夢幻朗読劇『一月物語』 水夏希&横関雄一郎インタビュー

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■夢幻朗読劇『一月物語』特別連載 その3■


芥川賞作家・平野啓一郎の代表作を、音楽・バレエを融合したあたらしい形の朗読劇として上演する夢幻朗読劇『一月物語』 がまもなく開幕します。

作品は、明治の日本・十津川村を舞台に、格調高く流麗な文体で綴られた幻想的な物語。

幽玄の世界と、その擬古典的文体があいまって、「現代の神話」とも称される名作を手掛けるのは 谷賢一
その、谷の演出のもと、元宝塚雪組男役トップスターの水夏希、世界的バレエダンサーの横関雄一郎ら実力派が出演する注目作です。

初共演ながら、作品に対するストイックさや、語る言葉のクレバーさで似通った雰囲気をかもし出している水夏希さん、横関雄一郎さんのおふたりにお話を伺ってきました。

●あらすじ(オフィシャルより)
明治三十年、奈良県十津川村。
神経衰弱の気鬱を逃れ、独り山中をさまよう青年詩人・真拆は、老僧に毒蛇から救われ、山寺に逗留する。
俗世から隔絶された奇妙な時空の中で、真拆は、いつしか現実と夢界の裂け目に迷い込み、運命の女と出逢った。 それは己の命を賭けることでしか成就しない愛、だが、刹那に失われる運命の愛だった......。
古典的風格さえ漂う端麗な筆致で描かれた聖悲劇。

水夏希 × 横関雄一郎 INTERVIEW ●

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●「今まで経験した朗読劇とは、全然違います」(水)



―― 先日読み合わせを拝見しましたがとても面白かったです。横関さんもその時は踊らず、俳優さんたちの語りをずっと聴いていらっしゃいましたね。感想は、いかがですか?

横関「聴いているのが、すごく楽しいです。毎日でもずっと聴いていたい」

「(自身の稽古じゃない時間も)ほとんどお稽古場にいらっしゃいますもんね」

横関「毎日幸せです(笑)。僕、こういった朗読劇への出演は初めてなのですが、演出の谷(賢一)さんが突き詰めていく奥行き、それを演者の方が自分なりに変換していくスピードのはやさ、本当にすごいなと思いながら聴いています」

「稽古を重ね、本当に1回1回すごく変わっていくんですよ」

横関「僕、水さんの「岩棚に腰を下ろす」ってセリフが好きです(笑)」

「あはは(笑)、あそこは谷さんのOKも出ています。"岩棚に腰を下ろす感"が出てる、と」


―― 今回、水さんは "高子" 役と、"地の文" を担当されています。いわゆる鍵括弧のセリフ、キャラクターの発言に感情を乗せて語るのは俳優さんの得意とするところかなと思いますが、地の文はいつもの "演じる" という作業とは、勝手が違うのでは?

「もう、全然違います。地の文を読む朗読ってほとんどやったことがないんですよ。2015年に石丸さち子さんとやった『サンタ・エビータ~タンゴの調べに蘇る魂』では少しありましたが、あの作品は全体がエビータの手記、自分が自分のことを語っているという形でした。今回は別の人の行動や心情を語ったり、状況を語ったりする。さらにその時によって、真拆を揺さぶるように言ったり、真拆のことをクールに解説していたり。はたまた淡々と情景を描写したり、観客に問いかけるように語りかけたり。忙しいです(笑)。ただ、『エビータ~』で「扉代わりになっている布をどけると...」という文章のところで、石丸さんが実演してみせてくれたものが、本当に「扉、今開けた、見えた!」と衝撃を受けたのを覚えています。その後『ヴォイサリオン』(2016年)で声優の方々とご一緒した時も、あの方たちは声のプロですから、もう声だけで「振り向いた」とか、わかるんですよ。そういうものは意識しますし、経験値となっています」


―― 地の文というのはひとりで何役もやっているようなものですね。平野啓一郎さんの原作も、日本語の美しさや装飾的な言葉が地の文に表れていて、まさに地の文が主役という感じがしました。

「そうなんです。ただ、最初はそう思わず、「これ、真拆の物語だな、高子が全然出てこないな」って思っていました(笑)。何度か読んで、地の文の重大さに気付きました」


―― 特に今回の『一月物語』は典雅で普段遣いではない日本語も多い。でも水さんの朗読がとても豊かで、するすると耳に入ってきました。

「ありがとうございます! 谷さんには「もっと、もっとやって」って言われています(笑)」


―― おふたりとも最初にこの物語に触れたとき、どんな印象を受けましたか?

