チャールズ・M・シュルツ原作のコミック『ピーナッツ』の世界観がそのままミュージカルになった『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』。
誰もが知るあのスヌーピーやチャーリー・ブラウンたちが、歌い、踊り、身近にある"ハピネス"の花束を届けてくれる、可愛くて心あたたまるミュージカルです。
すでに稽古場の様子などをお伝えしているげきぴあですが、本日はシュローダー役・東山光明さんと、ライナス役・古田一紀さんのインタビューをお届けします。
どちらも、人気キャラですね!
―― この『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』というミュージカルのこと、おふたりはご存知でしたか?
古田「知らなかったです」
東山「僕も。最初にお話を頂いた時は驚きました。キャラクターものかな?って」
古田「今、色々な作品がありますし、これが初演なのかな? スヌーピーやチャーリー・ブラウンを題材に、オリジナルで作るのかな? って思いました」
東山「ね! 人間がナマで演じるんだ、しかも大人が...ってところがちょっとした驚きで。スヌーピーがどうやって登場するんだろうって、そこから色々興味を持って、CDも入手して調べて...って感じです」
古田「でも、今って何でも舞台でやっちゃう時代なので、僕は「へぇ、やるんだ」って受け止めました(笑)」
東山「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)やってるから、そこは免疫があるんだね(笑)。でも50年前からある作品ってすごいよね。演出の小林香さんが「2.5次元ミュージカルのハシリ」だと仰ってたから、まさにそういうことなんですよね」
―― そしておふたりが演じるのがシュローダーとライナスですね。東山さんがシュローダーで、古田さんがライナス。
古田「ライナスは愛せるポイントがすごくたくさんあるなと思っているところです。すごく頭が良くて、色々なことが見えているけれど、それと同じくらいの強さで人を思いやる気持ちも強くある。おねえさんのルーシーとのシーンとかも、いいですよね。なんていうか"偏っていない"キャラクターなので、そこが魅力かな」
東山「シュローダーも、ライナスと同じでどちらかというとおとなしめな子。寡黙にピアノを弾きまくっている。でもルーシーにキレることもある(笑)」
古田「キレますね、ウワー!って(笑)」
東山「うん(笑)。(ルーシーはシュローダーが好きで)しつこく言い寄られすぎて、キレちゃうんだけど、基本は静かな男の子です。僕、キャラクターの特徴とかを色々調べたんですが、この『ピーナッツ』のキャラクターって作者のシュルツさんの実生活も投影されているみたいなんです。例えばルーシーは、シュルツさんの奥さんの若い頃に当てているとか。シュルツさんご本人も音楽がすごく好きだったりするそうなので、シュローダーというキャラクターはシュルツさん自身の思いを投影している部分もある気がするんです。綴りもシュローダー(Schroeder)とシュルツ(Schultz)って似ていますしね。だからそういう魂のこもったシュローダーを演じたいなと思ってるところです」
▽ 東山光明
▽ 古田一紀
―― それぞれ、とてもわかりやすい特徴があるキャラクターですね。
東山「シュローダーと言えば音楽、ピアノ。ピアノのシーンも出てきますが...実際僕、弾くのかなぁ? どうなるんでしょうね(※この取材は稽古開始前)。でも大好きなベートーベンについて歌うシーンもありますし、『月光』『運命』といったベートーベンの音楽も出てきます」
古田「ライナスの場合は、毛布ですよね。僕、小さい頃からずっと持っているものがあるわけじゃないですが、彼がずっと毛布を手放せないでいる気持ちはすごくよくわかるんです。小さい頃って、ものすごくこだわりが強いでしょう、謎のこだわりが(笑)。僕の場合は、「自分の持ってるものを人と交換ができない」というこだわりがありました。カードゲームをやっていたんですが、どんないらないカードでも、1枚たりとも手放せなくて。あとは「一度自分の身体のどこかを触られたら、触り返さないとダメ」というのもあった(笑)。自分の身体が削りとられていくようで、触り返さないと、プラマイゼロにならない!って(笑)」
東山「面白いね(笑)」
古田「そのこだわりは小学校3年生くらいまで続いたかな。でもそれって、ぜんぜん理由なんてなくて、本当に習慣なんですよ」
東山「うんうん、自分の中のルールを作ってるんだよね」
古田「そうなんです。だからすごくライナスの毛布に対するこだわり、わかる。彼は賢くて、色々なことが見えちゃうがゆえに、世の中の厳しさがわかっちゃっている。だからこそ、ひとつよりどころがないと...ということで毛布にこだわるのかな、と。きっともっとあっけらかんとした性格だったら、そんなものはなくても大丈夫なんだと思うので」
―― 今のお話にあったように、シュローダーといえばピアノ、ライナスといえば毛布...とすぐに出てくるような、よく知られているキャラクターです。そんな有名なキャラクターを演じるにあたって、プレッシャーはありますか?
