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■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(4)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。日本を代表するミュージカル俳優、そして演劇にとらわれない活躍をする役者・歌手のみなさんが揃う日本初演。観劇の組み合わせに迷っている方も多いのでは?

げきぴあキャストインタビュー第四弾は、Wキャストでバート役を演じる柿澤勇人さん!。自身とバートの違いや、オーディション期間中のある演出家の方からのアドバイス、そして柿澤さんの思う『メリー・ポピンズ』日本初演への意気込みをお伺いしました。

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表より"

子供と同じ目線でいることがバートを演じる上での第一歩に

――『メリー・ポピンズ』との出合いは?

「22歳の時、劇団四季を辞めてすぐにニューヨークへ行ったんです。で、その時最初に観たのが『メリー・ポピンズ』。向こうの友達には、『着いたその日に舞台を観ても絶対に寝ちゃうからやめた方がいいよ』とは言われていました。でもマンハッタンに降り立った以上、どうしてもミュージカルが観たくて。とりあえずよさそうだなと選んだ作品でしたが、これが本当に面白くて、もちろん最後まで寝ることもなく。時差ボケにも負けないほどの魅力が『メリー・ポピンズ』にはあると思います(笑)」

――そんな作品にご自身が出演することになるとは、不思議な縁ですね。

「はい。もちろん当時は自分がバートをやるなんて思っていませんでしたし、オーディションが始まった時も僕はバートじゃないと思っていたんです。というのも劇団四季を退団してから、闇のある人間ばかりを演じてきたので(笑)。また自分自身、そういう役を得意としてきたと思いますし。でも親しい演出家の福田雄一さんにオーディションの話をしたら、『やんちゃなところとかチャーミングなところがカッキー(=柿澤)にぴったりだと思うし、絶対にバートはやった方がいい』と言ってくださって。自分がチャーミングだとは思いませんが(笑)、この役を通して新たな自分を発見出来るかもしれないなと思ったんです」

――オーディションにはどんな思いで臨んでいたのですか?

「『ラディアント・ベイビー』(16年)という舞台でアキレス腱を切ってしまい、今回のオーディションでも踊れない時期が結構あったんです。正直これはダメだなという思いもあったんですが、逆にいいこともあって。アキレス腱切断という役者人生最大の絶望を味わったせいか、それ以降あまり緊張することがなくなったんです。ちょっとくらい失敗しても、なるようになるかって思えるようになって。今回のオーディションでもまったく緊張しませんでしたし、楽しむことすら出来た。それが結果的にいい方向に働いたと思いますし、アキレス腱のことがなかったらバート役との向き合い方も違っていたと思います」

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』より 柿澤バート&平原メリー"

――バートを演じる上で足がかりになりそうなこととは?

「いわゆる二枚目でもないし三枚目でもない、何とも言えない役どころですよね。でもやっぱりチャーミングなところが魅力なのかなと。こんなに闇のない役を演じるのは初めてですが(笑)、オーディションの時に感じたのは、子供たちとの交流を大事にしていきたいなということ。きっとバートが小さい時はこういう子供だっただろうし、常に子供と同じ目線でいることが、バートを演じる上での第一歩になるのではないかと思います」

――バートのシーンやナンバーで楽しみにしているのは?

「僕が一番楽しみであり、恐れてもいるのが(笑)、逆さまに吊られながら天井でタップを踏むという大ナンバー『ステップ・イン・タイム』。高いところは別に大丈夫なんですが、これまで逆さまに吊られてタップを踏むって経験がないですからね(笑)。ただバートの一番の見どころですし、ショーストップ出来るほどのナンバーでもあると思うので、ぜひ成功させたいなと思います」

――日本初演の『メリー・ポピンズ』がいかなる舞台になるのか、期待は高まります。

「歌あり、ダンスあり、芝居ありっていう、ミュージカルのすべての要素がフル稼働して成り立つ作品です。その分、ロンドンやニューヨーク公演のクオリティに達するまでには、みんなが本当に努力しないといけなくて。ただやるからには必ずその水準まで引き上げてみせますし、日本ならではの『メリー・ポピンズ』をぜひ楽しみにしていただけたらと思います!」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

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第6回目を迎えた、"15分編集なしの演劇動画を競う"《クォータースターコンテスト》の結果発表と授賞式が昨年12月に開催されました。

 

クォータースターコンテスト(以下QSC)は、演劇・舞台系動画のニュースサイト・エントレが2012年に立ち上げたコンテストで、グランプリを獲得すると賞金30万円が副賞として授与されます。

 

審査員は演劇・映像分野で活躍するクリエイターが務め、第6回は、初回から続投の鴻上尚史さんをはじめ、第3回から参加している映画監督の行定勲さん、初参加の福原充則さん桑原裕子さんの4名が担われました。

