊りの切り替えとかが難しいかなと思っています。」
菅野英男(ダンサー/ホフマン役)
「二幕はクラシックっていう感じだけど、一幕と三幕はコメディチックな要素も入ったりとか、人間のドロドロしたものが出てきたりとか。そういう意味でそれぞれの幕でカラーが違うから楽しめる作品だと思います。」
井澤 駿(ダンサー/ホフマン役)
「三幕に関しては『十字架を切って改心したにも関わらず、誘惑に負けそうなホフマン』っていうのがすごく人間らしいというか。最終的に後悔で終わるっていうのも人間らしいですよね。」
――バレエ鑑賞の初心者でも楽しめそうですか?
福岡雄大
「すごく分かりやすい作品なので、演劇を観ているような感覚だと思います。」
小野絢子
「ザ・クラシックバレエっていうのはバレエの形を知らなきゃいけないこともあるよね。ここで拍手をするとか、ここはこういう場面だとかっていう決まりがあるけれども、このバレエ「ホフマン物語」はそういうのを知らなくてもお話を楽しめるよね。」
福岡雄大
「確かに、初めてバレエを観る人でも受け入れやすいオススメの作品ですよね。」
菅野英男
「マイムとかが理解できていなくても、『ああ、こういう関係性なんだな』というのがわかりやすいもんね。」
ダンサーの方々が口々に言っていた通り、稽古を観ていた時に、どんなシーンを踊っているのかなんとなく伝わってきた。私は普段演劇ばかりを観ていて本格的なバレエを観に行くのは躊躇していたが、どうやら本作は楽しんで観られそうだ。
ドラマティック、つまり演劇的なバレエである本作で、バレエ鑑賞デビューしてみてはいかがだろうか?
公演は10月30日(金)から11月3日(火・祝)まで、新国立劇場 オペラパレスで上演。
(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)
脚本家・演出家として活躍する、末満健一の代表作とも言える『TRUMP』が今年11月に上演される。
描かれるのは、若き吸血種「ヴァンプ」たちの生と死と永遠を巡る、閉じない円環の物語。2009年に初演、2013年にはD2(現D-BOYS)によるDステ12th公演として上演。2014年には世界を同じくする『LILIUM』、今年6月には『SPECTER』が上演されてなお、その全貌は未だ明かされず、観る者を魅了し続ける作品だ。
『TRUMP』の配役は実に独特。対となる役が入れ替わる「TRUTH」と「REVERSE」の2バージョンとともに、稽古を経て配役が決まる「MARBLE」が上演される。
新たな座組で届けられる本作に、2013年の公演から唯一、続投。物語の要となるクラウスとアレンを演じる、陳内将 に話を聞いた。
ウエスト・エンドでは史上最年少の28歳で『オペラ座の怪人』の主役に抜擢、その後続編の『ラブ・ネバー・ダイズ』では主人公ファントムをオリジナルキャストとして演じ、さらには全世界のミュージカルファンの注目を集めた、たった2日間のみのプレミアム公演『オペラ座の怪人 25周年記念ロンドン公演』でも主演を務めた伝説のファントム役者である。
★ ラミン・カリムルー INTERVIEW ★