ミュージカル『グランドホテル』#12 公開稽古レポート

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■ミュージカル『グランドホテル』vol.12■


1920年代のベルリンの豪華なグランドホテルを舞台に、様々な事情を持った人たちのドラマが交錯する――。
名作ミュージカル『グランドホテル』が、英国の鬼才トム・サザーランドと、日本の才能ある俳優たちによって蘇ります。

キャストインタビューや顔合わせ取材など、様々な角度で本作を追っている当連載ですが、今回は、3月8日に行われた、公開稽古の詳細レポートをお届けします!
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先に出したニュース記事はコチラ→

物語は、1920年代の大都市ベルリンを舞台に、華やかな「グランドホテル」に集う境遇の異なる人々が織りなす人間ドラマ。
ホテルという場所で、様々な人々が出会い、別れ、時にすれ違う、群像劇です。
物語上まったくドラマが交差しない人々もいて、そこはまさに"群像劇"=〈グランドホテル方式〉の基礎を作ったと言われる作品なんです。

今回は〈GREEN〉〈RED〉の2チーム制で上演され、それぞれのチームで結末も異なる...ということが、注目されていますが、この日、その「ふたつの結末」の具体的なところも、明かされました。

〈GREEN team〉出演:中川晃教/他
...悲劇的エンディング
華やかな時代からナチス台頭の足音が忍び寄り、グランドホテルの登場人物たちもまた、死と隣り合わせの運命が待ち受けている。悲劇的結末を暗示する...

〈RED team〉出演:成河/他
...ハッピーエンディング
人生の意味を見出したオットーは、フレムシェンと共に旅立つ。再び情熱を取り戻したグルシンスカヤは嬉々として次の公演地へ。それぞれが希望ある未来に向けてホテルを後にする...


こちらが、演出のトム・サザーランドさん。
先日には、トムさんがイギリスで上演した『グランドホテル』が、英国演劇界で栄誉ある賞「2016年オフ・ウエストエンド・シアター・アワード」の最優秀ミュージカル作品賞と最優秀振付賞を受賞したばかりです!
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稽古に入る前、トムさんより解説がありました。

「原作はヴィッキー・バウムによる同名小説です。それまでの小説というものは、ひとり、ないしはふたりの主人公がいて、その主人公たちをめぐるお話を描くものでしたが、彼女は新しい小説の技法を確立しました。ストーリーの中にはとてもたくさんの登場人物がいて、キャラクターによっては作品の中で出会うことすらない、そんなキャラクターもいます。共通項は、みんな、グランドホテルにいるということ。その物語の中で、それぞれの登場人物の人生があぶりだされます。

そしてこれはヴィッキー・バウムがその頃過ごしていたベルリンという場所、時代を描いたもの。不穏な時代であり、変革を待っている時代です。変革がどの方向に行くかということは、後々歴史が語りますが、その時は誰もわからない。英語での表現ですが、「踊り狂ったその先に戦争がある」...1929年当時のドイツはそんな時代です。

そして、ひとつこのミュージカルの中で明らかにされていることは、「持てるものと持たざる者がいる」ということ。その頃のベルリンでは、持てる者たちが、力ずくで自分たちが優れているというその立場をもぎ取っていた。ヴィッキー・バウムはユダヤ系の女性で、小説を書いたその年にベルリンを離れ、アメリカに逃亡します。その後、作品は有名な映画となり、さらに1989年にはブロードウェイでトニー賞を受賞するくらい素晴らしいミュージカルが誕生しました。このミュージカルの革新性というものは、最初の小説の革新性と同じくらいのものでした。そして今回、日本でこの作品を上演しますが、皆さんが「舞台作品はこういうものだろう」と思っている、その限界をぐっと超える作品にすることを目標にしています。それは『グランドホテル』という作品が、常に成し遂げてきた道です」


また、前述の「ふたつの結末」についての説明も。

「今回はふたつのまったく異なるバージョンをお見せしたいと思っています。それは先ほど申し上げた、「持てる者と持たざる者がいる」ということがヒントになっています。同じ音楽で、同じ脚本です。その同じ脚本と音楽を、キャストの皆さんがその公演ごと、違うチームでまったく違う作品にしていきます。
片方のバージョン(RED)は楽観主義、前向きにすべてのことがうまく収まるという方向で作られます。それはそれぞれのキャラクターが何か目指しているものがある、それを達成し、ゴールに辿りつき、そして幸せを手に入れる。
もうひとつのバージョン(GREEN)は歴史が物語っている、ベルリンの1920年代終盤から30年代にかけて起こることを示唆します。人々の中にある夢や希望は剥奪され、嫉妬、嫌悪といった感情がどんどん台頭していく。そして力ずくでものが進んでいく時代です。その前までは、リベラルな社会だったはずなのに...。