「私はこういう摩訶不思議なストーリーが大好きなので、「この話、良い!」と思いました。出演のご相談をいただいたときには「すごくいいと思う!」と即決です。怖くて、おどろおどろしくて、ちょっと官能的で、でも夢があって......という、人間の世界を超越した物語、みたいなところが大好き」

横関「読むごとにちょっとずつ印象が違うんです。その日の自分のコンディションや感情で、印象が変わっていく。日によっては "ロミジュリ" っぽさを強く感じたり、日によっては「(真拆と高子の)ふたりは、これでよかったんだ」と思ったり、日によってはすごく泣けたり......。多面性を持つお話だなと思いました」


―― いま "ロミジュリ" という言葉もありましたが、谷さんの演出も面白いですね。真拆と高子はロミオとジュリエットだ......と仰っていたのも、面白い解釈だなと思いました。

「そうそう、"薄っぺらく言うと"、ロミジュリだと仰っていました(笑)。お話をきいていると、谷さん自身が真拆と似ている気がするんです。文学青年で、情熱的だけど実は繊細、というところが。ご自身でも、真拆の情熱や何かを突き詰めるところ、突き詰めた上で行き場のなくした情熱......そういう思いがすごくわかると仰っていました。キャラクターの心情を解説していただいて「なるほど!」と思うことがたくさんあります。またこの物語の舞台になった十津川にもひとりで行かれていて、熊野古道の闇や音のない感覚、真拆が感じたであろう孤独といった感覚も伝えてくださって、そのお話にこちらも想像力がかきたてられるんです。谷さん、本当に面白いです」ichigetsu03_05_1094.JPG

●「皆さんの声は、音楽と同じくらい十分に振付が出来る"音"」(横関)


―― もう朗読と、横関さんのダンスとを合わせていらっしゃるんでしょうか?

横関「やっと昨日、ほぼ、振りがついて、少しずつ......という状態です」

「(舞台上では)観られないんですよ~。私たちの横や後ろで踊っていらっしゃるから。だから一度みんなの前で横関さんが踊ってくださって、あとはお稽古をやっているのをちょっと見るくらい」


―― 横関さんのダンスも、台本によると、色々なものに変化していきますね。

「男になったり、女になったり、この世のものではないものになったりしますよね」

横関「そうなんです。そこは楽しみにしていただきたいですね。僕も朗読とバレエをあわせるという経験は初めてで、このお話を頂いた時、「ぜひぜひ!」と思いました。実際やってみて、朗読は音楽と同じくらい "音" だと思いました。皆さんが話す声で十分振付ができる "音" なんです。音がなかったとしても、無い中でのリズムがある。何の抵抗もなく、踊れています」


―― ダンスはかみむら周平さんの音楽と一緒にあるだけではなく、朗読と一緒になったりもされるんですね。

横関「はい、色々な瞬間があります」

「谷さんが、踊り、音、踊り、朗読、って(バラバラに)なってもつまらないからって仰っていました。横関さんが "なんとなくそこに存在するだけ" というような瞬間もありますよ」

横関「おそらくこのあとも、「ここはバラそう」「ここは一緒にしちゃおう」とかも、出てくると思います。いま、それぞれのセクションの皆さんとのコミュニケーションが通いだして、良い位置にいる。これがさらにどう動いていくのか、明日からの稽古も楽しみなんです」
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―― 水さんも名ダンサーですが、ご自分が踊りたくなったりしませんか?

「なるんですけど......いやいや、とても横関さんの隣では、という感じ(笑)」

横関「水さん、つま先がとてもきれいなんですよ~」

「でも劇中、真拆が自分の情熱の持っていきどころがわからなくなって、最終的に "自分とはなんだろう" という思いになり、そんな中で自然の神秘的な美、もっとも美しい自然と融合することで自分が昇華できる、悩みが解消される、存在意義を見つける......というシーンがあります。その、真拆が自然の美に見入ってしまう感覚と、私が横関さんの筋肉に見入ってしまう感覚がちょっと似ているかな、って思ったんです。本当にずっと横関さんの踊りを見ていたい! その筋! とか、空気が止まった! とか、瞬間瞬間がもう、ため息です。吸い込まれます」

