『ビューティフル』開幕直前囲み取材レポート

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■ミュージカル『ビューティフル』特別連載 vol.4■


数々の名曲を生み出しているアメリカのシンガーソングライター、キャロル・キングの半生を描いたミュージカル『ビューティフル』、いよいよ本日7月26日に初日の幕を開けます!

2013年にブロードウェイで開幕、翌年にはトニー賞主演女優賞などを受賞した大人気ミュージカル。
日本初演となる今回、主人公であるキャロル・キングに扮するのは水樹奈々平原綾香のふたり。

7月24日、そのふたりのキャロルに加え、中川晃教伊礼彼方ソニン武田真治剣 幸の7名が出席し、初日前の意気込みを語りました。


beautiful04_01_3903.JPGbeautiful04_14_3927.JPG△キャロルのふたりは、キャロル・キング、カーネギーホールコンサート時の衣裳!



――初日を前にした現在の心境は。

水樹奈々(キャロル・キング役)
「ついにこの日がやってきたなと、緊張と興奮と色々な思いで、テンションが上がりまくっている状態です。私は人生初のミュージカル出演で、この初日が初舞台。初めてだからこそ出せる思い切りの良さ、勢いで、全力投球でとにかく自分を信じて頑張りたいです」beautiful04_02_3921.JPG


平原綾香(キャロル・キング役)
「ついに帝国劇場生活が始まります。ワクワクし、すごく興奮しています。この帝国劇場に入ったときに圧倒されて、いい意味での"何か"がいるなという感覚でした。ファントムみたいな、劇場の神様がいる感じ。まだお会いはしていないのですが(笑)、そういうパワーを感じるすごく素晴らしいステージです。そのパワーを感じながらお稽古をしています。慣れないことばかりですが、信頼のおける最高の仲間と一緒にいま頑張っていますので、この夏しっかりと、いい歌とお芝居をお届けしようと思っています。ぜひ皆さん観に来てください」beautiful04_03_3915.JPG


中川晃教(バリー・マン役)
「この作品の中でキャロル・キングが生み出した名曲たちをたくさん聴けるのですが、僕の演じる作曲家のバリー・マンと、未来の妻になるシンシア・ワイルのふたりが生み出していった名曲たちも、この物語の中にたくさん溢れています。音楽、音楽、音楽......、これがミュージカルのひとつの醍醐味ですが、一方でこの物語は、作詞・作曲家といったクリエイターたちの、音楽が生まれるまでの苦悩の物語も描かれています。その両面をはやくお客さまに感じていただきたいです」beautiful04_04_3934.JPG


伊礼彼方(ジェリー・ゴフィン役)
「僕はふたりのキャロルと対峙している時間が長く、本当にふたりがまるで全然違うキャロルで、彼女たちが抱えている興奮・高揚に僕も鼓舞されて、激しく脈打っています。......僕は帝国劇場では実働20分までしか立ったことがないので、ふたりのおかげで初めて20分以上、帝国劇場のステージに立たせていただきます(笑)。(「計ったの?ちなみに何て作品?」という武田さんの質問に答えて)えー、計ったことあります。『エリザベート』(ルドルフ役)と、『王家の紋章』(ライアン役)では、20分くらいの出番でした(笑)。ですので今回、意気込んでいます!」beautiful04_05_3946.JPG

ソニン(シンシア・ワイル役)
「今回はストレートプレイに近い音楽劇。この帝国劇場ではわりとここ最近はミュージカルばかりで、十数年前以降、ストレートプレイはやっていないと聞きました。私自身も、帝国劇場に立つ時は音楽がたくさんあって、歌い上げることの多い作品に出てきていますので、いまブロードウェイのスタッフと日本のスタッフとで、初日に向けて力をあわせて試行錯誤しながら作り上げているこの作品が、お客さまからどんな反応が返ってくるんだろうとドキドキワクワクしながら、私も稽古をしています。帝国劇場での新しいパフォーマンスの形を観られるんじゃないかなと思っているので、お客さまの反応がすごく楽しみですし、開幕してからも、いい意味でどんどん変化していくんじゃないかなと思っていますので、多くの皆さんに観に来ていただければと思います」beautiful04_06_3959.JPG

