舞台ならではの仕掛け、演出が満載! 『ショーシャンクの空に』稽古場潜入レポートvol.1

チケット情報はこちら


幅広い世代の映画ファンがベストムービーに挙げ、愛され続ける名作『ショーシャンクの空に』が日本で舞台化されることになった。

映画でティム・ロビンスが演じたアンディーを演じるのは、国内外の著名演出家の下で数多くの舞台に出演する成河(ソンハ)
モーガン・フリーマンが演じたレッドを舞台、映像作品を問わず様々な作品で存在感を見せる益岡徹が演じ、次々とプロデュース公演を成功に導いている河原雅彦が演出を手がけ、映画史に残る名画を新たな舞台として構築する。

げきぴあでは11月2日(土)の東京公演初日に向け、着々と準備を進める本作の稽古場を直撃! 
4回にわたって舞台が出来上がっていく過程をレポートする。


稽古場レポートvol.1


 (※一部ネタバレを含みます)

10月上旬、稽古開始から9日目。それぞれに多忙を極める俳優陣によるカンパニーだけに、主演のふたり、成河さんと益岡さんが稽古場で顔を合わせたのはこの日が初めて。
成河さんが「ようやくお会いできました!」とホッとした表情を見せれば、益岡さんは「公演初日まで会えないかと思ったよね」とニッコリ。
この日以降も、特に稽古序盤は、毎日顔を合わせられるわけではないようで演出の河原さんも「まるで織り姫と彦星だね」と苦笑い。

現在、別の公演に出演中の俳優もキャスティングされているが、当然そんな状況でも稽古は行われており、不在のキャストに関しては現場にいる他の俳優陣が代役に立ち、カバーし合いながら進められていく。

songha_vol1_350.jpg

厳密に言うと本作は映画そのものの舞台化ではなく、映画の原作でもあるスティーブン・キングの小説「刑務所のリタ・ヘイワース」の舞台化。
無実を主張しながらも殺人の罪でショーシャンク刑務所に服役することになった主人公・アンディーが、過酷な状況でも希望を見出していく姿を描いており、今回の舞台は原作通りにアンディーと友情を深める老囚人のレッドが、アンディーとの日々を回想するという形で綴られる。

この日は、第1幕の第1場から稽古をスタート。仮出所の身のレッドが、ふとしたことからバーでアンディーのことを思い出し、彼の回想の中にアンディーが登場する。
そこから物語はアンディーが服役したばかりのショーシャンク刑務所へ――。

masuoka_vol1_350.jpg

立ち稽古に入って3日目とあって、まだ登場人物たちの立ち位置や動きについて、何度かシーンを繰り返しながら少しずつ固めていくという段階。
ちなみに、舞台装置に関しても、河原さんは前日の夜遅くまでスタッフと話し合っており、未だ確定はしていないが段差や、シーンごとに壁が設置されるなどかなり複雑なものになるよう。
現段階で稽古場では、あくまで段差などは頭の中で想定しつつ稽古を進め、動きや演じる場所を決めていく。
刑務所が物語の中心となるのは確かだが、ひと口に刑務所といっても、独房、懲罰房に洗濯部屋、屋上、グラウンドなどシーンごとに全く場所は異なり、刑務所以外でも冒頭のバーや法廷、自宅などシチュエーションは多種多様! 
刑務所の鉄格子などの表現は、段差や壁といった舞台装置に照明も加わることで、どのようなショーシャンク刑務所が出来上がるのか楽しみだ。

さて、先述のようにいまだ動きや物語上の"ルール"を決める段階とはいえ、当然ながら同時にセリフの言い回しやニュアンス、間の取り方などの演出もつけていく。
喜安浩平による脚本は、あるセリフがその直後の別のセリフと"対"になっていたり、ある行動が、ずっと後の別のシーンの"答え"になっていたりと大小様々な伏線が散りばめられており、河原さんはまるで国語の教科書の読解のように登場人物のセリフの意味や解釈を現場で俳優陣と一緒に考え、答えを導き出していく。

「ここで何でレッドはレコードのこと思い出したんでしょうね?」「何で彼は虫の居所が悪いのかな?」――そんな河原さんのつぶやきのような問いかけをきっかけに、益岡さん、成河さんら俳優陣が台本を手に話し込む姿が幾度となく見られた。

kawahara_vol1_350.jpg

この日の稽古で河原さんが成河さんに特に求めていたのが、刑務所の囚人たちの中にあって、アンディーが放つ"異質感"。
「こんなところには絶対にいないであろうという人柄を全編を通して出して!」「あまり刑務所やほかの仲間たちとなじみ過ぎないで」などショーシャンクにおける"希望の星"とも言えるアンディーの特質を最大限に描くべく、成河さんに指示が飛ぶ。

そして、本作を語る上で忘れてはならないのが高橋由美子さん、宇野まり絵さん、新良エツ子さんの3人の女優陣の存在。男ばかりのはずの刑務所になぜ女性が? 
彼女たちが演じるのはアンディーが"調達屋"を務めるレッドを通じて手に入れ独房の壁に貼るピンナップのモデルたち。
原作のタイトル「刑務所のリタ・ヘイワース」のリタ・ヘイワースとは実在の女優であり、アンディーが最初に壁に貼ったピンナップのモデルが高橋さん演じるリタなのだ。
彼女たちを実際に女優陣が演じ、壁の中で起こる"全て"を目撃しているというこれぞ舞台ならではという設定で、レッドと共に状況を説明する狂言回しの役回りも担っている。

awane_songha_vol1_350.jpg

この日の最後に稽古が行われたのは映画にも登場する、屋上での作業シーン。
元銀行員であるアンディーが危険を顧みずに看守の税務について助言を申し出て、報酬として仲間たちに冷えたビールをふるまわせるという爽快な場面だ。
「こうして出会ったんだ、オレとあいつは」と言う懐かしそうなレッドのセリフで第一幕は終わるが、この事件がアンディーのショーシャンクでの運命を大きく動かすことに...。
第2幕以降、どのように舞台が作り上げられていくのか楽しみだ。


(取材・文:黒豆直樹)


【公演概要】
舞台『ショーシャンクの空に』
[原案・原作]スティーヴン・キング
[演出]河原雅彦
[劇作・脚本]喜安浩平
[出演]成河 / 益岡徹 / 粟根まこと / 畑中智行 / 筒井俊作 / 大家仁志 / 今奈良孝行 / 山崎彬 / 高橋由美子 / 宇野まり絵 / 新良エツ子

■東京公演
2013年11月2日(土)~11月10日(日) サンシャイン劇場
■大阪公演
2013年11月16日(土)~11月18日(月) サンケイホールブリーゼ
■福岡公演
2013年11月23日(土・祝)~11月24日(日) キャナルシティ劇場
■名古屋公演
2013年11月29日(金)~12月1日(日) 名鉄ホール
■松本公演
2013年12月4日(水) まつもと市民芸術館 主ホール


★河原雅彦インタビューを読む
★制作発表(演劇動画サイト「エントレ」に飛びます)動画を見る
★「桐島」コンビ、吉田大八監督&喜安浩平対談を読む

■稽古場潜入レポートvol.2はこちら
■稽古場潜入レポートvol.3はこちら
■稽古場潜入レポートvol.4はこちら


チケット情報はこちら

前の記事「週末は『レ・ミゼ』観劇&「Jリーグ横浜FM」観戦」へ

次の記事「TEAM NACSの大泉洋さんが公式ブログで公演の感想をアップ! 内野聖陽、音尾琢真の兄弟対決が見どころの「TRUE WEST ~本物の西部~」」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