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■『レベッカ』特別連載vol.1■
 
 
ミュージカル『レベッカ』が8年ぶりに上演されます。

『エリザベート』『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のゴールデンコンビが手掛けた作品で、日本では2008年に初演。この前年に開場した新劇場・シアタークリエで、最初のミュージカル公演でした。

物語は、ヒロインの「わたし」がイギリスの大金持ちである上流紳士のマキシムと恋に落ち結婚するも、彼の所有する広大な屋敷 "マンダレイ" に色濃く落ちる前妻・レベッカの影に追い詰められていき......というもの。
アルフレッド・ヒッチコック監督映画でも知られる名作ですが、このミュージカルではサスペンスフルな展開に、巨匠リーヴァイ氏の流麗な楽曲がマッチし、独特の世界を生み出しています。

主人公である大富豪、マキシム・ド・ウィンターは、初演から変わらず、山口祐一郎が演じています。
その相手役である「わたし」は、2018年版は大塚千弘平野綾桜井玲香のトリプルキャスト。

今回は、普段は乃木坂46のキャプテンとして活躍、今年は野田秀樹の名作『半神』に主演、本作では初のグランドミュージカルに挑戦......と、演劇界でも大注目の桜井玲香さんのインタビューをお届けします

なおげきぴあではこのインタビューを皮切りに『レベッカ』の特別連載を実施しますのでこちらも乞うご期待ください!

 

◆ 桜井玲香 INTERVIEW ◆

Rebecca01_1_0594r.JPG● グランドミュージカルへ、初めての挑戦


――『レベッカ』は今回で3度目の上演となりますが、桜井さんは初参加。『レベッカ』に初出演というより、グランドミュージカルへの出演が初めて、でしょうか。

「初めてです。ありがたいことにこういった演劇系のメディアの取材も増えましたが、素人同然で何を話していいのかもわかりません(笑)」


―― そうなんですか? 他社さんのインタビュー記事などを拝見しましたが、ずいぶんしっかりした方だなあ、と思っていたのですが。もしかしてこういった取材もプレッシャーになっていますか?

「うーん......いえ、でもこういう機会をいただくたびに毎回、「本当に頑張ろう、頑張らなきゃ!」って思うので、いい刺激になっています」


―― それはよかったです。そしてまだ公演に向けては、本格的には動いていない段階でしょうか?

「今日から歌稽古が始まりました! まだ "音取り" の段階ですが、本当に丁寧に教えていただきました」


―― 普段の乃木坂46での活動でも、こういった「歌稽古」というようなものはあるのでしょうか?

「ありません。普段は "仮歌" をもらって、それを聴いて、耳から覚えるという形です。ピアノで弾いてもらって、楽譜のこの音符がこの音で......、という形のお稽古は初めて緊張しました。小さい頃にピアノを習ってはいたのですが、だいぶブランクがあるので、自分が楽譜をちゃんと読めるのか、というところから心配で。それに普段のJ-POPだと正確さよりもニュアンスを重視することが多いのですが、今日は「その音に正確に当てていく」というお稽古でしたので、まったく方向性も違う。緊張のしどおしでしたが、でもいよいよ始まるんだな、って実感しました」
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撮影:引地信彦

10月20日(土)、東京・下北沢 本多劇場で、KERA・MAP#008『修道女たち』が開幕した。
いま演劇界で最も注目される演出家のひとり、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が作・演出を手がける最新作。今年2018年に自身が主宰する劇団ナイロン100℃が結成25周年を迎え、4月に『百年の秘密』、7月に『睾丸』と、立て続けに2本の、全く異なる作風の作品を上演したKERAが、今年3本目の公演として新作『修道女たち』を発表した。

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KERAが初めて"修道女"という、特殊なコミュニティに身を置き信仰に生きる人々を描いた本作。神を信じ、規律の中で祈りながら生活を送る人々、そしてそれを取り巻く人々の間で起こる群像劇であり、KERAが"マジック・リアリズム"と表現する世界観の、ファンタジック且つ生々しい悲喜劇となった。

