現在、絶賛上演中のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』 。
「シェリー」「君の瞳に恋してる」などで知られるアメリカの伝説的バンド、ザ・フォー・シーズンズの結成から成功への道のり、そしてメンバー間の確執までを彼ら自身のヒット曲で綴っていく作品です。
今回の2018年版は、中川晃教さん扮するリードボーカルのフランキー役以外のザ・フォー・シーズンズのメンバーがWキャストとなる<TEAM WHITE><TEAM BLUE>の2チーム制で上演していますが、<TEAM BLUE>でトミー・デヴィート役を好演しているのが、伊礼彼方さん。
その伊礼さんの持ち込み企画、【イレイカナタ☆プレゼンツ】この人に訊きたい!
『ジャージー・ボーイズ』で共演中の白石拓也さんと山野靖博さんにフォーカスしたインタビューの後編です!
★前編はコチラ
【2018年『ジャージー・ボーイズ』バックナンバー】
# ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート、熱狂の開幕!
# 2018年版『ジャージー・ボーイズ』本格始動! 稽古場レポート
# 稽古場レポート第2弾! WHITEチームの稽古場に潜入
# 稽古場レポート第3弾! BLUEチーム ピックアップ
# まもなく開幕! 初日前囲み取材でキャストが意気込みを語る
● 伊礼彼方 × 白石拓也・山野靖博 インタビュー●
●『ジャージー・ボーイズ』で白石さん・山野さんはどんな役を演じているのか
―― 現在出演中の『ジャージー・ボーイズ』についてお伺いします。白石さん・山野さんは、ずーっと舞台上にいらっしゃいますね。
伊礼「何役やってるの?」
白石「え!?」
山野「数えていないです」
白石「僕も数えていないですね...10いくつか、かな?」
山野「衣裳が11着くらいありますから」
伊礼「コーラスをしながら芝居をするじゃない。あれは大変じゃないの? それに着替えながら歌っていたりもするじゃない」
山野「難しいですよね。僕の中で、ひとつの線引きといいますか、ハウスという僕たちの居場所があるんですが...」
―― ハウス、ですか?
白石「僕らが着替えたりするところを、ハウスと呼んでいるんです。舞台上、客席から見える場所に、アンサンブルみんな、それぞれに「ハウス」があります」
山野「そのハウスにいるときと、オンステージにいるときとでは、コーラスをしながら何かやっていても気持ちは違う」
白石「ハウスにいる時は "自分" でいられます」
山野「そうです。着替えながらコーラスをしていても、自分の中で違和感はありません。(ハウスの上にある)屋根の下に入った瞬間にかわりますね」
白石「着替えながらとか、何かをしながら歌うのは大変ではありますが、歌うことに関しては気持ちが楽ですね」
伊礼「彼らはずっと舞台上にいます、特に1幕はずっと。何かを演じているか、演じていないときはハウスにいるか」
白石「本編中は僕らは(舞台袖や楽屋には)帰らないんです」
伊礼「それが藤田(俊太郎)さんの演出。役者泣かせだよね。でもそれがいい効果になっているんじゃないかな、常に彼ら11人が舞台上に存在しているというのが。11人が一般大衆を担ってるんです。......ハウスでは演出家から「何をしてもいいよ」って許可が出ているんだよね。僕、トミーは2幕の前半で舞台から去るんですが、そのあとに舞台袖から見ていると、ハウスで何か食べていたりするよね。何あれ? グミ?」
山野「グミです(笑)」
▽ 山野さん提供:ハウスからの風景
―― それはリラックス効果とか?