横関「ハードルが上がりますね(笑)」

「私、ダンサーの方とご一緒したことはたくさんあるのですが、"バレエダンサー" の方とご一緒するのが、初めてなんですよ。横関さん、最初に「職業はバレエダンサーです」と仰ったでしょう。バレエと限定しているところが衝撃的で、すごく興味津々なんです(笑)」


―― 確かに、朗読とのコラボレーションと訊いて、コンテンポラリーのダンスなのかなと思ったら、思いっきりクラシカルなバレエでそこも驚きました。

横関「振付の宝満(直也)くんも引き出しをいっぱい持った方なので、安心してお任せしています」

「ふたりの美しいダンサーが、稽古場で静かにコソコソっと「じゃあここはこうして...」ってやっているんです(笑)」

横関「いや、皆さんの邪魔かな、と思って...」

「えっ、全然そんなことないですよ! バンバンやってください!」


―― 演出の谷さんはダンスの専門というわけではありませんので、戸惑うところや、逆に面白く思うことなどありますか?

横関「戸惑うことはあまりないですね。谷さんの見えてる世界が僕にはとても興味深くて、おそらく谷さんが進みたい先が、ご自身の中でクリアにあると思うんです。それをどう形にするかを皆で稽古でやっているのですが、ダンスに関しては谷さんと宝満くんと僕、最初のころは探りあいながらだったんですが、先日「一段階上ったかな」と思う感覚がありましたので、これからバババっと進んでいくんじゃないかな」


―― 素人の感覚では、一体どんなステージになっているのかが想像つきません。

「たぶん、凄いものになると思いますよ(笑)! この『一月物語』は、本来でしたら、当て字になっている漢字の面白さや難しさを通してその世界を想像する作品ですから、やっぱり物語と向き合う正解は "読書" なんだと思うんです。ただ、それを朗読するんですから、目や耳から様々な想像力をかき立てるものが投入されて、読書をしているだけではわからなかった情報が入ってくる、より想像力が膨らむものにしたいです」
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● 共演者の印象など......。


―― ところでおふたりは初共演ですが、お話を伺っていると勤勉でクレバーな感じとかがなんとなく似通っているように感じます。

「本当ですか? 私は横関さんの足元にも及ばないですが」

横関「こちらこそ光栄です! 僕は一方的に水さんのことを慕っているんですよ」

「ほかの舞台もけっこう、観ていらっしゃるんですって」

横関「僕、ミュージカルを観るのも好きで、あと地元のスタジオの同級生が、宝塚に入っていたりして」

「そうなんですよ、祐澄しゅんちゃんとバレエスクールの同級生なんですって! 意外な繋がりがありました」

横関「で、とにかく皆さん、口をそろえて「水さんは本当に素敵で、ストイックで、真面目だ」と仰る。ですので、ご一緒できるのを本当に楽しみにしていたんです。実際お会いしたら、本当に素敵な方で、水さんは僕の中で「ミス・パーフェクト」なんです」

「ええぇ(笑)!?」


―― せっかくなので水さんも横関さんの通り名をつけておきましょうか(笑)。

「うーん、すごくソフトですよね。ご一緒していて和むというか。でも踊りはパワフルだから...「パーフェクト・イン・ソフト」なんてどう? 柔らかさの中にしっかりとパーフェクトがあるの」


―― この流れで、共演の皆さんについてもお伺いさせてください。真拆役がおふたりいて、彩吹真央さんと、久保田秀敏さん。女性と男性がおなじ役をダブルキャストで演じるのも面白いですね。

「最初は私も「え? どういうこと!?」って思いました」

横関「全然印象が違うので、初回の稽古で「凄いな!」と思いました」

「そう、全然違うんです。ただ谷さんが、ふたりの真拆を違う演出にするつもりはない、同じ演出だからこそ、今までのふたりの人生の積み重ねの違いが出て面白くとなる、と仰っていました。ゆみこ(彩吹さん)もインタビューで答えていましたが、結局は "人を演じる" ということなので」

横関「最終的には、ちょっと高尚な域でやっている感じがありますね」

「魂のふれあいのような世界ですからね。男女である必要性もないな、と思いました。久保田君も、印象としては端正で、男臭いタイプではないですし......。特に昨日は金縁の細いめがねをかけていたから、(真拆のような)神経質な感じも出ていて。いえ、実際の彼がどういうタイプなのかはまだ存じ上げないのですが(笑)。おふたりの真拆がこれからどんな風になっていくのか、楽しみです。あとね、もうひとりのキャストの榊原毅さんが最高に面白いですよ!」

