■ミュージカル『グランドホテル』vol.1■
ミュージカル『グランドホテル』の上演が決定しました!
1920年代の大都市ベルリン、華やかなグランドホテルを舞台に、そこに集う人々の人間模様を描いていくミュージカル。
あるひとつの場所に、様々な事情をもった複数の人々が集まり、それぞれに物語が展開していく...という、いわゆる群像劇のことを〈グランドホテル方式〉と呼ぶくらい、オーソドックスで有名な作品です。
演出を手がけるのは、今年上演された『タイタニック』も大評判だった(チケットはソールドアウト、立ち見も出る大人気!)、ロンドンの気鋭の演出家トム・サザーランド。
ちなみに『タイタニック』も群像劇で、それぞれの人が抱えるドラマが複層的に重なり、やがて壮大な交響曲になっていくような、美しい作品でした。
しかも今回は、〈GREEN〉と〈RED〉の2チームでの上演という気になる試みです。
こちら、単なるWキャストではなく、トムさんがそれぞれのチームとじっくり向き合い、そのチームの個性から生まれるドラマを大切にしていくそうで、なんと結末も2パターン用意される予定、とか!
注目のキャストは、こちら。(シングルキャストの方もいます)
〈GREEN team〉
中川晃教/宮原浩暢/戸井勝海/昆夏美/藤岡正明/味方良介/木内健人/大山真志/金すんら/友石竜也/青山航士/杉尾真/新井俊一/真瀬はるか/吉田玲菜/天野朋子/岡本華奈/湖月わたる(スペシャルダンサー)/春野寿美礼/光枝明彦/安寿ミラ
〈RED team〉
成河/伊礼彼方/吉原光夫/真野恵里菜/藤岡正明/味方良介/木内健人/大山真志/金すんら/友石竜也/青山航士/杉尾真/新井俊一/真瀬はるか/吉田玲菜/天野朋子/岡本華奈/湖月わたる(スペシャルダンサー)/土居裕子/佐山陽規/草刈民代
主人公オットー・クリンゲラインを演じるのは、中川晃教(GREEN)と、成河(RED)。
重い病を患う元会計士で、人生の最期を悟り、貯金を全て豪華なグランドホテルで過ごすことに費やそうとやってきた男です。
中川さんと成河さん、タイプの違うふたりの天才が、それぞれどんなオットーを演じるのか。
これは演劇ファンなら見逃せませんよ。
げきぴあでは本作のビジュアル撮影現場を取材、同時にキャストインタビューも行ってきました。
(※全員分ではありません、ごめんなさい。でもかなりの人数、登場予定!)
まずはGREENチームでオットーを演じる中川晃教さんが登場です。
まずはGREENチームでオットーを演じる中川晃教さんが登場です。
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
演じるオットー・クリンゲラインは、自分の死期を悟っている会計士。
真面目に実直に生きてきた、そんな男性でしょうか。
撮影現場はこんな雰囲気です。
陰影を強くして、シルエットを撮るような撮影も。
のちほど、どんな気持ちで撮影に臨んでいたのか伺ったところ「こういうところでは、あまり情報を詰め込んでも伝わらないので。シンプルに、グランドホテルにやってきたところ、を意識しました」と仰っていました。
作中ダンスをするシーンもあるオットー。
ちょっとそんな動きも取り入れる中川さんです。
その動きは美しく静かで、まるでサイレントの映画を観ているかのようでした...。
中川さんといえば、やっぱり「歌」の上手さがまず、印象としてありますが、「空気」を作り出すのも上手い人だなあ...と、撮影風景を見ていて思いました。
そんな中川さんに、現在『グランドホテル』に対して抱いている思いを、きいてきました!
◆ 中川晃教 INTERVIEW ◆
――この作品に出演が決まった時は、どんなお気持ちでしたか?