白石「まぁ、居やすい環境づくり、ですね(笑)。でも前回(初演)はそんなことも出来なかった」
山野「そう、前回はそんな余裕がなかったですよね」
白石「初演の時は、今回以上にずっとハウスにいたんですよ。地下室のシーン(秋の章、ザ・フォー・シーズンズのメンバーが言い争う、ジップ・デカルロ邸のシーン)もずっとハウスにいた。でも動くとお客さんの視界に入って、前でやっている芝居の邪魔になるので、ずっと動かず気配を消しつつ、ハウスにいた。今回は、あのシーンは袖に入っていいという演出になりました」
伊礼「うわぁ、それはキツかったね!」
白石「でもこの作品は、ハウスでコーラスをしていても、いわゆる "影コーラス" とは違う。たとえば『Cry For Me』のシーンでいうと、セットの2階部分でザ・フォー・シーズンズの4人が歌っていたら、自分もそこに同調しながら歌っています。ただのコーラスという感覚ではないです」
伊礼「シーンにちゃんと存在してるってことよね、自分が」
白石「物理的に自分が何を表現している、というものではないのですが。そういう意識でコーラスをやりたいなって思います」
伊礼「それはよくわかる。俺も冬の章なんかはまったく出てないけど、アッキー(中川晃教)の芝居を観たいと思うもん。自分が作ったものがどう展開していくのか。あいつがどうこの話に蓋をしていくんだろうって」
―― ちなみにハウスというのは固定位置で決まっているんですか?
白石「はい。ここ(白石&山野)が隣...というか向かい合わせです。上手の奥、1階。阿部裕さんと僕らの3人が同じエリアにいます」
―― コーラスだけでなく、役柄としても八面六臂の大活躍ですよね。
伊礼「俺、白石君のあそこ好きよ! 俺らがボウリング場のオーディションに行くところの、オーナー」
白石「伊礼さんこそ! このあいだ、いきなりネクタイで目隠しをしだして笑いそうになっちゃいましたよ」
伊礼「アレ、突然やってみたんだけど、意外とウケてたから続けてます(笑)」
―― 初演からもずいぶん変わったところもあります。例えば2幕冒頭のオハイオの警官たちのシーンとか。あの演技プランは皆さんで?
白石「いえ、藤田さんからの提案です。それで僕らで、NYを東京だと考えたらオハイオは距離的にどこらへんだろうと考え、中部あたりという想定で甲州弁になりました。いや、最初は僕らも冗談かと思ったんです。一度やってみて雰囲気を掴んで、元に戻そうという意図なのかと思ったら...」
※何の話かわからない方は実際の舞台を観てください!
山野「それはもしかしたら僕たちの力が足りなかったのかなとも思うんです。標準語で書かれてる台本で、田舎の雰囲気を出すということがクリアされなかったから、わかりやすくせざるをえなかったのかなと」
伊礼「いや、それはそんなことないよ。実際俺らはオハイオの人間じゃないし、そもそも日本人が欧米人をやっている時点で嘘があるんだから。だったら方言を入れることで日本のお客さんにわかりやすく「いま違う地域にいますよ」という情報を伝えるというのは、アリだと思う」
山野「個人的には、僕はまさに山梨出身なので、山梨から来てくれた知り合いに「あそこで現実に引き戻される」とはよく言われるんです。そういうリスクもあるんだな、とも思います。勉強になりますね」
―― あとは、おふたりご一緒で印象的なシーンは、車のところですよね。フランキーを騙すシーン。ふたりはドニーとストッシュという役名ですが、あそこも初演からずいぶん印象が変わりました。特に白石さんの甲高い声とか。
白石「はい。僕らのキャラクターをはっきりさせました。初演の時は言い合い・言い合い...だけだったところを、シーンのメインであるフランキーを騙すことにより重点を置いて、ちょっと上下関係をつけた」
山野「で、それを前半と後半で逆転させる構造になりましたね」
白石「最後ヤスの方が、フランキーに情が出て優しくなろうとするので、僕はそれを上から止める...というのを活かすために、前半は自分の方が馬鹿っぽい喋りをしています」
―― それはおふたりで、ここはこうしようよといったような話し合いをするんですか?