△シンシアの衣裳、登場するたびに可愛いです!ぜひご注目を。



武田真治(ドニー・カーシュナー役)
「帝国劇場というのは、ミュージカルや演劇を志すものとして最終目的地。その聖地とも言われるところで、この夏1ヵ月間舞台に立たせていただける喜びと興奮に溢れております! トニー賞もとったこの作品、海外からのスタッフをお招きして日々ブラッシュアップしてきました。キャロル・キングとジェリー・ゴフィン、バリー・マンとシンシア・ワイルのラブストーリーとあわせて、アメリカの音楽史、世界のポップス史を彩った楽曲とともにこの物語を楽しんでいただけると思います」beautiful04_07_3963.JPG


剣幸(ジーニー・クライン役)
「いままで色々なミュージカルをやってきていますが、ミュージカルというのは、ミュージカルのためにかかれた曲で構成されていて、場面のつながりなども、ものすごく考えられて曲が作られている。でも今回はキャロル・キングが自分の人生にあわせて、その都度作っていった曲をまとめたら、彼女の人生になったというところが、今までのミュージカルとは違うところ。でも曲は、私はキャロルと同じ時代を生きた人間ですが、あの時代はこうだったな...と髣髴とさせるところもあり、それがひとつの作品として纏まっているのがすごいこと。ですので、キャロルの音楽をよくご存知の方は懐かしいと思うでしょうし、知らなかった方々もキャロル・キングってこういう人生を歩んだんだとわかる、楽しいミュージカルだと思います。そしていまここにいる皆さんがすごく素敵に歌っています。またアンサンブルの皆さんも本当に素晴らしい。どこをとっても楽しめる作品です」beautiful04_08_4050.JPG


―― 皆さん実在の人物を演じますが、役柄の見どころ、その人物の魅力は?

武田「たいしたことが言えないので私から...(笑)。この中で唯一、クリエイターでない役柄です。僕が演じるドニー・カーシュナーは、キャロル・キングを最初に見出した人。ジェリー・ゴフィンとの組み合わせで名曲を世に送り出したプロデューサーになります。以上です!」

伊礼「僕は作詞家の役なんですが、ジェリーは最初は劇作家として生きていきたかった人物。でもキャロルと出会って、自分の言葉を彼女のメロディにのせ、世界中の人たちに曲を送り出す。ミュージシャンやアーティストといった何かを創作する人たちは最初はどんどん生み出せていけるんでしょうが、あるとき壁にぶち当たり、自分に対峙せざるを得なくなった時に苦悩します。そういう、一番わかりやすい役柄です(笑)」

武田「キャロルを苦しめたりするよね」

伊礼「でもキャロルを苦しめてるんじゃなくて、自分を苦しめている結果、キャロルも苦しめちゃってる。そこに翻弄されちゃうキャロルはかわいそうだなと思いつつ、たぶん自分しかみえてない人物なんだろうなと解釈しています」beautiful04_12_3991.JPG

平原「キャロル・キングはいまでも第一線で活躍されていて、私も尊敬しているミュージシャン。彼女の一途さや笑顔が素敵で、この役どころの魅力はは(実際の)キャロル・キングを見ていただければわかると思うのですが、とにかく人間性が素晴らしいところです。そして音楽の素晴らしさ。このふたつが秀でている人物です。でもジェリー・ゴフィンという夫に惚れて、ジェリーに一途になって、でも音楽にも一途で、子どもができたら子どもに一途で......。本当に誰に対しても一途に生きている人。演じていてパワーが必要な役です。そしてもうひとつ素晴らしいところは、すべてにおいて愛があるところ。どんなに傷つけられても最後までその人を愛し続ける、そういう人だからこそ『ユーヴ・ガッタ・フレンド』をはじめたくさんの名曲が生まれる。私にとってキャロル・キングは「すべての人に愛を」というのがテーマで、そんな素敵な役です」

水樹「綾ちゃんがわたしの思いを代弁してくれました(笑)。彼女の魅力はどんなときでも諦めない、折れない心。ハートが強くないと、彼女の激動の人生で、自分自身も裏切らずに進んでいくことは出来ないんじゃないかなと思います。彼女はどんなときでもまっすぐ、誰に対しても思いやりをもって接している。深い愛で包まれた人。ですので、特にこの作品は夢をもって頑張っている若い世代の方にぜひ観ていただきたいです。なかなか上手くできなくて、結果が出せなくて、やっぱり自分は無理なんだと諦めて逃げてしまう状況ってあると思いますが、キャロルのように、どんなことがあってもまっすぐ自分の信念を貫き、自分自身を裏切らないという気持ちがあれば、どんな苦難にぶつかっても乗り越えていける。そんな勇気がわいてくる作品だと思うので、皆さんにそういうメッセージを届けられたらいいなと思います」beautiful04_11_3928.JPG

