成河&益岡徹のコンビに想像以上の手応え! 「ショーシャンクの空に」稽古場潜入レポートvol.3

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舞台版『ショーシャンクの空に』の稽古場潜入レポートもすでに第3弾。
9月の終わりに始まった稽古もおおよそ半分の日程を消化し、この日で立ち稽古もラストシーンまで到達! 
演出の河原雅彦さん、主演の成河(ソンハ)さん、益岡徹さんさんらも、まだまだ試行錯誤の最中とはいえ、ラストシーンまでの動きをひと通りつけたことにホッと安堵の表情を浮かべ、それぞれに感じた"手応え"も明かしてくれた。

★稽古場レポートvol.1はコチラ
★稽古場レポートvol.2はコチラ


稽古場レポートvol.3


 (※一部ネタバレを含みます)

午後1時過ぎに、最終幕の第3幕の序盤シーンから始まったこの日の稽古だが、幾度かの休憩をはさみながら午後7時過ぎには最終盤のクライマックスシーンに到達した。
前回のレポート(vol.2)ではこの第3幕において、ほぼ出ずっぱりの益岡さん演じるレッドの存在の大きさ、その凄まじさについて言及した。
刑務所に入る原因となったレッドが犯した罪、その罪を背負い、数十年にわたって誰にも言えないままに抱えてきた思い、アンディーが与えてくれた希望、新たな一歩を踏み出す恐怖、そして再生――河原さんが漏らした「威力あるね、益岡さん」という言葉がその凄さを物語るが、そんなレッドの存在感をより一層、高めているのが成河さんをはじめとする魅力的な共演陣の存在である。

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レッドが内に秘めてきた思いの丈をさらけ出す、夢の中でのシーンでは、その話し相手となる女優のラクエル・ウェルチを演じる宇野まり絵さんの存在が光る。
ウェルチから「私の可愛い人」と呼びかけられ、上機嫌で"夢"の逢瀬を楽しむレッドだったが徐々に自らが犯した罪を思い出し、さいなまれていく。
そのうちにウェルチの顔がだんだん、自分が殺した相手のように思えてきて......。
宇野は実際、レッドに殺されるある人物を演じており、一人の俳優が数人の役を演じるという演劇ならではの表現が、シーンをより際立たせる。
「100人のアンサンブルがいれば助かるけどそうもいかない。それなら、一人で何役もやってもらうのを逆手にとって強みにしたい」という河原さんの言葉通りのシーンになっている。

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稽古場に笑いが響いたのが、レッドの仮釈放の是非を決める面接のシーン。
映画にも登場する有名なシーンで印象に残っている人も多いのでは? 
例によって、前後のシーンで出番の重ならない共演陣の中から4人が面接官を演じることになったが、粟根まことさんをはじめ、4人の男たちがズラリと並ぶ姿は圧巻! 
なぜか並んでいるだけで既に絵になっていて、周囲からは笑いが起こる。
さて、この異様な存在感を放つ面接官たちを舞台のどこにどう配置すべきか? 
舞台奥のセットの2階後方に横並びに座らせ、後ろからレッドを見下ろすか? 
それともレッドと同じ高さで斜めに並べるか? 
実際にいくつかのパターンを試してみるが、どれも捨てがたいほど面白い! 
粟根さん以下4人は、イスに座るタイミングから立ち方などを念入りに相談。
自分のメインの役以上に(?)と疑いたくなるほど、明らかに4人ともこの面接官役を楽しんでるのが見て取れる。
映画ではメッセージ性の強い重要なシーンとなっているが、舞台ではそこに予期せぬ笑いまで加わることに......? 