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古典落語を現代風にアレンジし、若手俳優が2人1組の掛け合いで演じる『ハンサム落語』。2013年の初演以来、公演を重ね、この秋に記念すべき第十幕となります。第一幕から出演する磯貝龍虎さん、平野良さん、宮下雄也さんの3名に意気込みを聞きました。


――第十幕ということで、まずはそれぞれ意気込みをお願いします。

宮下:2013年から10回も続く作品です。これほど続いたのは、たくさんのお客様に来ていただき、スタッフさんのいろんな努力があったから。集大成のようなものです。今回はいつもと少し違う緊張感がありますね。
平野:第一幕から出ているのが今日いる3人なのですが...もう、出し尽くして、すっからかんの状態です(笑)。今回10回目ですごく皆さん期待もしてくれているので、そこから一つ踏ん張って...。
宮下:30歳超えてもうたからなぁ。
平野:そうだね。俺の場合、20代後半でハンサム落語を始めて、攻めた下ネタを言ってみたり、いろんなことを試しましたけど、34歳の下ネタって正直結構きついなって...(笑)
宮下:可愛くはないよな(笑)
平野:だから、そこの塩梅をしっかり見極めて、大人感をいい感じで出していきたいなと思います。
磯貝:僕も一番最初からやってきて、紆余曲折、いろんなことがありまして...。毎回、僕も出し尽くした感は否めないと思っておりますが、また新しい何かを見つけて、第十幕にぶつけられたらいいなと思っております。僕は、演劇は自由だと思っているので、確かに少しは決まりはありますが、その中でやれることはまだあると思うので、そこを見つけ出して、お客様に見せられたらなと思います。

――今回の演目は『まんじゅうこわい』、『芝浜』、『死神』、『明鳥』。過去に上演したことのある演目から、出演キャストやお客様が好きな演目のアンケートをとって決定されたそうですね。どれもすごく面白い作品ですが、それぞれ作品への思いはありますか?

宮下:僕、『芝浜』をやりたかったんですよ。第一幕の時にやった演目なのですが、当時は下手だった。落語というものを全然勉強していない段階でやっていたので、やり残した感がめちゃめちゃあったんです。公演経験も年も重ねているし、何かまた違った本の読み方やお話の見方ができるのではないかなと思うので、早く『芝浜』をやりたいですね。
平野:僕は『芝浜』を一回もやったことがないんですよ。今回が僕にとっては初『芝浜』。楽しみです。あとは『まんじゅうこわい』。何役も何役も出てくるお話で、お話の面白さと、役者が役を演じ分ける面白さがあると思うので、それがすごく楽しみです。
磯貝:有名な演目ばかり。僕も初めて『ハンサム落語』をやった時は、落語というものを全く知らなかったのですが、今は大好き。今回はきちんと落語というものを見せて...まぁ林明寛君はどうなるか分からないんですけど...(笑)
宮下:やばいよな(笑)

磯貝:その人らしいのもいいんですけどね...。僕は落語の面白さをきちんと伝えたいなと思います(笑)

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累計6000万部を超える大ヒットコミック『るろうに剣心』。
幕末に伝説の人斬りとして恐れられ、明治維新後は "不殺" を誓った剣客・緋村剣心を主人公に、個性的な登場人物が繰り広げる歴史活劇です。

2016年には小池修一郎の脚本・演出により、宝塚歌劇団雪組により初のミュージカル化がされました。
この宝塚雪組公演は、主人公の剣心を演じた早霧せいなの演技力をはじめ、原作を高いレベルで再現したビジュアルや宝塚らしいドラマチックな物語展開などが絶賛され、宝塚ファンのみならず原作ファンからも大評判に。

そしてこのたび、小池修一郎の新演出のもと、10月11日より日本の伝統芸能の殿堂である新橋演舞場の舞台に、『るろうに剣心』の舞台が新たに登場しています。
剣心には、2017年に宝塚を退団した早霧せいながふたたび挑みます。
 
