◆ 伊礼彼方 INTERVIEW ◆
『グランドホテル』の最近のブログ記事
■ミュージカル『グランドホテル』vol.17■
ついに開幕しました、ミュージカル『グランドホテル』。
これまでもインタビューや稽古場&開幕レポートなど、様々な角度から本作を追っている当連載ですが、開幕してもまだ連載は終わりではありません!
本日は、REDチームのガイゲルン男爵役・伊礼彼方さんインタビューをお届けします。
すでに開幕していますので、具体的な内容にまで踏み込んで、お話を伺って来ました。
――公演後に、ありがとうございます。お疲れさまでした。『グランドホテル』、観ていても体力を吸い取られていく気がします(笑)。すごい舞台ですよね。やっている側はさぞかし...、と思うのですが。
「大変ですねぇ! 命削って、魂削って、やっている感じ。いや、どの芝居でも、魂を削る仕事だと思うのですが、今回は、よりそう思います。でも、楽しいんですよ。今回この『グランドホテル』の稽古初日に集まったREDチームの顔ぶれを見た時に、やっぱりこの仕事受けてよかった、素敵なメンバーだなと思ったんです」
――どのあたりが、素敵だと感じたポイントなんでしょう?
「こういう大型ミュージカルで、なかなかお互いの目を見て芝居をできる人って、少ないんですよ。日本のミュージカルって、様式美みたいなところ、まだあるじゃないですか。でもREDチームって、そういうのを嫌う人たちで、ちゃんと向き合いたい、ちゃんと芝居をしたいって思いを強く持ってる人たちが集まってる。別にGREENがそうじゃないという意味ではないですよ。ただ、そこを大切にしている人たちが集まったなと僕は思って、好きだなぁこのメンバー! ...と」
――今回その、REDとGREENにチームを分け、演出も、結末も変える...というのが上演前から話題になっていました。実際やっていて、どうでしょう?
「いや、ここまで変わるとは思ってませんでしたね! 最初の段階から2チームに分けてやる、とは聞いていたのですが、演出は基本的に一緒なものだと思ってたんですよ。そうしたら、方向性があまりにも...180度違うので、びっくりしました。といっても僕、GREENチーム、まだ観ていないんですけど。観るつもりもないんですけど(笑)! ...でもシーンごとにちょこちょこは見ていて、そのちょこちょこ観た感じで言うと、GREENは僕の好みじゃないです(笑)。成河くん曰く、それはちゃんと通しで観ないからだ、全部観ると(良さが)わかるよと。...なるほど、じゃあ僕はまだ見ないでおこう、と思ってます!」
――初日前の会見でも、伊礼さんはGREENチームへの闘争心むき出しの発言をされてましたよね(笑)。でも裏を返せばそれだけ"REDチーム愛"があるんだろうな、と。
「もちろんですよ! 本当に、芝居をするのがものすごく楽しい。毎日違うし。成河くんもね、俺がちょっと緊張してたら、「大丈夫だよ、目を見て芝居すれば」って言ってくれて。かっこいいでしょ。草刈(民代)さんは草刈さんで、「緊張しませんか?大丈夫ですか?」って訊いたら「ぜんぜん平気」って、これまたかっこいいの(笑)! でも、僕思うんですが、REDってものすごい臆病者が集まってるチームなんですよ。演出のトム(・サザーランド)は、もちろん演出をつけるのですが、演技指導はしないんです。芝居に関しては、基本的に俳優に任せてくれる。その中で僕らは「あれはどうなんですか」「これはどうなんですか」と、みんな自己主張が強くて、ちょっと面倒くさい(笑)。でもそれは、良いものを作りたいという表れなんです。臆病だからこそ、より稽古したい、ディスカッションしてちゃんと腹の底に落とさないと人前に立てない、という責任感。そんな臆病者が集まって作り出している世界なんです、REDは」
