【1789特集(6)】『1789 -バスティーユの恋人たち-』音楽監督・太田健さんインタビュー

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■ミュージカル『1789』2018年版特集vol.6■



フランス生まれ、日本では2015年に宝塚歌劇団で初演され、翌2016年には東宝版として新たに上演されたミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
待望の再演が現在、帝国劇場で上演中です!
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『1789』をはじめとするフランス生まれのミュージカルは、打ち込みなども多用された斬新なサウンドも印象的ですが、本作は特に、今までの日本ミュージカル界にはあまりない手法が取り入られ、音楽的にも面白いものとなっています。

その『1789』の音楽的魅力について、音楽監督の太田健さんにお話を伺ってきました!

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●太田健 プロフィール●
1970年大阪生まれ。京都市立芸術大学大学院、米国マネス音楽大学大学院で学び、2002年2月、宝塚歌劇団に入団。2004年1月、花組公演『天使の季節』で作曲家デビュー。『太王四神記』『オーシャンズ11』『るろうに剣心』『ポーの一族』など、小池修一郎の演出する一本立て作品で音楽を担当することが多い。また『スカーレット・ピンパーネル』などフランク・ワイルドホーン作品の音楽監督も多く務めるほか、SMAPの21枚目のアルバム『Mr.S』(2014年)に「Theme of Mr.S」を提供するなど、劇団外部でも活躍。
 

◆ 太田健 INTERVIEW ◆

 
―― まずは音楽監督とはどんなお仕事なのか、教えてください。

「基本的に、音楽全般を取り仕切るのが音楽監督です。特に外国の作品を上演する場合は...今回でしたら『1789』のフランスの著作元があり、それを上演する権利を日本が買います。それをまったくそのままやるのか、もしくは色々な手を加えてやるのかということを演出家(小池修一郎さん)と相談しつつ、音楽のアレンジに関する作業を進めていきます」


―― 『1789』はけっこう、日本版のアレンジが加わっていますね。

「演出の小池先生から「この曲はこちらに使いたい」「この曲はもっとこんなアレンジに変えて欲しい」ということがたくさん出てきますので、日本版はこんな形にしたいんだとフランスの著作権元に相談し、許可を得て、日本版の楽譜上のすべてをやっていく、というのが最初の仕事。そのあと、最終的に稽古場で全体の流れが固まった段階で、あちらの雰囲気そのままでやりたいものはそれを再現するオーケストラの譜面を書き、日本版アレンジや新曲は、イチからオーケストラのアレンジをする。歌のことは歌の先生がやってくださっているので、"それ以外の音楽のこと全般" ですね」1789_2018_05_02_2195.JPG


―― いま「あちらの雰囲気そのままでやりたいものは再現をするオーケストラの譜面を書く」と仰ったのですが、オーケストラは全部日本で録っているんですか? 私は『1789』は生オケではなく録音だときいて、フランスで使っていた音源をそのままもらってやっているのかと思っていたのですが。

「全部、こちらで録り直しています。『ロミオとジュリエット』からずっとその形です。プレイヤーも日本のスタジオミュージシャンの方たちです。「録音したものをあげるよ」とフランス側は言うんですが、でもやっぱりちょっとテンポ感が違うんですよね。フランス語だとあのテンポでいいけれど、日本語だと少しテンポを上げないと違和感がある曲があったり。ほとんどフランス版と同じテイストで良いものは頂いたものを使うことも出来ますが、そうなると今度は日本でったものと向こうでったものを混ぜることになる。そうするとどうしても音源の雰囲気が変わるので、結局、統一感を出すために全部、日本で作り直しています。ちなみに "打ち込み" も、日本でイチからやっていますよ


―― そんな苦労をして、全曲録音、打ち込み。生では出せない音があるということでしょうか。

「"リズムの感じ" ですね。コンピュータで作る音って、簡単に言うと「今風」。フランスのミュージカルは曲自体はとてもクラシックなのですが、ベースが今風のリズムなんです。そうすると、その音を生オケで出すことは難しい。フランスのオリジナルがもともと全曲録音で、やっぱりそれを基本として欲しいということなので。例えば『ロミオとジュリエット』などは、ロンドン公演はアレンジも変えてすべて生オケで上演していたりと、国ごとに色々なことをやっているのですが、日本版ではやはりオリジナル版の匂いそのままやりたいね、とプロデューサーや小池先生とお話して、録音でいくことになりました」


