■ミュージカル『SMOKE』2019年版 vol.7■
【開幕ニュース】
ミュージカル『SMOKE』が7月25日(木)、東京・浅草九劇で開幕する。3人の俳優のみで、ひとりの天才詩人の苦悩と葛藤をドラマチックに描き出すミュージカル。昨年日本初演され、その濃密な世界がまたたく間に話題となったが、今年は6月の池袋・東京芸術劇場バージョンに続き、初演の地・浅草九劇に再登場。大山真志、日野真一郎ら日本オリジナルキャストを中心とした若手実力派俳優たちが、魂の叫びを聴かせる。7月23日に行われた最終稽古及びプレビュー公演を取材した。
物語は、20世紀初頭に生きた韓国の天才詩人、李箱(イ・サン)の遺した詩と彼の人生にインスパイアされた内容。「海へ行きたい、その資金を手に入れたい」とふたりの青年・超(チョ)と海(ヘ)が、三越デパートの令嬢だという紅(ホン)を誘拐してくるところから始まる。ミステリアスな物語はやがて、自分の才能に絶望し、苦悩し、その中でもひと筋の光を掴もうとするひとりの天才詩人の内面を描き出していく......。予想もつかない方向へ物語が転がる面白さに加え、すべてが明かされるわけではない余白もあり、その奥深さが中毒者が続出する要因のひとつでもある。
登場人物は3人のみ。九劇バージョンはそれぞれの役がトリプルキャストで、超を大山真志、日野真一郎、木暮真一郎、海を大山、日野、木内健人、紅を池田有希子、高垣彩陽、元榮菜摘が演じる(大山、日野は2役)。取材したのは大山(超)、日野(海)、池田(紅)の組み合わせと、木暮(超)、木内(海)、元榮(紅)の組み合わせ。前者の組み合わせは大山・日野は昨年は演じていない役への挑戦だったが、全員初演を経験していることもあり、作品への没入度が深い。物語の謎めいた旅路へと観る者を深く深く誘い、捕らえて離さない魅力がある。大山の超の焦燥感、日野の海の混乱、池田の紅の色気が渾然一体となり、熱い物語が展開された。後者の組み合わせは木内、元榮が初参加。木暮の超の絶望感、木内の海の苦悩と痛み、元榮の紅のフレッシュさが印象的。こちらは同世代感があるトライアングルで、物語のラストで明かされる3人の関係性がすんなり腑に落ちる一体感があった。ほかにもキャストの組み合わせ次第で、物語の様々な顔が浮かび上がるに違いない。
何より、客席100席程度という非常に緊密な浅草九劇の空間が、この作品にはよく似合う。アクティングスペースを四方から客席が囲む作りで俳優たちの熱演を間近で観ることができ、ほとばしる汗に、小さな表情の変化まで余すことなく客席に伝わってくる。音楽も、実力派揃いのキャストたちが大迫力の歌唱で届ける。贅沢な空間で、繊細に、大胆に紡がれるミュージカル。ぜひお見逃しなく。
公演は8月18日(日)まで同劇場にて。チケットは発売中。
▽ 大山真志=超
▽ 日野真一郎=超
▽ 木暮真一郎=超
▽ 大山真志=海
▽ 日野真一郎=海
▽ 木内健人=海
▽ 池田有希子=紅
▽ 高垣彩陽=紅
▽ 元榮菜摘=紅
▽ 以下、大山真志(超)、日野真一郎(海)、池田有希子(紅)の公演回より
▽ 以下、木暮真一郎(超)、木内健人(海)、元榮菜摘(紅)の公演回より
▽ 以下、日野真一郎(超)、大山真志(海)、高垣彩陽(紅)の公演回より
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【バックナンバー(2019年公演)】
#1 石井一孝&藤岡正明&彩吹真央インタビュー
#2 芸劇チーム、稽古場レポート
#3 芸劇チーム、開幕レポート
#4 藤岡正明&木内健人 インタビュー
#5 九劇チーム、稽古場レポート
# (ぴあニュース)開幕ニュース
#6 大山真志&池田有希子インタビュー
【バックナンバー(2018年公演)】
#1 稽古場写真到着!公演情報
#2 稽古場レポート
#3 大山真志×日野真一郎ロングインタビュー
【公演情報】
〈ORIGINAL CASTバージョン〉
7月25日(木)~8月18日(日) 浅草九劇(東京)
[出演]大山真志/木内健人・木暮真一郎/日野真一郎
池田有希子・高垣彩陽・元榮菜摘