■ミュージカル『グランドホテル』vol.16■
【ぴあニュース】
ふたつの『グランドホテル』から浮き彫りになるもの
ミュージカル『グランドホテル』が4月9日、東京・赤坂ACTシアターで開幕した。演出は英国出身のトム・サザーランド。カンパニーを中川晃教・安寿ミラ・宮原浩暢らが出演する〈GREEN〉と、成河・草刈民代・伊礼彼方らが出演する〈RED〉のふたつに分け、演出を変えて上演されることが話題となっていた作品だ。中でも結末は〈GREEN=悲劇的エンディング〉〈RED=ハッピーエンディング〉とまったく異なるものになる......というところまで、事前に明らかにされていた。さっそく、両バージョンを観劇した。
▽〈GREEN〉
▽〈RED〉
物語は1928年ベルリン、ナチス台頭が近づく不穏な社会情勢の中、豪華なグランドホテルに行きかう人々のドラマを描く群像劇。ことさら飾り立てられてはいないが品のある舞台セットは、まさに高級ホテルの趣き。その美しいセットが回転し情景を変える中、ホテルを訪れる客たちの事情が点景のように綴られていく。重い病を患ったユダヤ人の会計士、借金だらけの男爵、引退興行中のバレリーナ......。それぞれの歌声が重なると同時に、彼らの人生が重なり、そして物語が一気に回りだすプロローグ「グランド・パレード」から、一気に心を掴まれる。
それまで接点のなかった人々の人生が、グランドホテルという場所で奇跡のように交錯する。そこで愛が生まれ、友情が生まれ、殺人事件が生まれる。その過程も、両バージョンで少しずつ異なる。それは目に見えて違うものから些細なものまで様々だ。だが、その些細な選択から、物語がボタンの掛け違いのようにずれていき、最後の運命を大きく変えていくよう。結末の演出はまさに180度違う。新しい世界への旅立ちを予感させる〈RED〉、このあと戦争へ走っていく当時のベルリンの重苦しさを描き出す〈GREEN〉。......だが、思うのだ。まったく違うようでいて、ふたつの物語は、実は同じものを描き出しているのではないか、と。希望を絶たれたような〈GREEN〉の中では、新しく生まれる命――それは希望である――が、ひときわ強く輝く。一方、希望を胸に幕切れを迎える〈RED〉の登場人物もまた1928年のドイツに生きているのは間違いなく、彼らのその後に苦難が待ち受けていることは想像に難くない。どちらも、どんな状況であろうと、貪欲に生きることのエネルギーが描かれている。ふたつの『グランドホテル』は表裏一体なのだ。実際クライマックス、ある人物に死が訪れるシーンの演出は、まさに表と裏といった見え方のする演出がなされていて、興味深かった。
とはいえ、同じ脚本と音楽で異なるドラマを生み出していく意欲作、その意図するところをきちんと見せきるには、役者には演じる力量、さらにはクレバーさが要求されるであろう。今回のキャストは全員が、その役目をきちんと担っていて、非常に見応えのある舞台を作り上げている。どちらを観ても満足のいく作品だが、できれば両バージョンを観て、そこから何かを感じ取って欲しい。
公演は4月24日(日)まで同劇場にて。その後、愛知、大阪公演あり。
取材・文・撮影:平野祥恵
▽〈GREEN〉オットー・クリンゲライン役、中川晃教
▽〈RED〉オットー・クリンゲライン役、成河
▽〈GREEN〉フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役、宮原浩暢
▽〈RED〉フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役、伊礼彼方
■ミュージカル『グランドホテル』vol.15■
1920年代のベルリンの豪華なグランドホテルを舞台に、様々な事情を持った人たちのドラマが交錯する――。
