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2016年に続き2回目の開催となる、「観て」「踊って」「過ごして」体感する新時代の若手ダンスフェスティバル「DANCE×Scrum!!!」ダンスカンパニーBaobabが主催し、ディレクター北尾亘が務める。
第2弾のテーマは、「パフォーマンス空間、アーティスト同士の"×(クロス)"」。舞台と観客の境界線を越えて躍動する身体の熱と熱が交差するここだけのコラボレーションが見所だ。

ディレクター北尾がステージプログラムでコラボレーションするのは、ともにコンテンポラリーダンスの若手振付家として活躍する中村蓉
創り手としてだけでなくダンサーとしても活動しているほか、演劇作品への振付やワークショップ講師など活動は多岐にわたる二人。初のコラボレーション、どのような創作を行っているのか?稽古場見学とともにロングインタビューを行った。

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それぞれがオリジナルの振付を創り互いに教え合う。性別も体型も、踊りのルーツも異なる二人は、「やりづら〜い!!」「早くてついていけない〜!」などと漏らしながらも、みるみる自分の身体に振付をフィットさせていく順応性はさすが。二人で選曲した軽快な音楽に合わせ互いのカラダを共鳴させるようにその瞬間を純粋に楽しんでいる。日々ダンサーの身体に向き合っている二人だからこそ、阿吽の呼吸や間合いで絶妙な距離感と時間の流れが生み出されていく。瞬時に振付家とダンサーの役割が入れ替わり、ときにミックスされている様子は非常に興味深い。

―2016年のDANCE×Scrum!!!はどうでしたか?

中村前回のテーマだった「横で繋がる」というのがとても新鮮だったの!競うのではなく、肩を組んで一緒にやろうという感覚が発見だったし共鳴した。私だったらせっかく大きな劇場を使えるなら独り占めしたくなっちゃうかも(笑)。でも当時は作品創作がけっこう大変で、フェス全体に100%参加しきれなくてすごく後悔した。もっと盛り上げられたのにな〜、って。でも、前回の作品は自分の挑戦的な創作が観客に伝わった実感があってとても大事な作品になったから、何かあるたびに思い出すんだよね。それはスクラムが[挑戦できる場だったから]だと思う。

北尾すごい嬉しい!前回は初めてで色々手探りだったから、みんなを巻き込みきれなかった部分もあって、今回は前回以上にムーヴメントの渦を起こしたくて、"×(クロス)"をテーマにしたんだよね。

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――2011年の『ヴィラ・グランデ青山~返り討ちの日曜日~』、2015年の『ブロッケンの妖怪』に続き、3作目の竹生企画です。これまでの手応えは?
倉持 いや、よかったと思いますよ。
生瀬 まぁ「ちょっと手応えは......」とか言われてもね(笑)。
倉持 なんで3回目やるんだって話ですよね(笑)。ただ自分の中ではちょっと落ち込むところもあって......。
生瀬 そうなんですか!?どこどこ?
倉持 竹中さん、生瀬さんが強力なので、助けられ過ぎているなって実感はあります。あまり面白くないところも面白くしていただいたりして。
生瀬 謙虚ですねぇ。だって倉持さんが自分で書いて、自分で演出しているわけですから、それはおかしな話ですよ。僕らはただの素材であり、どう料理するかは倉持さん次第。だから面白いのは全部倉持さんの手柄です!
倉持 はい、ありがとうございます。

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――竹生企画に書き下ろす上での面白さとは?
倉持 まずあまり気を遣わなくていいっていう安心感はありますよね。これ出来るかな?みたいなことが、おふたりに関してはありませんから。
生瀬 倉持さんの中には竹中さんのイメージ、僕のイメージってものがあるわけですよね?
倉持 ありますね。
生瀬 それが僕は面白いんですよ。台本を読んだ時に、自分ってこんなふうに見られているんだなって。
倉持 ただ竹中さん、生瀬さん、それぞれにというよりかは、おふたりの関係にあてて書いている感じですね。生瀬さんの方が引っ張っていくタイプかな、とか。
生瀬 竹中さんはすごくシャイですけど、僕は結構破壊しちゃうタイプですからね。その点、竹中さんにとって僕は、ものすごく苦手な人間だと思う(笑)。
倉持 竹中さんは一つひとつ、きっちりとした自分の世界観を持っていますからね。そこを生瀬さんにどんどん土足で踏み込まれ、崩されてしまう(笑)。でもそういうのって、書いていてやっぱり面白いんですよ。

