■ミュージカル『王家の紋章』#9■
連載開始から40年を迎える少女漫画の金字塔『王家の紋章』が、初のミュージカル化!
脚本・演出=荻田浩一、音楽=『エリザベート』『モーツァルト!』のシルヴェスター・リーヴァイという豪華クリエイター陣が、古代エジプトを舞台にした壮大なロマンを、この夏、舞台上に描き出します。
ビジュアル撮影レポートのラストは、アイシス役・濱田めぐみさんのご登場です。
アイシスは主人公であるエジプト王メンフィスの姉。
弟を愛し、ヒロイン・キャロルに激しい嫉妬を抱く苛烈な役。
そもそもがアイシスの呪いでキャロルは現代から古代エジプトにタイムスリップすることになります。
つまり、超・キーパーソンですね。
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
このミュージカル『王家の紋章』のビジュアル撮影、それぞれの俳優さんが本当に見事にそのキャラクターのビジュアルになっていて、撮影現場に俳優さんが登場するたびに「おおおお~...」となっていたのですが。
濱田アイシスのご登場もまた、「......アイシスだ......」「すごい...」という静かな感動が現場に広がっていました。
もう、この黒髪、アイメイク。どこからどうみても、アイシスですよ...!
古代エジプト王国の第一王女の風格!
前半の撮影は、動きがあまりない(体の向きなども細かく指定された)ものなのですが、その中でも手の表情などで、さまざまなバリエーションを生み出していく濱田さん。さすがです。
アイシスといえば常に怒りを湛えているような印象があるのですが、撮影では「柔らかい表情も欲しいです」とカメラマンさんからリクエストが。
それに応え、笑顔をみせる濱田アイシス。
この時のお気持ちなど、後ほどお話を伺っていますので、記事の後半でご紹介します。
後半はフリーセッションな撮影へ。
俳優さんが自由に動きます。
女優・濱田めぐみの身体から、アイシスの様々なドラマが生まれてくるようでした。
濱田さん、強さと悲しみを抱く女性の役柄、本当にお似合いですよね!
もちろん濱田さんにもお話を伺ってきました。
濱田さんと漫画の、意外な繋がりも...?
◆ 濱田めぐみ INTERVIEW ◆
――少女漫画である『王家の紋章』がミュージカルになる。このお話が来た時は、率直にどう思われましたか?
「まさかの!ですよね(笑)。『王家の紋章』は私も小さな頃からずっと読んでいて、結末がどうなるのかと楽しみにしているコミックです。しかも、自分の中で一番好きなキャラクターであるアイシスをやれるということなので、緊張もしますし、皆さんの期待に背かないように、と思っています」
――濱田さん、漫画お読みになるんですね(笑)。失礼ながら、私生活があまり見えない女優さんの代表格みたいなイメージで、"漫画を読む濱田さん"が想像できません。
「ふふふ。実は私も、"自分の私生活"が見えないんですよ(笑)。でも漫画はずっと好きです。『王家の紋章』はめちゃくちゃ読んでました! しかも私、高校を卒業したあと1年間、書店に勤めていて、コミックス担当だったんですよ。その時に、たくさんの出版社さんがある中で、全巻必ず揃えて置いていたのが、子ども向け漫画だと『ドラえもん』と『ドラゴンボール』。そして少女漫画では『王家の紋章』と『ガラスの仮面』と『ピグマリオン』! 私の趣味で並べてましたね~」
――色々と、意外です...!
「『王家の紋章』は私の趣味で並べてましたが、よく売れてもいました。"大人買い"をする人が多くて。最初の5巻くらい買っていただくと、あとはガン!と続けて(売り上げが)出るんですよ(笑)。だから平台に積んだりもして(笑)」
――そして、アイシスはお好きなキャラクターでもあると。どのあたりがお好きなんでしょう?