 

今大会の投稿作品数は81本、そのうち事前の選考で選ばれたノミネート作品は11本。
審査方法は、ノミネート作品の中から各審査員が1位から3位までの順位を決め、総合点数がもっとも高い作品がグランプリとなります。
その結果、グランプリは劇団子供鉅人の山西竜矢さんの作品「さよならみどり」が獲得しました。

 

第6回クォータースターコンテスト(QSC6) 結果発表はコチラ

 

さて、QSCにはもうひとつ、協力団体が選出する各賞があります。
第6回は、8つの団体が賞を設け、6作品が各賞を受賞しました。(2団体の賞は該当者なし)

 

げきぴあは第1回目から参加させていただいておりまして、選定基準は「この団体、あるいはクリエイターが創った本物の舞台が観たいかどうか」です。が、過去の受賞作には舞台での上演は難しい作品もありましたので、今回は原点に立ち返り、【げきぴあ賞】を選ばせていただきました。

その結果、第6回QSCの【げきぴあ賞】はくちびるの会「ポスト、夢みる」に決定いたしました!!

 


  

◆『ポスト、夢みる』

 

  

昔ながらの赤いポストを女性に見立て、郵便局員・白ヘルへ抱く淡い恋心と、移りゆく街の風景を重ねた切ない物語。ノスタルジックなタッチで描かれた背景のイラストが時間の経過で変化する様や、照明の使い方が印象的で、全体の構成もうまくまとまっていました。特に、夕日に染まったポストと白ヘルとのやりとりは秀逸です。

 

[動画作品情報]
撮影カメラ:iPhone7
作・演出 山本タカ
ポスト:橘花梨
白ヘル・学ラン:佐藤修作
演出助手・音響:佐野七海
音楽:朝日太一
イラスト:やだともか
小道具:北澤芙未子
機材協力:エイプリルズ
協力:イトーカンパニー、エイプリルズ、ゴーチ・ブラザーズ、四次元ボックス

 


 

【げきぴあ賞】の副賞はインタビュー掲載です。
本作の作・演出を務めた山本タカさんにお話しを伺いました。

 

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romale_02.jpg ミュージカル「ロマーレ」製作発表 花總まり、松下優也

ミュージカル「ロマーレ」の製作発表が行われ、花總まり、松下優也らが劇中歌を披露した。

本作は19世紀に描かれたメリメ原作の「カルメン」をベースに、カルメンがロマ族として当時の社会でどのように生き抜いてきたかに注目し、小説やオペラで描かれていない部分をより強く描く。

演出・振付はTSミュージカルファンデーションの謝珠栄。

出演は宝塚歌劇団「激情-ホセとカルメン-」(1999年)でカルメンを演じた花總まりが、今作でもカルメンを演じる。
またNHKの朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」に栄輔役で出演した松下優也がホセを演じる他、伊礼彼方、KENTARO、太田基裕、福井晶一、団時朗らが出演する。

 
本作の製作発表が行われ、劇中に登場する2曲が披露された。【動画2分】

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(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ

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現代演劇の手法で古典の可能性を探る木ノ下歌舞伎がKAAT神奈川芸術劇場に初登場する。

上演するのは歌舞伎十八番 『勧進帳』
兄・源頼朝と不仲になり追われる身となった義経ら一行が山伏と強力に変装して安宅の関に差し掛かり、頼朝の命を受けた富樫左衛門と対峙するさまを描いた歌舞伎の中でも上演頻度の高い人気の演目だ。
木ノ下歌舞伎では2010年に初演後、'16年に完全リクリエーション版として上演。今回はその1年半ぶりの再演となる。演出・美術の杉原邦生に、創作の意図や作品の狙いを聞いた。

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ーー'10年に初演した 『勧進帳』 を、6年後に作り直した理由は何ですか?

 
 '10年の 『勧進帳』 は、木ノ下歌舞伎で初めて完コピ(歌舞伎の舞台映像の動きや言い回しを完全にコピーして演じること)を稽古に取り入れた一方、台詞の一部を現代語にした最初の作品でもありました。それまでは、演じるのが現代劇の俳優なのでイントネーションは現代的にしていたものの、台本は全て原語のままで上演していたんです。
でも、僕はそこに違和感を覚え始めて、完コピ稽古を提案しました。だから、僕と(木ノ下歌舞伎主宰の)木ノ下(裕一)くんにとって 「木ノ下歌舞伎の第二章が始まった」 と言えるエポックメイキングな作品になりましたし、初演が終わった直後からもう一度上演しようと話していたんです。ところが再演にあたり、初演の映像を見返したところ、凍えるくらいひどく思えて(笑)。
木ノ下くんにすぐ電話をして 「ヤバイよ」 と言うと、「いやいや、それは邦生さんが演出家として成長したからですよ、だいじょうぶです」 。その木ノ下くんもそのすぐ後映像を見て 「邦生さん、ヤバイですね」 って電話してきた(笑)。それで作り直すことになりました。

 

ーー具体的にはどこをどう変えたのでしょう?