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――今回竹中さんと生瀬さんは、とある事故で生き残ったふたりという設定ですね。
倉持 ええ。前回、前々回が腐れ縁のふたりという設定だったので、今回は赤の他人にしようと。ただ九死に一生を得たという強烈な共通項があれば、ひとつ確かな核になると思ったんです。
生瀬 僕の中には昔からずっとあたためていたお話があって、それを倉持さんにお伝えしたんです。帰りの燃料を積まないで目的地に向かった宇宙船のお話なんですが、今回倉持さんからうかがっている内容とは全然違う。でもタイトルに"火星"が入っていたりして、僕の夢が実現しているような気がします。
倉持 実は竹中さんからもSF的なお話がありまして、それで『火星の二人』というタイトルにしました。火星って30年に2回だけ地球に大接近するらしいんですけど、なんかそれもいいなと。ふたりは他人なんだけど、15年前にも強烈な接点があった、みたいな話になると面白いと思ったんです。

――その事故をきっかけに、物語はどういった展開を見せていくのでしょうか?
倉持 竹中さんの家族のもとに、生瀬さんが居候として割り込んでくることになります。しかも竹中さんの家に入れてもらえなかったので、庭にテントを張って居候を始めるという......(笑)。
生瀬 ハハハ、テント面白いですね。で、竹中さんが"なぜ人の家にテントを張っちゃいけないのか"をキチンと説明したりして。
倉持 そうそう。それだけで面白くなると思うんですよ。テントを張るか、張らないかだけで、15分はいけると思います(笑)。

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――おふたりのやり取りがこれまで以上に楽しめる作品になりそうですね。
倉持 そうですね。これまでの中では一番ふたりのシーンが多くなると思います。3回目にして、"竹生企画"の名に偽りなしの芝居になるかなと。
生瀬 たぶん竹中さんは嫌だと思いますけどね(笑)。これまでもふたりきりは嫌だって、他の役者を呼んでいるわけですから。
倉持 上白石さんも竹中さんのご紹介ですが、いい女優さんですよね。かわいらしいし、芝居も出来るし、新しい方とご一緒できるのも楽しみですね。

「火星の二人」東京公演は、2018年4月10日(火)から25日(水)までシアタークリエで行われる。

(取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己)

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mozart_04.jpg ミュージカル「モーツァルト!」製作発表 山崎育三郎

山崎育三郎、古川雄大がヴォルフガング・モーツァルトを演じるミュージカル「モーツァルト!」の製作発表が行われ、劇中の3つの楽曲がメインキャストによって歌唱披露された。

本作は「エリザベート」「レディ・ベス」などを手掛けてきたミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)と、シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)のタッグによる作品。

日本では2002年に上演されて以来、再演が繰り返されてきた大ヒット作だ。

これまで、中川晃教、井上芳雄、山崎育三郎がタイトルロールを演じてきたが、今回は新たに古川雄大が加わり、山崎育三郎と共にWキャストでヴォルフガングを演じる。

妻のコンスタンツェ役は前回に引き続き平野綾が演じ、さらに生田絵梨花 、木下晴香がトリプルキャストで演じる他、和音美桜、涼風真世、香寿たつき、山口祐一郎、市村正親らが出演する。

 
本作の製作発表が行われ、劇中曲 3曲が歌唱披露された。動画はこちらをダイジェストにしたもの。【動画2分】

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(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ

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■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(4)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。日本を代表するミュージカル俳優、そして演劇にとらわれない活躍をする役者・歌手のみなさんが揃う日本初演。観劇の組み合わせに迷っている方も多いのでは?

げきぴあキャストインタビュー第四弾は、Wキャストでバート役を演じる柿澤勇人さん!。自身とバートの違いや、オーディション期間中のある演出家の方からのアドバイス、そして柿澤さんの思う『メリー・ポピンズ』日本初演への意気込みをお伺いしました。

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表より"

子供と同じ目線でいることがバートを演じる上での第一歩に

――『メリー・ポピンズ』との出合いは?

