青年団に所属する若手演出家、舘(だて)そらみ。そんな彼女が主宰する劇団"ガレキの太鼓"は「人間の孤独」に焦点をあて、たっぷりとした愛情表現で人間を描く作品を上演し続けている。
2012年1月に再演される『吐くほどに眠る』は2010年に上演され、好評を得た作品だ。それまで得意としていた群像劇の手法を捨て、一人の女性の人生にスポットライトをあてようと思った経緯とは?
――――『吐くほどに眠る』の初演以降、本公演では抽象舞台による演出をされていますが、群像劇から抽象劇に移ったきっかけはありますか。
狙ってやった訳ではなく、作品の題材を活かすためにやっていたら、抽象劇になっていました。実は幕が開けてみんなに言われるまで作風が変わっていたことに気づかなかったくらいです。そもそも、今回の作品を思いついたのは、罪を犯してしまった人間を書きたくなったからなんです。よく殺人事件のニュースが流れますけど、マスメディアがその人をあたかも殺人鬼のように描いているだけなんじゃないか。偶然殺人を犯した人もいて、実は私たちとそう変わらない人なんじゃないか、と疑問をもつようになりました。そこで、福田和子さんなど殺人犯の手記を色々読んで調べました。犯罪者って、何かしら育ってきた環境にトラウマがあるようです。どこで決定的な原因を定めていいか分からない。ただ、そういう人間に育ったのは偶然じゃないか。少しでも踏み間違えたら、私たちも殺人鬼になったかもしれない。もしかしたら殺人鬼は人を殺してなかったかもしれない。大きな運命に巻き込まれて、それにあらがおうとするんだけど、どうしてもあらがいきれない人間の姿を描きたいと思ったんです。