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物語の主人公は、インドシナ駐在を命じられたフランスの若きエリート海軍将校シャルル。"舞音(マノン)"と呼ばれる美少女の踊り子と出会い、深い愛におぼれていく様が独立運動と絡めて描かれていく。アジアンな舞台美術、アオザイなどの衣装、弦楽器が心地良く響く音楽、ゆったりと舞うような振付...。そのすべてがどこか郷愁を感じるような、エキゾチックなムードのステージで、これまでの宝塚歌劇ではあまり見られなかった雰囲気に引き込まれていく。
男役トップスター・龍真咲(りゅう・まさき)は、マノンに魅せられ、翻弄されていくシャルルを観る側も苦しくなるほどに、情感豊かに熱く演じていく。また、そのマノンを演じる娘役トップスター・愛希(まなき)れいかは、長い黒髪で少女でありながら男たちを翻弄する蠱惑的なヒロインを妖艶に演じる。美しくも時に愛らしさを見せ、"富裕層の男たちの心を捉える"という役どころをしっかりと掴んでいる。支配するフランス側のシャルルと、支配されるインドシナ側のマノン。ふたりが紡ごうとする愛に、珠城(たまき)りょう演じるマノンの兄クオン、凪七瑠海(なぎな・るうみ)演じるシャルルの親友でフランス軍人のクリストフらが絡み、ドラマチックに展開。さらに専科・星条海斗(せいじょう・かいと)が、キレ者の警察長官ギョーム役で空気をピリッと締め、シャルルの心を表す存在として立つ美弥(みや)るりかもほぼ言葉を発さない"影"の役を、その佇まいや踊りで魅せている。ふたりの愛が行きつく先...、美しく幻想的なラストシーンが胸に響いた。
第二幕のショー『GOLDEN JAZZ』は、マーチングバンドの演出で、ノンストップのカーニバルが開幕。スターが次々と歌い継ぎ、華やかに熱く歌い踊る。クラブをイメージしたシーン、『Sing Sing Sing』の中詰め、客席へのサプライズ演出など、龍をはじめ、それぞれの見どころが散りばめられ、時に熱く、時にクールに色とりどりのシーンが展開していく。個性あふれるメンバーの力、そしてそれらが一つになったときのパワーに圧倒されるはず。
兵庫・宝塚大劇場公演は12月14日(月)まで。また、2016年1月3日(日) ~ 2月14日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは11月29日(日)より一般発売開始。チケットぴあでは東京公演のWEB先行抽選「プレリザーブ」を11月20日(金) 11:00~11月25日(水) 11:00まで受付。
取材・文:黒石悦子
1983年、東京・西新宿のテント式仮設劇場で初演されたミュージカル『キャッツ』。大阪には1985年3月に初登場し、国内2番目の上演地として西梅田に仮設劇場「キャッツ・シアター」を設置して上演。当時の代表・浅利慶太が「大阪で3ヵ月しかもたなかったら、劇団四季は大阪で解散する」と断言し、結果、東京を抜く13ヵ月のロングラン記録を達成した。
チケットは2016年4月発売予定。
取材・文:黒石悦子
"昭和の金字塔" 三島由紀夫作「近代能楽集」が、マキノノゾミ(作・演出)×野村萬斎(企画・監修)のタッグにより平成の世に甦る。
ネットカフェを舞台に、現実と幻想が折り重なる現代の『綺譚』が幕を開ける―。
世田谷パブリックシアター芸術監督・野村萬斎が古典の知恵と洗練を現代の舞台創造に還元すべく立ち上げた「現代能楽集」シリーズの最新作、現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』が11月8日(日)世田谷パブリックシアター(三軒茶屋)にて初日を迎えました。
初日を終えた演出家とキャストから取って出しのコメントが到着!!
