『十二夜』アフタートークショーレポート

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ついに開幕した『十二夜』
とってもロマンチックで楽しくて、素敵な舞台になっていますよ~!

この公演を追っているげきぴあは、開幕早々の3月9日に行われたアフタートークショーの取材をしてきました。

この回の出席者は演出家ジョン・ケアードさん、音月桂さん、橋本さとしさん、の予定でしたが
公式HPには「※飛び入りでその他の出演者も参加するかも!?」との記載があり...。

実際は、ジョンさんの呼び込みで...
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こんな大勢がアフタートーク参戦です!
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そしてジョンさんの「どなたかこの中に質問がある方、いらっしゃいますか?」という問いかけで、お客さまからの質疑応答大会に!
観劇し終えたばかりのお客さまからも積極的に手が上がっていきます。


まずは、本作で双子の兄妹、セバスチャンとヴァイオラのふた役を演じている音月さんに「役作りで大変だったことは?」という質問から。

音月さん、「今回は言葉を大切に、とにかくシェイクスピアの流れる詞のような、歌のような言葉をちゃんとお届けしようと最初に言ってもらっていました。私はこれまで役を創る上で感情を先にする演技法をやっていたので、今回は言葉を大切に、丁寧にする。今までとは逆の方法で役作りをするという初めての挑戦だったので、そこは壁にぶつかりましたし、自分の中での葛藤がありました」と苦労した点を語ります。
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次にジョンさんに「今まで何回も『十二夜』を演出されていますが、今回のプロダクションで大切にしたこと、これまでの上演とはこういうところを変えているというような部分」についての質問です。
ジョンさん、過去3回、この戯曲を演出しています。
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※ちなみにジョンさん、こんな格好ですが、こちらフェステ(道化)のアイテム。
当然のように橋本さんから「なんでそんな格好なんですか!」というツッコミあり。

「今回、今までと違う一番大きなところは、日本語でやっているということ。日本語でやるのはすごく楽しかった。翻訳の松岡和子さんが実際に稽古場にいてくださって、変えたいというところは一緒に変えていくことが出来たんですね。それに、イギリスでシェイクスピアを上演すると、(シェイクスピアが書いた)400年前の言葉で上演しなければならない。現代のお客さまには理解できない言葉がいっぱいある、特に冗談が通じなくなってしまう。でもイギリスだと、あまりに愛されているので、手を加えることが難しく、セリフの変更はできないんです。その点、外国語に翻訳する今回だと、現代の日本語に訳せるので、すべて言葉や冗談が通じるものになっている。特に道化のフェステは、現代のイギリスでは冗談が通じなくて難しい。だからイギリスではフェステをやりたがる人があまりいないんです(笑)。でも日本語だと言葉が生きてくる。そしてまた天才的な道化が演じてくれましたし(場内、成河さんに拍手です)
もうひとつ僕にとって新しかったことは、ひとりの俳優がセバスチャンとヴァイオラをやるということ。東京で初めてタカラヅカというものに触れたのですが、こういうことを使えばひとりがふた役を演じることが出来るかなと思ったんです。それが大きなチャレンジでした」とジョンさん。

日本語に訳した方がジョークが通じる、というのは、新鮮な驚きです!
どうしても翻訳モノは、原語のジョークが通じない、というコンプレックスのようなものが、日本の観客にはありますよね...?


マルヴォーリオ役の橋本さんには「マルヴォーリオは真面目なキャラで、それがまわりから見たら面白い、というものだと思うのですが、演じていて"笑わせよう"という思いはあるのでしょうか」という質問です。
橋本マルヴォーリオ、爆笑ですものね!それは気になります。