その、新生版・浪漫活劇『るろうに剣心』 の稽古場を取材したレポートをお届けします。
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9月末の某日、この日取材したのは、ふたつの稽古場。
どうやら『るろ剣』カンパニー、同時進行で色々と作り上げているようです。

まずは、松岡充さんを中心に、「殺陣」をつけている稽古場です。
比較的小さめの稽古場で、スタッフも少数精鋭!?
少人数ならではの静けさで、皆さんの集中力もビシビシ伝わってきます。

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【公演レポート】ガラリ刷新、ミュージカル『マリー・アントワネット』11年ぶりに日本上陸
 
 
ミュージカル『マリー・アントワネット』 が現在、東京・帝国劇場で上演中だ。遠藤周作の小説『王妃 マリー・アントワネット』を原作に、脚本・歌詞をミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲をシルヴェスター・リーヴァイという『エリザベート』『モーツァルト!』で知られる巨匠コンビが手掛け、2006年に日本で世界初演された作品だ。この作品はその後世界各地での上演を経てブラッシュアップされたが、中でも好評を博したロバート・ヨハンソン演出版(2014年に韓国で初演)が日本初上陸。日本産の大作ミュージカルとしてファンの中で記憶が刻まれている作品が、大胆にリニューアルされ、11年ぶりに日本の観客の前に登場した。
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物語は18世紀フランスが舞台。豪華な生活で散財をしている王妃マリー・アントワネットが、やがて巻き起こる革命の嵐の中、王妃としての自分を自覚し断頭台の露と消えていくまでを、家族愛や恋人であるスウェーデン貴族フェルセン伯爵との許されざる愛を絡めながら描いていくもの。マリー像としては、『ベルサイユのばら』など数多の作品で描かれている姿と大きく乖離することはないが、このミュージカルでは王妃と同じイニシャルを持ち、革命に身を投じる貧しい娘マルグリット・アルノーの存在が肝。ふたりの "MA" の生き様が時に対となり、時に重なることで、物語全体に奥深さを出している。
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大幅リニューアルとなった今回の上演は "新演出版" と謳われているのだが、実際に観ると、想像以上に初演とは別の作品になっている。入り口と出口は一緒でも、途中の道(エピソード)がまったく違う。追加された曲は16曲、登場するキャラクターも初演時の重要キャラクター数名がカットされ、代わりに別の主要キャラクターが追加されていたり......と、これはもはや、"新版" と銘打った方がいいのではと思える刷新ぶりだ。0 HTA_1106.JPG

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いとうせいこうの家に、みなさまをご招待するかのごとく、いとうせいこうとゲストが様々なトークを繰り広げる連続トークイベント企画「せいこうHOUSE」。その第3回が2018年10月15日(月)に渋谷・CBGKシブゲキ‼にて上演された。

歴代のトークゲストとしては第1回が池田貴史、オカモト"MOBY"タクヤ、第2回がみうらじゅんという豪華メンバーが続く中、来る第3回はついに斎木しげるがゲストで登場。いとうせいこうと斎木は「シティーボーイズ」での長年の親交でおなじみだが、こういった形でのふたりでのトークは、はじめて。予測不可能なトークセッションに会場は不思議な期待感に包まれていた。

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斎木が登場し、トークが"おもむろ"にスタートすると、話は、中野坂上にあるカフェの話から宇宙の話まで不思議な脈略で展開。魅惑的な声とともに、温水プールに浸かっているような不思議な引力のある斎木のトークに、すかさず入るいとうのエッジの効いた突っ込みで会場は爆笑に包まれた。斎木が、大学生のいとうせいこうと初めて会った時の話など、貴重な話題も飛び出すのもこのイベントならではだろう。

不定期開催の『せいこうHOUSE』であるが次回第4回の開催も発表された。来年2019年2月、トークゲストは金澤ダイスケ、堂島孝平、オカモト"MOBY"タクヤという豪華ミュージシャン達が集う。次回の開催にも期待が高まる。