名作ミュージカル『グランドホテル』が、英国の鬼才トム・サザーランドと、日本の才能ある俳優たちによって蘇ります。
昨日行われた会見の模様、もう少し詳しくお伝えします。
〈GREEN〉オットー・クリンゲライン役、中川晃教
「私はオットー・クリンゲラインという、重い病気を患っているユダヤ人を演じます。医師から宣告されている残りの人生をこのグランドホテルで生きたい、そしてグランドホテルで人生を探したい、という役。光と輝き...ギラギラしている光をまとっている、そんなクリンゲラインを生きられたらと思います。作品は、休む暇もなく舞台の端から端まで、上も下も、全部余すことなく堪能していただく舞台です。集中してやっていきたいと思いますし、お客さんにも集中力が必要かと思います!」
〈RED〉オットー・クリンゲライン役、成河
「とてもアグレッシブでスピーディなミュージカルになると思います。REDにしてもGREENにしても、華やかで煌びやかで、かつ影がある。とても哲学的なメッセージを込められた作品です。僕とアッキー(中川)が演じるオットーは、その中でもすごく哲学的なメッセージを背負ってホテルを出て行くので、その部分を注目していただければ」
〈GREEN〉エリザヴェータ・グルシンスカヤ役、安寿ミラ
「引退間近のバレリーナ、グルシンスカヤをやらせていただきます。年齢を重ねてきたからこそいただけた役だと思います。人生に絶望したバレリーナが、男爵と出会って、また生きる喜び、踊る喜びを取り戻す過程を精一杯演じたいと思います」
〈RED〉エリザヴェータ・グルシンスカヤ役、草刈民代
「私も本当にバレリーナだったので、稽古場でも、トゥシューズを久しぶりにはいたり、バレエの衣裳を着たりして、踊っていた頃の自分を思い出しながらやっていました。今の年齢だからこそ出せるような恋心なども盛り込まれていますので、楽しみながら精一杯演じたいと思います」
〈GREEN〉フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役、宮原浩暢
「僕自身初めてのミュージカルです。何もわからないところから、まわりの先輩方にアドバイスを頂きまして、常にスリルを楽しんで生きる男爵、今まで他人のことを本当に好きになったことがない男が初めて真実の愛に気付くというというところや、年の離れたこの恋愛を、お客さまに楽しんでもらえれば。そして、自分も恋をしたいと思ってもらえるようなキャラクターを演じていきたいと思います」
〈RED〉フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役、伊礼彼方
「私もガイゲルン男爵を..."フェリックス・アマデウス・ベンヴェニュート・フォン・ガイゲルン男爵"を演じさせていただきます。1928年という時代背景は、爵位を剥奪される手前くらいなのですが、それでも生活レベルを下げられない、必要なものより欲しいものを手にしてしまう男が、グルシンスカヤに恋に落ちて、やっと出会えた一筋の光...。それがどういう結末になるか、これはREDとGREENでは違いますので、両方とも観ていただければと思っています」
■ミュージカル『グランドホテル』vol.14■
【ぴあニュース】
「まったく別の作品」ふたつの『グランドホテル』まもなく開幕
4月9日(土)に開幕を控えるミュージカル『グランドホテル』の出演者たちが7日、舞台稽古のさなか会見を開催した。英国出身の鬼才、トム・サザーランドが演出を手がけ、キャストをGREENとREDの2チームに分け、結末も2パターン用意する注目の作品。主演は中川晃教(GREEN)と成河(RED)。ほかに元バレリーナの草刈民代(RED)や、これが初ミュージカルとなる真野恵里菜(RED)など、様々な個性を持ったキャストが集結し、"ふたつの『グランドホテル』"を描き出す。