 
 上演台本を全て現代語に直しました。今、僕の演出で言葉を一つ変える場合には、変えることによってその前後はもちろん、作品全体の中で何がどう変化するかを色々な方向から考えてジャッジしているんですが、初演時は言葉を変えること自体が初めてだったので、その新鮮な楽しさゆえに「面白い!」 と思ったらすぐOKを出していたんでしょうね、言葉の選択が甘かった。わざわざ台詞を現代語にした理由も曖昧でした。そこで'16年の稽古では「台本を全て口語にして、それでも歌舞伎と言えるかどうかを試したらどうだろう?僕が上演台本を書くから」 と提案したんです。やってみると、言葉を変えたことで演出の選択肢が広がり、自由になった感覚がありました。そうなると美術も、停止線が真ん中にあって矢印が書かれている"道路"を模した初演のものだとイメージや空間の持つ方向が定まってしまい、せっかく得た自由度を制限している気がしてきた。
発想を変え、初演からの舞台両側を客席が挟んでいるという空間構造は変えず、"境界線"というテーマをさらに推し進めて、細長い舞台そのものを真っ白な一本道の"ボーダーライン"に見立てて、その上で人々が揺れ動くさまを描くことにしました。

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ーー初演からの"境界線"というテーマは、どこから来たのでしょう?
 

 木ノ下くんからの提案です。『勧進帳』は、物語で言ったら「関」という境界線を越えるか越えないかだけのドラマ。でもそこには、義経VS弁慶たちの主従関係だとか、富樫VS義経・弁慶の対立関係だとか、たとえ心を通わせ合えたとしても越えられない様々なラインがある。さらに僕らは、初演でもリクリエーションでも弁慶役にアメリカ人俳優をキャスティングすることで、国籍や人種の要素を入れました。

リクリエーション版では弁慶をよしもとの芸人でもあるリー5世さんが演じてくれてます。また、初演では女優が演じた義経役を、リクリエーション版ではニューハーフの俳優、高山のえみさんにお願いしました。性の境界線を内包する人を新たに入れることで、より複雑で現代的な作品になったと思います。

ーー'16年のリクリエーション版を豊橋で拝見しましたが、現代的な感性での原作への言及や補足がかなり入っていると感じました。

 古典をやる際、その時代と今とではモラルも価値観もまったく違ってリアリティを感じにくいので、そこをどう噛み砕くかが重要だと考えています。一番多く書き足したのは、富樫と共に関を護衛している番卒や、義経に付き従う四天王たちの台詞。とにかく主役を目立たせるスターシステムの歌舞伎では、彼らにはほとんど台詞がないんですが、彼らを丁寧に描くことで弁慶・冨樫・義経の存在感がさらに際立つと考えました。具体的にいうと、例えば番卒たちが関所にいる間、そうしょっちゅう山伏が通るわけでもないだろうし、待っている時間が長くなればイライラもするだろうから、彼らの中で小さなぶつかり合いとかも当然あっただろうと想像して、そういう台詞を書き足したんです。その番卒たちと対になる四天王たちもキャラクターを様々に肉付けしました。これはとても楽しい作業でしたね。

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ーー一方、富樫に促されて弁慶が勧進帳を読み上げるくだりなどは、現代語とはいえ、原作通りの難解な内容になっています。

 
 "勧進帳の読み上げ"と"山伏問答"の場面は、木ノ下くんが直訳してくれたテキストをもとに、できるだけ分かり易い言葉にしました。さらにアメリカ人であるリー5世さんが言いづらい単語は変えたり入れ替えたりしていますが、それでも馴染みのない専門的な仏教用語などもたくさん出てくるので、難しいですよね。でも、そんな難しい内容を窮地に立たされた弁慶がとっさの判断ででっち上げたという凄さは伝わると思います。

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ーー様々な工夫を凝らして作り上げたリクリエーション版。観客の反応はいかがでしたか?