「22歳の時、劇団四季を辞めてすぐにニューヨークへ行ったんです。で、その時最初に観たのが『メリー・ポピンズ』。向こうの友達には、『着いたその日に舞台を観ても絶対に寝ちゃうからやめた方がいいよ』とは言われていました。でもマンハッタンに降り立った以上、どうしてもミュージカルが観たくて。とりあえずよさそうだなと選んだ作品でしたが、これが本当に面白くて、もちろん最後まで寝ることもなく。時差ボケにも負けないほどの魅力が『メリー・ポピンズ』にはあると思います(笑)」

――そんな作品にご自身が出演することになるとは、不思議な縁ですね。

「はい。もちろん当時は自分がバートをやるなんて思っていませんでしたし、オーディションが始まった時も僕はバートじゃないと思っていたんです。というのも劇団四季を退団してから、闇のある人間ばかりを演じてきたので(笑)。また自分自身、そういう役を得意としてきたと思いますし。でも親しい演出家の福田雄一さんにオーディションの話をしたら、『やんちゃなところとかチャーミングなところがカッキー(=柿澤)にぴったりだと思うし、絶対にバートはやった方がいい』と言ってくださって。自分がチャーミングだとは思いませんが(笑)、この役を通して新たな自分を発見出来るかもしれないなと思ったんです」

――オーディションにはどんな思いで臨んでいたのですか?

「『ラディアント・ベイビー』(16年)という舞台でアキレス腱を切ってしまい、今回のオーディションでも踊れない時期が結構あったんです。正直これはダメだなという思いもあったんですが、逆にいいこともあって。アキレス腱切断という役者人生最大の絶望を味わったせいか、それ以降あまり緊張することがなくなったんです。ちょっとくらい失敗しても、なるようになるかって思えるようになって。今回のオーディションでもまったく緊張しませんでしたし、楽しむことすら出来た。それが結果的にいい方向に働いたと思いますし、アキレス腱のことがなかったらバート役との向き合い方も違っていたと思います」

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』より 柿澤バート&平原メリー"

――バートを演じる上で足がかりになりそうなこととは?

「いわゆる二枚目でもないし三枚目でもない、何とも言えない役どころですよね。でもやっぱりチャーミングなところが魅力なのかなと。こんなに闇のない役を演じるのは初めてですが(笑)、オーディションの時に感じたのは、子供たちとの交流を大事にしていきたいなということ。きっとバートが小さい時はこういう子供だっただろうし、常に子供と同じ目線でいることが、バートを演じる上での第一歩になるのではないかと思います」

――バートのシーンやナンバーで楽しみにしているのは?

「僕が一番楽しみであり、恐れてもいるのが(笑)、逆さまに吊られながら天井でタップを踏むという大ナンバー『ステップ・イン・タイム』。高いところは別に大丈夫なんですが、これまで逆さまに吊られてタップを踏むって経験がないですからね(笑)。ただバートの一番の見どころですし、ショーストップ出来るほどのナンバーでもあると思うので、ぜひ成功させたいなと思います」

――日本初演の『メリー・ポピンズ』がいかなる舞台になるのか、期待は高まります。

「歌あり、ダンスあり、芝居ありっていう、ミュージカルのすべての要素がフル稼働して成り立つ作品です。その分、ロンドンやニューヨーク公演のクオリティに達するまでには、みんなが本当に努力しないといけなくて。ただやるからには必ずその水準まで引き上げてみせますし、日本ならではの『メリー・ポピンズ』をぜひ楽しみにしていただけたらと思います!」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

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第6回目を迎えた、"15分編集なしの演劇動画を競う"《クォータースターコンテスト》の結果発表と授賞式が昨年12月に開催されました。

 

クォータースターコンテスト(以下QSC)は、演劇・舞台系動画のニュースサイト・エントレが2012年に立ち上げたコンテストで、グランプリを獲得すると賞金30万円が副賞として授与されます。

 

審査員は演劇・映像分野で活躍するクリエイターが務め、第6回は、初回から続投の鴻上尚史さんをはじめ、第3回から参加している映画監督の行定勲さん、初参加の福原充則さん桑原裕子さんの4名が担われました。

 

