ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕が作・演出をする舞台『鎌塚氏、放り投げる』が、5月12日(木)、東京・本多劇場にて幕を開けた。倉持がはっきりと"コメディ"と銘打つのは、本作が初。
引退した父の後を継ぎ、羽島伯爵家に仕えることとなった鎌塚アカシ(三宅弘城)。羽島家には現在、当主のキシロウ(大河内浩)とオトネ(佐藤直子)夫妻が住んでおり、堂田テルミツ(片桐仁)とタヅル(広岡由里子)男爵夫妻が客人として招かれている。常に完璧な執事であろうと努めるアカシだが、さまざまな人物から、さまざまな仕事、それも執事の領域からかけ離れたような仕事を押しつけられる日々。そこに女中頭のケシキ(ともさかりえ)や、堂田家執事のスミキチ(玉置孝匡)までが加わって......。
まさにコメディである。これまでの倉持作品でも、もちろん笑いの要素は盛り込まれていた。しかし冒頭、アカシ演じる三宅が飛んだ瞬間、これまでとは確実に一線を画するものと予感させた。そしてそれは物語が進むにつれ、確信へと変わっていく。全体に漂うドタバタ感。同時に観る者の胸に沸き起こるワクワク感。難解と言われることも多い倉持作品だが、本作は目の前で繰り広げられる事件が、ただただ面白い。