去る2月21日、『十二夜』の稽古場見学会が開催されました。
事前に募った"宣伝隊"たるオーディエンスの皆さんを稽古場にご招待しての「公開稽古」です。
お客さまが間近で見る中でのお稽古は、演出のジョン・ケアード曰く「今まではスタッフや僕の前だけでやっていましたが、突然知らない顔が前に現れたので、役者の皆さんはみんなのことを恐れています(笑)」とのことでしたが、ジョンさんの演出のもと、白熱の稽古が展開されたのでした。
『十二夜』は双子の兄妹を中心に、恋のすれ違いに、勘違い、いたずらが入り乱れる、可笑しくてほろ苦さもあるロマンチックな物語。
シェイクスピア最後のロマンチック・コメディとも称される傑作です。
出演は音月桂、小西遼生、中嶋朋子、橋本さとしら演技巧者揃い。
この作品の稽古場、げきぴあではすでに何度か取材に訪れていますが、この日はキャスト勢揃い!でしたので、今まで当連載に登場していなかったあの人もあの人も出てきますよ~。
まず冒頭で、ジョンさんから「セットは、大きな生垣に囲まれているという設定です。その生垣が動いて、ポジションが変わることで、異なるシーンを描いていきます」といったような説明が。
セットは上記のように、円形のアクティングエリアに沿うように曲面になった生垣が二重に取り囲んでいます。
ちなみに通訳はジョンさんの奥様・今井麻緒子さん(元ファンテーヌ!)。
またこのセットに関しては「日本は劇場内の機械がすごく上手く働きます。さらに稽古場でこんなにもセットを作ってもらえることはない。日本の舞台のスタッフは、稽古場をいかにうまくまわすかということに本当に情熱を持ってやってくださっている。劇場に実際に入る前に、同じ事が稽古場で出来るようになっている。それは本当に素晴らしいことなんです。日本くらいですよ、こういうのは」というような、日本の劇場環境への賞賛の言葉も...。
「音楽は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、キーボードで演奏します。今、稽古場にはピアノしかないのですが、ピアノの音は出てきません。ピアノは当時(=17世紀)の音ではないので。
お芝居には音楽が本当に深く関わっています。音楽はお芝居の一部だと思ってください。シェイクスピアはそのように書いてます。
最初に聴いていただく音楽は、弦楽器の三重奏。オーシーノが舞台の中央に座っていて、音楽家に囲まれているというところから始まります。
お芝居が始まる10分前からミュージシャンは演奏を始めています。オーシーノが音楽の中に浸っている、というところから始まります...」と話してくれました。
おそらくご覧になっていたお客さまにも、情景が浮かんだことでしょう。
そんな、音楽家に囲まれているオーシーノ公爵=小西遼生さん。
憂いをおびていて、高貴な感じが出ていますね~!
場面は変わって、ヴァイオラ=音月桂さん登場。
「ここで何が起こっているかと言いますと、嵐が起こります。後ろの空も雲が流れ、稲妻が起こっている状態。そこで船の遭難が起きています」とジョンさんが説明。
双子の兄妹、セバスチャンとヴァイオラは、この船の遭難で別れ別れになってしまいます。
そしてこのシーン、前述の生垣のセットを使っての場面転換が鮮やかで、実寸以上に舞台の奥行きが感じられ、舞台奥からやってくるヴァイオラの登場がとてもインパクトあるものになっていました。
劇場空間で早く見たい!
ヴァイオラは、身分を隠すため、男装してこの地の有力者=オーシーノ公爵に仕えることを決意、船長に仲立ちを頼みます。
船長は宮川浩さん。
その決意どおりにヴァイオラはオーシーノ公爵の小姓として仕え、すぐに公爵のお気に入りになります。
こちらは男装しシザーリオと名乗っているヴァイオラ。
公爵の、シザーリオへのお気に入りっぷりはハンパなく、「近い、近いよ!」と言いたくなる接触具合です(笑)。
公爵へ思いを寄せるヴァイオラのドキドキが伝わってきて、かわいそうなくらいです...。
一方で、ヴァイオラが「私が助かったのだから兄も助かっているはず」と思いつつもその行方に心を痛めている兄・セバスチャンもまた、船の遭難から助かっていました。
セバスチャンに扮する音月さんはこんないでたちになりました。
シザーリオの少年っぽさに比べて、こちらはひたすら凛々しくカッコイイ!!