グレタ・ガルボらが出演した映画でもよく知られる作品だが、物語は1920年代のベルリンを背景に、豪華なグランドホテルに行きかう人々の人間模様を描く群像劇。中川と成河が演じるのは、重い病を患い、残された日々をグランドホテルで過ごそうとやってきたオットー。それぞれ「グランドホテルで人生を探したい、そんなオットーを生きられたら。舞台の端から端まで、上も下も、全部余すことなく堪能していただく舞台です。集中してやっていきたい」(中川)、「華やかで煌びやかで、かつ影がある作品。オットーはその中で、哲学的なメッセージを背負ってホテルを出て行く存在ですので、その部分を注目していただければ」(成河)と意気込みを語った。
なんといっても見どころは、2チームが全く異なる結末だということ。稽古も別で、お互いがどうなっているのかを出演者自身も知らないという。両チームに出演する藤岡正明は「こんなに違うと、(2パターン)覚えるのが本当に大変、と稽古をしながら思っていました。まったく別の作品を観るつもりで来ていただければ」とアピール。同じく両チームに出る湖月わたるも「セットの転換も違うし、場面の見え方が全然違う。私は素敵な男爵(宮原浩暢、伊礼彼方)とバレエを踊らせていただくのですが、そのシーンはまったく同じ曲なんですが、まったく違う振付になっています」と話す。
和気藹々とした雰囲気の中、ソツなく両チームのアピールをするキャストが多い中、「作品としてはREDの方が1ナノくらい面白いんじゃないかな」(吉原光夫/RED)、「負けてらんねえ!と思います。僕はREDとGREENのバトルだと思ってます」(伊礼彼方/RED)、「宣戦布告をされましたが、僕はあんまり戦ったりするのは好きじゃない(笑)。最終的にはお互いいい作品になればと思いますが......やっぱり負けられませんね」(宮原浩暢/GREEN)など、ライバル心をむき出しにした発言も。ぜひ両チームを見比べてみてほしい。
公演は4月9日(土)から24日(日)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。その後、愛知、大阪公演あり。チケットは発売中。
◆ REDチーム フォトコール ◆
▽オットー・クリンゲライン役、成河
■ミュージカル『グランドホテル』vol.13■
1920年代のベルリンの豪華なグランドホテルを舞台に、様々な事情を持った人たちのドラマが交錯する――。
名作ミュージカル『グランドホテル』が、英国の鬼才トム・サザーランドと、日本の才能ある俳優たちによって蘇ります。
『グランドホテル』といえば、群像劇の先駆けとなった作品であり、こういった様々な人々が交錯していくタイプのドラマを"グランドホテル方式"と呼ぶほど。
その、日本初演は、1993年の宝塚歌劇団月組でした。
ということで、今回の出演者の中で、宝塚歌劇団出身のお三方...安寿ミラさん、湖月わたるさん、樹里咲穂さんにお集まり頂き、インタビューをしてきました!
今回は〈GREEN〉と〈RED〉の2チーム制で上演されますが、
安寿さん・樹里さんは〈GREEN〉チーム、
湖月さんは、〈GREEN〉と〈RED〉両チームへの出演です。
※インタビューは、稽古開始前に行っていますので、ご了承ください。
◆ 安寿ミラ×湖月わたる×樹里咲穂
INTERVIEW ◆
△左から 樹里咲穂、安寿ミラ、湖月わたる
●宝塚月組版を観た安寿さんと湖月さん、そして出演していた樹里さん
――『グランドホテル』、日本初演は1993年の宝塚月組公演でした。宝塚歌劇団出身のお三方ですが、作品はご覧になっていますか?
湖月「はい、観ています!」
樹里「出演していました!」
――あっ、そうなんですね!
