すでに稽古場潜入レポートをお届けしているげきぴあですが、3月17日に行われた公開稽古にも伺ってきました!
この日は20倍の倍率を潜り抜けた"強運な"オーディエンスも稽古場に。
キャストはこちら、チャーリー・ブラウン役に村井良大、ルーシー役に高垣彩陽、サリー役に田野優花(AKB48)、ライナス役に古田一紀、シュローダー役に東山光明、そしてスヌーピー役に中川晃教。
ひと前でやるのが初めてという6人は、シーン披露前に稽古場の隅で、小さな声で気合いを入れていました。
披露されたのは全部で3つのシーンです。
まずはタイトルナンバーでもある『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』。
冒頭早々に登場するナンバーです。
(前回の稽古場レポートでもお届けしたシーンです)
演出の小林香さん曰く、「この曲に、このミュージカルの深いテーマが隠されている。チャーリー・ブラウンがみんなから「きみはいい人だ」とさんざん言われているのに、彼だけはそれがどういうことかわかっていない。でも最後の最後で「本当にこの子の美しさはこういうところなんだな」とわかる、皆さんに最後に納得いただける伏線になっている」という解説が。
そして皆さん、ものすごく、踊ってます!
ハット&ステッキを持たせたくなるような、オーソドックスな振りから...
組体操的な振りまで...。
たしかに、チャーリー・ブラウン=村井良大さん、「なんで?」とでも言いたそうな不可解そうな表情です。
でもとりあえずまわりにあわせて笑っておこう!的な。
ちょっとサイズアップしてます(笑)。
中川スヌーピーが絶妙なタイミングで鳴き声を挟んでいくのも、爽快でいい感じ!
小林さん曰く「結構ダンスの多いミュージカル。私の知る限り、こんなに踊る中川さんもないのでは。"中川晃教さんのダンスミュージカル"と思っていただいてもいいくらい、スヌーピーが特に踊りまくっている」そうです。
続けて『ベートーベン・デイ』のシーン。
こちらは東山光明さん演じるシュローダーを中心にしたナンバー。
シュローダーが大好きなベートーベンの誕生日を祝日にしようと思い立つ...というシーンです。
ちなみにこのミュージカル、それぞれのキャラクターが、それぞれ見せ場(メイン)となるナンバーがある作品です。ここは、いわばシュローダーの見せ場ですね。
高垣彩陽さん演じるルーシーは、シュローダーが大好き。
シュローダーの弾くおもちゃのピアノにうっとり。この絵、コミックでよく見る!
...しかしシュローダーはルーシーのこと、まったく意に介していません。
そうだ、ベートーベンを讃えよう、彼の記念日を祝おう!と思い立つシュローダー。
皆、口々にベートーベン・デーを盛り上げるアイディアを出していくのですが...。
ルーシー、高垣彩陽さん
サリー、田野優花さん、
ライナス、古田一紀さん
シュローダー、東山光明さん
スヌーピー=中川晃教さんまで!?
「どれも商業的すぎる!」「ベートーベンの誕生日が商業的になるのはイヤなんだ!」とシュローダー。
ロックテイストのノリのいいナンバーの中に、運命から第九まで、ベートーベンの作ったメロディが盛り込まれていて、盛り上がること必至の一曲です。
最後にスヌーピーのビッグナンバー『サパータイム』。
「本当は踊りまくっている」シーンらしいのですが、この日は歌唱披露です。
スヌーピー=中川さんが、ごはんを食べる喜びを爆発させます。
この楽しそうな表情!
Jazzyなカッコいいナンバーで、中川さんの美声を存分に堪能できますよ。
喜びを人間臭く発露するスヌーピーに、ごはんを持ってきたチャーリー・ブラウンが
「どうしてお前は普通の犬みたいに落ち着いてごはんが食べれないんだ!」
...ちょっとシュンとしちゃってるスヌーピー、かわいい。
しかしやっぱり気にせず歌い上げる!
スヌーピー、その自由な感じが、本当に中川さんぴったりです!