『せいこうHOUSE vol.4』開催概要

企画・出演=いとうせいこう
出演=
金澤ダイスケ(フジファブリック)
堂島孝平
オカモト"MOBY"タクヤ(Scoobie Do)

日時:2019年2月5日(火)19時開場、19時半開演
会場:渋谷・CBGKシブゲキ!!
チケット代:前売り3,800円 当日4,000円
一般発売:1月5日 (土)


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11月に上演される舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』の、稽古に先がけ行われたワークショップ&取材会の様子をお届けするレポートその④

→その①/作品の概要&ワークショップ前編はコチラ

→その②/ワークショップ後編はコチラ

→その③/取材会前編はコチラ

本作は、1964年の東京オリンピックで銅メダルを獲得したマラソンランナー・円谷幸吉と、その4年後のメキシコオリンピックで銀メダルを獲得した君原健二という、ライバルであり友人であったふたりのストーリーが初めてドラマ化される作品です。

前回に引き続き、円谷役の宮崎秋人さん、君原役の木村了さん、円谷のコーチ・畠野洋夫役の和田正人さん、脚本・演出の谷賢一さんが参加した取材会/後編をお届けします!

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▲(左から)木村了さん、宮崎秋人さん、和田正人さん

*****

――ワークショップやこの取材会で「何のために走るのか」「ランナーと俳優は似ている」というお話が何度も出てきましたが、みなさんは何のためにこの仕事をされているのでしょうか?

谷:僕は世の中をもっとよくしたいと思っています。この世の中にはまだ、不幸と貧困と戦争がいっぱいあるじゃないですか。ありとあらゆる悲しみを世の中から追放していきたいと思うし、人間はもっと豊かに結びついたり、友情をはぐくんだり、愛を共有したりできるはずだと思うんですね。その割にはみんな苦しそうに生きてますけれども。まだまだ演劇というものを通じて伝えられる感動や教訓は多いと思うんですよ。僕自身が演劇で人生救われた人間なので、これをどんどん恩返ししていけば、少なくとも一人二人三人と、どうやって生きたらいいかわからないと思っている人が減らせると思う。今回みたいな"人生"とか"生きる"ということについて率直に向き合えるいい題材に僕が出会えたのは、本当に巡り合わせだと思うので。この作品をこういう素晴らしいキャストと一緒に、円谷、君原、そして畠野コーチ、高橋コーチという実在した人たちの魂もきちんと背負いながら、お客さんにボールとして投げることができたら、きっと世の中ちょっと良くなると思うし、苦しく生きてる人も生き方についてちょっと新しい知見を選べるんじゃないかと思うので。そういうことのために僕は演劇をやっております。

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宮崎:僕は、養成所に通っていた頃に初めて参加した舞台の稽古中に、東日本大震災が起きまして。当時は自重ムードがあって、その舞台もやるべきなのかという話になったのですが、スタッフキャストの皆さんが「やっぱりやろう」って上演を決めて。幕が開くとお客さんも満席でした。そこで初めて浴びた拍手で「こういう状態でも求められてるんだ、演劇というものは」と思って。それで「やりたい」と思いましたし、これからもやっていこうと思いました。求めてもらっているからやってます。

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木村:僕は14歳位からこの仕事を始めたのですが、もともとはこの仕事をやるつもりもなく、芸能人になろうなんてことも、芝居をしようなんてことも思ってなくて、"なんとなく始めた"っていうのが最初にあって。でもそれは君原さんも一緒だったと思うんですよ。本を読むと君原さんも「特にやりたかったわけじゃない」「得意であった」ということから始まっているので。でもやっていくなかで面白いなと思うところは、やってもやっても埋まっていかないこと、自分の中で。ひとつの役が終わっても次の役がくるし、役を探求していくとどんどんどんどん掘り下げられるし。知らないことが多すぎることに気付きました。人を演じるのって、その人の人生を生きるってことだから、足りないんですよね、時間が。それをひたすら追求していって、今ここに座っている状態です。これからもそれは続けていきたいなと思うし、それが自分の原動力にもなっています。だから僕はすごく楽しんでこの仕事をさせていただいています。辛いときもありますけどね!