(左から水田航生、眞島秀和、平岡祐太)
《 初日コメント 》
◆マキノノゾミ(作・演出)
初日はいつでも怖いのですが、今日は特別に緊張しました。上演中は祈るような気持ちでしたが、長い拍手をいただきまして、良い初日を迎えられて大変嬉しかったです。本作は言葉で語る芝居ですので、ストレートに、自分がいつも向き合っているテーマ「幸せとは何か」について書きました。誰かの幸せな瞬間、肩の荷を下ろす瞬間が見たくて芝居を作り続けているのだと改めて思いました。『近代能楽集』と読み比べていただけると、僕の苦心の跡が良くお分かりいただけると思います。
◆平岡祐太
キーチ(深草貴一郎/俳優)役
稽古場と、お客様の前で演じるのとは全く違いました。意図していないところでも、お客様は色々なものを受け取られたり、笑ってくださって、新しい発見がありました。僕は、冒頭からお客様を別の世界へと誘う役どころなので、回を重ねるごとにより一層つかめてくるのではないかと思います。観念的な世界観を味わいつつ、楽しんでいただければと思います。ぜひ、観に来てください。
◆倉科カナ
少女(ユヤ)役
舞台はお客様の反応も入って完成しますので、マキノさんが戯曲で伝えたかった世界観が、本日、少し完成に近づいたのではと思います。私は現実世界の少女ユヤと、「生きる美術品」として成長した女性ユヤの2役を演じるのですが、身体や声色で微妙な差異を出すのが難しいです。舞台は苦しんだ分だけ、成長できる場だと思いますし、とてもやりがいを感じます。
新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」が10月30日から新国立劇場で上演される。バレエダンサーの小野絢子に見どころを語ってもらい、さらに稽古場を案内してもらった。
バレエ「ホフマン物語」は振付家ピーター・ダレルの大傑作と言われる作品。壮年を迎えた主人公のホフマンが、若かりし頃の恋の話を回想していくという形式で、3人の女性との恋の話がバレエで展開される物語だ。ストーリーがわかりやすく演劇的なため「ドラマティックバレエ」とも称される本作の魅力はどんなところにあるのか? 新国立劇場バレエ団のプリンシパルで、日本を代表するバレエダンサーのひとりである小野絢子に伺ってきた。【動画6分】
――ホフマン物語について
小野絢子(ダンサー/アントニア役)
「ホフマン物語はフランスのオペラで有名なものなんですけども、それを振付家のピーター・ダレルがバレエにしたものです。最初の場所の設定は19世紀のドイツで、50~60代くらいのホフマンという詩人が恋人の到着を待っている間に、街の人にせがまれて、若かりし頃の3人の女性との恋愛遍歴を語っていく物語です。」
「私がやらせて頂くアントニアという女の子は、とても心臓が弱くて病弱で、本当は踊ったり過度な運動をしてはいけない子なんですけども、バレリーナを夢見ている女の子なんです。そこにドクター・ミラクルというキーパーソンが登場して、彼に催眠術をかけられてしまうんです。心臓は全く良くなってバレリーナになれる夢を見させてくれるんですね。ホフマンにピアノを弾いてくれとせがみ、私は治ったのよと踊り狂ってしまうので、最後は悲劇的な結末になってしまうんです。」
――ドラマティックバレエとは?
「本来はおそらくドラマティックバレエという用語はないのですが、見せるものの主がバレエなのではなく、ドラマの要素を主において、ドラマを見せるためにバレエがある。もちろん感情や言葉を伝えるためにはテクニックは必要なんですが、テクニックそのものを見せるようになってはいけない。例えば今日私はソロのところで『形になり過ぎている』というダメ出しを受けたりしました。『踊りはあくまでせりふと一緒』ということだと思いますね。」
小野絢子へのインタビュー取材をした後に、休憩中の共演者のところに案内してもらい、さらに4人のダンサーからもそれぞれの視点で「ホフマン物語」の魅力について語ってもらった。
最初にアントニア、ジュリエッタの2役を務めるダンサーの米沢唯に話を聞いた。
米沢 唯(ダンサー/アントニア役・ジュリエッタ役)
「音楽が全幕通して素晴らしいです。私は一幕は出てませんが、一幕のお人形の踊りはオペラでも素晴らしいんです。音楽が流れると『ああ、いいな』と思うし、自分が踊る三幕の舟歌は昔から好きな曲だったので、踊れることがすごく嬉しいです。
三幕ともすごくドラマが動いていって、飽きさせない。ストーリーがスピーディーに動いていくので見ごたえがあると思います。」
――小野さんと同じアントニア役をWキャストで演じますね
小野絢子
「今回は特に役作りに関しては話合ってるよね。」
米沢 唯
「踊りも一幕を練習している間、私たちはヒマだったりするので、この稽古場に来て絢子さんと『こうやってやるといいかな』と、二人で話して研究しています。」
小野絢子
「では、次はホフマン役をトリプルキャストで演じる3人に聞いてみましょう!」
福岡雄大(ダンサー/ホフマン役)
「50代から始まって、20代、30代、...50代と年齢が変わっていくので、踊りの切り替えとかが難しいかなと思っています。」
菅野英男(ダンサー/ホフマン役)
「二幕はクラシックっていう感じだけど、一幕と三幕はコメディチックな要素も入ったりとか、人間のドロドロしたものが出てきたりとか。そういう意味でそれぞれの幕でカラーが違うから楽しめる作品だと思います。」
井澤 駿(ダンサー/ホフマン役)
「三幕に関しては『十字架を切って改心したにも関わらず、誘惑に負けそうなホフマン』っていうのがすごく人間らしいというか。最終的に後悔で終わるっていうのも人間らしいですよね。」
――バレエ鑑賞の初心者でも楽しめそうですか?
福岡雄大
「すごく分かりやすい作品なので、演劇を観ているような感覚だと思います。」
小野絢子
「ザ・クラシックバレエっていうのはバレエの形を知らなきゃいけないこともあるよね。ここで拍手をするとか、ここはこういう場面だとかっていう決まりがあるけれども、このバレエ「ホフマン物語」はそういうのを知らなくてもお話を楽しめるよね。」
福岡雄大
「確かに、初めてバレエを観る人でも受け入れやすいオススメの作品ですよね。」
菅野英男
「マイムとかが理解できていなくても、『ああ、こういう関係性なんだな』というのがわかりやすいもんね。」
ダンサーの方々が口々に言っていた通り、稽古を観ていた時に、どんなシーンを踊っているのかなんとなく伝わってきた。私は普段演劇ばかりを観ていて本格的なバレエを観に行くのは躊躇していたが、どうやら本作は楽しんで観られそうだ。
ドラマティック、つまり演劇的なバレエである本作で、バレエ鑑賞デビューしてみてはいかがだろうか?
公演は10月30日(金)から11月3日(火・祝)まで、新国立劇場 オペラパレスで上演。
(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)