「稽古場は、はっきり言ってもっと色々なことをやっていたんです。でもジョンのダメ出しが「too much、too much」ばかりで(苦笑)。逆にジョンとシェイクスピアを信じて、そこに委ねてやろうと思って(自分では足していない)。僕は関西人なので、笑いに関しては自分なりのこだわりがありますが、ジョンの言うロンドン風な笑いと、関西風がまじったような笑いになっています。...言っておきますけど、はっきりいって僕はジョンがやれと言われたこと以外はまったくやってません!」と橋本さん。
...なのですが、それを聞いて音月さんが大笑いし、ジョンさんは日本語で「ホント~?」とツッコミです(笑)。
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そしてジョンさんから、「マルヴォーリオは本当に難しい役なんです。もちろんいいコメディアン、いい役者がやらなきゃいけない役。そしてものすごいドラマを背負っている役でもあるので、常に面白かったら台無しなんです。最後には「ああ可哀想...」という気持ちにさせないといけない。ただただ面白い役だとしたら、共感されないと思うんですよね。
彼の唯一の間違いは、間違えた相手に恋しちゃってること。もちろん、みんなが間違った人に恋しているわけですが、そこでマルヴォーリオひとりだけがそれを面白く演じたら、全体がダメになってしまいます。他の人と同様に、間違った人に恋してしまった、その一部なんだと演じていただかないと、マルヴォーリオだけが浮いてしまって、そこだけが喜劇に見えるといったような変なプロダクションになってしまうんです」と解説がありました。


なかなか作品の深いところに突き刺さる、ナイスお客さま!な鋭い質問が並びますが、「お稽古場でのハプニング等があれば教えてください」というほっこり質問も...。

これはジョンさんがぐるりと「何かありますか?」と周りを見渡し、代表して山口馬木也さんが答えました。
「僕、「ジョンさんの演出はさすがだね」って話をしていた時に、「さすがって何?」って言われて。さすがって英語に訳しづらいんですよね。しかもジョンさんはその前の日の夕飯に蕎麦を食べていて、その蕎麦屋の名前が『さすが』だった! だから蕎麦の話をしていると思われたようで、それを伝えるのにすごい時間がかかりました...」というエピソードを披露。
可愛いです!
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橋本さんには「牢のシーンはびっくりしっぱなしです。牢の深さはどれくらいあるのですか?」という質問も。
実際に腕力だけでやってます、と言う橋本さんに、「おお~!」と会場から拍手。
なのですが、「ホントにやってること、ちょっとここで見せてよ」とジョンさん。

実演する橋本さん↓
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ここでさらに大きな拍手が起こり、劇場とはすべてそういうトリックの連続です。すべて演技で見せているんですというジョンさんの言葉で、さらにさらに大きな拍手が起こったのでした。


...というように、観終えたばかりのお客さまからは内容についてもどんどん質問が飛びます。
さながら大学の講義のように濃厚で興味深く、「ふむふむ!」と頷いてしまうジョンさんのお答えなので、どうしてもご紹介したいので...これからご覧になる方用にちょっと文字を隠しつつご紹介。
(お読みになる場合は、文字列ドラッグで反転させてご覧ください)


まずはセバスチャンとヴァイオラが同じ舞台に立つ最後のシーン、その演出について。

音月さんは「最初にこの舞台のお話を頂いた時に、ひとりでふた役させていただくという話を一緒にいただいていました。どういう風にやるんだろう、わたし、ふたつにはなれないし...と思ったのですが、魔術のような巧みなトリックを聞いて、なるほど、と思いました。でも本当にそこは一番難しく、試行錯誤しながらやっていたので、今日もお客さまがこのシーンで笑ってくださってすごく救われました。ありがとうございます!」と感想を。