 
最初に上演したのが松本のまつもと市民芸術館だったのですが、とにかくお客さんがすごく盛り上がってくれました。ちょうどその時、同じ劇場の主ホールで串田和美さん演出の『四谷怪談』を上演していたので、出演していた中村勘九郎さん、中村七之助さん、中村扇雀さん、中村獅童さんといった歌舞伎俳優や、付き人さんや裏方さんたちまで観に来てくれて、客席で大歌舞伎公演ができるくらいのすごい顔ぶれでした。

七之助さんは「歌舞伎を現代化していると聞いて、正直スカした奴らなのかと思っていたけれど、ちゃんと歌舞伎だし『勧進帳』 だった 」 と言ってくださり、2晩続けて足を運んでくれました。また、終演後に行った飲み屋で偶然お会いした扇雀さんは、いかに面白かったかを1時間ほど熱く語ってくださいました。歌舞伎俳優の皆さんに観ていただけた上に、そういう感想をいただけたことは、単純にとても嬉しかったですね。

普段から木ノ下歌舞伎を観てくださっているお客さまからは 「一つの到達点だね」 という声が多かったです。それは僕らも感じていて、ちょうど'16年は木ノ下歌舞伎結成から10周年だったのですが、10年の間に様々なことを試してきた蓄積があって、僕と木ノ下くんの中で 「ここまでやっても大丈夫、歌舞伎と言える」 みたいなラインを共有していたからからこそできた作品だったと思います。

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ーー今回、関東では初上演。どんなことが伝わればいいなと思いますか?

この 『勧進帳』 には僕が演劇で表現し続けたいことが詰まっている気がするんです。例えば、僕は善/悪の二項対立が嫌いというか、そんなに単純に分けられないだろうって思うんです。それぞれにそれぞれの正義があり正解があると思う。それらがぶつかった時、相手の正義や正解を受け容れることができないから争いが起きるわけですよね。そうした対立が取り払われた平和な社会、つまり人間同士が互いを尊重しあえる社会の実現に、演劇が力を持てたらいいな、というのが、僕が演劇を続ける理由。と言いつつ、実際には、この世界に人間がいる以上、そんな社会が実現することはないとうこともわかってます。でもきっと、『勧進帳』の登場人物たちもどこかでそういう平和な世界を望んでいたんじゃないか。様々な境界線を越えた先に、皆が輪になって踊れるようなハッピーな世界があると思いたかったんじゃないか。そんなことを現代のお客さまにも感じてもらえたら嬉しいです。それが古典の面白さであり、カッコ良さだと思うので。

取材・文:高橋彩子

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木ノ下歌舞伎

『勧進帳』


【公演期間】
2018年03月01日(木)~2018年03月04日(日) 

【会場】

KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

【監修・補綴】
木ノ下裕一

【演出・美術】
杉原邦生[KUNIO]

【出演】
リー5世
坂口涼太郎
高山のえみ
岡野康弘
亀島一徳
重岡 漠
大柿友哉

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■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(3)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。映画で慣れ親しんだ名曲たちはもちろん、舞台ならではのダンス、演出を楽しみにしている方も多いのでは?

げきぴあキャストインタビュー第三弾は、Wキャストでバート役を演じる大貫勇輔さん!海外のスタッフからも「見た目が完璧にバート」、「絶対にバート役に合う」と太鼓判を押されていたそう。そんな大貫さんが自身に思う課題、そしてダンサーとして活躍してきたからこその目標について語ってくれました。

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表より"

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

――本作のオーディションは非常に長期間にわたって行われたそうですね。

「はい、正直1回目のことはあまり覚えていないくらい(笑)。でもこれだけやったからこそ受かりたいし、最後の方は必ず受かるつもりでいました。向こうのスタッフの方にも、『君は見た目は完璧にバートだし、絶対に合うと思う』と言っていただいていましたし。ただ僕の課題はとにかくずっと"歌"だったんですよね。歌の先生にも、『芝居をするように歌って欲しい』と言われていて。それはマシュー(・ボーン)の振付にも通じるものだと思うので、しゃべるように歌ったり、しゃべるようにタップを踏んだりってことはこれからも意識していきたいです」

――長いオーディションを経て、ついにバート役に決まった時の心境は?

「本当に素晴らしい作品ですし、しかもその日本初演に参加させてもらえることがとにかく嬉しかったです。今この役をやれるか、やれないかっていうのが、僕のこれからの人生を大きく変えるんじゃないかとすら感じていたので。ただ今はまだスタートラインに立ったばかり。これからいかに結果を残せるのか、お客さまに感動を与えられるのか。そして『世界を通して一番動けるバートだったね』と言ってもらえるよう臨んでいきたいです」

――演じられるバート、現段階ではどんな人物だと捉えていますか?