今大会の投稿作品数は81本、そのうち事前の選考で選ばれたノミネート作品は11本。
審査方法は、ノミネート作品の中から各審査員が1位から3位までの順位を決め、総合点数がもっとも高い作品がグランプリとなります。
その結果、グランプリは劇団子供鉅人の山西竜矢さんの作品「さよならみどり」が獲得しました。

 

第6回クォータースターコンテスト(QSC6) 結果発表はコチラ

 

さて、QSCにはもうひとつ、協力団体が選出する各賞があります。
第6回は、8つの団体が賞を設け、6作品が各賞を受賞しました。(2団体の賞は該当者なし)

 

げきぴあは第1回目から参加させていただいておりまして、選定基準は「この団体、あるいはクリエイターが創った本物の舞台が観たいかどうか」です。が、過去の受賞作には舞台での上演は難しい作品もありましたので、今回は原点に立ち返り、【げきぴあ賞】を選ばせていただきました。

その結果、第6回QSCの【げきぴあ賞】はくちびるの会「ポスト、夢みる」に決定いたしました!!

 


  

◆『ポスト、夢みる』

 

  

昔ながらの赤いポストを女性に見立て、郵便局員・白ヘルへ抱く淡い恋心と、移りゆく街の風景を重ねた切ない物語。ノスタルジックなタッチで描かれた背景のイラストが時間の経過で変化する様や、照明の使い方が印象的で、全体の構成もうまくまとまっていました。特に、夕日に染まったポストと白ヘルとのやりとりは秀逸です。

 

[動画作品情報]
撮影カメラ:iPhone7
作・演出 山本タカ
ポスト:橘花梨
白ヘル・学ラン:佐藤修作
演出助手・音響:佐野七海
音楽:朝日太一
イラスト:やだともか
小道具:北澤芙未子
機材協力:エイプリルズ
協力:イトーカンパニー、エイプリルズ、ゴーチ・ブラザーズ、四次元ボックス

 


 

【げきぴあ賞】の副賞はインタビュー掲載です。
本作の作・演出を務めた山本タカさんにお話しを伺いました。

 

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romale_02.jpg ミュージカル「ロマーレ」製作発表 花總まり、松下優也

ミュージカル「ロマーレ」の製作発表が行われ、花總まり、松下優也らが劇中歌を披露した。

本作は19世紀に描かれたメリメ原作の「カルメン」をベースに、カルメンがロマ族として当時の社会でどのように生き抜いてきたかに注目し、小説やオペラで描かれていない部分をより強く描く。

演出・振付はTSミュージカルファンデーションの謝珠栄。

出演は宝塚歌劇団「激情-ホセとカルメン-」(1999年)でカルメンを演じた花總まりが、今作でもカルメンを演じる。
またNHKの朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」に栄輔役で出演した松下優也がホセを演じる他、伊礼彼方、KENTARO、太田基裕、福井晶一、団時朗らが出演する。

 
本作の製作発表が行われ、劇中に登場する2曲が披露された。【動画2分】

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(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ

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現代演劇の手法で古典の可能性を探る木ノ下歌舞伎がKAAT神奈川芸術劇場に初登場する。

上演するのは歌舞伎十八番 『勧進帳』
兄・源頼朝と不仲になり追われる身となった義経ら一行が山伏と強力に変装して安宅の関に差し掛かり、頼朝の命を受けた富樫左衛門と対峙するさまを描いた歌舞伎の中でも上演頻度の高い人気の演目だ。
木ノ下歌舞伎では2010年に初演後、'16年に完全リクリエーション版として上演。今回はその1年半ぶりの再演となる。演出・美術の杉原邦生に、創作の意図や作品の狙いを聞いた。

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ーー'10年に初演した 『勧進帳』 を、6年後に作り直した理由は何ですか?

