『スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~』演出・堤幸彦インタビュー

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■『スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~』vol.4■


まもなく開幕を迎える注目の舞台『スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~』
演出を手掛けるのは、『トリック』『SPEC』といった話題作を連発、"堤ワールド"としか表現できない独特の世界を作り上げファンを魅了し続けている堤幸彦です。
映像の監督として名高い堤さんですが、舞台演出作品も数多く、中心メンバーを務める演劇ユニット「キバコの会」の活動もコンスタントに続けています。

そんな堤さんに、作品の見どころからキャストへの期待、さらには映像の監督と舞台演出家の面白さの違いまで、色々なお話を伺ってきました!
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堤幸彦 INTERVIEW



――ヒットドラマを数多く手がける岡田惠和さんの脚本に、堤さんの演出というのは、なかなか意外な組み合わせに思えます。本作立ち上げまでの経緯とは?

「岡田さんと僕には"ロック好き"という共通項がありまして、一度岡田さんのラジオ番組に呼んでいただいたことがあったんです。それから『スターマン・この星の恋』(2013年)というドラマで初めて組むことになり、当然岡田さんの脚本は面白いですし、とりわけ『スターマン~』は荒唐無稽かつ、ファミリーものとして素敵な作品だった。僕としてもとても楽しい仕事でしたし、岡田さんから今回のお話をいただいた時も、『喜んで!』とお返事した次第です」


――岡田さんの脚本のどんな点に魅力を感じますか?

「まずやっぱり会話の妙ですよね。これだけ会話の丁々発止を書ける人はなかなかいないんじゃないかと。しかも単に言葉のキャッチボールだけじゃなく、それぞれのキャラクターの深いところがだんだん見えてくる。時に180度違うところにも飛んでいってしまうけれども、結局それも大きな本筋へと収れんされていくところとか。まぁどうしてこんなにうまいんだろうなって思いますから。舞台への書き下ろしは初ということですが、非常にぴったりですよね。言ってしまえばニール・サイモンとか、映画で言えばウディ・アレンとか、そういう会話で表現出来る数少ない作家さんだなと思います。それともうひとつ、なんでこんなに女性の気持ちが書けるんだろうっていうのは本当に不思議です。男を一刀両断しつつも、でもどこかで許していて。その持ちつ持たれつ感みたいな、お互いさま感みたいなものを、女性側から描いていく。これはもう見事としか言いようがない。特に今回の『スタンド・バイ・ユー』は、まさにそういったタイプの脚本だと思います」
――脚本が面白いというのは、演出家にとってはプレッシャーでもあるわけですか?

「そうですね。すごく悩むポイントとしては、実はこれ、朗読劇で十分成立しちゃうんですよ(笑)。最初に本読みをした時も、『これ朗読の方がいいんじゃないですか?』なんて声が上がって。でもそうなると今度は演出家としての意地みたいなものがありまして(笑)、どうこのすごい作品に向かい合っていくかを考える。何とか"岡田さん舞台"から、"岡田さん&堤舞台"へとのぼり詰めるべく、悪戦苦闘しているところです」


――どんなことを演出の核とされていますか?

「まずは装置を可動式にしたことです。非常に象徴的なのが、リングに見えていたセットがホテルになり、貸別荘になり、それぞれの家庭の部屋になり、またリングへと戻っていく。ある種、装置としても起承転結があるというのは、演劇的で面白いんじゃないかと。あとこの話はふた組の夫婦がメインになっているんですが、劇中、ふたりしか出ないシーンがすごく長いんです。それを何とかしたいということで、ふたりの周りを取り囲むように、他の役者さんもほぼずっと舞台上に出ている。で、せりふのない人には、セットの転換まで手伝ってもらって(笑)。そういった役者の一体感までをもお客さんには楽しんで欲しいなと思ったんです」


――内容に関して、堤さんの方から岡田さんにアイデアを出すことはあったのでしょうか?

「いや、僕からは『歌を入れて欲しい』とお願いしただけですね。冒頭に歌うシーンがあって、『あれ、ミュージカルなのか?』というある種の強制性というか、枠づけみたいなことをしながら、実はそんなこともなく(笑)、ずーっと岡田さんドラマが続いていく。でも最後にもう一度同じ歌が出てきて、それによってあるパッケージ感が出るというか。またね、この歌詞が面白いんですよ、過激で(笑)」


――コメディである以上、やはり堤さん的な笑いも期待してしまうのですが......。

「劇中の変なせりふっていうのは、9割方僕が追加させてもらったものですね。そのうち怒られて削られるかもしれないですけど(笑)。もともと僕の原点になっているのは、『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』を演出された久世光彦さんの存在。例えば『時間ですよ』の1シーンで、樹木希林さんが沢田研二さんのポスターに向かって、『ジュリ~!』と言って悶えるんですが、それを見た時、テレビってこんなことまでしていいんだって思ったんです。それからはひたすらくすぐりで、つくりものの物語の中に、どんどん現実的なことを放り込んでいく。それが僕の演出法になっていって。この作品にもそういったものはたくさん入れ込んだつもりですね」

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――堤さんにとって、映像の監督にはない、舞台演出家ならではの面白さとは?