「ものすごく出番が多いというわけではないんですが、そのかわり強い印象を残す大事な人物だと思うんです。とても愛されるキャラクターでチャーミングだし、おバカなことを言っていたかと思うと、とても大切なことを敬意を持って伝える紳士だったり。家族が崩れてしまいそうな時にうまくサポートをしてくれる存在でもあって。そんなバートをいかに魅力的に演じられるか。それが大きな課題であり、自分自身楽しみなところでもあります」

――バートは本作で、ユーモアの部分を担うキャラクターでもありますね。

「ええ。ただバートって、いわゆるコミカルな動きをしてはいけないんです。つまり外側からのユーモアではなく、内側からにじみ出るユーモアでなければいけなくて。そこはやっぱりイギリスの作品であり、まずはお芝居ありき。僕はダンサーであるがゆえに外側からやってしまう癖があるのですが、バートの内面にしっかり目を向けて、なぜそこにユーモアがあるのか。これからじっくり読み解いていきたいと思います」

『世界を通して一番動けるバートだったね』と言われたい

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』より 大貫バート&濱田メリー"

――バートの好きなシーン、ナンバーを教えてください。

「『ステップ・イン・タイム』という映画版にもあるナンバーですが、舞台版ではバートが逆さまに吊られつつ、天井でタップをするという大ナンバーなんです。命の危険ももちろんありますが、吊られてタップを踏むなんて経験そうないですからね(笑)。すごく楽しみです。ただ僕のダンス人生の中で、最も苦戦しているのがこのタップでもあって......。タップってダンスというよりも楽器なんですよね、足の打楽器。正確にリズムをキープしつつ、ダンスとしての表現もしていく。すごく大きな挑戦ではありますが、特に『ステップ・イン・タイム』は盛り上がるナンバーなので、お客さまが熱くなれるよう頑張りたいです」

――柿澤勇人さんがWキャストでバートを演じられます。

「カッキー(=柿澤)とのWキャストというのは、間違いなく大きなプレッシャーのひとつですね。絶対に比べられるものですし。ただ僕はダンスが得意なので、そこをうまく伸ばしつつ、歌の部分でいかにカッキーに近づけるのか。さらにカッキー以外にも素晴らしいキャストの方が大勢いらっしゃるので、皆さんのいいところはどんどん盗みつつ、この作品での経験を通して自分も成長していきたいなと思います」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

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ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』
が現在、東京・シアタークリエで上演中だ。2015年にトニー賞5部門を受賞した作品を、新国立劇場次期芸術監督就任も予定されている気鋭の演出家、小川絵梨子が演出する注目作。小川はこれがミュージカル初演出。出演は瀬奈じゅん吉原光夫大原櫻子紺野まひる上口耕平横田美紀ら。05t_1651.jpg04_0155☆.jpg


原作は、アリソン・ベクダルの自伝的コミック。レズビアンである漫画家・アリソンは、ゲイである父ブルースが自ら命を絶った43歳という年齢になり、父との思い出、家族との思い出をたどる記憶の旅に出る。記憶の折々の場面で、父は何を考えていたのだろうか。そして死の瞬間は何を思っていたのだろうか......。05t_1605.jpg

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――倉持裕さん作・演出の舞台へは、なんと6年連続の出演になるとか。
竹中 本当に大好きなんですよね、倉持さんの世界観が。倉持さんの書く言葉やリズム感も好きです。あと演出中に「うん、いいです」って言ってくれる声の音色とその横顔も好きで(笑)。倉持さんの描く世界に本能的に惹かれます。これからも倉持さんの世界を追求していきたいですね。

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――上白石さんは倉持さん作品をご覧になったことはありますか?
上白石 はい。竹生企画では『ブロッケンの妖怪』(15年)を観に行ったんですが、本当に感激して! すごくシンプルなストーリーでありつつ、人間味もあり、しかもひと筋縄ではいかない。いろんなところに寄り道しながらも、最後にストンと落とし込む、みたいな。舞台にしか出来ないこと、舞台の素晴らしさを、倉持さんの作品にはいつも感じます。

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――おふたりの共演は映画『舞妓はレディ』(14年)以来ですが、今回上白石さんを客演に呼ばれた理由は?
竹中 いつも僕は女優さんをメインに考えるんです。萌音ちゃんとは初共演した時にいつか一緒に舞台をやりたいと思っていました。倉持さんにもそのお話は以前からしていました。だから今回、願えばちゃんと叶うんだなって思いました。
上白石 本当に恐縮です・・・竹中さんとはまたお芝居したいと願い続けていましたし、倉持さんの舞台にもずっと出たいと思っていて。だから今回一気に夢がいくつも叶ってしまって、お声がけいただいた時は天にも昇る思いでした。
竹中 そこまで言ってもらえるなんて本当に嬉しいなぁ。
上白石 前の映画の時は、私が初主演ということでガチガチだったんですけど、それをいつも柔らかく、楽しく、面白くほぐしてくださったのが竹中さん。だから私にとっては、本当に恩人のような存在なんです。
竹中 かたじけない。

――初めて倉持さんの舞台に挑む上で、竹中さんに聞いておきたいことはありますか?
上白石 すべてが未知数なんですが......、倉持さんのお稽古って、みんなでいろいろ模索しながら進めていく感じですか?
竹中 そうだね。昔は岩松(了)さんが倉持さんの師匠みたいな時期もあったから、何度も何度も同じところを繰り返しやっていた時期もあったとは思う。ただ何度も繰り返しやるって、理屈じゃなくなくなってくるから、楽しいことだと思うんだよね。僕は稽古が大好きだけれど生瀬くんは飽きやすいよ (笑)。
上白石 そうなんですか?(笑)
竹中 うん。いや、だったと思う(笑)