―― 特に初演の時は、帝国劇場で、生オケではなく録音ということに、ファンも様々な思いを抱いたと思います。うがった見方をすれば「経費削減ではないか」とか。

「帝劇という劇場は、もともとオーケストラを使う作りになっていますからね。ただ、この公演に関しては経費のために...ということはまったくなく、大元のフランス版がテープだからというだけなんです。実際に録音も、シンフォニー・オーケストラくらいの莫大な人数で、丸2日くらいかけてやっています。さらに全曲打ち込みをしていますから、経費的にはけっこうな額がかかっているんですよ」

―― そうだったんですね! 次に具体的に、中身についても伺わせてください。『1789』では、たとえばその曲を歌う俳優さん自身の声をコーラスとして録音に入れておくとか、今までの日本のミュージカルではあまりない手法を使っていますね。具体的に「この曲ではこういうことをやっている」ということをいくつか教えていただければ。

「まずロナン(小池徹平・加藤和樹)は、『二度と消せない』のサビで、ファルセットで、自分の声でハモリを入れてます。マリー・アントワネット(凰稀かなめ・龍 真咲)の『全てを賭けて』は2ヵ所、自分の声でのハモリを入れているのと、実際に舞台上での生声で音を伸ばしているところで、裏旋律を録音で歌っています。ここはわかりやすいかもしれませんね。ソレーヌのソニンさんが1幕で歌う『夜のプリンセス』では<追いかけ>が入っていますし、2幕の『世界を我が手に』は、ソニンさん自身の声を1オクターブ下に入れたり、同じキーを入れたりしています。自分の声を(同じキーに)被せて録音することで、本人がウワっと歌っているような効果が出せます。これはポップスの手法で、色々なJ-POPの歌手もよくされている。フランス版でもちょこちょこ入っていますが、面白いからもう少しやろうかと、日本版では増やしています(笑)」

ソニンさんが歌う『世界を我が手に』のシーン
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▽凰稀かなめさんが歌う『全てを賭けて』のシーン1789_2018_05_13_1TA_0090.JPG



―― そのあたりの効果の入れ方も、太田さんのアレンジなんですね。

「はい。あとはロベスピエール(三浦涼介)が2幕の最初で歌う『誰の為に踊らされているのか?』も、生で歌うメロディと同じメロディを録音で重ねていたり、ちょっとラップっぽいものが入っているところも、三浦さんご自身の声の加工です」

▽三浦涼介さんが歌う『誰の為に踊らされているのか?』のシーン1789_2018_05_16_2TD_0003.JPG


―― 『誰の為に踊らされているのか?』は、特に "今風" を感じます。

「そうですね、一番リズム的にも風変わりなロックですよね」


―― フランス版のCDを聴くと、かなりサラウンドな効果が入っていたりも。

「あれはCD化するにあたってエフェクトを加えていると思いますが、日本版も出来る限りその効果は出そうとしました。ただあまりやりすぎるとお客さんの目が回っちゃうので、そこは調整しつつ。あと、実際劇場だと、ステレオで(左右ずらして)流しても、センターに音が寄っちゃうんですよね。そこは「ふわっと」やっています。...ほかには、アルトワ役の吉野圭吾さんの『私は神だ』。あれは圭吾さんの声で3声、もともと録ってある。サビは圭吾&圭吾&圭吾、さらに生の圭吾さんの声が重なります。ハモリは全部圭吾さん(笑)! さらに「オラーンプ...」という呪文のような声も圭吾さんですし」

▽吉野圭吾さんが歌う『私は神だ』のシーン

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―― 吉野さんファンは必聴ですね(笑)。

「圭吾さんも喜んでくれて、「テープください」と、自分で録音したものを持って帰られました」


―― こういった手法は、生オケでは絶対にできない部分ですね。

「録音という手法でやると、そういう遊びが出来る。CDだといくらでも好きに録音できるじゃないですか。要するにポップスの作り方なんですよ。J-POPも自分でハモったり、同じメロディを被せて微妙な効果を出したりということはよくやっていること。フランスの《スペクタクル・ミュージカル》と呼ばれる作品たちは、ポップスの手法をふんだんに取り入れているんです。普段、生演奏でしかやらない劇場でわざわざ録音でやるのですから、「フランスの今のミュージカルはこういう感じなんですよ」というのを、少しでもお伝えできれば嬉しいですね」

※スペクタクル・ミュージカル...『十戒』『ロミオ&ジュリエット』『ロックオペラ モーツァルト』『太陽王』『ノートルダム・ド・パリ』など、2000年前後からフランスで作られだした作品群。特色としては歌手は歌に、ダンサーは踊りに専念することでそれぞれに注力できる作りで、1曲ごとに盛り上がるライブ要素が強い。


―― ちなみにコーラスも、録音ですか?