 
 '10年の 『勧進帳』 は、木ノ下歌舞伎で初めて完コピ(歌舞伎の舞台映像の動きや言い回しを完全にコピーして演じること)を稽古に取り入れた一方、台詞の一部を現代語にした最初の作品でもありました。それまでは、演じるのが現代劇の俳優なのでイントネーションは現代的にしていたものの、台本は全て原語のままで上演していたんです。
でも、僕はそこに違和感を覚え始めて、完コピ稽古を提案しました。だから、僕と(木ノ下歌舞伎主宰の)木ノ下(裕一)くんにとって 「木ノ下歌舞伎の第二章が始まった」 と言えるエポックメイキングな作品になりましたし、初演が終わった直後からもう一度上演しようと話していたんです。ところが再演にあたり、初演の映像を見返したところ、凍えるくらいひどく思えて(笑)。
木ノ下くんにすぐ電話をして 「ヤバイよ」 と言うと、「いやいや、それは邦生さんが演出家として成長したからですよ、だいじょうぶです」 。その木ノ下くんもそのすぐ後映像を見て 「邦生さん、ヤバイですね」 って電話してきた(笑)。それで作り直すことになりました。

 

ーー具体的にはどこをどう変えたのでしょう?

 
 上演台本を全て現代語に直しました。今、僕の演出で言葉を一つ変える場合には、変えることによってその前後はもちろん、作品全体の中で何がどう変化するかを色々な方向から考えてジャッジしているんですが、初演時は言葉を変えること自体が初めてだったので、その新鮮な楽しさゆえに「面白い!」 と思ったらすぐOKを出していたんでしょうね、言葉の選択が甘かった。わざわざ台詞を現代語にした理由も曖昧でした。そこで'16年の稽古では「台本を全て口語にして、それでも歌舞伎と言えるかどうかを試したらどうだろう?僕が上演台本を書くから」 と提案したんです。やってみると、言葉を変えたことで演出の選択肢が広がり、自由になった感覚がありました。そうなると美術も、停止線が真ん中にあって矢印が書かれている"道路"を模した初演のものだとイメージや空間の持つ方向が定まってしまい、せっかく得た自由度を制限している気がしてきた。
発想を変え、初演からの舞台両側を客席が挟んでいるという空間構造は変えず、"境界線"というテーマをさらに推し進めて、細長い舞台そのものを真っ白な一本道の"ボーダーライン"に見立てて、その上で人々が揺れ動くさまを描くことにしました。

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ーー初演からの"境界線"というテーマは、どこから来たのでしょう?
 

 木ノ下くんからの提案です。『勧進帳』は、物語で言ったら「関」という境界線を越えるか越えないかだけのドラマ。でもそこには、義経VS弁慶たちの主従関係だとか、富樫VS義経・弁慶の対立関係だとか、たとえ心を通わせ合えたとしても越えられない様々なラインがある。さらに僕らは、初演でもリクリエーションでも弁慶役にアメリカ人俳優をキャスティングすることで、国籍や人種の要素を入れました。

リクリエーション版では弁慶をよしもとの芸人でもあるリー5世さんが演じてくれてます。また、初演では女優が演じた義経役を、リクリエーション版ではニューハーフの俳優、高山のえみさんにお願いしました。性の境界線を内包する人を新たに入れることで、より複雑で現代的な作品になったと思います。

ーー'16年のリクリエーション版を豊橋で拝見しましたが、現代的な感性での原作への言及や補足がかなり入っていると感じました。

 古典をやる際、その時代と今とではモラルも価値観もまったく違ってリアリティを感じにくいので、そこをどう噛み砕くかが重要だと考えています。一番多く書き足したのは、富樫と共に関を護衛している番卒や、義経に付き従う四天王たちの台詞。とにかく主役を目立たせるスターシステムの歌舞伎では、彼らにはほとんど台詞がないんですが、彼らを丁寧に描くことで弁慶・冨樫・義経の存在感がさらに際立つと考えました。具体的にいうと、例えば番卒たちが関所にいる間、そうしょっちゅう山伏が通るわけでもないだろうし、待っている時間が長くなればイライラもするだろうから、彼らの中で小さなぶつかり合いとかも当然あっただろうと想像して、そういう台詞を書き足したんです。その番卒たちと対になる四天王たちもキャラクターを様々に肉付けしました。これはとても楽しい作業でしたね。

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ーー一方、富樫に促されて弁慶が勧進帳を読み上げるくだりなどは、現代語とはいえ、原作通りの難解な内容になっています。

 
 "勧進帳の読み上げ"と"山伏問答"の場面は、木ノ下くんが直訳してくれたテキストをもとに、できるだけ分かり易い言葉にしました。さらにアメリカ人であるリー5世さんが言いづらい単語は変えたり入れ替えたりしていますが、それでも馴染みのない専門的な仏教用語などもたくさん出てくるので、難しいですよね。でも、そんな難しい内容を窮地に立たされた弁慶がとっさの判断ででっち上げたという凄さは伝わると思います。

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ーー様々な工夫を凝らして作り上げたリクリエーション版。観客の反応はいかがでしたか?

