シェイクスピアのロマンチック・コメディ『十二夜』。
音月桂、小西遼生、中嶋朋子、橋本さとしら演技巧者揃いのキャストに、シェイクスピアの本場・英国のロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアードが演出を手掛ける注目の舞台です。
制作発表の場で、出演者自身がこの作品への期待と手応えを感じているような熱い意気込みを語っていたのも印象的ですが、2月某日、その稽古場を取材してきました!
物語は船の遭難にあい生き別れになった双子の兄妹・セバスチャンとヴァイオラを中心に、護身のために男装しシザーリオと名乗るヴァイオラが仕えるオーシーノ公爵、その公爵が思いを寄せる伯爵令嬢オリヴィア、オリヴィアに恋をする執事マルヴォーリオらの恋のすれ違いを楽しくロマンチックに描くもの。
双子の兄妹・セバスチャンとヴァイオラは元宝塚雪組トップスター、音月桂が演じます。
この双子の兄妹、プロダクションによっては別の俳優が演じることも多々あり、事実、演出のジョン・ケアードは過去3回この作品を演出したことがあるが、そこでは別の俳優が兄妹に扮していたとのこと。
音月さんの、宝塚男役出身者ならではの男女の演じ分けにも注目です。
そして一人二役、といっても、ヴァイオラは劇中、男装してシザーリオと名乗りますので...。
実際は「二役」以上の演じ分けが求められることになります!
この日稽古場に伺うと、兄・セバスチャンの貴重な登場シーンをあたっているところでした。
(物語の大半は妹・ヴァイオラの周辺の出来事が描かれていきます)
ジョンさんの演出では、まずその場面に入るごと、車座になって台本の読み合わせをしていくようです。
この段階で、ジョンさんが一語一語を大切にしているのが伝わってきます。
細かくセリフをチェック。
例えば「確かに何かある」の「確かに」の一語をカットしたり、
「俺が狂っているか、あの人が狂っているか」というセリフの中の「あの人」に反応し、「女性、Ladyという意味をきちんと入れたい、ほかに何かいい言葉がないか」と相談してみたり...。
一方で音月さんら、俳優側からも「この場合"みんな"というのは英語(原語)ではどうなっているんですか?」というような質問も飛び出し、シェイクスピアが本来意図していた意味をしっかり身体に入れていく作業が重ねられていきます。
そんな音月さん扮するセバスチャン。
一瞬で若い男性になってしまう音月さん、鮮やか!
声色も凛々しく、明晰で、皆さんが一語一語にこだわっているこの戯曲の言葉を、すっきりと耳に届けてくれます。
<シェイクスピア戯曲の中にいる音月桂>、想像以上にしっくりきそうで期待が高まります。
中嶋朋子さん扮する、美しく知性溢れた伯爵令嬢・オリヴィアは浮かれ気味。
というのも、ずっとシザーリオ(実はヴァイオラが男装している)に恋焦がれながらもつれなくされていた彼女、顔がそっくりな兄・セバスチャンをシザーリオと勘違いし結婚を申し込み、しかも見知らぬ美女=オリヴィアに結婚の申込をされたセバスチャンがそれを受けたものだから...。
キャッキャしながら登場してくるふたりが可愛らしく、まさに"ロマンチック・コメディ"の様相。
オリヴィアは司祭を連れてきて、婚約の礼拝をせかします。
中嶋さんの喜びに満ちたひたむきな表情が素敵。
司祭は内田紳一郎さん。内田さん、過去にフェイビアンを演じていましたね。
オリヴィアに腕を差し出す音月セバスチャンの颯爽としたカッコよさは、さすがです。
外の明るい日差しが入り、笑顔が絶えないこの稽古場、『十二夜』という美しくも楽しく、奥深い作品に非常に似合っている感じがしました!
演出のジョン・ケアード氏。
稽古場レポート続きます。
【公演情報】
3月8日(日)~30日(月) 日生劇場(東京)
4月7日(火) iichiko グランシアタ(大分)
4月10日(金)~12日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)