横関「すんごいですよね(笑)」

「声がものすごく大きい(笑)。もう、楽器ですよ! あれ、マイクいらないんじゃないかな(笑)。しかも読み方の引き出しが多い! 聴いていて、こんな読み方が! としょっちゅう感動しています。もちろん、それは榊原さんがやるから良いのであって、私が真似しても変になると思うんですが。でも「ああ、こういうやり方もあるんだ」と勉強になることもたくさんあります」


―― 横関さんも、朗読劇に挑戦してみたくなりませんか?

横関「絶対無理です......」

「そんなことないですよ。声が素敵だから、アリだと思います!」

横関「いえいえ、絶対無理ですよ。憧れるんですけど、無理です(笑)。ダンスでは、ある種の "一線を越えた領域" というのを自分が経験してきてるから、舞台に立ったときに、そこに届かないものをお見せするのは自分としてはイヤなんだと思います」

「なるほどねぇ」

横関「その "一線を越える" というのは「自分であって自分でない」ところで、そこに自分を持っていくということを仕事としていますので、ほかのジャンルで(鍛錬をしていない)自分などがなんとかするって考えるのも罪深いと思うんです」

「やるなら、その高みを目指すということですね。素晴らしい! でも、一線を越えて、自分であって自分でない感覚って、もうただ「はぁ~、すごい」と思います。その境地は、誰もが憧れて、でもほとんどの人が行けない場所。そういう経験をされてる方と一緒にできること、そういう方の踊りを同じ空間で見られることというのは、すごく嬉しいですし、とてもありがたいなと思います」
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●「音楽とダンスの"良いところ取り" の言葉になれば」(水)
「ゴールは"使う言語(表現方法)は違うけれども、最終的に言っていることは同じ"」(横関)


―― 朗読とバレエ、お互いのリスペクトが伝わってきました。最後に今回それぞれ朗読、バレエという表現で、目指したいことは何でしょうか?

「谷さんも最初に「ストレートプレイの人間は、ダンスと音楽に嫉妬する」と仰っていましたが、その感情は私もわかります。今回私が担当する朗読部分では、音楽とダンスに出来ない言葉の表現になったらいいな、と思いつつ......音楽とダンスに出来ないことを探さなきゃ(笑)。音程と、呼吸と、リズム。自分も、ダンスも音楽もやっているからこそ、音楽とダンスの"良いところ取り" の言葉になったらいいな、と思います」


―― 水さんの朗読の、音の高低もすごいなと思いました。

「まだまだです! 「白石加代子さんくらい頑張ります!」って宣言したら、谷さんが「いいですね~"白石越え" しちゃったら指摘しますから」って(笑)。でもまだ、全然足りません。頑張ります」

横関「今回の企画、朗読・音楽・ダンスのコラボレーションって、「×(かける)」のイメージがあると思うんですが、それだと僕が思うに個々が立っているイメージなんですね。今回探っているのは、朗読・音楽・ダンスが "同じ言葉を持つ" 位置にいけたらいいなということ。使う言語(表現方法)は違うけれども、最終的に言っていることは同じ。すごく難しいのですが、そういうゴールに到達できたらいいなと思います」

「わかります。今回の舞台は、朗読しました、今は踊りのシーンで私は "待ち" です、みたいなものではない。この立体の空間の中で、朗読・音楽・ダンスという3つのジャンルが一緒になって、真拆の『一月物語』の世界がパッケージされている感じがします。確かに「×(かける)」ではない」

横関「"共存する" と言うんでしょうか」

「そうですね! それも、お互いをリスペクトして、信頼しているから、安心して出来るんでしょうね。たぶん皆さんが想像している以上に、人間の本能を叩く、琴線に触れる作品です。言葉だけだと触れられない部分が、踊りと音楽で届いたり、逆に踊りだけ・音楽だけでは届かない部分に、言葉がついたことで気付くこともあると思います。ぜひ、心を揺さぶられに来て欲しいなと思います」ichigetsu03_06_1035.JPG

取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
 


【公演情報】
3月7日(水)~12日(月)
よみうり大手町ホール

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