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そしてもちろんこの第3幕、いや芝居全体を通じて、欠かすことができないのがアンディーとレッドのいくつもの共演シーン。
あるシーンでは仮釈放後のレッドのアパートの部屋での場面と、アンディーの独房での壁に貼られたピンナップガールとの場面が時空を超えて、舞台の上手と下手で同時に進行する。
これもまた、映画でも小説でもない、演劇だからこその表現だが、単に別々のシーンが同時に進行するだけではない。
「この2つのシーンは繋がっているんです」と河原さん。
特にレッドがあるセリフの最後に漏らす「でも」という言葉に触れ「この"でも"はすごく大事です。レッドが独房のアンディーの行動を促すかのように」と益岡さん、成河さんに指示を送る。

どうしても動きとセリフの多い益岡さんの方に意識が行きがちになるが、逆に、だからこそ感じる成河さんの"静"の芝居の破壊力。
様々な時間と場所で時に複雑な動きを見せるレッドに対し、主人公であるアンディーは意外なほど動き自体は少ないし、心理の波の変化もレッドと比べれば大きいとは言えない。
その一方で、アンディーはショーシャンクの中で常に周囲に染まらぬ"異物感"を醸し出さねばならないし、囚人たちの"希望"であらねばならず、レッドの心を揺り動かす強いメッセージを発し続けなければならない。
少ない動き、そしてもちろん、映像作品のようにアップで表情を見せることもできない中で、成河さんはちょっとしたセリフの強弱や間の取り方でそんなアンディーを見事に体現し、その存在感で確実にレッドの背中を後押ししている。
もちろん、求められれば鋭い動きをみせることも可能な成河さんだけあって、河原さんは「成河は、動きたくてしょうがないと思うけど、今回は舞台上よりも見えない舞台袖の移動でいっぱい動いてもらってばかりで申し訳ない」と苦笑する。
だが「(動きたい気持ちを)抑えて、内面で燃焼してくれている成河の姿はすごく新鮮だし、お客さんにこれまでにない新しい姿として映ると思う」と成河さんの新境地に太鼓判。
成河さんも「トライ&エラーです」と言いつつ、手応えをうかがわせる。

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改めてこの日、最終幕の最後までひと通りの稽古を終えての感想を尋ねると河原さんは「ひとまずの安堵感。もちろん、明日からまたアタマに戻るわけで、気が引き締まる思いです。舞台として成立させるのが非常に難しいチャレンジではあったので、形になりそう、面白いものになりそうという手応えも確かに感じています」と言葉に力を込め、主演の2人を見やり「想像していた以上にいいコンビだなと感じています」と満足そうにうなづく。

成河さんは「ここまでみんなで一丸となって作ってきて、ここから改めてスタートという気持ち。ここまでやって来てアンディーの役割が見えてきたので、ここから血を通わせていきたいです」と意気込みを語る。

益岡さんも「まずはおしまいまで、でこぼこしながらも必死でたどりついた」と安堵感をのぞかせつつ「自分の役は、まだまだいくつも山を越えないと、はっきり見えてこないだろうと思う。また明日から、きついけど面白い稽古になりそうで楽しみです」と笑顔をみせた。


(取材・文:黒豆直樹)


【公演概要】
舞台『ショーシャンクの空に』
[原案・原作]スティーヴン・キング
[演出]河原雅彦
[劇作・脚本]喜安浩平
[出演]成河 / 益岡徹 / 粟根まこと / 畑中智行 / 筒井俊作 / 大家仁志 / 今奈良孝行 / 山崎彬 / 高橋由美子 / 宇野まり絵 / 新良エツ子

■東京公演
2013年11月2日(土)~11月10日(日) サンシャイン劇場
■大阪公演
2013年11月16日(土)~11月18日(月) サンケイホールブリーゼ
■福岡公演
2013年11月23日(土・祝)~11月24日(日) キャナルシティ劇場
■名古屋公演
2013年11月29日(金)~12月1日(日) 名鉄ホール
■松本公演
2013年12月4日(水) まつもと市民芸術館 主ホール


★河原雅彦インタビューを読む
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★「桐島」コンビ、吉田大八監督&喜安浩平対談を読む


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★稽古場レポートvol.4はコチラ


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