樹里「そうなんです、出てました(笑)。」
安寿「(今回の出演者の中で)唯一じゃない? 過去にこの作品に出ている人」
樹里「だから、ふとした時に、前の時の歌詞が出てきちゃうかもしれなくて...(笑)」
湖月「それくらい、心にも身体にも刻まれてるってことでしょ?」
樹里「刻まれていますね...!」
安寿「いくつの時?」
樹里「研4の時です」
安寿「えー! ...私も、月組のを観ています。(湖月さんに)あれ、宝塚にもう入ってた?」
樹里「わたさん(湖月)の方がひとつ先輩なので...私のほうが上級生に見えます(笑)?」
安寿「うん、見える(笑)。そうなんだ~、じゃあ、観てるよね」
湖月「はい。お稽古場から、特別な雰囲気がありました。トミー・チューン(オリジナル版の演出家)さんがいらしてて、みんなが椅子を持っていて。すごい熱気がありましたよ」
※トミー・チューン版は、椅子を巧みに使ってシーン展開をしていくのが、印象的でした。
安寿「あれ、かなめ(涼風真世)の退団公演で...それに、(79期生の)初舞台公演だよね?」
樹里「そうです、そうです」
安寿「『グランドホテル』(1993年4-5月)と、星組の新・宝塚大劇場のこけら落し公演(『宝寿頌』/『PARFUM DE PARIS』:1993年1-2月)の狭間に、私たち(花組)がやったのよ」
湖月・樹里「あぁ、そうでした!」
安寿「こけら落としと、かなめの退団という話題の公演の谷間に、何の話題もない『メランコリック・ジゴロ』があったの(笑)」
湖月・樹里「わ~、大好きな作品」
樹里「今でも(再演を)やってますもんねぇ、『メランコリック・ジゴロ』。私は『グランドホテル』でベルボーイをやってました。ベルボーイは8人くらいいたのかな? 要するに荷物運びですよね。椅子がいっぱい出てくる演出だったので、椅子をひたすら出し入れして、筋肉がついてムキムキになったのを思い出します(笑)」
安寿「樹里、(1989年の宝塚の)NY公演は行ってない?」
樹里「参加していないんです」
安寿「あれ、そうなんだ。私はそのNY公演に参加していて、NYに着いた日に観させられたのが、『グランドホテル』だった。時差ボケで、ほとんど覚えていないんですが(苦笑)」
湖月「あ~...、それは寝ちゃいますよね(笑)」
安寿「だから私、ブロードウェイ版と、月組版を観ているんですよ。でもそれ以来観ていないし、何せ記憶も薄いので、今回の上演、"とうとう来たか"と思いました。自分も出るのに、"やっと観られる"って」
■ミュージカル『グランドホテル』vol.12■
1920年代のベルリンの豪華なグランドホテルを舞台に、様々な事情を持った人たちのドラマが交錯する――。
名作ミュージカル『グランドホテル』が、英国の鬼才トム・サザーランドと、日本の才能ある俳優たちによって蘇ります。
キャストインタビューや顔合わせ取材など、様々な角度で本作を追っている当連載ですが、今回は、3月8日に行われた、公開稽古の詳細レポートをお届けします!
先に出したニュース記事はコチラ→★
物語は、1920年代の大都市ベルリンを舞台に、華やかな「グランドホテル」に集う境遇の異なる人々が織りなす人間ドラマ。
ホテルという場所で、様々な人々が出会い、別れ、時にすれ違う、群像劇です。
物語上まったくドラマが交差しない人々もいて、そこはまさに"群像劇"=〈グランドホテル方式〉の基礎を作ったと言われる作品なんです。
今回は〈GREEN〉と〈RED〉の2チーム制で上演され、それぞれのチームで結末も異なる...ということが、注目されていますが、この日、その「ふたつの結末」の具体的なところも、明かされました。
〈GREEN team〉出演:中川晃教/他
...悲劇的エンディング
華やかな時代からナチス台頭の足音が忍び寄り、グランドホテルの登場人物たちもまた、死と隣り合わせの運命が待ち受けている。悲劇的結末を暗示する...
〈RED team〉出演:成河/他
...ハッピーエンディング
人生の意味を見出したオットーは、フレムシェンと共に旅立つ。再び情熱を取り戻したグルシンスカヤは嬉々として次の公演地へ。それぞれが希望ある未来に向けてホテルを後にする...
こちらが、演出のトム・サザーランドさん。
先日には、トムさんがイギリスで上演した『グランドホテル』が、英国演劇界で栄誉ある賞「2016年オフ・ウエストエンド・シアター・アワード」の最優秀ミュージカル作品賞と最優秀振付賞を受賞したばかりです!
