12月11日(日)に開幕する劇団四季の海外新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。初日を目前に控えた8日、公開舞台稽古が開催され、その全貌がひと足早く報道陣に披露された。
『ノートルダムの鐘』は15世紀末のパリを舞台に、ノートルダム大聖堂の鐘楼に住む異形の青年カジモド、彼を世話する大聖堂大助祭フロロー、警備隊長フィーバス、その3人が同時に愛するジプシーの娘エスメラルダを中心に紡がれる物語。2014年にアメリカで開幕したこのミュージカル版は、1996年に公開されたディズニー長編アニメーションに基き、アニメで使用された名曲の数々も多数登場する。アニメ版でも印象的だったナンバー『ノートルダムの鐘』から始まり、哀愁溢れるメロディがグッと物語の中へ観客の心を誘うオープニング。だがアニメでは描かれなかったフロローの暗い過去やカジモドとの関係性、フィーバスの心の傷なども描かれ、よりディープな"大人のための演劇作品"となっている。
演出は、シンプルだ。木組みで作られたカジモドの住む鐘楼が、ベンチや柵を効果的に動かすことで、街中やジプシーたちの隠れ家へと変化していく。そのシンプルさが美しく、照明効果などもあいまって、想像力がかき立てられていく。何よりも、シンプルだからこそ作品の要である音楽の良さも際立つ。舞台セットの2階部分に常に存在するクワイヤ(聖歌隊)の歌も印象的で、その荘厳さはそれこそ聖歌のよう。劇中、何度も鳥肌が立つ思いをしたが、この迫力、この感動は生の演劇ならではであり、劇場に足を運ばなければ味わえないものだ。デジタル化が進み何でも便利になった世の中だが、アナログならではの素晴らしさは確実にあると感じた。ちなみにカジモドの撞く大きな鐘も人力で動かされているとのこと。そのあたりも演劇ならではの面白さで、観劇の折にはご注目頂きたい。
そして音楽の美しさに感動していると、今度は登場人物それぞれの内面に心を動かされていく。カジモドの切ないほどの純粋さ、エスメラルダの美しい気高さ。さらにアニメ版では"ヴィランズ(悪役)"に分類されるフロローでさえ、自分の中の"清"と"濁"の間で葛藤する、ただの弱い人間だ。人間の愚かさも、尊さも、この物語は愛情を持って丁寧に描き出しているからこそ、心が動かされるのだと思った。
この日のカジモド役は、『キャッツ』のラム・タム・タガーや『リトルマーメイド』のエリックなど、これまでも劇団で主要な役を務めてきている飯田達郎。内にこもっていたカジモドの心が、物語が進むにつれ外に溢れ出していく、その感情の流れが見事だった。特に後半のカジモドのナンバー『石になろう(Made of Stone)』の熱唱が印象に残る。その飯田は「この作品では、愛にまつわる4人の関係を描きながら、"人間は、自分と異なる他者に接したときにどうすべきか"というメッセージも提起されています。15世紀末の中世パリでの出来事ですが、まさにこれは現代を映した嘘偽りない人間ドラマです。カジモドという役を通して、その本質的なメッセージをお伝えすることができたらと願っています」とコメントした。
『ノートルダムの鐘』は12月11日(日)に東京・四季劇場[秋]にて開幕、東京公演は6月25日(日)まで。チケットは発売中。その後2017年7月には京都劇場でも上演されるが、さらに2018年4月からKAAT神奈川芸術劇場での上演も本日発表になった。ぜひお見逃しなく。
カジモド役 飯田達郎コメント
「このような素晴らしい作品の初演に参加できることを、大変光栄に感じています。
この作品では、愛にまつわる4人の関係を描きながら、"人間は、自分と異なる他者に接したときにどうすべきか"というメッセージも提起されています。15世紀末の中世パリでの出来事ですが、まさにこれは現代を映した嘘偽りない人間ドラマです。
カジモドという役を通して、その本質的なメッセージをお伝えすることができたらと願っています」
12月8日 公開舞台稽古キャスト
カジモド 飯田達郎
フロロー 芝清道
エスメラルダ 岡村美南
フィーバス 清水大星
クロパン 吉賀陶馬ワイス
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
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【公演情報】
・12月11日(日)~2017年6月25日(日) 四季劇場[秋](東京)