また結末だけが変わるのではなく、今回、ダブルで演じられる役どころがたくさんあります。この素晴らしく描かれたキャラクターたちは、その演じ手がその人なりに解釈し、その人なりに演じ、人物像を作ることができます。まったく同じ素材を使いつつ、今も稽古場では白熱した稽古をしていて、まったく違うバージョン、違うキャラクターが生まれつつあります。自分自身でも本当にここまで違うふたつのバージョンが出来るのかと、今興奮のさなかです。この作品の持つ素材の力、キャストの皆さんの素晴らしい力をぜひ本番で感じていただければ」


◆ 公開稽古レポート ◆


さて、この日披露されたのは幕開きのビッグ・ナンバー『グランド・パレード』。
それぞれの人物像と、抱えた事情が、ホテルの喧騒の中少しずつ見えてくる、まさにドラマがここから始まる感満載のナンバーです。

静寂の中、愛と死の化身...スペシャルダンサー、湖月わたるさん登場。
湖月さんが呼び鈴を鳴らし、物語が回転しだします。
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「グランドホテル、ベルリン。いつも変わらない。誰かが来て、誰かが去っていく...」と、グランドホテルで行き交う人々を眺めるオッテンシュラッグ医師が、登場人物を、少し毒気を混ぜながらシニカルに紹介していきます。
ちなみにトムさん曰く、オープニングである『グランド・パレード』のシーンは、もっとも2バージョンが似通ったところとのこと。
「この人たちにどういうことが待ち受けているのかというヒントや手がかりだけを示唆する。2チームには交差点のど真ん中にいます。その後、ひとチームには左側に、ひとチームには右側にいく...ここからまったく違う行き先を目指し、違う道筋を辿っていく」との解説も。
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確かに、動線は基本的に同じようです。
というか、ものすごく!! 複雑な動線です。
セリフがない場所でも、そこかしこで、ドラマが生まれていきます。
一度では絶対に追いきれないほど、描かれている情報量が多い!


重い病を患う元会計士、オットー・クリンゲライン
自分の貯金すべてを使い、人生最期の日々を豪華なグランドホテルで過ごそうとやってきました。
オッテンシュラッグ医師曰く「命を意味を探している」。

〈GREEN〉中川晃教さん、
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〈RED〉成河さん。
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若くハンサム、でも実は金が無くギャングによる借金の取り立てから逃げている貴族、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵。
〈GREEN〉宮原浩暢さん。
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〈RED〉伊礼彼方さんはこの日、別作品の本番中のためご不在でした。
男爵は、医師の紹介によると「盗人」「この世で一番使えないもの、それは文無しの色男」とかなり辛らつに言われています。


傾きかけた繊維工場の娘婿社長、ヘルマン・プライジングは、ふたりとも低音の魅力!
〈GREEN〉戸井勝海さん、
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〈RED〉吉原光夫さん。
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自信と野心に溢れた、若くて可愛いタイピスト、フレムシェンは
〈GREEN〉昆 夏美さん、
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〈RED〉真野恵里菜さん。
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フレムシェン、冒頭で衝撃の発言も!
「時間がないのよ!」...さて、何の時間がないのでしょう。

オットー&フレムシェン、〈GREEN〉〈RED〉の雰囲気の違いはこんなかんじ!
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引退間際のバレリーナ、エリザヴェータ・グルシンスカヤは、活躍してきた場は違えど、おふたりとも名ダンサー!
〈GREEN〉安寿ミラさん、
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〈RED〉草刈民代さん。
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医師曰く「引退ツアー公演の真っ最中、これで8度目」。うーん、皮肉。


そのエリザヴェータの献身的な付き人、ラファエラはこちらのおふたり。
〈GREEN〉樹里咲穂さん、
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〈RED〉土居裕子さん。
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エリザヴェータ&ラファエラの関係性も、それぞれのチームの色によって随分変わってきそうで、注目です。
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そして、登場人物を紹介しつつ、観客をぐぐっと物語世界へ誘っていくオッテンシュラッグ医師は、
〈GREEN〉光枝明彦さん、
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〈RED〉佐山陽規さん。
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繰り返しますが、本当に動線が複雑なんです。
椅子はもちろん、旅行鞄についたて(のようなもの)も動かし、しかも舞台後方ではセット自体も回転する。

〈GREENチーム〉
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〈REDチーム〉
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こんな振付もあったりして...。
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吉原さんを肩にかつぐ、藤岡さん...。
(バルジャンをかつぐ、マリウス...←違います)


さて、こちらはホテルの従業員サイドの皆さん。
彼ら彼女らも、なんだか早口のような非常に複雑なメロディを歌ってます!しかもひとりひとりが違うパートを...!すごい!
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その中で、出産中の妻を想っている若きアシスタント・コンシェルジュ、エリックは藤岡正明さん(GREEN&RED)。
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こちらは、劇中楽しいナンバーもある、アメリカ人エンターテイナー、ジミーズのおふたり(GREEN&RED)。
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味方良介さんと...
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木内健人さん。
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敏腕弁護士、ズィノヴィッツ役の大山真志さん(GREEN&RED)。
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こちらの方々も、意味ありげな表情をしていますねえ...。
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グルシンスカヤの引退興行を主催する劇場プロデューサー、サンドー役の金すんらさん(GREEN&RED)。
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写真右は、グランドホテルの支配人、ローナ役友石竜也さん(GREEN&RED)。
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(すんらさんと友石さん...シンバとスカーだ!)