稽古に入る前、トムさんより解説がありました。
「原作はヴィッキー・バウムによる同名小説です。それまでの小説というものは、ひとり、ないしはふたりの主人公がいて、その主人公たちをめぐるお話を描くものでしたが、彼女は新しい小説の技法を確立しました。ストーリーの中にはとてもたくさんの登場人物がいて、キャラクターによっては作品の中で出会うことすらない、そんなキャラクターもいます。共通項は、みんな、グランドホテルにいるということ。その物語の中で、それぞれの登場人物の人生があぶりだされます。
そしてこれはヴィッキー・バウムがその頃過ごしていたベルリンという場所、時代を描いたもの。不穏な時代であり、変革を待っている時代です。変革がどの方向に行くかということは、後々歴史が語りますが、その時は誰もわからない。英語での表現ですが、「踊り狂ったその先に戦争がある」...1929年当時のドイツはそんな時代です。
そして、ひとつこのミュージカルの中で明らかにされていることは、「持てるものと持たざる者がいる」ということ。その頃のベルリンでは、持てる者たちが、力ずくで自分たちが優れているというその立場をもぎ取っていた。ヴィッキー・バウムはユダヤ系の女性で、小説を書いたその年にベルリンを離れ、アメリカに逃亡します。その後、作品は有名な映画となり、さらに1989年にはブロードウェイでトニー賞を受賞するくらい素晴らしいミュージカルが誕生しました。このミュージカルの革新性というものは、最初の小説の革新性と同じくらいのものでした。そして今回、日本でこの作品を上演しますが、皆さんが「舞台作品はこういうものだろう」と思っている、その限界をぐっと超える作品にすることを目標にしています。それは『グランドホテル』という作品が、常に成し遂げてきた道です」
また、前述の「ふたつの結末」についての説明も。
「今回はふたつのまったく異なるバージョンをお見せしたいと思っています。それは先ほど申し上げた、「持てる者と持たざる者がいる」ということがヒントになっています。同じ音楽で、同じ脚本です。その同じ脚本と音楽を、キャストの皆さんがその公演ごと、違うチームでまったく違う作品にしていきます。
片方のバージョン(RED)は楽観主義、前向きにすべてのことがうまく収まるという方向で作られます。それはそれぞれのキャラクターが何か目指しているものがある、それを達成し、ゴールに辿りつき、そして幸せを手に入れる。
もうひとつのバージョン(GREEN)は歴史が物語っている、ベルリンの1920年代終盤から30年代にかけて起こることを示唆します。人々の中にある夢や希望は剥奪され、嫉妬、嫌悪といった感情がどんどん台頭していく。そして力ずくでものが進んでいく時代です。その前までは、リベラルな社会だったはずなのに...。
また結末だけが変わるのではなく、今回、ダブルで演じられる役どころがたくさんあります。この素晴らしく描かれたキャラクターたちは、その演じ手がその人なりに解釈し、その人なりに演じ、人物像を作ることができます。まったく同じ素材を使いつつ、今も稽古場では白熱した稽古をしていて、まったく違うバージョン、違うキャラクターが生まれつつあります。自分自身でも本当にここまで違うふたつのバージョンが出来るのかと、今興奮のさなかです。この作品の持つ素材の力、キャストの皆さんの素晴らしい力をぜひ本番で感じていただければ」
◆ 公開稽古レポート ◆
さて、この日披露されたのは幕開きのビッグ・ナンバー『グランド・パレード』。
それぞれの人物像と、抱えた事情が、ホテルの喧騒の中少しずつ見えてくる、まさにドラマがここから始まる感満載のナンバーです。
静寂の中、愛と死の化身...スペシャルダンサー、湖月わたるさん登場。
湖月さんが呼び鈴を鳴らし、物語が回転しだします。
「グランドホテル、ベルリン。いつも変わらない。誰かが来て、誰かが去っていく...」と、グランドホテルで行き交う人々を眺めるオッテンシュラッグ医師が、登場人物を、少し毒気を混ぜながらシニカルに紹介していきます。
■ミュージカル『グランドホテル』vol.11■
ミュージカル『グランドホテル』、いよいよ稽古もスタートし、作品が動き出しています!
これまでキャストのビジュアル撮影レポート&インタビューを連載していました<げきぴあ>ですが、引き続きこの作品を追っていきますよ~!
本日お送りするのは、今月アタマに行われた<顔合わせ>の模様です。
キャスト、スタッフから、主催者、キャストの事務所関係者等々、作品に関わる人々が一同に会する<顔合わせ>の場。
今回の『グランドホテル』は〈GREEN〉と〈RED〉の2チーム制で上演されることはこれまでもお伝えしていますが、なんと<顔合わせ>も2日にわたり、2チーム別々で開催!