白石「稽古中にいきなりやったよね、俺が(笑)」
山野「はい、急にそういうキャラでやってきたので、ああそうかって、乗っかりました」
白石「前回よりヤスがお芝居の積み上げ方が全然違うので。やっぱり2年てすごい。何かをやったら、ちゃんと受け止めて打ち返してくれる。だから僕もどんどんぶっこむようになりました」
―― また、歌うパートでいうと山野さんはニックと同じパートの担当、ですよね。
山野「はい。それも、白と青で(声の)当て方を変えています。確実に "声の成分" を変えています。一番狙ってやっているのは『Big Girls Don't Cry』の「♪彼女に」ってところ。ニックおふたりの声の性質が違うので、母音の深さや、響きといった声の成分を、福井晶一さん、spiさんそれぞれに合わせて歌っています。もともと「多重録音」というのがこの作品のコンセプトなので、ちゃんと多重録音に聴こえるように、分離しないように歌っています」
※多重録音...劇中で「フランキーの声を重ねる」とプロデューサーのボブ・クルーが発言しているとおり、同じ人の声を重ねて録音する手法。今のJ-POPでもよく使われている。
伊礼「すごい!」
―― 白石さんはどこのパートですか?
白石「僕はけっこういろんな人のパートをやっているんです。基本的にボブが多めなんですが、三声になるときはニックのパートにいったりしますし、『Cry for Me』なんかはトミーのパートだったり。曲によって違うんです」
伊礼「プロですね~。そういうところも何でもこなす白石君っぽい!」
白石「だから、たまに「この曲のここ、誰?」って言われて「えーっと...俺か!」みたいになったりします(笑)」
●もう少し、『ジャージー・ボーイズ』のこぼれ話
―― あとこの作品、舞台上のモニターが大事なファクトになっていますが、その最初と最後に映るカチンコ。あれは山野さんの字ですか?
山野「はい。毎公演、書いています」
伊礼「なになに、カチンコの字って!? (山野さんより説明を受ける)あー、WHITEを観たときに一度見た! ...意外と我々、お客さんより舞台上で起きていること、知らないんですよ(苦笑)」
▽ 山野さん提供:カチンコの写真。BLUEバージョンとWHITEバージョン
山野「毎公演、開演10分前くらいにハウスで書いています。あとほかにも3曲分書いてます」
―― ん?
山野「カメラ前にカチンコを出すシーンは、毎回、チョークで書き換えているんです。ただ、それはモニターには映し出されていないので、お客さんには届いていないんですが、『Silhouettes』『Sherry』『Dawn』はいつも書いています」
全員「へぇ~!」
▽ 山野さん提供:客席からは見えない、レアなカチンコ!
―― ほかにもぜひ、そんな「知られざるエピソード」があれば!
山野「皆さんがあまり気付かなそうなところですと...『Sherry』のところの阿部にぃとか」
白石「ああ(笑)! 言っても大丈夫かな(笑)。『Sherry』の前、最初に阿部さんはDJとして出ているじゃないですか。そのあとハウスに戻るんですが、僕らはスタッフ役として盆の上にいて、ザ・フォー・シーズンズの4人も盆の上で歌っている。その時に、後ろで阿部にぃが、ヘタしたら客席からは見えないような位置で、ずっとDJを続けているんです(笑)」
山野「阿部にぃのハウスでね(笑)。客席下手の前方のお客さまには見えると思うんですが。稽古場で最初にそれを見たときは僕、爆笑して歌えなかった(笑)」
白石「嘘でしょ!? て思ったよね」
山野「初演のときはやっていませんでしたよね」
●アンサンブルという仕事について
伊礼「俺、そもそも『ビューティフル』の時にヤスが「僕はずっとアンサンブルでやる!」って言ったことを覚えていて。実はそれが、今回、こういう取材をしようと思ったきっかけのひとつでもあるんだけど」
山野「...言いましたっけ...」