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和田:こんな僕でもこの仕事で世の中を豊かにすることに貢献できているという実感です。僕は、夢を実現させようと必死で生きることへの魅力というか、生きている実感というか、そういうものをとことんつきつけてやろうと思っていて。そうすることで、近い人でも遠い人でも、まだ見ぬ人でも、みんなが「自分でもできるだろうか」みたいな、少しでもチャレンジする気持ちを、おこがましい言い方をすると、与えられるのかもしれない。いい仕事だなって本当に思っていますし、そこに遣り甲斐や僕がやる意味みたいなものも感じています。俳優をやるうえで、最初は「もっと自分を表現したい」「もっと活躍する場所が欲しい!」と思っていましたが、それだけじゃやっぱり続けられないので。そこから向き合っていくなかで、そんなことをすごく考えるようになりました。

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――では最後に意気込みをお聞かせください。

宮崎:文献もいろいろありますし、いろんな角度から見た円谷さんがいますが、僕はそれはあくまで"周りから見た円谷幸吉"でしかないなと思っていて。だからそこはあくまで参考として、自分がちゃんと円谷幸吉になるために、脚本を通して見えるものを大事にしていきたいです。自分の中から生まれたものをしっかりと皆様にお届けできるよう、カタチにできたらと思います。がんばります!

木村:2020年の東京オリンピックを目前にこの舞台をやるということにもひとつ意味があると思います。円谷幸吉さんという人がいたことを今の若者はほとんど知らない。そして君原健二さんというまだ走られている、ある意味探求し続けている方がいる。そういう人たちのことを今一度こういうカタチで、若い世代の方も観に来られると思いますし、僕らが伝承者になれたらいい。この作品がマラソンへの関心だったり、陸上への関心を広める助けにもなれたらいいなという気持ちです。全力でやらせていただきます。

和田:僕がランナーとして生きてきた、そして今俳優として生きている、そういったものをひとつにまとめた、自分の中で大きな意味を見つけられる作品になりそうだと思っています。だからこそ今回に限っては、自分という存在、在り方、生き様というものを率直に素直にぶつけてみたい。今の日本は2020年に向けてという意識が強いですが、この作品は、そこよりももっと先に先に向けての、演劇もスポーツもさまざまな文化が先に先に進んでいくための何か大切なものが描けそうな予感がしています。そんな"大きな足跡"を残す作品になりそうです。

谷:円谷幸吉の人生は悲劇だと思うんです。ただその悲劇を上回る希望みたいなものだったり、光みたいなものだったりが、彼の物語の周りには付着してると思うんですね。彼を「悲劇の人」だったと思ってる人には、そんな簡単なものじゃなかったんだぞということで見てもらいたいです。そしてある意味では円谷幸吉の悲劇を補填するようなカタチで、君原健二という男はどう生きて走ったのか。このふたりの人生を並べることで、見えることが増えるなと思うんですよね。なので全く知らないという方にももちろん観てほしいですし、ちょっと知ってるよという方にもぜひ観てほしいです。50年近く前の話になりますが、現代を生きるということにうまく接着できるようなお話にしたいなって。僕自身も決してプロのランナーではないですし、ランナーの気持ちがすべて書けるわけじゃないと思うんです。多分、ランナーの人生を借りて、自分が知っている、生きるということ、戦うということ、走るということ、孤独を書くのだろうから、それが現代のお客さんと何かのカタチでうまく出会うことができればいいなと、今思っております。

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公演は11月14日(水)から25日(日)まで東京・紀伊國屋ホール(※14日はプレビュー公演)、11月29日(木)から12月2日(日)まで大阪・ABCホールにて。

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11月に上演される舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』の、稽古に先がけ行われたワークショップ&取材会の様子をお届けするレポートその③

→その①/作品の概要&ワークショップ前編はコチラ

→その②/ワークショップ後編はコチラ

本作は、1964年の東京オリンピックで銅メダルを獲得したマラソンランナー・円谷幸吉と、その4年後のメキシコオリンピックで銀メダルを獲得した君原健二という、ライバルであり友人であったふたりのストーリーが初めてドラマ化される舞台です。

今回からは、円谷役の宮崎秋人さん、君原役の木村了さん、円谷のコーチ・畠野洋夫役の和田正人さん、脚本・演出の谷賢一さんが参加した取材会/前編をお届けします!