 
最初に上演したのが松本のまつもと市民芸術館だったのですが、とにかくお客さんがすごく盛り上がってくれました。ちょうどその時、同じ劇場の主ホールで串田和美さん演出の『四谷怪談』を上演していたので、出演していた中村勘九郎さん、中村七之助さん、中村扇雀さん、中村獅童さんといった歌舞伎俳優や、付き人さんや裏方さんたちまで観に来てくれて、客席で大歌舞伎公演ができるくらいのすごい顔ぶれでした。

七之助さんは「歌舞伎を現代化していると聞いて、正直スカした奴らなのかと思っていたけれど、ちゃんと歌舞伎だし『勧進帳』 だった 」 と言ってくださり、2晩続けて足を運んでくれました。また、終演後に行った飲み屋で偶然お会いした扇雀さんは、いかに面白かったかを1時間ほど熱く語ってくださいました。歌舞伎俳優の皆さんに観ていただけた上に、そういう感想をいただけたことは、単純にとても嬉しかったですね。

普段から木ノ下歌舞伎を観てくださっているお客さまからは 「一つの到達点だね」 という声が多かったです。それは僕らも感じていて、ちょうど'16年は木ノ下歌舞伎結成から10周年だったのですが、10年の間に様々なことを試してきた蓄積があって、僕と木ノ下くんの中で 「ここまでやっても大丈夫、歌舞伎と言える」 みたいなラインを共有していたからからこそできた作品だったと思います。

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ーー今回、関東では初上演。どんなことが伝わればいいなと思いますか?

この 『勧進帳』 には僕が演劇で表現し続けたいことが詰まっている気がするんです。例えば、僕は善/悪の二項対立が嫌いというか、そんなに単純に分けられないだろうって思うんです。それぞれにそれぞれの正義があり正解があると思う。それらがぶつかった時、相手の正義や正解を受け容れることができないから争いが起きるわけですよね。そうした対立が取り払われた平和な社会、つまり人間同士が互いを尊重しあえる社会の実現に、演劇が力を持てたらいいな、というのが、僕が演劇を続ける理由。と言いつつ、実際には、この世界に人間がいる以上、そんな社会が実現することはないとうこともわかってます。でもきっと、『勧進帳』の登場人物たちもどこかでそういう平和な世界を望んでいたんじゃないか。様々な境界線を越えた先に、皆が輪になって踊れるようなハッピーな世界があると思いたかったんじゃないか。そんなことを現代のお客さまにも感じてもらえたら嬉しいです。それが古典の面白さであり、カッコ良さだと思うので。

取材・文:高橋彩子

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木ノ下歌舞伎

『勧進帳』


【公演期間】
2018年03月01日(木)~2018年03月04日(日) 

【会場】

KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

【監修・補綴】
木ノ下裕一

【演出・美術】
杉原邦生[KUNIO]

【出演】
リー5世
坂口涼太郎
高山のえみ
岡野康弘
亀島一徳
重岡 漠
大柿友哉

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■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(3)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。映画で慣れ親しんだ名曲たちはもちろん、舞台ならではのダンス、演出を楽しみにしている方も多いのでは?

げきぴあキャストインタビュー第三弾は、Wキャストでバート役を演じる大貫勇輔さん!海外のスタッフからも「見た目が完璧にバート」、「絶対にバート役に合う」と太鼓判を押されていたそう。そんな大貫さんが自身に思う課題、そしてダンサーとして活躍してきたからこその目標について語ってくれました。

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表より"

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

――本作のオーディションは非常に長期間にわたって行われたそうですね。

「はい、正直1回目のことはあまり覚えていないくらい(笑)。でもこれだけやったからこそ受かりたいし、最後の方は必ず受かるつもりでいました。向こうのスタッフの方にも、『君は見た目は完璧にバートだし、絶対に合うと思う』と言っていただいていましたし。ただ僕の課題はとにかくずっと"歌"だったんですよね。歌の先生にも、『芝居をするように歌って欲しい』と言われていて。それはマシュー(・ボーン)の振付にも通じるものだと思うので、しゃべるように歌ったり、しゃべるようにタップを踏んだりってことはこれからも意識していきたいです」

――長いオーディションを経て、ついにバート役に決まった時の心境は?