伊礼「あれ??? じゃあ「ずっとボンボン言いながら生きていきたい」って言ったんだっけ(笑)。...いや、実は以前、俺が『エリザベート』に出てたとき、ベテランアンサンブルさんがいて、当時ルドルフをやっている僕の3倍くらいギャラがあって。なんて夢のある話だ! 職人だ! って感動したんだ。彼は、もともとはプリンシパルを目指していたんだけど、あるとき自分はそういう柄ではない、だったら実力をつけて、色々な人に求められるプロのアンサンブルとしてやっていこうと決意したと話してくれた。そう決めてから、自分も向上していけた、って。それをヤスの言葉で思い出したんだけど」
白石「ああ、でもその気持ちはよくわかります。僕、アンサンブルという仕事がめっちゃ好きなんですよ」
伊礼「おまえ、そんな感じがあるよ!」
白石「もちろんメインで立ったら楽しいとも思います。でも今回『ジャージー・ボーイズ』でも、自分がどう動いたら、一緒に芝居をしているこの人がよりよく見えるかな、って考えていますし、そういう働きが出来るのが面白い。例えば『December 1963 (Oh, What A Night)』のシーンでも僕らふたりとも出ていますが、僕らがあのパーティで盛り上がって、ザ・フォー・シーズンズのみんなもそれに乗っかって盛り上がってくれればくれるほど、彼らが滑稽に見えてくるし、そのあとどんどんグループが崩れていく様が印象的になると思う。そういうことを考えるようになって、アンサンブルという仕事が楽しいなって思うようになりました」
伊礼「うん、それは素晴らしいことだし、アンサンブルというのは絶対に必要なんだけど。でも俺としては、まだ若いふたりには「そこから抜け出したい」という気持ちも持って欲しいとも思うんだよね。『ビューティフル』の時、本当にスター役のみんなが素晴らしく輝いていて感動したんだけど、でもその個性的で技術も持った彼らがずっとスター役をやっていけるかというと、そういうことでもない。そこに歯がゆさも感じる」
山野「うーん、上手く言えないのですが、僕、アンサンブルだけをやりたいわけではないんです。面白いことをやりたいと思っていて、その結果がアンサンブルというポジションだったらそれはそれでいいと思っています。例えば『ビューティフル』だったら、(自分が演じたライチャス・ブラザーズとして)ルルルル~♪って歌っていたほうが(他の役をやるより)楽しいと思ってやっていた。ただ、怖さも感じています。今、日本のミュージカル界では、ずっとこの世界でやってきたアンサンブルがプリンシパルになっていくというよりは、人気俳優や歌手、アイドル、声優といった外の世界からきた知名度のある人で、プリンシパルの枠が埋まっていく。そんな中で、たとえばいま僕がプリンシパルの役をいただいたとしても「本当に戦えるのか?」という怖さがあります」
伊礼「そんな世界でやってきたよ、俺は!」
山野「そうですよね。それはすごく感じています」
白石「結局、いまの興行界の多くが、作品で売れているのではなく俳優の人気で売れている、ってことだよね」
山野「そうです。そこに入っていくことで消費されてしまうんじゃないかというのがあります。僕が『ジャージー・ボーイズ』を好きなのは、スコアが素晴らしい、音楽性が素晴らしい、戯曲が素晴らしいと思っているから。そういう作品の素晴らしさに心を寄せて、僕は芝居をしていきたい。でも、そうじゃない要素でプレゼンテーションをしなければならなくなったら、僕は自分がしんどくなってしまう確信があります。そう考えると、今の自分は着実に技術を積み上げていく時期だと思っています」
―― 現時点の、ってことですよね。
山野「そうです、変わる可能性があります。今は、自分の中で戦える力が欲しいという気持ちです」
伊礼「よくわかります。俺も『テニスの王子様』がキャリアの一番最初だから。その前にバンドをやっていて、チケットを手売りで100枚売る大変さを知っていてからの『テニス~』は、自分が何もしなくても毎日2千人のお客さんが入る状況がありがたかった。でも苦労をしらない若い子は、まるで自分が才能があるから人気があると勘違いしちゃうんだよね。そうして、今ヤスが言ったように、消耗されていってしまった奴らを見ている。俺は、中身がない状態でキャーキャー言われる恐怖心がずっとあったから、中身を鍛えなきゃと一時期ストレートプレイばかりやらせてもらったりしていたけど、それが今の自分の財産になっているな。...白石君は、どう?」
