累計6000万部を超える大ヒットコミック『るろうに剣心』。
幕末に伝説の人斬りとして恐れられ、明治維新後は "不殺" を誓った剣客・緋村剣心を主人公に、個性的な登場人物が繰り広げる歴史活劇です。
2016年には小池修一郎の脚本・演出により、宝塚歌劇団雪組により初のミュージカル化がされました。
この宝塚雪組公演は、主人公の剣心を演じた早霧せいなの演技力をはじめ、原作を高いレベルで再現したビジュアルや宝塚らしいドラマチックな物語展開などが絶賛され、宝塚ファンのみならず原作ファンからも大評判に。
そしてこのたび、小池修一郎の新演出のもと、10月11日より日本の伝統芸能の殿堂である新橋演舞場の舞台に、『るろうに剣心』の舞台が新たに登場しています。
剣心には、2017年に宝塚を退団した早霧せいながふたたび挑みます。
その、新生版・浪漫活劇『るろうに剣心』 の稽古場を取材したレポートをお届けします。
9月末の某日、この日取材したのは、ふたつの稽古場。
どうやら『るろ剣』カンパニー、同時進行で色々と作り上げているようです。
まずは、松岡充さんを中心に、「殺陣」をつけている稽古場です。
比較的小さめの稽古場で、スタッフも少数精鋭!?
少人数ならではの静けさで、皆さんの集中力もビシビシ伝わってきます。
松岡さんが演じるのは、加納惣三郎。元新撰組隊士で、剣心同様、幕末の騒乱で心に傷を負ったまま、明治に生きています。
実在の人物ではありますが、『るろうに剣心』としては、小池修一郎さんによるオリジナルキャラクター。
剣心の最大のライバルとなっていく存在です。
殺陣をつけているのは、栗原直樹さん。
動きはもちろん、
「ひいてひいて...くるりと回す」
「相手の剣をはじくのではなく、力を逸らせる感じで」
といった "コツ" のようなことまで、巧みな説明で、松岡さんに動きをつけていきます。
その殺陣はかなりの迫力で、松岡さんも「これ、本当に相手を信頼していないと出来ないですね...」というスピード感!
動きを身体になじませるため「千本ノックだ!」と言う松岡さんですが、栗原さんによると「ひとりでやりすぎないで。殺陣というのは相手あってのもの。ひとりで型を決めすぎちゃうと、間合いが変わると対応できなくなっちゃう」というアドバイスもしていました。
さて、次は場所を変えて、大きな稽古場へ。
松岡さんがいらした稽古場と違い、人がたくさん!
そして、皆さんがいっせいに、色々なことをやっていて、空気がワンワンしている状態。
そのため、写真中心のレポートになりますが、ご了承ください。
この時、稽古場で作っていたのはプチ・ガルニエの屋敷内のシーン。
プチ・ガルニエというのは、加納惣三郎扮する「ジェラール山下」の邸宅ですが、ここである陰謀と事件がまきおこっているのです...。
この事件、原作マンガにはない、舞台オリジナルです!
緋村剣心役、早霧せいなさん。
稽古場ですがすでに緋色の着物!剣心がそこにいます!!
神谷薫役、上白石萌歌さん。
胴着姿、凛々しいです。
斎藤一役の廣瀬友祐さんや...
高荷恵役の愛原実花さんらの姿も。
みなさん、いってみれば「剣心の仲間」側(とひと言では言えない諸々がありますが)。
仲間といえばもうひとり心強い仲間がいます。
明神弥彦役の加藤憲史郎さん。
剣心や薫に反発しながらも、彼らを慕う少年です。
この時、稽古をしていたのは加藤さんですが、弥彦はトリプルキャストで、大河原爽介さん・川口調さんももちろん稽古場にいました。
弥彦ズ、3人揃って動くと可愛い...!
しかし、演出の小池修一郎さん、彼らにもなかなかにキビシイ。
歩き方がおかしい、もっと背筋を伸ばして、等々、鋭い指摘をビシビシと。
そんな小池修一郎さんと、近年の小池演出作品には欠かせない振付家の桜木涼介さん。
このシーンでは、現実と、剣心の過去......剣心の心の傷が浮かび上がる亡霊のようなものが、幻想的に舞台上に浮かび上がるのですが、その動きを小池さん、桜木さんが同時多発的にキャストにつけています。
ダイナミックな動きが次々とつけられていきます。
"剣心の影"の、松岡広大さん。
剣心の過去、心の傷の象徴である"影"。松岡さんがどう演じるのか楽しみですね。
宝塚歌劇団で上演されたものを元にはしていますが、稽古場の雰囲気は、新作を作り上げる過程そのもので、作っては壊し、別の角度からのトライアルを繰り返し...といったもの。
これらが、新橋演舞場の広い空間でどう見えていくのか。
宝塚の劇場とは違い、新橋演舞場にある客席を貫く花道はどう使われるのか!?
実際にどんな形で上演されているかは、現在上演中の新橋演舞場、もしくは11月から上演される大阪松竹座で、その目でお確かめください!
おまけ...
稽古場の片隅より。
斎藤一の剣技、「牙突」をやっている弥彦君(大河原さん)。
いやわかります、あれはやりたくなる!
そしてこちらは宝塚の先輩&後輩。
早霧さんと愛原さん。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
10月11日(木)~11月7日(水) 新橋演舞場(東京)
11月15日(木)~24日(土) 大阪松竹座