「本当に素晴らしい作品ですし、しかもその日本初演に参加させてもらえることがとにかく嬉しかったです。今この役をやれるか、やれないかっていうのが、僕のこれからの人生を大きく変えるんじゃないかとすら感じていたので。ただ今はまだスタートラインに立ったばかり。これからいかに結果を残せるのか、お客さまに感動を与えられるのか。そして『世界を通して一番動けるバートだったね』と言ってもらえるよう臨んでいきたいです」

――演じられるバート、現段階ではどんな人物だと捉えていますか?

「ものすごく出番が多いというわけではないんですが、そのかわり強い印象を残す大事な人物だと思うんです。とても愛されるキャラクターでチャーミングだし、おバカなことを言っていたかと思うと、とても大切なことを敬意を持って伝える紳士だったり。家族が崩れてしまいそうな時にうまくサポートをしてくれる存在でもあって。そんなバートをいかに魅力的に演じられるか。それが大きな課題であり、自分自身楽しみなところでもあります」

――バートは本作で、ユーモアの部分を担うキャラクターでもありますね。

「ええ。ただバートって、いわゆるコミカルな動きをしてはいけないんです。つまり外側からのユーモアではなく、内側からにじみ出るユーモアでなければいけなくて。そこはやっぱりイギリスの作品であり、まずはお芝居ありき。僕はダンサーであるがゆえに外側からやってしまう癖があるのですが、バートの内面にしっかり目を向けて、なぜそこにユーモアがあるのか。これからじっくり読み解いていきたいと思います」

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』より 大貫バート&濱田メリー"

――バートの好きなシーン、ナンバーを教えてください。

「『ステップ・イン・タイム』という映画版にもあるナンバーですが、舞台版ではバートが逆さまに吊られつつ、天井でタップをするという大ナンバーなんです。命の危険ももちろんありますが、吊られてタップを踏むなんて経験そうないですからね(笑)。すごく楽しみです。ただ僕のダンス人生の中で、最も苦戦しているのがこのタップでもあって......。タップってダンスというよりも楽器なんですよね、足の打楽器。正確にリズムをキープしつつ、ダンスとしての表現もしていく。すごく大きな挑戦ではありますが、特に『ステップ・イン・タイム』は盛り上がるナンバーなので、お客さまが熱くなれるよう頑張りたいです」

――柿澤勇人さんがWキャストでバートを演じられます。

「カッキー(=柿澤)とのWキャストというのは、間違いなく大きなプレッシャーのひとつですね。絶対に比べられるものですし。ただ僕はダンスが得意なので、そこをうまく伸ばしつつ、歌の部分でいかにカッキーに近づけるのか。さらにカッキー以外にも素晴らしいキャストの方が大勢いらっしゃるので、皆さんのいいところはどんどん盗みつつ、この作品での経験を通して自分も成長していきたいなと思います」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

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ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』
が現在、東京・シアタークリエで上演中だ。2015年にトニー賞5部門を受賞した作品を、新国立劇場次期芸術監督就任も予定されている気鋭の演出家、小川絵梨子が演出する注目作。小川はこれがミュージカル初演出。出演は瀬奈じゅん吉原光夫大原櫻子紺野まひる上口耕平横田美紀ら。05t_1651.jpg04_0155☆.jpg


原作は、アリソン・ベクダルの自伝的コミック。レズビアンである漫画家・アリソンは、ゲイである父ブルースが自ら命を絶った43歳という年齢になり、父との思い出、家族との思い出をたどる記憶の旅に出る。記憶の折々の場面で、父は何を考えていたのだろうか。そして死の瞬間は何を思っていたのだろうか......。05t_1605.jpg

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――倉持裕さん作・演出の舞台へは、なんと6年連続の出演になるとか。
竹中 本当に大好きなんですよね、倉持さんの世界観が。倉持さんの書く言葉やリズム感も好きです。あと演出中に「うん、いいです」って言ってくれる声の音色とその横顔も好きで(笑)。倉持さんの描く世界に本能的に惹かれます。これからも倉持さんの世界を追求していきたいですね。