――先日の取材で生瀬さんは、「竹中さんは僕のことが苦手だと思う」とおっしゃっていました。
竹中 そんなこと言ってた!? おかしいね。だって怖いんだもん、生瀬くん(笑)。圧がすごいし、"男"って感じがするんですよね。役者としても全然違うタイプだよね?だからこそ竹生企画はいい距離感といいバランスなんじゃないかしらん(笑)
上白石 これまでは私、竹中さんも生瀬さんも芝居に対して同じような取り組み方をされていらっしゃると思っていたんです。でも実は逆で、お互い違うからこそ生まれる波長があるんだなって。今すごく腑に落ちました。

――倉持さんいわく、「過去2作に比べて、最もおふたりのやり取りが多い芝居になる」とも。
竹中 本当ですか? うわぁ、ものすごく緊張するな。
上白石 倉持さんの作品っていつも会話で紡がれていく感じですけど、今回はそれがより色濃い感じになりそうですよね。仮チラシにも"果てしなき口論"って書いてありましたし。
竹中 それは頑張らなきゃな。生瀬くんに負けちゃいそう......(笑)。
上白石 一ファンとしては、おふたりのやり取りを間近で体感出来るのが本当に幸せです。早く稽古に入りたい!

――では最後に、チケット購入を迷われている方の背中を押していただけるようなひと言をお願いします。
上白石 倉持さん、竹中さん、生瀬さんというメンバーで、面白くないわけがないと思います。すごく魅力的な世界になるはずなので、絶対に観に来てください!
竹中 水と油のようなふたりがまた芝居をやるぜ! 尋常じゃないぶつかり合いをまるで透明の水のようにみつめるのは上白石萌音!! これを観ないでいられるかっ!!

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「火星の二人」東京公演は、2018年4月10日(火)から25日(水)までシアタークリエで行われる。

(取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己)

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■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(2)■

2018年3月、ついに日本初演を迎えるミュージカル「メリー・ポピンズ」。様々な舞台機構、そして誰もが映画で慣れ親しんだナンバーに期待が膨らみます!

げきぴあキャストインタビュー第二弾は、Wキャストでメリー・ポピンズ役を演じる平原綾香さん!歌手、そして近年はミュージカル女優としても活躍する平原さん。イメージするメリー・ポピンズのお手本は意外な"あの女性"だという、独特の役作り(!?)にも注目です!

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作発表 より"

メリー・ポピンズは困った時に助けてくれるヒーロー

――ミュージカルへの出演は3作目になりますが、本作のオーディションを受けようと思ったきっかけは?

「オーディションを受けるのは初めてで、正直お声がけいただけなかったら今回も受けることはなかったと思います。でも(映画版のメリー・ポピンズ役の)ジュリー・アンドリュースさんが大好きだったことと、ちょうど『サウンド・オブ・ミュージック』の日本語吹き替えをやらせていただいたばかりで。これも何かのご縁かなと、思い切って受けてみようと決めたんです」

――『メリー・ポピンズ』という作品の魅力をどんなところに感じていますか?

「メリー・ポピンズは女性ですけど、やっぱりヒーローって感じがするんですよね。彼女が来たらもう安心、みたいな。困った時に助けに来てくれる存在だなって。だからこそ家族の絆が取り戻され、本来の家族の姿に戻った時に、彼女は次の家族のもとへと傘で飛んで行ってしまう。それが寂しくもありますが、観ていてキュンとするところでもあって。そして子供から大人まで世代を問わず楽しめるところが、この作品の一番の魅力かなと思います」

――メリー・ポピンズを演じられる上で大切にしていきたいことは?

「まずは彼女の姿勢かなと思います。常に背筋がピンと伸びていて、それは彼女の心の姿勢でもあると思うんですけど。あと私の中ではやはりジュリー・アンドリュースのイメージが強かったのですが、演出家が求めているのはそれとはまた違う、ちょっと新しいメリー・ポピンズ像のようなんです。人の話を聞いていない感じとか、結構ゴーイングマイウェイなところとか、実は結構笑いのセンスがある。私がイメージしているのが芸人の友近さん(笑)。友近さんが誰かを演じられている時のリアルさ。リアルだからこそ面白い、みたいな。そういう感覚がこのメリー・ポピンズを演じる上でも必要なのかなと思っています」

――名曲ぞろいですが、ご自身が歌うのを楽しみにしているナンバーは?