「僕、実はあまりよく知らなくて。群像劇のことを指す〈グランドホテル方式〉って言葉を、なんとなく知っているかも...という感じだったんです。でも、出演させていただくことが決まった時、僕のまわりではすごく反応が大きかったんですよ。「すごく良いミュージカルに出られますね」と仰ってくれる方が多くて。歌が良いとか、物語が良いとかではなく、"すごく良いミュージカル"。あぁ、愛されている作品なんだな、というのと、影響力の大きい作品なんだなというのは、感覚的にわかりました」
――明るい、華やかなミュージカルというよりは、重厚なイメージですよね。
「そうですね。この作品の持つ世界観というものが、きちんとある。でも例えば暗さが魅力で歴史的な重みがあるから愛されている...というわけではないと思うんです。ホテルという場所で、色々な人間たちがそこに集まってくる。ひとりで来る人もいれば、ふたりで来る人もいる。それぞれの部屋は扉で区切られていて、交わらないんだけれど、レストランやフロントで顔を合わせることもあるだろうし、そういう意味ではみんな、出会っている。その中で、それぞれがそこに来るまでの歴史と、そこに来てからの新たな歴史が、ひと夜のその時間の中で変わっていく...人生が変わる瞬間が、このホテルにある。...そういうことが、素敵に描かれているお芝居なんじゃないかな。そういうミュージカルってすごく観てみたいな、と思ったんです」
――中川さんは、"素敵な瞬間のある物語"と思われた。
「もちろん第一次世界大戦が終わった直後、ドイツは負けて、経済的にも苦しい時代。そんな重く垂れ込める時代背景も感じさせなければと思います。ただ、実際にそこで生きている人たちの間には、恋もあるし、愛もあるし、治らない病気もあるかもしれないし、色々な人間模様がきっとある。でもすべて暗いわけではない、なぜならみんな生きているんですから」
――その中で、中川さん演じるオットーは、"治らない病気を抱えている人"ですね。
「はい。オットー以外の人からすれば、そこで起こっていることは何気ないことかもしれない。でも、死を覚悟しているオットーにとっては、目の前で起こる一瞬一瞬が、きっと、すべて心の変化に大きく影響していくのかもしれないと思うんです。その先に彼がどんなゴールを探していくのか...というのが、ひとつ僕の役割かな。あと、この時代のドイツで、ユダヤ人だというところも、演じがいがあるなと思っています」
――このあと、ナチスが台頭してくる時代ですもんね。
「でもね、オットーって、重くない感じがしたんだよね。僕、最初に彼がホテルにやってくるところがすごくいいなぁって思っているんです。彼はホテルに予約を入れているのに、自分の名前が入っていない。追い返されそうになる。「グランドホテルに泊まれないのは、僕がユダヤ人だからか?」とか言っているところを、初めて出会った男爵が助けてくれる。スムーズな流れじゃない。最初から準備万端じゃないところが、気取っていない感じがしていいなあと思ったし、そんなところから、たまたま居合わせた男爵のおかげで、そのホテルに泊まれることになる。大げさに言うと"奇跡を持っている人"。見えない何かに守られている"精神の純度の高さ"みたいなものがあってもいいのかなって。そもそも、結核を患っていてもう余命が見えている、だから最後に、このホテルに自分の貯めてきたお金を全部注ぎ込もうと思ってやって来た...ということ自体が、すごく素敵な感じがしたんだよね」
――なるほど、私は悲劇の人なのかと思ってました。
「でしょ! でも悲しかったり、病気だったりするほど、実際はやらなきゃいけないことがいっぱいあったりするし。そう思うと、諦めないこととか、ひたむきさとか、今を生きていることの貪欲さ、みたいな輝きってあると思う。その輝きはあともう少しで消えてしまうかもしれないけれど、その瞬間にスパークした光は、みんなの目にもう刻まれている...そんな感じが、オットーからしました。そうなればいいなと、頑張ります(笑)」
――美女からダンスに誘われたりもしますしね。
「そうそう。わりと粋なところも見せられるかな。株で大もうけしちゃったりもするしね。すごく面白いよね。豊かだと思っていた人が、この一日を境に現実を目の前に突きつけられたり。人生の価値観が変わる人がいれば、もう人生が終わりだと思っていた人が、もしかしたらさらに生きがいを得てその場を発つかもしれない。すごくいいよね。そんな場所に僕も行ってみたいです」
――そして、演出はトム・サザーランドさんです。
「一度お会いしました。すごく優しそうな方だったので、良かったです。まさか僕より年下だとは!」
――それ、みなさん仰いますね(笑)。31歳とは思わなかった! って。
※『タイタニック』の頃(15年2月)ですが、トムさんのお写真はコチラ→★
