2016年に日本初演され、その年の演劇賞を総なめしたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』 の2年ぶりの再演が近付いてきました。
先日、全員(ほぼ)揃っての歌稽古を取材したげきぴあ、またまた稽古場にお伺いしてきました!
主役たるザ・フォー・シーズンズのメンバーのうち、リードボーカルのフランキー以外の3人はWキャストで、2018年版は「WHITE」「BLUE」の2チーム制。、
そしてどうやらこの2チーム、(一緒に稽古場にいる日もあるようですが、基本的には)別々に稽古しているようです。
今回は、ずいぶんと稽古も進んだ8月半ば。
WHITEチーム(中川晃教/中河内雅貴/海宝直人/福井晶一)が稽古している現場を取材しました。
この日は、春・夏の場面を返しながら進めつつ、最後に1幕をアタマから全部通す......という稽古内容。
『ジャージー・ボーイズ』は、春・夏・秋・冬の4つの章から成り、それぞれの章を、メンバーであるトミー、ボブ、ニック、フランキーがストーリーテラーとして担っていきます。
同時に、その季節がバンドの盛衰に重なっているという、ニクい構造。
つまり春・夏は、バンドの誕生~成功を掴んでいくまでの物語、です。
春は、中河内雅貴さん扮するトミー・デヴィートの視点で語られていく章。
トミーが "天使の歌声" を持つフランキー・ヴァリ(中川晃教さん)を見出し、グループを結成へと至ります。
「ザ・フォー・シーズンズ」として、4人のメンバーが集まるまで、バンドは3人組・4人組と、構成もバンド名も紆余曲折。
しかし、この出会いがキーであることには間違いありません。
フランキー(中川晃教さん)の"天使の歌声"を聞き「成功へのチケットだと思った」というトミーが、彼を仲間に引き入れます。
ここでトミー、フランキー、そしてトミーの元々の友人で "ハーモニーの天才" ニック・マッシ(福井晶一さん)という3人が固定されますが、時代はトリオよりもカルテット、のこりのひとりがなかなか定着しない。バンドもパッとしない......。
ここでのもうひとりのメンバー、ハンクは、大音智海さん。
ちょっとコミカルなシーンになっていますのでご注目を。
バンドの歩みとともに、彼らの私生活も描かれていきます。
フランキーが恋したメアリーは、年上の女性で、モテて、そして彼らと同じくイタリア系。
綿引さやかさんがチャーミングに演じています。
また、彼らの地元であるニュージャージーの、当時の荒んだ情勢なども。
こちらは白石拓也さんと山野靖博さん扮するドニーとストッシュが、フランキー・中川さんに、ある詐欺を仕掛けてるところ。
その事件を仲裁したのは、ギャングのドン、ジップ・デカルロ......。
そんな、お綺麗なだけではない道をたどって、グループはなんとか成功の階段を昇ろうとあがいている中、石川新太さん扮するジョー・ペシが、"第4の男" をトミーに紹介します。
その「歌って、演奏できて、曲も作れる男」が、ボブ・ゴーディオ(海宝直人さん)。
ちなみに日本版『ジャージー・ボーイズ』は3階建てのセットが印象的なのですが、稽古場にセットが建て込まれているのは2階部分まで。
山野さんの頭、天井につっかえていないですかね...。
ボブが登場してからは、ボブが語り部となる「夏」の章です。
トミーが「俺がすべてを始めた」「フランキーもボブも俺が見つけた」と主張し、ボブは「いや、そうではない、僕はザ・フォー・シーズンズに加入する前に、すでに全米ナンバー2のヒット曲を作っていた」と否定する。
メンバーそれぞれによって「真実」は少しずつ違っているのですが、それが、単なるグループの栄枯盛衰をたどるだけのストーリーではない面白さを生み出します。
さて、「夏」の章で、ザ・フォー・シーズンズは、プロデューサーである、ボブ・クルー(太田基裕さん)との出会いを経て、ヒット曲を連発します。
『Sherry(シェリー)』『Big Girls Don't Cry(恋のやせがまん)』『Walk Like a Man(恋のハリキリボーイ)』......。
中川さんのハイトーンボイス、この日も最高でした!