「基本的に全部、裏に(録音で)コーラスは入っています。キャストではなく、コーラス用のメンバーで録っています。通常のミュージカルでアンサンブルとして入るところを、今回はアクロバット専門のダンサーさんたちも多くキャスティングされています。舞台上で歌なんて歌ったことない方たちもいますし、くるくる回ったりしてもらわないといけないので(笑)、小池先生も元々は「コーラスは録音で」と仰っていたんですが...、『ロミオ&ジュリエット』の初演時に先生が突然「ダンサーにも歌ってもらおう」と言い出して。<R&Jダンサー>のみなさんも歌稽古をさせられていました。そうしたら皆さん、思った以上に声が出るし、リズム感も悪くないんですよ。その時の『ロミオ~』は録っておいたコーラスと(音量的に)半々くらい、もしくは録音の方が低いくらいです。やっぱり生で歌った方が臨場感が出ますからね。今回の『1789』もアクロバットチームが頑張って歌ってます。ただ宙返りしながら歌ってくれとはさすがに言えないので(笑)、足りないところは録音で補助していますが」


―― ではそのあたりも注意して聴いてみたいと思います。そして、開幕してからの太田さんのお仕事はどんなものなのでしょうか。

「音楽監督の仕事としては、初日のダメ出しが最後ですね。今回に限らず、生オケのときもです。私も宝塚に住んでいることもあり、ひんぱんに劇場に来ることは出来ませんので、開幕してからは、東京に来るときに顔を出し、気になったところがあれば言うくらい。特に今回は録音ですので、作ってしまえば「今日はテンポが速いな...」ということも起こりませんので、その意味ではキャストさんも安心なのではないでしょうか」


―― なるほど。では最後に、色々お話いただきましたが改めて太田さんが思われる『1789』の音楽的魅力とは。

「フランスミュージカルの魅力は、コンピュータの音と、生オーケストラの融合で、ミュージカルだけどコンサートのようにノリでガンガン押していくというところ。日本では、フランスで上演したそのままをやると少しストーリーがわからなくなるので説明を足していますが、コンサートのノリでミュージカルを観る、体感する、そういう見方で音楽を味わっていただけると面白いと思います。生オケのほっこりした感じとは違う、作られたサウンドでガンガン音を体感する感じになればと思って、音を作っています。「コンサートのノリで」というのは、やはり日本人は戸惑うところだと思いますし、演じる側もお芝居をひきずると、コンサートのようには歌えない。そこはキャストは毎日悩みながらやっていると思いますが、再演ですし、皆さん「こういうタイプの作品もある」と理解しやっている。さらに初演からの2年で経験も増え、歌唱力もすごくあがっているので、1曲だけを切り取ってもコンサートのように成立するようになっていますよ」


―― たしかにフランスだと実際、ミュージカルの劇中歌がいわゆるオリコンチャートのようなものにランクインしますよね。1曲ずつ切り取って成立しているからこそだと思います。

「どうやらそれを狙って作っているみたいですね。だからある意味、歌詞も一般的なものしか入れていないんです。人の名前や固有名詞はあまり出てこない。「あなた」「おまえ」で、"一般的にこれはラブソングです" という作り。先に曲あり、なんです。キャストも、そのノリは大事にして歌ってくれていますので、ふだんミュージカルを観ないお客さんにもぜひ音楽の力を体感していただければと思います」

  

取材・文・撮影(太田):平野祥恵(ぴあ)
舞台写真提供:東宝演劇部
 

【公演情報】
4月9日(月)~5月12日(土) 帝国劇場(東京)
6月2日(土)~25日(月) 新歌舞伎座(大阪)
7月3日(火)~ 30日(月) 博多座(福岡)

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【『1789』2016年公演バックナンバー】

# 製作発表レポート速報
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【『1789』2018年公演バックナンバー】

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