Wキャスト・Wチームの公演というのはさほど珍しいものではありませんが、顔合わせまで別々に行うというのはなかなか珍しい。
まさに、「ふたつの『グランドホテル』」が、ここから生まれていくのです!
〈GREEN〉チーム
〈RED〉チーム
演出のトム・サザーランドさんからは「昨年、日本で『タイタニック』という作品をやりました。演出家としてのキャリアの中でももっとも楽しく、エキサイティングな時を過ごしました。今年もまた、日本で演出する機会をいただき、心の底から嬉しく思います。『グランドホテル』のこの旅路、出航するのが本当に楽しみでなりません」というご挨拶が。
また作品については下記のようなことも語っていらっしゃいました。
■ミュージカル『グランドホテル』vol.10■
1920年代のベルリンの豪華なグランドホテルを舞台に、様々な事情を持った人たちのドラマが交錯する――。
名作ミュージカル『グランドホテル』が、英国の鬼才トム・サザーランドと、日本の才能ある俳優たちによって蘇ります。
ビジュアル撮影レポート&インタビューで、出演者の魅力に迫る当連載、本日は湖月わたるさんが登場です。
湖月さんが演じるのは<スペシャルダンサー>という役どころ。
公式HPの説明では<命の灯火が消えようとする、その瞬間に現れる愛と死の化身>とあります。
この役柄、湖月さんの個性に併せて、新しく作られるキャラクターとのこと。
名ダンサーである湖月さんが、どんな"愛と死の化身"を表現するのか...楽しみです!
なおこの作品はキャストを〈GREEN〉と〈RED〉の2チームに分け、それぞれのキャストから生まれるドラマを大切に、結末も2パターン用意する...ということも話題ですが、湖月さんはシングルキャストで両チームとも出演されます。
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
最初、湖月さんの扮装はこんな形でした。
ネックレスに、手袋も左右同じもの。
■ミュージカル『グランドホテル』vol.9■
昨年、『タイタニック』を大成功に導いた英国の鬼才トム・サザーランドが演出するミュージカル『グランドホテル』。
キャストを〈GREEN〉と〈RED〉の2チームに分け、それぞれのキャストから生まれるドラマを大切に、結末も2パターン用意する...という、注目作です。
ビジュアル撮影レポート&インタビューで、出演者の魅力に迫る当連載、本日はエリック役の藤岡正明さんがご登場!
『タイタニック』でも美しい歌声でドラマを彩った藤岡さん、トム・サザーランド演出作へは連続出演。
藤岡さんは、シングルキャストで〈GREEN〉と〈RED〉両チームに出演します。
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
現場はこんな雰囲気です。
藤岡さん演じるエリックは、<知性溢れる若きアシスタント・コンシェルジュ。出産中の妻を想っている>という役柄です。
ここにはいない妻(恋人)を思う...というのは、『タイタニック』で藤岡さんが演じたバレットもちょっと思い出してしまいますが...今回のエリックは、どんなキャラクターになるのでしょうか。
■ミュージカル『グランドホテル』vol.8■
イギリスの若き鬼才トム・サザーランドのもとに、日本が誇る実力派が揃うミュージカル『グランドホテル』。
本日は注目の若手俳優・味方良介さんをご紹介します!
今回は〈GREEN〉と〈RED〉の2チームでの上演も注目ですが、味方さんは両チームに出演。
木内健人さんと共に、<優れた歌とダンスでパフォーマンスを披露し観客を楽しませている、二人組のアメリカ人エンターテイナー>ジミーズを演じます。
ジミーズには盛り上がり必至の、軽快なダンスナンバーもありますね。
味方さん&木内さんのコンビが作品をどう盛り上げてくれるのか...乞うご期待!
◆ ビジュアル撮影レポート ◆
そんな味方さんのビジュアル撮影は、こんな雰囲気で行われています。
準備中...。
ちょっと緊張気味?