――――『吐くほどに眠る』の初演以降、本公演では抽象舞台による演出をされていますが、群像劇から抽象劇に移ったきっかけはありますか。
狙ってやった訳ではなく、作品の題材を活かすためにやっていたら、抽象劇になっていました。実は幕が開けてみんなに言われるまで作風が変わっていたことに気づかなかったくらいです。そもそも、今回の作品を思いついたのは、罪を犯してしまった人間を書きたくなったからなんです。よく殺人事件のニュースが流れますけど、マスメディアがその人をあたかも殺人鬼のように描いているだけなんじゃないか。偶然殺人を犯した人もいて、実は私たちとそう変わらない人なんじゃないか、と疑問をもつようになりました。そこで、福田和子さんなど殺人犯の手記を色々読んで調べました。犯罪者って、何かしら育ってきた環境にトラウマがあるようです。どこで決定的な原因を定めていいか分からない。ただ、そういう人間に育ったのは偶然じゃないか。少しでも踏み間違えたら、私たちも殺人鬼になったかもしれない。もしかしたら殺人鬼は人を殺してなかったかもしれない。大きな運命に巻き込まれて、それにあらがおうとするんだけど、どうしてもあらがいきれない人間の姿を描きたいと思ったんです。
――――その考えは、抽象舞台をつくることにどう結びつくのでしょうか。
ある人の運命を描くなら、ひとりの人間を描かないと、と思って。それまで群像劇を選択していたのは、人間を広く浅く観て俯瞰できるという特徴があったからです。そして、主役を作りたくなかったから。演劇はお客さんがどこを観てもいい、視点が定まらないことが利点だと思っていたので、主役を作ることで視点が狭まるのは嫌でした。それならば、視点が狭まらないように演出に余白を作ろうと思いつきました。例えば、1人の役を複数の役者に演じてもらう。そうすることで、主人公の人物像を固定させない、限定させない。他にも時間の流れをバラバラにしたり、衣裳をちりばめたりすることによって、色々な見方ができる作品を目指しました。
――――最後に、この記事を読んでくれた方にコメントをお願いします。
実は、今まで観に来てくださった方の顔はほぼ全員覚えています、っていう位、お客様には目一杯の愛を勝手に差し出しているつもりです。アフターイベントでは新春の鏡開きを実施する予定もございますし、気軽に友達を作りに来る感覚で、主人公のナオちゃんに会いに来ていただければと思います。愛は受け取らなくても大丈夫です(笑)。
〔取材・文/上野紗代子〕
〔インタビュー写真/村田まゆ〕
~公演情報~
ガレキの太鼓 第6回公演
『吐くほどに眠る』
[公演日程]
公演日:2012/1/6(金)~1/15(日)
会場:こまばアゴラ劇場
[作・演出]
舘そらみ
[出演]
井上三奈子(青年団)、北川裕子、小瀧万梨子(青年団)、髙橋智子(青年団)
富田真喜(青年団)、南波 早(なんばしすたーず)、由かほる(青年団)、吉田紗和子
[HP]
http://garekinotaiko.com/