白石「僕はあまり「メインです」「アンサンブルです」って考えていないです。そこに居られることの方が重要で。作品に出させてもらうこと、ということではなく、「自分がどのピースになるのか」ということを考えています。自分がどうこう思われたい、というより、作品を観て欲しい。だから今回の『ジャージー・ボーイズ』は地方公演がすごく嬉しい。見たいけど東京まで行けないって人に届けられる。秋田公演や岩手公演って、なかなかないじゃないですか。ザ・フォー・シーズンズを聴いていた年配の方も、「ここだったら観に行ける」って思ってもらえて、実際に来てくれたら幸せです。自分がどう思われるかより、自分が楽しいな、好きだなと思っているエンタメを、多くの人に見てもらうことの方が重要です」
―― じゃあ作品選びがかなり重要ですね。
白石「はい。だから自分で選んでやれる、フリーというスタイルは今の自分にあっているんだと思います」
―― 山野さんがnoteに素敵なことを書いていましたよね、アンサンブルはその時代を作るのが仕事、といったような...。
山野「そうです、アンサンブルは、その時代や社会のリアルな空気を作る。お客さまに「舞台上が今、いつの時代のどんな場所だ」というのを想像させるトリガーとなるのは照明や舞台装置だと思いますが、そこにメインの方が出て行っただけでは成立しないことはたくさんある。そういう時に、革命時代のパリという時代の話だったら、革命時代のパリの空気をアンサンブルが纏うことで、お客さんがその世界を信じることが出来るんじゃないかなと思っています。今回だったら、60年代のニュージャージーだったり、NYですね。そのことで、メインの皆さんが描くドラマに真実味と奥行きが増すんです」
白石「もともとの言葉がそうだもんね、アンサンブルって」
山野「トゥギャザーってことですもんね。一緒にいる、という」
伊礼「これ、お芝居を観るお客さまには知っていて欲しいんですが、映像で言うところの<エキストラ>と、舞台の<アンサンブル>は全然違うからね? 役割も責任もまったく違う。演出家が「あそこからここまで歩いて」って指示をして、ただ動く、もしくは演出家に「歩かされる」のはエキストラ。役者であれば、どう歩くかというのは自分が考えなきゃいけない。歩き方によって時代も作れるし、人格も作れる。それは、メインだろうがアンサンブルだろうが関係ないんです」
●『ジャージー・ボーイズ』は「受け継がれていく」物語
―― 音楽的にはいかがでしょう。この曲が好き、とかあれば教えてください。
白石「僕、今回は『Working My Way Back to You』がすごく好きになりました」
山野「わかるー!」
白石「この再演に際して中川さんからも話があったんです。初演では『Can't Take My Eyes Off You』をピークに作っていると仰っていたんですが、今回はそっちじゃなくて、この曲だと」
山野「ひとつのカタルシスが『Can't Take My Eyes Off You』であることは間違いないんですが、そのフランキーのソロがメガヒットになったことでグループとしても先に進める、というビジョンがあると仰っていて。そのことから、<フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ>じゃなくて、5人でひとつのグループ感を出したいと仰っていたし、実際そう出来ているんじゃないかと思っています」
▽ 『Working My Way Back to You』のシーン
―― ほかに注目して欲しいポイントとかはありますか? 自分のここを見てほしい、とか。
山野「それは難しい話ですね。僕を見てほしいと思ってやっていないので...。例えば「ものすごい僕のファン」って方がいらしたとしても、僕だけをフォーカスして見られるのは切ない。ここにはこんなに素晴らしいドラマが繰り広げられているのに、って」
白石「僕もそう思います」
