■浦井健治ソロコンサート『Wonderland』#3■
ミュージカル界が誇る若手実力派スター・浦井健治さんが、デビュー15周年を記念し、ソロコンサートを9月29日(木)に開催します!
8月にリリースしたソロデビューアルバムと同じく『Wonderland』とタイトルを冠したこのコンサート、浦井さんの15年のヒストリーをたどるようなコンサートにもなりそう。
開催までの道のりを追っている当連載、今回も稽古場に少し伺ってきました!
アクティング(動き)を付ける日...と伺っていたのですが、急遽歌稽古に突入。
少数精鋭のキャストのため、稽古場もフレキシブルに動いているようです。
この日は浦井さんのほかAKANE LIVさんと...
加賀谷真聡さんが稽古場にいらっしゃいました。
それにしても、この稽古場に伺うたびに、「あの作品、楽しかったな」「あの舞台、素敵だったな」「あのシーン、感動的だったな」と思い出がよみがえります......!
このとき皆さんが稽古していたナンバーも、もちろん浦井さんの過去出演作の歌。
とある曲では、歌い上げる浦井さんをバックに、AKANEさん、加賀谷さん、演出の荻田浩一さんが円陣を組んで踊っていたりして(本番用の振付ではないと思うのですが...ついつい踊っちゃった感じ?)、皆さんが、なんだかとってもキュートなんです!
浦井さんも、歌いながら笑っちゃったり。
そして、浦井さんがぴょんぴょん飛び跳ねながら楽しそうに歌っていたのは[title of show]より、『9人のお気に入り』。
今日はその[title of show]、そして浦井さんのターニングポイントのひとつである『エリザベート』について振り返りましょう。
about ... 『エリザベート』
ウィーン生まれの大ヒットミュージカル。日本では1996年に宝塚で初演、"東宝版"と呼ばれる男女混合ミュージカルは2000年に初演。2バージョンとも再演を繰り返す大人気作であり、今年(2016年)も宝塚版・東宝版の両方が上演されている。
19世紀末ウィーンのハプスブルク王朝を舞台に、実在した美貌の皇后エリザベートの人生を、架空の存在トート(死)との愛憎を絡めて描き出す物語。
浦井は2004年から2010年に皇太子ルドルフ役として出演した。
★げきぴあバックナンバーから振り返る『エリザベート』★
2010年版『エリザベート』、実は当げきぴあの初の「連載」だったんです。
ということで私も非常に思い入れがあるのですが...、稽古場なども伺っていたのですが、残念がら浦井ルドルフには遭遇せず...。
とはいえ作品の振り返りに、そしてもしかしたら最近浦井さんのファンになって『エリザベート』を観たことがない!という方もいらっしゃるかもしれませんのでコチラ、ご紹介させてください。
▽『エリザベート』2016PV【舞台映像Ver.】(東宝公式チャンネルより)
★浦井健治さんが語る『エリザベート』★
「僕にとってグランドミュージカル...海外ミュージカルとしては初挑戦になった作品です。
『エリザベート』との出会いには、たくさんの驚きと発見があって、自分を成長させてくれました。さらにこれほど長い年月かかわって、回数を重ねた役は、ルドルフをおいてほかにないです。約6年、400回ちょっとだったかな? かなりの数をやらせていただきました。歌や動きが、今でもすぐに出てくるくらい。役者としてそれが良いことかわかりませんが、頭じゃなく反射神経で出ちゃう(笑)。
そして、ルドルフという役は作品の中で成長していくのですが、自分の中でも大人に成長していった役でもあります。最初の頃は"王子"だったのですが、そこから回を重ねていくうちに"皇太子"になり、"国を思う父の子"になっていった。それをずっと見守ってくださった先輩方や、(演出の)小池修一郎先生の存在は、やっぱり大きいです」
2014年8月、東京・シアタークリエ、愛知・名鉄ホール、大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
ミュージカルを3週間で作り上げ、ブロードウェイまで持っていこうとする青年ふたりが題材に悩んだあげく、自分たちがミュージカルを作り上げる過程をそのまま作品に...。
作者たちが自らの実話をそのまま舞台にし、NYのフェスティバルからオフ・ブロードウェイ、オン・ブロードウェイへと成長を遂げていったミュージカル。
出演者は4人とピアニスト1人のみ。
日本版は浦井健治、柿澤勇人、玉置成実、佐藤仁美が出演した。
福田雄一が手がけた日本版は、オリジナルにある「ブロードウェイでお馴染みのもの」を「日本ミュージカル界でお馴染みのもの」に置き換えたギャグや、出演者周辺の小ネタもふんだんに盛り込まれ、独創性に満ちた非常に楽しい作品となった。
★げきぴあバックナンバーから振り返る[title of show]★
こちらは浦井さんインタビュー、稽古場レポート、開幕レポートと要所を押さえていますのでぜひ!
★浦井健治さんが語る[title of show]★
――[title of show]楽しい公演でしたね。
「そう、福田さん演出で! ここまで笑いを全面に押し出すテイストもアリなんだ、というのは勉強にもなりました」
――ただ、浦井さん的には実は大変だった。
「そうなんです。初めて公演中に"声帯出血"をしまして。ケアをして、ケアをしても、そうなったっていうのがちょっと驚きではあったんですが......、自分の中で、無理をしていた部分があったのかもしれないし、振り切ってやればいいというワケじゃない、とも学びました。だからこの作品を通して、ちょっと大人になれたかな、とは思っています。でもそれを支えてくれた柿澤くん、玉置さん、佐藤さんがいたからこそ乗り越えられたこと。もちろんお客さまやファンの方には心配もさせてしまっただろうし、すごく悲しい思いもさせてしまったと思う。それはやはり自分の中に一生残る傷です。それに対し、どう恩返しをすればいいんだろうというのは、やっぱり毎公演、一生懸命やっていくしかないなと思いましたし、今もそう取り組んでいます。
あの時に感じた人の思いや、支えてくれる人の存在は、自分の中にしっかり刻まれました。心の中でひりひりした思い出にもなっているので、そういう意味では貴重な経験だったと思いながら......やっぱり二度とあんなことはないように、と思いますね」
――そしてテーマ曲のような存在である『9人のお気に入り』というのも、いい曲ですよね。「100人の人が9番目に好きなものより、9人の人が一番好きなもの」というフレーズは印象的でした。
「心情的にはある意味、バイブルだと思っています。たとえお客さまがひとりだとしても、舞台の上に立つ者として、そのひとりに対してパフォーマンスするのは絶対だという思いと、全員が気に入るものより、自分が伝えたいメッセージを大切にすることの重要性、重さ。作品を作る者として、表現者として、この歌詞は突き刺さります」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【浦井健治『Wonderland』バックナンバー】
【浦井健治『Wonderland』公演情報】
・9月29日(木) 東京国際フォーラム ホールA