そして初演を経ているWHITEチーム、この時代らしい、少しレトロな振り付けも、さすがにバッチリ決まります。
クルーはちょっと強烈なキャラなのですが、太田さんの柔らかい笑顔が、逆に食えなさそうな人物像を作り出していて面白いのです。
彼らはこうして押しも押されぬスターへとなっていきますが、同時に、プライベートでもそれぞれ、ターニングポイントを迎えていきます。
名曲『December 1963 (Oh, What A Night)』のシーンでは、ボブが大人になり...。
動線確認中の海宝さんと福井さん。
「そこは(初演では座っていたけど)立ってやってみようか」などなど、演出の藤田俊太郎さんは、初演のままの動きではなく、細かい部分までこだわって作ります。
でも楽しい場面ですからね。
シーンを作り上げる作業も楽しそうです。福井さんもこの笑顔。
ふたりの天才、フランキーとボブはある契約を結び(これはトミーとニックによれば「密約」となります)...。
ボブとニックは突然親友となり...。
(このシーンの福井ニック、初演より断然パワーアップの面白さでした!)
フランキーの家族は、少しずつすれ違っていき...。
「夏」のシーンは、成功の輝かしさだけではなく、そのあと暗い季節がやってくる予兆も含まれているのです。
そして、ノーマン・ワックスマン(畠中洋さん)という男がトミーの元にやってきたことで、バンドの足元は一気に崩れます。
......と、返し稽古からの1幕通し、滞りなくスムーズに進んだWHITEチーム。
しかし演出の藤田さん、「その芝居は、君がやるから成立する。それでもちゃんと伝わるんだけど、一回、君にしか成立しない言い方はやめておこうか」等々、俳優たちに細かく注文を出していました。
また「春は調和に向かっていくシーン。次のシーンに繋げていくということを意識して」といったような、その章にはどういう意味があるのか、というようなことも、改めて共有しているようです。
さて、ここまでのレポで登場しなかった出演者の方をご紹介。
ジップ・デカルロ役を渋い声で演じている阿部裕さんですが、ほかのシーンでのはじけっぷりも注目なんです。
こちらはラジオDJのバリー・ベルソンに扮しているところ。
業界人っぽいノリの良さが楽しいのです。
左から小此木まりさん、遠藤瑠美子さん、まりゑさん。
それぞれ、メンバーと深く関る重要人物に扮する場面がありますが、ここは、唯一の女性だけのボーカルナンバー『My Boyfriend's Back』を歌うガールズグループ、ジ・エンジェルズのシーン。
3人のキレのある歌声も気持ちいい!
中川さんは、音楽監督の島健さんと真剣な表情でお話中...。
稽古場取材、このあとも更新予定です!
お楽しみに。
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:源賀津己・平野祥恵
【『ジャージー・ボーイズ』バックナンバー】
●2016年
# 『ジャージー・ボーイズ』で"天使の歌声"フランキー・ヴァリに!&10年ぶりのスタジオ録音CDリリースも決定――中川晃教インタビュー
# 日本版『ジャージー・ボーイズ』誕生! PV撮影の裏側をちょっと見せ!!
# 日本版『ジャージー・ボーイズ』ついに始動! 記者会見レポート
●2018年
# ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート、熱狂の開幕!
# 2018年版『ジャージー・ボーイズ』本格始動! 稽古場レポート
【公演情報】
9月7日(金)~10月3日(水)シアタークリエ(東京)
10月8日(月・祝)大館市民文化会館(秋田)
10月17日(水)・18日(木)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
10月24日(水)~28日(日)新歌舞伎座(大阪)
11月3日(土・祝)・4日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
11月10(土)・11日(日)神奈川県民ホール 大ホール(神奈川)