「イギリス人、あなどれないです(笑)。『タイタニック』の評判をすごく色々な方から聞いていて。注目されている演出家だとも聞いていたのですが、そういうことを全然感じさせない方でした。黙々とマジメに、思い描く『グランドホテル』に向かっているんだなという印象です。お会いした時、『CHESS』の稽古中だったので「Someone Else's Story」を歌ったんですが、それを聴いて小さい声で何かをボソっと言っていて。例えばアメリカの方だと、「ワーオ!」とか、オーバーリアクションで反応してくれるじゃないですか。そうじゃなかったので「...どっち!? 良かったの?どうなの!?」と思ったんですが(笑)、日本人としては親しみの持てる反応ですよね(笑)」
――〈GREENチーム〉と〈REDチーム〉と分かれて上演するというのも、面白い試みです。
「最近Wキャストって多いけれど。ひとつの演出を単純にダブルでやるのではなくて、この配役だからこそ生まれたものを大切にした結果、こちらのチームはこういう方向性で...と丁寧に作っていこうとされているときいて、すごく楽しみになりました。配役も、トムさんがそれぞれをちゃんと見て選んだ理由を、作品の中に落とし込んでいこうとされている、と。ですので今回の2チームでやるというコンセプト、すごく楽しめるんじゃないかな。僕、以前『ロックオペラ モーツァルト』で、ふたつの役を山本耕史さんとふたりでスイッチして演じる、交互配役というのを経験したことがあるのですが、ぜんぜん中身は違うのに、同じ動きをしなきゃいけないというのは、演じる側にしてみれば制約でもあるんです。でも今回はそうではない。こだわって配役をし、その人だからこその『グランドホテル』を作ろうとしている。これは作り手として素晴らしいですよね。僕もそこに全身全霊で向き合っていきたいです」
――特に、同じ役を演じる成河さんとは、まったくタイプも違いますし。
「ね...(ため息)。僕、成河さんとは初めてお会いするんですけど。彼は本当に天才だという噂をすごくきいていて...。彼のお芝居はすごい、演技の天才だって。楽しみですし、いっぱい盗みたいと思っています」
――そう言う中川さんだって、天才の称号は欲しいままにされていると思いますよ! 2チームで結末を変えるというのも、トムさん自身が書くということですから、その分じっくりと向き合って作るということでもありますよね。
「(稽古を)やりながら作る、変えていく、と聞いているので、楽しみではありますが、大変でもあると思います。まさに先ほども言いました〈グランドホテル方式〉、群像劇ですから、みんなで見せていく作品でもあり、それぞれの方がきちんと存在感を出していくと思うんです。そのアプローチも楽しみだし、その中で自分の役割というものを、早い段階で明確に演出家に提示していきたいですね。マックスで作りこんだものを見せ、そこからシンプルに削いでいく作業が大事になってくると思います」
――中川さんは、作品を作るにあたり、事前に準備万端にしていくタイプなんですか?
「もちろんです! 最近すごく思うことがあるんです。例えば同じ「愛してる」でも、色々な形があるじゃないですか、立場、関係、時代によって。でも言葉は普遍的で、同じ「愛してる」。例えば、メロディがあって、現代の感覚で「愛してる」と歌う。でもそれじゃあつまらないし、ちゃんと本で描かれた世界に自分自身がのめりこんでいかないと、僕らが知っている「愛してる」だけじゃ表現できないんです。だからよく調べてから、歌ったり演じたりするようにしています」
――それは調べるというだけではなく、読み込みも深そうです...。
「時代背景はもちろん調べますし、あとはその言葉が誰にかかっていくのか、もしくは、物語のどこにかかっていくのか...その脈絡は、繊細に感じ取りたいし、大事にしています。伏線がちゃんと伏線として機能しないと、積み重ならないで、最終的に力技で感動させたりする。それはもったいないなって。いい物語であればあるほど、そこを丁寧にみんなで積み重ねていった結果、見えるゴールがあると思う。もし自分がそのパーツに関わっているんだったら、明確に埋めていかなきゃって思うんです。特に今回は群像劇ですので、それぞれの積み重ねが明確に見えて、すべてのナンバーが繋がったときに、ゴールが見えてくるんじゃないかなと思っています」
取材・文・撮影(ビジュアル風景):平野祥恵
撮影(インタビュー):源賀津己
【公演情報】
・4月9日(土)~24日(日) 赤坂ACTシアター(東京)
・4月27日(水)・28日(木) 愛知県芸術劇場 大ホール
・5月5日(木・祝)~8日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
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【プレリザーブ決定】
受付日時:12/18(金)11:00~23(水)11:00