「やはり『チム・チム・チェリー』は楽しみですね。本当に有名な楽曲ですし、それをカバーではなく、メリー・ポピンズとして歌える機会なんて今後ないと思いますから。あと『何もかもパーフェクト』はこの作品を象徴するナンバーであり、彼女の笑いのセンスが垣間見えるナンバーだと思うんです。そしてこれを歌いこなせれば、ほぼすべてのナンバーは歌えるだろうと言えるくらい、私にとっては難関なナンバーでもあります」

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"ミュージカル『メリー・ポピンズ』"より こちらは平原さんバージョン!

――芝居や歌はもちろん、今回はダンスにも挑戦されます。

「実はすごく楽しみにしているのがダンスなんです。というのも平原綾香っていったらあまり"動かない、笑わない、しゃべらない"みたいなイメージがあると思うんですが(笑)、実はそれに苦しんできたところもあって......。私自身はどちらかというとそのイメージとは正反対で、踊ることも、笑うことも、しゃべることも大好き。だからやっと踊れる!って感じですし、今そういう作品に出会えたことがすごく嬉しいです」

――Wキャストの濱田めぐみさんは、平原さんの初舞台『ラブ・ネバー・ダイ』(14年)でも同じ役を演じられました。

「めぐさんの存在なしにあの舞台は乗り越えられなかったなと思えるくらい、めぐさんには心から感謝しています。人として常に優しく接してくださることが、初舞台の私にとってどれだけ大きな支えになったか! そんなめぐさんが、『今回もまた一緒に頑張ろうね』と言ってくださったことが本当に嬉しくて。またチラシ撮影時に見ためぐさんのメリー・ポピンズ姿が、すっごくかわいらしかったんですよ。私は、友近さん流の"笑い"を武器に頑張っていこうと思います(笑)」

取材・文:野上瑠美子

撮影:イシイノブミ

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ミュージカル「カラフル」稽古場レポート!

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2月10日(土)~12日(月)、博品館劇場にて上演される朗読ミュージカル「カラフル」の稽古場にお邪魔しました。
森絵都さんの原作「カラフル」を朗読ミュージカルという形で上演するこの公演は、2部構成。この日は2部に予定されている出演者7名によるコンサートの稽古でした。

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■歌うのは俳優〇〇じゃない!?■

まずは稽古の休憩時間に演出の板垣恭一さんに伺った、「コンサートの選曲について」ご紹介しましょう。
「ミュージカルコンサートと聞くと、ミュージカルに詳しくない人はなんだか置いてけぼりをくうようなイメージが多少なりともあると感じていた」という板垣さん。それは例えて言うなら、カラオケで誰かが自分の知らない曲を入れてもイマイチ盛り上がれないような感覚だといいます。もちろんプロの歌を聞けば、知らない曲でも心震えることは多くありますが、この「カラフル」という作品では、いわゆるミュージカルコンサートとは違う見せ方、聴かせ方をするというのです。
「選曲は1部からの流れで、家族という設定を生かします。つまり歌うのは、ミュージカル俳優〇〇ではなく、『カラフル』に出てくる小林家の人やその他の登場人物たちということです」そう考えると、愛の歌も友情の歌もすんなり心に響くはず、と板垣さんはたくらみのある表情を向けてくれました。

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リラックス&マイウェイ

 では稽古の様子をのぞいてみましょう。この日は、2部後半の「サウンド・オブ・ミュージックメドレー」からスタート。「サウンド・オブ・ミュージック」といえば1959年にブロードウェイで初上演され、65年にジュリー・アンドリュースが主演した映画が世界的に大ヒットした作品。CMなどで耳なじみのある曲も多いこの作品の中から6曲がメドレーで演奏されます。
 振付を担当する当銀大輔さんによる指示に、ミュージカル百戦錬磨のキャストたちは素早く反応。確認はサクサクと進んでいきます。出番以外のキャストたちは柔軟や発声、曲や振りの確認をしながら思い思いに過ごします。そのリラックスした様子は、すでに生まれているこの稽古場の雰囲気そのもの。
サクサク進んでいた振付チェックのなかで、皆が破顔したのが、小林真を演じる田村良太さんと桑原ひろか演じる増田有華さんによる「♪もうすぐ17歳」でのこと。ルンルンしたステップに照れる二人は、微妙に息が合わず、振りに集中すると歌詞が怪しくなり、歌に集中するとステップが...といった具合。「いや、これ踊りじゃなくて歩いてるだけだから...」という振付の当銀さんのツッコミに笑いが起こります。この後も二人は、合間に振りを確認、本番ではあんなシーンもある!息の合ったキュートな歌を披露してくれることでしょう。

メドレー最後の「♪全ての山に登れ」は、キャスト7人がそろって声を合わせます。個人的にはこの曲に特にシビれます。何かと何かが掛け合わされると倍になりますが、美声と美声、しかも7人のそれが掛け合わされると天文学的パワーになるのです。ここまでリラックスして背もたれに背をつけていた人は、この曲で数ミリ背すじが伸びるはず。お楽しみに。