なおセバスチャンのシーンでは、セットの生垣はこのような形になり、また違った印象を与えてくれそうです。
セバスチャンと行動をともにしているアントーニオは山口馬木也さん。
「俺はあんたに惚れた、ついて行こう!」とアントーニオ。
音月セバスチャンと山口アントーニオのシーン、おふたりの声の響きや通りの良さも素敵で、シェイクスピア劇らしいセリフの美しさも堪能できそうです。
...と、ここまでで(1)妹のヴァイオラ (2)シザーリオ(ヴァイオラの男装) (3)兄のセバスチャン、と音月さんが演じる2役?3役?をご紹介しましたがいかがでしょうか。
これらの演じ分けは、もちろん俳優さんの演技力によるところが重要ではあるのですが、ビジュアル(衣裳)面でどう見せるか...というのも大事なところ。
こちらはシザーリオの扮装ですが、ジョンさんは
「セバスチャンとヴァイオラ(シザーリオ)をどうやって違う風にみせるかは難しいところ。いま、ヴァイオラは剣を持っていて、このサッシュは剣を支えるためにつけていますが、ふだんセバスチャンは剣を持っていて、ヴァイオラは持っていないというのが明らかな違いの出方だと考えました。でもヴァイオラは途中で決闘しなきゃいけないんですね。だからどこかの時点では剣を持っていなきゃいけない。はじめから持っているようにするか、どこかのシーンでそれをつけてないことになって、たとえばフェイビアンに渡してそのシーンをやるのか...どういう風にやるのか、それは面白い選択です」と話し、様々なことを検討していることを明かします。
ヴァイオラは剣を持たないのか?
それとも剣を支えるサッシュを変えてくるのか?
はたまた、まったく違う選択がなされるのか?
本番舞台をお楽しみに!
さて、オーシーノ公爵が思いを寄せているのは、伯爵令嬢オリヴィア。
オリヴィアは兄を亡くし、兄を思うあまり男と同席するのを断っているという状況。
つまり、公爵の求愛をはねつけています。
オリヴィアは中嶋朋子さん。
美しさだけでなく、聡明で、話す言葉も機智に富んでいるオリヴィア、中嶋さんのクレバーさにぴったり。
ちなみにオリヴィアの登場シーンも、とても印象的。
喪服の皆さんが横切るという単純な動きなのですが、それまで生垣が作る曲線、そして舞台の奥から手前、というタテの動線に、突然ヨコの動線が入るのが、ちょっと...なかなか「おおっ」となりました。
こちらも舞台空間の中で早く見たいシーンのひとつ!
そんなオリヴィアを口説こうと、公爵はシザーリオを使いとして遣します。
自らが抱く公爵への思いを隠し、オリヴィアへ公爵の思いを伝えるシザーリオ。
...なのですが、今度はオリヴィアが美しい少年・シザーリオに恋してしまいました!
うん、そりゃ、オリヴィアもドキドキしちゃうよね(笑)、と思う音月さんのカッコよさ。
さて、オリヴィアの知的さと反して(?)、伯爵家の皆さんは変わり者揃いです。
カタブツの執事マルヴォーリオは、橋本さとしさん。
なのですが、橋本さんの創るマルヴォーリオはカタブツというより...なんといいますか、色々と変わっています(笑)。
イヤミったらしさが、違う方向へ発揮されてしまったような...。
もう、橋本さんが何かするたびに稽古場では笑いが起こってしまっていました。
走り方もなんかおかしい...。
道化のフェステに扮する成河さん。
フェステの口八丁には、聡明なオリヴィアもちょっとやりこめられがち。
この扮装は以前ご紹介した衣裳についての記事に登場したアレですね!
オリヴィアの叔父サー・トービーの壤晴彦さん。
絵に描いたような「ダメ親戚」です。
のんだくれっぷりがお見事! 酒の匂いが漂ってきそうな酔っ払いぷりでした。
サー・トービーのお友だちで、オリヴィアの求婚者、サー・アンドルーは石川禅さん。
お金持ちだけどちょっと気が弱く情けない、でも憎めない存在。
そしてこの物語、シェイクスピアらしく言葉遊びに溢れているのですが、その言葉遊びの裏の意味を汲み取らず、ストレートに受取ってドギマギするサー・アンドルーは、可愛らしくも、観客に物語の親しみやすさを伝えてくれるような気もするのです。
そんな彼らが馬鹿騒ぎしているのですが...
(「三馬鹿大将勢揃い」なんてセリフも...)
この人に嫌みったらしく怒られてしまいました。
そして。
オリヴィアの侍女・マライア=西牟田恵さんも加わり、イヤミなマルヴォーリオに一泡ふかせようと、いたずらが仕込まれていきます。
ヴァイオラ、オーシーノ、オリヴィアの恋の三角関係が縦軸としたら、
このマルヴォーリオへ仕掛けられたいたずらが横軸となって、物語は展開。
さて、この狂騒、どこへ落ち着くのでしょうか...!?
続きはまもなく日生劇場で開幕する本番の舞台でどうぞ。
【公演情報】
3月8日(日)~30日(月) 日生劇場(東京)
4月7日(火) iichiko グランシアタ(大分)
4月10日(金)~12日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
★お得な「ペア割」発売中!★
限定公演に限り、S席1名9000円(2名18000円)のお得な「ペア割」を発売中です。
※定価=S席-12000円
ご購入はWEBのみ。コチラからどうぞ