「キャラクターがまず、強烈ですよね。私が一番衝撃的だと思ったのは、暴君が成すようなことを、女性であるアイシスがやっちゃったりするじゃないですか。でもそれは裏返せば、彼女が守らなければいけない国とか政治とか、愛する弟を、自分の命をかけてでも守っていくという信念の表れ。その彼女の生き様が、ものすごく心に響きました。現代ではそんな生き方をする状況も必要性もないですから、彼女の生き方はすごく斬新ですし、性別を抜きにしてもかっこいい。自分には出来ないその生き方に、憧れを抱きます。あとは"自分の弟を愛してしまう"という状況ですね。昔はそういう結婚も普通にあったとはいえ、今の感覚だと「おぉ...」ってなりますよね(笑)」
――撮影の際、柔らかい表情も...と言われて、微笑みとともに赤ん坊を抱くような腕になったのが印象的でした。
「基本は、キリっとした女性だと思うんです。彼女は祭祀で、星を読みながら国の政治を操る。国の動きも、彼女が「こういう風にやる」と言ったものに決まっていったと思う。もともと原作を読んでいましたし、アイシスのオファーを頂いたときから、私の中のアイシス像は出来上がってきているんですが、先ほど「柔らかい表情を」と言われた時に、"母性"が浮かび上がってきたんです。やっぱり女性というのは母親になる権利を持って生まれてきている。アイシスの中で柔らかいもの、温かいものといったら、やはり手に入れることができない"母親"ということだと思ったんです」
――同時に、寂しそうでもありました。
「そうなんですよね。なぜ手に入らないかというと、それはやはり唯一「この人の子を産みたい」と思ったのが弟である若き王であるから。叶うはずがないとうすうす感づいているんだと思うんですよ。だからカメラマンさんに「柔らかい表情を」と言われた瞬間に、自分はこのおなかに愛する人の子を宿すことは出来ない、という気持ちがふっと出て来て、すごく悲しくなりました。...彼女の寂しさや孤独はなくなることはないと思った。ちょっと、国と結婚をしたイギリスのエリザベス一世にも共通するところがあると思います。撮影現場にあった公式ファンブックを見たら"私は女王アイシス、死など恐れもしない"と書いてあって、「やっぱりそうだよな」って思ったんです」
――すごく深いお話をありがとうございます。少し話題を変えますが、この物語、現代に生きるアメリカ人少女のキャロルが、古代と現代を行き来して物語が進んでいきますが、実はアイシスも数少ない、両方の時代をまたにかけるキャラクターですよね。
「そうなんですよ、アイシスが現代に行かないと物語が始まらない! でもこのメイクで、現代側に行くのかなあ、私(笑)? このミュージカルではどうなるんでしょうね? 今まで様々な作品に出させてもらい、色々な時代を生きてきましたが、現代と過去を行き来し、両方でリアルな世界が繰り広げられている...というのは面白い経験になると思います。しかも行ったり来たりできるのがキャロルと自分で、そのキャロルは言うなれば敵ですから。嫉妬とか憎しみとかを抱いている相手。役としてもすごく面白いですし、どんどん掘り下げることができる役だと思います。どこまで深さを出せるか、挑戦です」
――そして濱田さん、意外なことにリーヴァイ作品へのご出演は初です。
「そうなんです。でも以前、私がマダム・ドファルジュという役で出演した『二都物語』(2013年)をリーヴァイさんが観てくださって、その時に強い地声が出る女優がいるなと思ってくださったそうです。いつか一緒にやりたいね、というお話をしていて、今回ようやくお互いの夢が叶います」
――リーヴァイさんの作る音楽にはどんな印象を抱いていますか?
「フルオーケストラにすごく合う曲。ビロードのように高級感があり、ドラマチック。しかもそのドラマは断片的じゃなく相対的。なおかつテクニック的にはすごく難しく、歌いこなすのは大変......そんなイメージです」
――すでにこの作品に関して、何かお話はされていますか?
「一度お会いして、"僕はこういう感じで、こういう曲にしたいと思っている"という構想などを、お聞きしました。しかも私がリーヴァイさんご本人に「めちゃくちゃ難しい曲を、この世のものとは思えない曲を作ってください」って言っちゃったんですよね(笑)! そうしたら「オッケー!」って仰ってました。ですからそれも楽しみですし、アイシスというキャラクターに対して書き下ろしてくださっている曲を、初めて歌えるという喜びがあります。大切に、話し合いながら、リーヴァイさんが歌って欲しいように私も歌いたいし、表現していきたいです」
――『デスノート』の時も、あれはフランク・ワイルドホーンさんの作曲でしたが、濱田さんはオリジナルキャストとして出演されていました。その時のレムの曲は絶対に濱田さんの声質に合わせて作られたんだろうな...という、ぴったりな楽曲で感動しました。
「そうでしたね~! フランクの場合は、たくさんお仕事をしていますし、私の声質を知ってくださっている。彼はよく、歌う時に"泣け"って言うんですよ。泣きの声で歌え、って。私のその声が、彼の音楽のテイストに合うみたい。でもやっぱり、自分にあてがって書いてもらった曲は、ものすごく歌いやすいですし、普通に歌っても、作曲者が歌って欲しいように自然と歌えるようになっているんです。ですので、今回リーヴァイさんがどんな風な音楽を作ってくださるのか、すごく楽しみです。本当にどうなるんでしょう、"想像できるけど、想像出来ない!"というワクワク感でいっぱいです」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・8月5日(金)~27日(土) 帝国劇場(東京)
※8/3(水)・4(木)プレビュー公演あり
一般発売:5/28(土)
★ぴあ貸切公演 プレリザーブ受付決定!★
【対象公演】8月16日(火)13:00
【プレリザーブ受付日程】5/13(金)11:00~5/19(木)11:00
【『王家の紋章』バックナンバー】