IMG_3291.jpg▲(左から)谷賢一さん、宮崎秋人さん、木村了さん、和田正人さん

*****

――谷さんはどうしてこの物語を書かれたのですか?

谷:円谷幸吉と谷原健二というふたりの男の人生には、たくさんのメッセージが詰まってると思うんです。僕がすごく気になるのは、なぜそこまでして走るのかということ、そしてなぜ片方のランナーは栄光をつかむことができ片方のランナーは死を選ぶことになってしまったのかということ。それになぜ君原健二は一回失意の底に叩き落とされてそこから復活できたのかもそうだし、円谷幸吉のあの有名な遺書の言葉はなぜ出てきたのかということもそうです。興味があることだらけなんですよ。それに、なぜ走るのか、あるいは走っている選手をどうマネジメントしたり導いたりケアすべきなのかということは、現代への教訓になることもあると思う。単純に物語として悲しいものや美しいものがたくさん詰まっていますしね。そのあたりが、"すごく有名なのにドラマとしては埋もれてしまっている人たち"にスポットライトを当てたいと思った理由です。

――今日、実際に俳優の皆さんとお話しされていかがでしたか?

谷:一番「よかった」と感じているのは、みんな既に"走る"ということに関して準備したり、考えたり、動かし始めていたことです。演劇って稽古場に入って言葉で立ち上げていくものですが、その言葉を吐く身体がどういう状態にあるのかで関係性や出てくる言葉が変わってしまうんですよ。だから"ランナーの身体""ランナーの筋肉"だけは稽古前から目指しておかないと、"ランナーの精神"に辿り着くことができないんじゃないかという不安がありました。今日は、そこに対する危機感や目標といったものを、それぞれの目線で既に持ってくれていたことが一番うれしかったです。

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――円谷幸吉を演じる宮崎さん、君原健二を演じる木村さんは、実在の人物を演じることをどのように思ってますか?

宮崎:時代劇ではなく、この何十年を生きてこられた方を演じるのは初めてで。僕が演じる円谷さんのライバル君原さんはご存命ですし、(自分が演じる人物を)知っている人がいる状況のなかで演じることに対して「どうしよう」というところは、正直まだあります。役作りに関しては、まず円谷さんがどんな土地でどんな空気を吸って、学生時代や子供時代にどんな道を走っていたのか、そういうものを実際にその場所に行って見てみようという風には考えています。あとは、極力走っている人の精神になれるよう、走ること、そして体づくりですね。

木村:今は、僕が演じる君原さんの著書を読みつつ、どんな方なのかというのを思い描き、僕との共通項を探している最中です。そこでひとつ思ったのは、役者の仕事も孤独といえば孤独であるということ。作品づくりはみんなでやりますが、演じるのは一人だし。マラソンランナーも走っている最中は誰にも頼れないし、くじけそうになっても走り抜けなきゃいけない。そういう共通項があるのかなと思ったりしています。そこと自分を重ねながら、いろいろな方法ですり合わせている状況ですね。

谷:幸吉くんは、僕の今の印象ですが、本当に純朴で真っ直ぐな人だったんだろうなと思うんです。その真っ直ぐさが真っ直ぐすぎて命取りになってしまった人だと思うんですけれども。その気取らない朴訥さみたいなものを(宮崎は)きちんと持っていらっしゃると思うので、そこの部分を出していけたらと思う。彼の持つ愛嬌のようなところを役の中で育てていければ魅力的なんじゃないかな。君原さんに関しては、ワークショップで(木村と)意見が合致してよかったなと思うのですが、君原健二という男は立派だし日本の歴史をつくったランナーだけど、かなり癖の強い人だった。そこの部分を楽しんで一緒につくれるんじゃないかなってことは、今一番楽しみです。人間のネガティブだったり欠点だったり歪んでいたりするところって魅力にも変わるし、それがあるからこそ美点もまた映えてくると思うので。

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――この作品は選手とコーチの関係性も描かれますが、そこはどのように考えていらっしゃいますか?