中川さんが「いいカンジにカオスでしょ」と語った、囲み取材の模様もご紹介しましょう。
村井「チャーリー・ブラウンは「普通の子の代表」みたいなキャラクターと言われているんですが、普通ってさじ加減がいっぱいあって、人によって違う。これはけっこう難しいと思いながら役作りをしていいます。一度チャーリー・ブラウンの顔をペンで描いてみたのですが、ぜんぜんシュルツさんのタッチが出なくて、なんて難しいんだこの曲線は、と思いました。これがまさにチャーリー・ブラウンの役作りの難しさなのかな。シンプルがゆえに難しい。先ほど披露した『ベートーベン・デー』のシーンの稽古でも、「やったー!」という風にジャンプしてたら、そんなに喜ばなくてもいいんじゃない?もっとダメな子でいこう、というダメ出しをもらいました。そういうバランスも必要で、ダメなんだけど前身していく力強さがチャーリー・ブラウンの魅力。簡単に作りたくないなと思っています」
高垣「みんないま「子どもとはなんぞや」というのを模索してチャレンジして役を固めているところです。私もルーシーとは何ぞやと模索しています。彼女はすごく色々な面がある人。ガミガミ怒ったりするんですが、弱い部分もある。愛するシュローダーに何度アタックして断られても、ポジティブに前身していく彼女の前向きさを見習って頑張っていきたい。コミックの短いエピソードがいっぱい繋がっているような作品なので、次から次へとそれぞれのキャラクターの色々な面が見えてきます。この子に次はどんな一面があるんだろう、自分のここに似てるな、あの子に似てるなとか、色々なことを思っていただけると思いますので、ぜひ、色々な角度で楽しんでください」
田野「サリーは常に全力で、喜怒哀楽も激しくて、パーンとぶつかっていく女の子。私、わりと役にすんなり入れるかなと思っていたんですが、自分はいつのまにか変なところで落ち着いちゃっていたみたいで、意外とサリーという役が難しくて勉強中です。そこがうまくはまったら素敵で全力な6歳の女の子を演じられると思うので、ぜひ観てほしいなと思います」
古田「いま役の見どころとは何ぞやと探求しているところなんですが、最近思うのは、ライナスって知識があって哲学的なんですが、でもやっぱり子ども。子どもらしさが出てくる部分では誰よりも子どもっぽいなと思うんです。そこが可愛くて、ライナスの魅力だなと思います」
東山「僕もシュローダーに似てる部分があって、ちょっとみんなのキャラクターよりは落ち着いてる、外から皆さんをみているところがある役。でもひとつ譲れないのは音楽。ベートーベンに関しては急に情熱的になる。さっき見ていただいた『ベートーベン・デー』もさらにお稽古を重ねて、もっともっと熱いものをみなさんにお届けしようと思いました。その静と動があるキャラクター。けしてルーシーのことも嫌いなのではなく、音楽が好きでルーシーが目に入っていないだけ。素直な子なんです。そこに近づけるように、初日まで作り上げていきたいです」
中川「僕はスヌーピーという、誰からも親しまれる役を演じます。スヌーピーは食べることが大好き。それ以外は基本的にダラダラしてる。ちょっと自分の飼い主であるチャーリー・ブラウンのことをシニカルに見ていたりする。ただそれもチャーリー・ブラウンにはなかなか言葉としては伝わらないんだけど、行動、感情で示すことができるというのが、ただの犬ではない。どこか人間味を感じる、そんなスヌーピーです」
●田野さんはダンスリーダー
中川「ダンスリーダーはいます、せーの」
全員「田野ちゃん!」
高垣「今日の場当たりも「ダンスリーダー」「ダンスリーダー!」って、みんな」
田野「(笑)。みんな想像以上に訊いてきますね!でも楽しいので、教えちゃいます」
村井「優しいリーダーなんです、うちのダンスリーダーは」
●それぞれに見せ場があります!
高垣「はい、皆それぞれに見せ場がありますね」
古田「あります!」
高垣「それぞれの、すごく可愛らしいナンバーがあるので。このミュージカル、さっきのベートーベンのフレーズが別の場所に出てきたりして。音楽の仕掛けがいっぱいあるミュージカルなんです」
中川「あやひはホント、ソプラノの綺麗な声から、ルーシーのちょっと...ダミ声? すごい声色を使い分けていて、さすが声優だよね。ミュージカルをやってると、発見があるでしょ」
高垣「ありあますね!たくさん」
中川「すごいよく出来てるよね、この作品」
高垣「ほんとに。これが50年前の作品なんだと驚きますね。リバイバルのときに加筆されたものもあるのですが、それをメモリアルイヤーに日本で出来るって大変幸せなことですね。...私ばっかりしゃべっちゃってる、チャーリーしゃべって!」
村井「はい。...何をしゃべりましょう。このミュージカルの素晴らしさを?」
高垣「そう、それ!」
村井「(笑)。ほんとに6人しかいないミュージカルもなかなか珍しい。6人しかいないので、6人だけで作り上げるパワー、エネルギーが随所に現れていて。しかも性格がみんなばらばらなんですよ。音楽としても素晴らしいし、ストーリーとしても素晴らしいし、『ピーナッツ』の世界感も存分に楽しめるミュージカル。これを観たら、確実に『ピーナッツ』の世界をもっとよく知りたくなると思うし、こんなに素敵な世界があったんだと気付ける。ハピネス...素敵なことがたくさんあるので、明日また頑張ろうというような生きる喜び、パワーがもらえるミュージカルになっていると思います」
●それぞれの個性がキャラクターにドンピシャです
中川「現実的にけっこう、このキャラクターのまんまなんです。ドンピシャなキャスティングなんですよ。スヌーピー...犬役の僕が言うのも何なんですが」
村井「(中川さんは)ドンピシャだもん!」
高垣「どんどん、犬顔だなって思えてくる!」
中川「で、(村井さんは)どうみてもチャーリー・ブラウンじゃないですか。(田野さんは)どうみてもサリーだし、どうみてもライナス(古田さん)、シュローダー(東山さん)、ルーシー(高垣さん)!」
高垣「稽古場でのチームワークといえば、田野ちゃんの二十歳の誕生日を...」
田野「はい!その日にはじめて全員で一緒に集まりましたね。みなさんがプレゼントしてくれたお酒をあけてくれて」
高垣「アッキーさんがバースデーソングをを歌って!」
田野「そう!めっちゃ宝物です、あの動画!」
高垣「田野ちゃん泣いちゃったんだよね」
田野「すごい感動しました、今までで一番の誕生日でした」
中川「...なんかちょっといいかんじのカオスでしょ(笑)。子どもたちの日常を描いているからかもしれないけど。でも大人がみても「こういうことあるよね」って、自分の人生と照らし合わせることができる上質なミュージカルなんです。いま皆さんに届いている僕たちのチームワークと、この作品のもつそういった普遍性が劇場でカチっとはまった瞬間に、きっと最高の時間がお届けできると確信してます」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
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