青山航士さん(GREEN&RED)扮する運転手(実は男爵の借金を取立てるギャングの一味)も、不気味で印象的です!
(払えないなら)内臓が...的な怖いことを言ってましたよ...。
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グルシンスカヤのマネージャー、ウィット役の杉尾真さん(GREEN&RED)も、すっとした立ち姿が素敵でした!
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さて、稽古公開後、トム・サザーランドさん、中川晃教さん、成河さんの3名の囲み取材もありました。


◆ 囲み取材レポート ◆

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――公開稽古を終えて。

中川「私ごとですが、今年デビュー15年を迎えます。この『グランドホテル』という作品と、デビュー15周年の年に出会えたということがすごく嬉しい。なぜなら『グランドホテル』は、ミュージカルの原型になったような作品だということを稽古を通して実感しているからです。そんな素晴らしい作品を、同じオットー役として成河さんと作っていく過程、そしてトムさん、振付のリー・プラウドさん、音楽のマイケル・ブラッドリーさんと一緒に作っていけることが楽しく思っています」
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成河「まだ稽古がはじまったばかりなのですが、とても複雑でやることがたくさんあって、なかなか追いつかない。トムとマイケルとリー、3人に引っ張ってもらいながらみんなで必死にくらいついているところです。大きなカンパニーですので、どこまでみんなで一致団結してひとつになっていけるかが勝負どころだと思うので、3人を信じてついていきたい」

トム「また来日できてとても嬉しいです。皆さんの才能・能力は本当に卓越したものがあります。この作品をここ日本で、この皆さまと一緒に作れて、エキサイトな毎日です」
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――相手チームをご覧になっての感想を

中川「(当初は稽古は別進行という話だったが)実はいま、前半の方の稽古は、お互いちゃんと見合って、振付などの共通認識で進んだほうがいい動きは同じ稽古をやらせていただいています。その中で今日、REDチームの現時点での集大成を見させてもらって、めちゃくちゃいいな、と思いました。思わずツイッターで「すごく成河さんチーム、いい!」ってツイートしちゃったくらい(笑)。このオープニングシーンって、作品を観たことのある人もない人も、一発で引き込まれる瞬間なんだと思うんです。そこで自分とは違うREDチームの色があって、ジェラっと(嫉妬)しました。実は朝、トムからREDとGREENの「まさかそんな結末の違いがー!」という重大発表があって、動揺の中で今やらせていただきました。この1時間半ノンストップの1幕もののミュージカルがどう描かれていくのか、まさに(その違いが)今日ちょっと垣間見れて刺激的でした」

成河「これから稽古を進め、チームの個性を見つけていければという段階ですが、僕は大型ミュージカルが初めてで、歌をたくさん歌わせていただくんですが、(同じオットー役を演じる)アッキーに関して言うと、歌声を聞くと小学生と大学生くらいの違いがある(苦笑)。でも、すごくいいチャンスですので、背中をみて、たくさん学べるところは学んで盗んで、その先に個性が出てくればいいなと思います」
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――ふたつの結末は、一方が楽天的、一方が悲劇を示唆ということですが。

トム「どちらの方がよりドラマチックになる、という展開ではけしてない。おふたりにあわせて、両チームにあわせて、最大限のドラマ性を作るつもりではいます。でも、どちらのバージョンをご覧頂いても、今までご覧になった『グランドホテル』から想像する、その予想をはるかに超えていると思います」

中川「本当に今日、"ハッピー"と"ハッピーじゃない"というキーワードも初めて出たんですよ。トムは、稽古しながら、僕たちの個性をなくしてくれとは言わず、かといってそれを全面に出してとも言わない。自分たちのアプローチでやっている。その中で、トムが「今日はこうだ」と仰るので、僕たちも本当のところ結末がまだわからないんです」
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成河「今朝本当に長くお話をしてもらって、便宜的に楽観的、悲劇的と言葉を分けていますが、どちらもそんなに簡単なものじゃない。ようするに何かを成し遂げようと思い、なんとかそれが成し遂げられた人たちと、それがそこまで届かなかった、あるいは届いた瞬間に奪われてしまった人たち、そういう風に仰っていました」

中川「だから実際は、観にこないとわかりませんよ!」

トム「YES!」

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△ 稽古を見つめる、演出:トムさんと振付:リーさん。



取材・文・撮影:平野祥恵




【公演情報】
・4月9日(土)~24日(日) 赤坂ACTシアター(東京)
・4月27日(水)・28日(木) 愛知県芸術劇場 大ホール
・5月5日(木・祝)~8日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)

★お得な「レビュー割」発売中!
【対象公演】4/10、4/11昼・夜 の3公演
【対象席種】S席 通常12000円→ 10000円
※公演当日にレビューキット・座席指定券を引換え。
公演終了後に公演公式HPにてレビュー投稿をしてください。

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