宮崎:まず、僕からすると(円谷幸吉のコーチ・畠野を演じる和田は)本当にコーチなので。走ることに関しても、お芝居に関しても。だから教われることは、とことん教わりたいです。だけど一方的じゃなく、自分も「こいつのためにもっとなんかやりたい」と思わせることができるように、まずは自分がやるべきことをやります。あとはご飯連れてってもらえたら(笑)。

和田:そうですね、ご飯に連れて行く...(笑)。僕は走る役は何度か演じたことがあるのですが、教える側(コーチ役)はあまりやったことなかったので、新鮮な気持ちです。今回、秋人が円谷を演じることになったとき、宮崎秋人という人間のまだまだ使い切れていないエネルギーや葛藤、そういったいろんなものをぶつける場所としてうってつけだと思いました。だから、とことん迷ってほしいし、とことん苦しんでほしい。そこに僕がどう寄り添えるかはまだ想像もつかないですが、秋人がぶつけてきた力と同じかそれを超えるくらいの力を持って向き合ってぶつかっていけたら、何かいいものが生まれるのかなと思っています。だからどっちがどっちというわけでもなく、伴走していかなきゃいけないと思っています。

木村:僕は(コーチ役の)高橋光臣くんとは十数年ぶりの共演です。当時、僕はまだ17、18歳で、クソ生意気だったので(笑)、多分イラッとしてたんじゃないかなって思うんですよ。でもそれって実際のコーチと君原さんの関係性に似てるなと思うので。今回、稽古場でもプライベートでも、甘えるところは甘えてみて、反発するところは反発してみようかなと今は思っています。やさしいのでなんでも受け入れてくれちゃうんですけどね。ちょっとこっちから揺さぶってみようかなって(笑)。もちろんご飯にも連れてってもらいます!

プロデューサー:高橋さんは「天才・木村了との再会、すごい楽しみです」とおっしゃってました。

木村:ちょっとおかしくなってる...。大丈夫かな。

プロデューサー:「彼は子供の頃から演技が天才で、天才・木村了ってみんな呼んでたんですよ」って。

木村:谷さんの前でそれはちょっと...

一同:(笑)

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→→次回は、取材会/後編です!

公演は11月14日(水)から25日(日)まで東京・紀伊國屋ホール(※14日はプレビュー公演)、11月29日(木)から12月2日(日)まで大阪・ABCホールにて。

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20世紀初頭に生きた韓国の天才詩人・李箱(イ・サン)の作品「烏瞰図 詩第15号」にインスパイアされ、その詩のみならず彼の人生やその他の作品群の要素も盛り込み作られたミュージカル『SMOKE』 の日本版初演が、現在好評上演中です。

「詩を書く男」=(チョ)、
「海を描く者」=(ヘ)、
「心を覗く者」=(ホン)

......たった3人の登場人物で紡ぐ、ミュージカル。

海に行きたい、そのための資金が欲しいと、三越デパートの令嬢という女<紅>を誘拐してきたふたりの男、<超>と<海>。
しかしどうやら、彼らの関係性は、もっと複雑なようで......。

サスペンスフルなストーリーを、実力のある俳優たちが迫力いっぱいに展開し、ドラマチックな音楽で盛り上げる。
上質のミュージカルに、中毒者も続出のようです!

出演は<>に日野真一郎木暮真一郎のWキャスト。
>に大山真志
>に高垣彩陽池田有希子のWキャスト。

これまで稽古場レポートなどをお届けしている当連載ですが、今回は<超>役の日野真一郎さん、<海>役の大山真志さんのインタビューをお届けします。
すでに開幕したタイミングでのインタビューですので、作品の内容まで、じっくり伺ってきました!