「それはやはり編集が出来ない面白さですよね。やっぱり映像の場合、気に入らない部分は後々落としちゃえばいいわけですから。しかし舞台はそうはいかない。万全の準備をして、やり切った感がないと初日を迎えられない。でもいざ始まってしまえばお客さんの反応や俳優の身体表現によって、さらにどんどん変化させることが出来る。その"やってる感"みたいなものが、これぞ演出だなって思いますね。もちろんどんなに頑張って多くの人を動員しても、それがテレビでは数秒で叩き出してしまえる数字だったりもします。でも舞台においては、非常に緊密な、お客さんとの"共犯関係"みたいなものがつくれれば成功だと思いますし、編集で自由自在に出来る映像作品とはまた違う、やり直しのきかない一回性みたいなところ。それは作り手としてのバランスを取っていく上で重要だと思いますし、やっぱりやめられない、楽しくてしょうがない仕事ですね」


――編集が出来ない舞台の場合、役者さんに託す部分も非常に大きいかと思います。その点、今回のメイン4名(ミムラ、戸次重幸、真飛聖、勝村政信)に関してはいかがですか?

「皆さんとんでもないスキルの持ち主ですね。特に勝村さんあたりは本番で笑いが取れると、さらにどんどんエグくなっていくんじゃないかって危惧はありますけど(笑)。まぁそれはそれでいいかなという気もしますしね」


――ミムラさんは本作が初舞台になります。

「とてもそうとは思えないですよ。声もしっかり出ていますし、感情表現も非常に多様。だから最初からあまりキャラクターを決め込まないで、いろんな組み合わせで稽古をしてもらっています。しかもそれに全部応えてくれるんですから、なかなかの人ですよ」


――他の3名は演劇界の猛者とも言える面々です。

「ええ。お客さんを前にしたら、きっと『ズルいよ~』って言っちゃうような芝居になると思いますね(笑)」


――コメディをつくる上では、さらにどんな効果をあげてくれそうな方々だと期待されますか?

「そういう意味では、ちょっとジャンルの違う方々でもあるんですよね。ただ結局それが、すごくリアルな夫婦感みたいなものになっていく気がしていて。やっぱり"夫婦は基本他人"というのがこの戯曲のテーマ。お互い相容れないものだという意味では、この4人の個性の違いというのがすごくリアルな、似た者夫婦ではないものになっていて。そしてその違いがどんどんエスカレートしていって、ある種それぞれが追求する状態になった先に、ちょっと不思議な平和が訪れる。その切なさも十全に出していただける皆さんですし、本当にいいキャスティングだと思います」


――モト冬樹さん、広岡由里子さん演じる、別荘の管理人夫婦も意外に重要な存在ですね。

「これがね、途中から出て来て全部持っていくのか!? ってくらい面白いんですよ(笑)」


――巧い、面白い役者さんとやることは、やはり演出家として刺激を受けることも多いですか?

「そうですね。ちょっと悔しいからいろんなことを言っちゃいますけど(笑)。ただお互いもっと遊ぼうっていう、そういうすごくいい雰囲気の稽古場にはなっていると思います」

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――こういったコメディタッチの作品で、しかも東宝さんとのタッグというのは、堤さんにとって今まであまりなかったタイプの舞台ではないでしょうか?

「確かに。でも1970~80年代に木の実ナナさん、細川俊之さん主演の『ショーガール』(福田陽一郎脚本・構成・演出)という舞台を観た時、そのころ僕はまだ駆け出しのテレビ屋だったんですが、非常に強い衝撃を受けたんです。おしゃれで、コミカルで、『あぁ、これが観られるのが東京だ』と。いつか自分も、観終わった後にワインの1杯でも飲んでいこうかなって気持ちにさせられるような、そんな舞台に取り組んでみたいと思い続けていて。そして今回、この『スタンド・バイ・ユー』という作品はまさにそういったタイプの演劇だと思いますし、自分がその演出に携われるのはとても嬉しいです」


――また夫婦やカップルで観に行くと、いろいろ気づかされることが多そうな作品ですね。

「これは楽しいと思いますよ。『妻がミムラなら俺も我慢するよ』ってお父さんもいるでしょうし、『旦那が戸次くんだったら私だって!』ってお母さんもいるでしょうし(笑)。でもそうやって悪態をつきつつも、結局ふたりで飲みながら、『しょうがないわね。明日何時に起きるの?』なんて日常が連綿と続いていく。そういう夫婦の関係性を、改めて感じられるような作品じゃないかと思います」


――最後に、観に行こうか迷っている読者の背中を押していただけるようなひと言をお願いします!

「わかりやすい言い方ですが、これは本当に観て損のない作品だと思います。特にご夫婦、カップルの方々は、騙されたと思って観に来てもらえると、ふたりの絆がより深まるのではないかなと。ある意味、神社のお札のような効能があると思いますので(笑)。またそういう伴侶がいらっしゃらない方も、演劇として楽しんでいただける要素が無数にありますので、ぜひ劇場まで足を運んでいただきたいなと思います」


取材・文:野上瑠美子

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【公演情報】
1月12日(月・祝)~27日(火) シアタークリエ(東京)
1月30日(金)~2月1日(日) サンケイホールブリーゼ(大阪)
2月4日(水)北國新聞赤羽ホール(石川)
2月7日(土)静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
2月9日(月)愛知県芸術劇場 大ホール 


【『スタンド・バイ・ユー』バックナンバー】
#1 
稽古場レポート Part1

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