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――上白石さんは倉持さん作品をご覧になったことはありますか?
上白石 はい。竹生企画では『ブロッケンの妖怪』(15年)を観に行ったんですが、本当に感激して! すごくシンプルなストーリーでありつつ、人間味もあり、しかもひと筋縄ではいかない。いろんなところに寄り道しながらも、最後にストンと落とし込む、みたいな。舞台にしか出来ないこと、舞台の素晴らしさを、倉持さんの作品にはいつも感じます。

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――おふたりの共演は映画『舞妓はレディ』(14年)以来ですが、今回上白石さんを客演に呼ばれた理由は?
竹中 いつも僕は女優さんをメインに考えるんです。萌音ちゃんとは初共演した時にいつか一緒に舞台をやりたいと思っていました。倉持さんにもそのお話は以前からしていました。だから今回、願えばちゃんと叶うんだなって思いました。
上白石 本当に恐縮です・・・竹中さんとはまたお芝居したいと願い続けていましたし、倉持さんの舞台にもずっと出たいと思っていて。だから今回一気に夢がいくつも叶ってしまって、お声がけいただいた時は天にも昇る思いでした。
竹中 そこまで言ってもらえるなんて本当に嬉しいなぁ。
上白石 前の映画の時は、私が初主演ということでガチガチだったんですけど、それをいつも柔らかく、楽しく、面白くほぐしてくださったのが竹中さん。だから私にとっては、本当に恩人のような存在なんです。
竹中 かたじけない。

――初めて倉持さんの舞台に挑む上で、竹中さんに聞いておきたいことはありますか?
上白石 すべてが未知数なんですが......、倉持さんのお稽古って、みんなでいろいろ模索しながら進めていく感じですか?
竹中 そうだね。昔は岩松(了)さんが倉持さんの師匠みたいな時期もあったから、何度も何度も同じところを繰り返しやっていた時期もあったとは思う。ただ何度も繰り返しやるって、理屈じゃなくなくなってくるから、楽しいことだと思うんだよね。僕は稽古が大好きだけれど生瀬くんは飽きやすいよ (笑)。
上白石 そうなんですか?(笑)
竹中 うん。いや、だったと思う(笑)

――先日の取材で生瀬さんは、「竹中さんは僕のことが苦手だと思う」とおっしゃっていました。
竹中 そんなこと言ってた!? おかしいね。だって怖いんだもん、生瀬くん(笑)。圧がすごいし、"男"って感じがするんですよね。役者としても全然違うタイプだよね?だからこそ竹生企画はいい距離感といいバランスなんじゃないかしらん(笑)
上白石 これまでは私、竹中さんも生瀬さんも芝居に対して同じような取り組み方をされていらっしゃると思っていたんです。でも実は逆で、お互い違うからこそ生まれる波長があるんだなって。今すごく腑に落ちました。

――倉持さんいわく、「過去2作に比べて、最もおふたりのやり取りが多い芝居になる」とも。
竹中 本当ですか? うわぁ、ものすごく緊張するな。
上白石 倉持さんの作品っていつも会話で紡がれていく感じですけど、今回はそれがより色濃い感じになりそうですよね。仮チラシにも"果てしなき口論"って書いてありましたし。
竹中 それは頑張らなきゃな。生瀬くんに負けちゃいそう......(笑)。
上白石 一ファンとしては、おふたりのやり取りを間近で体感出来るのが本当に幸せです。早く稽古に入りたい!

――では最後に、チケット購入を迷われている方の背中を押していただけるようなひと言をお願いします。
上白石 倉持さん、竹中さん、生瀬さんというメンバーで、面白くないわけがないと思います。すごく魅力的な世界になるはずなので、絶対に観に来てください!
竹中 水と油のようなふたりがまた芝居をやるぜ! 尋常じゃないぶつかり合いをまるで透明の水のようにみつめるのは上白石萌音!! これを観ないでいられるかっ!!

021b_上白石萌音_竹中直人.jpg

「火星の二人」東京公演は、2018年4月10日(火)から25日(水)までシアタークリエで行われる。

(取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己)

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