そしてジョンさんは「お客さまは舞台上でどうやってやっているか、実際は見えている。それでもなお「不思議」と感じる、それが舞台の素晴らしいところだと思います。そこにトリックがないというフリをするより、そこに見えているということが素晴らしいんだと思います。トリックにびっくりするのではなく、役者がその瞬間にキャラクターを変えて演じるのが素晴らしいと感じる。トリックはただシンプルに、剣を握っている方がセバスチャンというだけなのですが。以前僕がやったときは別々の俳優が演じていて、それはある意味便利なのですが、お客さんは「このふたりがとっても似ている」と真剣に信じなくてはいけなくなってしまう(笑)。
...シェイクスピアの時代はどうやったんだろう、(今回のように)ひとりの役者がやったのか、それぞれの役をふたりの役者がやったのか、わからない。でも今は、ひとりでやったんじゃないかないうと感じがしています。そのキーになるのは、アントーニオが最後にセバスチャンを振り向かせるシーンで言う「セバスチャン、どうしてあなたはふたりになったんですか」というセリフ。その時に今までやっていたひとりがふたつに分かれた、だからそのセリフが書かれたんじゃないかなと思っているんです」と、ポイントと、今回ひとり二役という選択をした意図を教えてくれました。


またラストシーンについてアントーニオとサー・アンドルーが両脇に座って悲しそうにしているのが印象的。喜劇なのにこう締めるのはなぜか」という質問も。

ジョンさんのご説明では、「マルヴォーリオが後ろに残っていますので、3人ですね。ハッピーエンディングから取り残された3人というのを表現しています。
アントーニオはセバスチャンに恋をしていた、(セクシャリティな意味での恋ということではないかもしれないが)アントーニオはセバスチャンを心から愛しているのは本当。そのセバスチャンは新しく結婚して、その奥さん(オリヴィア)のもとにアントーニオは送り出す。僕がアントーニオだったらそんな結婚の場になんて行きたくないと思う。だから彼はセバスチャンをオリヴィアのところに行かせて、またいつか会うときがあったら会おうという風に自分は残る。
サー・トービーもまた、マライアと結婚します。サー・アンドルーはそのことで友を失ったわけです。友と信じてた人...まあ、サー・トービー自身は彼のことを友だちでもなんでもないと思ってると思いますが(笑)。だから彼もそこに取り残されてしまう。
そして、シェイクスピアの面白いところは最後マルヴォーリオに復讐を誓わせて退場させていく。なんだかそこにまた新しいマルヴォーリオの復讐劇!みたいなものがかけそうじゃないですか?『十二夜II-マルヴォーリオの復讐-』!!(笑)」
...という演出意図だということでした。


そんな興味深いお話が続いて、最後に客席で質問の手をあげたのはなんと生島ヒロシさん。
素晴らしい舞台だった、という感想とともに「世界のジョン・ケアードと一緒の仕事をして、どういうところがさすがだなと思ったか」とキャストの皆さんへ質問です。

そしてすかさず成河さんが「翔さんが答えます!」
(ご出演の生島翔さん、生島ヒロシさんの次男です)
「そんなワケないでしょ!」とあせる翔さんですが、さらにジョンさんの「正直に答えますね。翔さんはこのカンパニーの中で一番の役者です(笑)」という声に後押しされ...

「先ほど翻訳の松岡さんが稽古場にいて、というお話もありましたが、ジョンさんの演出は、日本語に訳された台本があって、それをもう一回稽古中に訳しなおして、その場でひとつひとつの判断をしていくのですが、言葉以外の雑学もすごくいっぱい伝えてくれる。例えばジェスチャーで、僕たち役人が「OK!」という仕草をしたら、それは第一次世界大戦の時に生まれたジェスチャーだから急に20世紀になっちゃうから使っちゃダメだよと言われました。そういった知識が散りばめられているので、そここからすごく学ぶことがあります」と素晴らしいコメントで、客席からも拍手喝采だったのでした。


ジョンさんはじめ、皆さんのお話を聞いた上でもう一度舞台を観ると、さらに『十二夜』を奥深く楽しめそうな気がした、充実のアフタートークでした。


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△ 小西遼生さん

TwelfthNight08_20_0601.JPG△ 石川禅さん

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△ 成河さん

【公演情報】
3月8日(日)~30日(月) 日生劇場(東京)
4月7日(火) iichiko グランシアタ(大分)
4月10日(金)~12日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)

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