2016年に続き2回目の開催となる、「観て」「踊って」「過ごして」体感する新時代の若手ダンスフェスティバル「DANCE×Scrum!!!」。ダンスカンパニーBaobabが主催し、ディレクターを北尾亘が務める。
第2弾のテーマは、「パフォーマンス空間、アーティスト同士の"×(クロス)"」。舞台と観客の境界線を越えて躍動する身体の熱と熱が交差するここだけのコラボレーションが見所だ。
ディレクター北尾がステージプログラムでコラボレーションするのは、ともにコンテンポラリーダンスの若手振付家として活躍する中村蓉。
創り手としてだけでなくダンサーとしても活動しているほか、演劇作品への振付やワークショップ講師など活動は多岐にわたる二人。初のコラボレーション、どのような創作を行っているのか?稽古場見学とともにロングインタビューを行った。
それぞれがオリジナルの振付を創り互いに教え合う。性別も体型も、踊りのルーツも異なる二人は、「やりづら〜い!!」「早くてついていけない〜!」などと漏らしながらも、みるみる自分の身体に振付をフィットさせていく順応性はさすが。二人で選曲した軽快な音楽に合わせ互いのカラダを共鳴させるようにその瞬間を純粋に楽しんでいる。日々ダンサーの身体に向き合っている二人だからこそ、阿吽の呼吸や間合いで絶妙な距離感と時間の流れが生み出されていく。瞬時に振付家とダンサーの役割が入れ替わり、ときにミックスされている様子は非常に興味深い。
―2016年のDANCE×Scrum!!!はどうでしたか?
中村:前回のテーマだった「横で繋がる」というのがとても新鮮だったの!競うのではなく、肩を組んで一緒にやろうという感覚が発見だったし共鳴した。私だったらせっかく大きな劇場を使えるなら独り占めしたくなっちゃうかも(笑)。でも当時は作品創作がけっこう大変で、フェス全体に100%参加しきれなくてすごく後悔した。もっと盛り上げられたのにな〜、って。でも、前回の作品は自分の挑戦的な創作が観客に伝わった実感があってとても大事な作品になったから、何かあるたびに思い出すんだよね。それはスクラムが[挑戦できる場だったから]だと思う。
北尾:すごい嬉しい!前回は初めてで色々手探りだったから、みんなを巻き込みきれなかった部分もあって、今回は前回以上にムーヴメントの渦を起こしたくて、"×(クロス)"をテーマにしたんだよね。
ー今回のDANCE×Scrum!!!に期待すること、やりたいことはありますか?
中村:ステージプログラムに参加するアーティストたちは同年代で、普段から一緒に活動したり飲みに行ったりする仲間なんだよね。その内輪っぽい感じをあえて逆手に取って、協働して盛り上げたい!
北尾:そうだね〜。前回を踏まえて、ただのフェスじゃないぞっていう思いを持って集まってくれた人が多いから、攻めの姿勢な感じが出てるね。公募アーティストも新たな顔ぶればかりだから確実に空気感変わるし、本当に知らない人とのつながりができて、そういう人たちこそ空気をつくってくれるはず。
中村:前回は、ステージよりホワイエが盛り上がってて悔しくて!(笑)。今回は負けたくない!
北尾:そうね〜、確かにその雰囲気はあったかも。
中村:この前、顔合わせでホワイエプログラムの人たちと会ったけど、とっても気合い入ってて、そのパワーいいなーって純粋に思った。今までは誰かに掻き立ててもらってたけど、今回は自分が掻き立てる側にならなきゃなとも思った!
―なぜ今回共作をしようと思ったんですか?
北尾:蓉ちゃんは今の時代に珍しくとっても女性らしい。僕は男でいることを恥ずかしがらずにいる。それがそれぞれの作品にダイレクトに出てる。その共通点が面白いなと思って。作品は遠いように見えるけど、シーンに対するアプローチや熱量がかなり近いような気がしたんだよね。
中村:亘さんとは振付とかアウトリーチとか活動範囲が近い。似てるところでやってるけど近くて遠い感じがしてて。男性と女性だし。でも、リスペクトできる人だっていうことが一番大事!
北尾:それは1回目のスクラムで出会ってお互い認識したし、関係性が継続できると思ったよね。最近はみんな活動が多岐に渡っていて煩雑になりがちだけど、視野が広くてアーティストとして信念のある人が僕は好きだから、同じ人種がいてよかった〜と思った。
中村:すごくわかる!私もそう思った。
北尾:あと僕B型の女性が好きなんだよね〜(笑)。風通しいい人が多くて抜き上手で締め上手。
中村:なんだそれ〜(笑)。
―稽古はどのような雰囲気ですか?
中村:面白かったのが初めての稽古で即興で踊ったとき。相手が示している風景や感覚がけっこう理解できて共有できたから、「何を感じて、何を楽しんでいるか」、言葉がなくても明快にわかった。身体でも言葉でもきちんとコミュニケーションがとれるのは稀有なことだな、と。よくどっちかだけの人はいるけど、亘さんは本当にどっちもいけた。
北尾:僕もあれは有益なセッションだと思った!二人とも作る側の視点・ダンサーとしての視点のどちらも知ってるけど、それは全部自分の創作に跳ね返って生き様というか、「動き様」になってるじゃない?すぐにダンサーにもクリエイターにもスイッチできるし、どっちがそうなったらいいかの微妙な振り幅がすぐわかる。嘘付き上手でもありつつ、嘘を見破るのも上手っていう(笑)。
中村:いやいや、嘘は付かないよ(笑)。でも、それを楽しめるデュオってあんまりないよね。スイッチングがお互いにできるっていうのがわかって稽古がすごくやりやすくなった。
北尾:それは僕も思った。なんか臭い話だね(笑)。三浦くんが名付けてくれたタイトルにも出てるね。三浦くんの言葉はシンプルでありつつ奥行きがあって愛に溢れてる。『あなたの足跡しか踏めない。』の「しか」という部分は、だんだん見つかるのかも。掛け算で生まれた足跡を体感できるのは僕達二人だけかもしれない。
―観客に見てほしいポイントはありますか?
中村:ダンサー、振付家としてのすべてのスキルを120%信じて、疑いのない踊りをしようと思っている。そんなに何かを信じ切っている人の姿を見られることってそんなにないでしょ。
北尾:襟元正されるな〜。でも、今までたくさん作品作ってきたけど今回は改めて処女作を産むような気持ちもあるから、お客様にも新鮮な気持ちで観に来て欲しいな。もしかしたらこの先も踊り続ける作品かもしれないし、「新時代がここから始まった」と、10年後ぐらいに言われたいな。
「DANCE×Scrum!!!」は3月9日(金)~11日(日)まで、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)にて。チケットは現在発売中。