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体温が上がる七色の歌声

朗読ミュージカル「カラフル」では、ソロ曲が多いため「デュエット曲もやりたいね」というのが2部にコンサートをすることになったきっかけのひとつでもあったそう。その希望を叶えるべくコンサートには、素敵なデュエットナンバーが揃っています。
津田英佑さんと今泉りえさんの「美女と野獣」は慈愛に満ちたハーモニー、増田有華さんと水野貴以さんによるミュージカル「ウィキッド」の名曲「♪あなたを忘れない」は、みずみずしい歌声が魅力です。「エリザベート」から「♪闇が広がる」は、田村良太さんと原田優一さんのコンビで。この二人のデュエットも1部の二人の関係を見聞きした観客にはすんなり、いやむしろ前のめりで聞きたくなる曲です。中井智彦さんと水野貴以さんの「♪All I Ask of You」は、劇団四季「オペラ座の怪人」のラウル役で歌っていた中井さんの安定感抜群の低音と水野さんの透き通る高音に酔いしれます。

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そして、コンサートのラストはオリジナル曲「♪色の溢れる世界で~Song for Diversity~」。演出の板垣さん曰く、「森絵都さんの「カラフル」という物語を受けて、もう一歩、物語の外側まで広がる世界観が詞と曲に込められています」とのこと。たしかに、稽古場で聞いたその曲は、物語に出てくる登場人物の誰かに心を寄せていたとしても、気が付くと自分の昔やこれからに重ねて聞かずにはいられない、胸に響く名曲です。

ココから曲の一部が聞けますよ↓
https://www.youtube.com/watch?v=BnLNMGHk2RI

 稽古場を出ると、外は真冬の気温だというのに、どうやら体温は2度くらいあがっているのではないかしら......という感じ。この分で行くと本番は何度上がっちゃうことでしょう。いや、2度以上あがったら高熱騒ぎですが、心の温度が!ですのでご心配なく。
3日間5公演限りの貴重な朗読ミュージカル「カラフル」は、あなたに贈られる数日早いバレンタインプレゼントになるに違いありません。
(観劇ライター 栗原晶子)

■朗読ミュージカル「カラフル」
【日程・会場】
2/10(土) ~ 2/12(月・祝) 博品館劇場

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■ミュージカル『マタ・ハリ』特別連載(15)■

【東京公演開幕レポート】

1月の大阪公演を経て2月3日、ミュージカル『マタ・ハリ』東京公演が開幕した。『ジキル&ハイド』などを手がけるフランク・ワイルドホーンが音楽を担当し、2015年に韓国で初演されたミュージカル。日本初演となる今回は、主人公のマタ・ハリを柚希礼音、彼女の運命に深く関るふたりの男性、ラドゥーとアルマンの2役を回替わりで加藤和樹が演じる(初日は加藤がアルマンを演じ、Wキャストの佐藤隆紀がラドゥーを演じた)。演出は石丸さち子4IMG_8576.JPG


物語は、1917年のパリが舞台。ヨーロッパ全土を巻き込む第一次世界大戦は3年目に突入し市民は疲弊、上層部にも焦りが見えている。そんな中、オリエンタルで官能的なダンスで人々を虜にしているダンサーがいた。名はマタ・ハリ。フランス諜報局のラドゥー大佐は、ヨーロッパをまたにかけ活躍しているマタに目をつけ、スパイになるよう圧力をかける。同じ頃、マタは戦闘機パイロットの青年アルマンと出会い恋に落ちるのだが、実はそれもラドゥーが仕掛けた罠で......。


オープニングが秀逸だ。舞台には、水墨画にも似た、煙のような雲のような背景。モノトーンのシンプルなセットの中、こちらも黒を基調にしたシックな衣裳に身を包んだキャストが、民衆として、兵士として、戦争に苦しむ市井の人々の嘆きを叫ぶ。それぞれがワンポイントで赤い何かを手にしているのは、彼らが願う生への渇望か、命そのものか。そして「生きろ」と叫ぶ彼らの中に、誰よりも鮮やかな朱色の衣裳で、マタ・ハリが舞い立つ。マタ・ハリの代名詞であるエキゾチックな"寺院の踊り"を踊る柚希は、しなやかかつダイナミックなダンスが美しいだけでなく、女性らしい腰まわり、筋肉、すべてが美しくまさに劇中で「男性だけでなく女性も魅了する」と語られる妖艶さ。何よりも"生"のエネルギーに溢れている。まさに、この閉塞した時代に舞い降りた女神といったインパクトだ。10IMG_8366.JPG1IMG_8479.JPG

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