 

◆ 大山真志×日野真一郎 INTERVIEW◆

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● 4年ぶりの共演です
 
 
―― 今回、<超>と<海>を演じているおふたりですが、共演は『ファントム』(2014年)ぶりでしょうか?

大山「はい、『ファントム』ぶりです。ヒッシュは......あ、僕は彼のことをヒッシュと呼んでいるのですが......、ヒッシュはミュージカル出演自体が『ファントム』以来じゃない?」

日野「そうなんです。ショーテイストのものなどを含めると、"ミュージカル" の括りの作品は出ているのですが、芝居に寄った作品は『ファントム』に続いて2本目です。別に仕事を選んでいたわけではないのですが、色々なタイミングで、こうなりました。この久しぶりのミュージカルで、大山さんが共演者としていてくれることは本当に心強かった!」


―― ちなみに、日野さんは大山さんのこと、何と呼んでらっしゃるんですか?

日野「マーシー、です。あとはジャン・クロード(笑)」
※ジャン・クロードは『ファントム』で大山さんが演じた役です。

大山「『ファントム』の共演者からは、ずっと役名で呼ばれているんです(笑)。ヒッシュも、今でも呼ぶもんね。今朝もずっと「ジャン・クロード!」って呼んでてうるさかった(笑)。『ファントム』の時は実はそんなにヒッシュとお芝居をするシーンがなかったのですが、今回は登場人物は3人だけですので、面と向かってお互いの言葉がぶつかりあう。「あ、『ファントム』の時と全然違うな!」って思います。稽古のあいだにどんどん<超>にヒッシュの "色" が出てきたきたのをすごく感じて、もうひとりの<超>の木暮真一郎君ともまったく違うキャラクターになっている。ミュージカル2本目でここまで出来るってすごい。少なくとも2本目の出演作で、俺はここまで出来てなかった。本番が始まってからは、そんなヒッシュと一緒で、本当に安心感があります」

日野「俺、泣きそう。そんなん言われたら(笑)」

大山「これは、本当に思っていることですね」

日野「いやぁ、嬉しいな~」

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■『書を捨てよ町へ出よう』#3■
 
寺山修司の初期代表作『書を捨てよ町へ出よう』 に、マームとジプシーの藤田貴大が挑む話題作、3年ぶりの再演が開幕、現在東京公演が絶賛上演中です。

主人公の「私」に初舞台で挑む佐藤緋美インタビュー、稽古場レポートとお届けしてきたこの連載ですが、3回目の今回は皆さん興味津々の、ミナ ペルホネンが手掛ける衣裳にフォーカス。「衣裳あわせ」の様子をレポートします!
 

【バックナンバー】
#1 佐藤緋美インタビュー
#2 稽古場レポート
 


 

取材に入ったこの日、稽古は少々早めに切り上げ、衣裳あわせが行われました。本作の衣裳を担当する「ミナ ペルホネン」のデザイナー・皆川明さんらスタッフが、少し前に稽古場入り。「あの『ミナ』の皆川明(敬愛を込めて敬称略)が目の前に!」と実はライター、ミーハー心全開で盛り上がっておりました......。皆川さんが代表を務めるミナ ペルホネンといえば、トレンドに左右されない柔らかで優しい風合いのデザイン、素材の洋服を生み出している、オシャレ女子憧れのブランド。舞台衣裳を手掛けるのはまずないことですが、藤田版『書を捨てよ町へ出よう』では初演に続いて衣裳を担当。前作でも日常的でありながら、フワリと日常を超えるようなミナ ペルホネンの世界観は演出・藤田貴大さんの劇空間に驚くほどなじみ、物語を心地よく飛躍させる役割を担っていました。初演では客席通路をランウェイに見立てたファッションショー仕立てのシーンが印象的でしたが、あのシーンも、ミナ ペルホネンの衣裳がもたらすインスピレーションがなければ生まれなかったかもしれません。

▽ 皆川明さんshosute3_0107.JPG

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