古田「うーん、あんまり、ないかな!? 原作も何十年も続く中で、絵柄も変わっていますし」
東山「そうですね。自分の役が...というより、作品自体が、誰もが知っている。そういう意味で「どうなるんだろう」と注目されているとは思うんですが、もう気にするレベルじゃなく有名だから!」
―― キャスト6人の個性も、みなさん異なっていて、面白い顔ぶれですね。いいカンパニーになりそうですか?
東山「どう、どう? 製作発表会見で6人全員が初めて集まったけど、どう思った?」
古田「僕、今まで同年代の人たちとずっと舞台をやってきたので。まわりが先輩ばかりという状況が慣れなくて「どうしよう!」って感じです(笑)」
東山「古田くんは、製作発表でも中川(晃教)くんにいじられてたじゃん。このカンパニーではいじられキャラになるんじゃない?」
古田「えっ...俺...やだなあ(笑)! 俺、ずっと若手俳優の中では"先輩"的立ち位置だったんですよ。若いキャストを迎え入れる立場だったので。いじられる方に慣れてない!」
東山「なるほど、逆にいじる方だったんだ。次第にそれぞれのポジションが固まっていきそうではありますけれど、でも、物語上はみんな5・6歳、同い年くらいの設定ですからね。先輩後輩の壁をなくして、稽古に励みたいですね」
古田「僕、さっきのプレッシャーの話で言うと、『ピーナッツ』っていう原作やライナスというキャラクターより、まず何より最初にこの共演者の方々が、緊張なんですよ! なのでもう、とにかく"準備するしかない"と思って、微力ながらいま色々と積み上げているところです」
―― 何の準備をしてますか?
古田「やっぱり、歌ですね。ダンスは...大丈夫です(笑)! 動くことに関しては少しは、やってきてますので」
東山「ホントですか、じゃあ色々教えてくださいね。...あのね、俺、今日古田くんと対談だということで、共通点を探したんですよ」
古田「え、ありがとうございます」
東山「あったの。スキー。特技なんでしょ? 僕も高校がスキー部で、競技スキーをやっていました。春休みはスキーシーズン終わるまでずっと合宿。夏はその合宿費ためるためにずっとバイトという生活してました」
古田「すごい...。俺、そういうスキーガチ勢を横目に「わー頑張ってるなー」って思って滑ってる方です(笑)」
東山「(笑)。楽しんでる方か」
古田「そうなんです。でもスキーは好きです、優雅に楽しんでます(笑)」
東山「小さいときからやってたの?」
古田「はい、3歳くらいから毎年、滑りに行ってます」
東山「それはけっこうキャリアあるねー、きっと上手いね」
―― 同じスキーが趣味でも、ずいぶん違ってました(笑)。それも面白いです!
東山「本当に、この6人がそれぞれ自分が持っているものを出して、自分にないものをほかの人から受け取って...という作業を稽古で重ねて、全員が「面白かった!」と言って幸せになれるような作品を作っていきたいですよね」
――最後に改めて、現時点で思う『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』の魅力を。
古田「この作品、まだ始まっていないのですが、たぶん"子どもを演じてます"という風にやってくわけではないと思うんです。衣裳や全体のトーンは子どもっぽい感じでも、演じる側は"子どもに寄せて"いくわけじゃない。むしろ、キャラクターは大人の目線を持っていて、それを大人が演じるのが面白いですよね」
東山「うんうん。視点は子どもで、発する言葉が大人だというところが、大人向けだなと思うミュージカルです。原作のコミック自体、哲学っぽいところありますし。愛することを説いていたり、様々な話を引用したり、ひとつのことをすごく詳しく語ったり。シュローダーの語るベートーベンの説明もすごく詳しいですよ。でも、語る内容は大人びているんですが、その対象は、ピーターラビットのことだったり、凧揚げのことだったり、子ども寄りなんですよね」
古田「それに、言うことは大人びていて、でも"子どもがこまっしゃくれたことを言っている"というような嫌味は一切ないんです。「こう思うからこうなんだ!」って素直に主張している。そこが魅力だと思います。特にライナスはそういうところが顕著に現れている子なので、その大人っぽさが、嫌なヤツだと映らないように気をつけたいです」
東山「誰もが"子ども時代"は経験しているからこそ、わかるんですよね。だから、自分が見失ってたものや、ピュアな気持ちを取り戻せるようなミュージカル。つまり、人に優しくなるし、優しくされたくなる作品になるんじゃないかなと思います。この作品、良くなっていくしかないな! って思っています」