山野「特にこの話は、ザ・フォー・シーズンズをスターに押し上げたのは一般大衆だ、というセリフがキーになっています。僕たちは一般大衆を体現する立場だと思う。いわば、お客さんとザ・フォー・シーズンズのあいだにいるブリッジ。ひとりひとり一生懸命生きているけれど、"一般大衆" って匿名性のある存在じゃないですか。僕たちもそんな匿名性のある存在に近いんじゃないかなと思ってやっています。だから今日の山野くんはどうだった、白石さんはこうだった、というよりは、背の高いふたり、どっちがどっちかわからないけどそこにいた、という見え方が正解なんじゃないかなって思う」
白石「僕らのことが気になっちゃうと、作品の意味合いがかわってきてしまうからね」
山野「作品から求められている僕らの機能から逸脱しちゃいますよね。...面白くない答えですみません」
―― いえいえ。
白石「ただ、僕らを見てほしい...ということではないのですが、最後の『Who Loves You』のシーンは、心に来るものがあります。僕ら4人(白石・山野・大音智海・石川新太)がザ・フォー・シーズンズの4人からマイクを受け取る瞬間があるのですが、あそこは「どんどん受け継がれていく」というのを体現しているんです。新海絵理子先生の振付けは、ほかのナンバーでも思うのですが、すごくそういうところが上手い。たとえばあの当時はツイストとかが流行っていた時代なんですが、そちらのノリにいかずに硬めに、硬めにいっているのもカッコいいし、その『Who Loves You』でいうと、全員でやった振りを4人が加わってやって、また4人が抜けてやって...と、時代がどんどんめぐっていくというのも表現されている。素敵なステージングだなと思ってやっています」
山野「新海先生、「受け渡されるんだよ」ってずっと仰ってましたね。演出助手の方だったかな、どなたかも仰っていたんですが、舞台上で、プリンシパルであるザ・フォー・シーズンズの4人のバックに、多重録音のために同じパートを歌う人を置いている、というのは、プロダクションとして順々に世代交代できる構造なんだそうです。日本の興行界でそれが出来るのかはわからないし、そこに僕が入りたいということではないのですが、循環していくように、この先どんどん新しい『ジャージー・ボーイズ』が生まれ続けていくのであれば、そのスタートアップに携われたことが幸せだなって思います」
白石「初心を思い起こしてくれる演目ですよね。フランキーの最後のセリフのとおりで。「初めてあのサウンドを作ったとき......あれが最高だった」って」
●伊礼彼方による後説●
ふたりがこんなことを考えているんだ、というのがわかって、僕も楽しかったです。
あと、俺はインタビュアーはやれないな、って思った(笑)!
つい自分のことを喋っちゃうんだよね~。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【『ジャージー・ボーイズ』バックナンバー】
●2016年
# 『ジャージー・ボーイズ』で"天使の歌声"フランキー・ヴァリに!&10年ぶりのスタジオ録音CDリリースも決定――中川晃教インタビュー
# 日本版『ジャージー・ボーイズ』誕生! PV撮影の裏側をちょっと見せ!!
# 日本版『ジャージー・ボーイズ』ついに始動! 記者会見レポート
●2018年
# ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート、熱狂の開幕!
# 2018年版『ジャージー・ボーイズ』本格始動! 稽古場レポート
# 稽古場レポート第2弾! WHITEチームの稽古場に潜入
# 稽古場レポート第3弾! BLUEチーム ピックアップ
# まもなく開幕! 初日前囲み取材でキャストが意気込みを語る
【公演情報】
9月7日(金)~10月3日(水)シアタークリエ<公演終了>
10月8日(月・祝)大館市民文化会館(秋田)
10月17日(水)・18日(木)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
10月24日(水)~28日(日)新歌舞伎座(大阪)
11月3日(土・祝)・4日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
11月10(土)・11日(日)神奈川県民ホール 大ホール(神奈川)
※その他チケットぴあ扱いのない公演地あり。