中川「僕はバリー・マンという作曲家を演じますが、まず、作中で「ヒットメイカー」という言葉がよく出てきます。クリエイター同士が拮抗しながら時代を作っていった。そこに生まれた名曲たちがちりばめられていて、こんなにも素敵な物語が生まれている。今回、50年代から70年代くらいまでを舞台にしていますが、同時期の日本でいえば、中島みゆきさんとか松任谷由美さん、山下達郎さんといったようなクリエイターの方たちの音楽を聴いていたお客さまも、この劇場にたくさん来ると思います。お客さま側からすれば、その時代を思い出せる、今もなお記憶に残る名曲の古びない側面を楽しめる。そして我々演じる側からすれば、ヒット曲をどう生み出していったのか、なぜ(その時代に)その曲が必要とされたのかという、普段お客さまが見ることのない"音楽が生まれるまで"という裏の部分まで、クリエイターとしての役作りの中で捉えたときに、この作品がより一層わかりやすく届くんじゃないかと思っています。

そしてあとひとつ、"カップル"ということ。キャロルはジェリーと、作曲家と作詞家のカップル。私たち(バリーとシンシア)もカップル。キャロルのお母さんにもだんなさんがいたけれど、別れてしまった。真治さんの役はその辺があまり描かれていませんが、でも私たち音楽を生み出す人間からすれば、ヒットメイカーを目指していくためには、ドニー・カーシュナーという名プロデューサーがいなければ世に出れなかった。それも別の形の"カップル"かもしれません。そう考えると、夫婦というもののあり方や、愛というものも、この作品の中に感じられます。

最後にこれはすごく個人的な思いなんですが、物語の前半ではキャロル・キングたちが影響を受けた音楽も流れるんですね。たとえば『リトル・ダーリン』という曲が流れますが、この曲は日本では、先日亡くなられた平尾昌晃さんがカバーされている。50年代・60年代って、世界が日本に、日本が世界に近かった時代。そういう芸能、芸術の仕事の先輩方が作ってきてくださった時代があって、今の私たちがいる。この大きな流れも力にかえて、この舞台を届けていきたいと思います」
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ソニン「シンシア・ワイルという作詞家の役で、彼女はもともとダンスや女優の勉強もしていて、ミュージカルの歌を作るのが夢だったりする人。この『ビューティフル』は、"女性"というものがテーマだったりもします。あの時代に女性が曲を書くということは新しく衝撃的で、だからキャロルも、自分は望んでいなかったかもしれませんが"先駆者"だったりしますし、シンシア・ワイルも考え方がすごく前衛的。バリー・マンとのカップルでも、シンシアが先にアイディアを思いついて引っ張っていくという、女性がリードをするということが、あの時代はまだ珍しい。そういう役割も担っていると思います。

そして先ほど(中川さんが)言ったように、カップルで作品を作る。共作するということの面白さだったり、カップルの間での化学反応もそうなんですが、カップル対カップルのライバル同士で高めあってく感じというのも出ています。ですので、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンのカップル、そしてバリー・マンとシンシア・ワイルのカップルの対比というのもすごくスパイスになっている。まあ観てのとおり(シンシアとキャロルは)ファッションもわりと違っていて...でも今日(この青いドレス)は、キャロルの一番の...ドレスアップ、おしゃれ着ですが(笑)、そういったファッションの違い、空気感の違い、また現実ではキャロルとジェリーは離れてしまいますが、私たちのカップルは今現在も続いているカップルです。そういう対比という役目も、作品の中で担っていければと思いますし、そこが楽しめるところだと思います」

「私はキャロルの母親なのですが、常に自分のだんな...キャロルの父親のことを「あんな男なんて」と文句を言っている。それをキャロルはずっと聞いて育つので、母親のようにはなりたくないと、一生懸命頑張っている。まあ反面教師だったんですね。普通に生きようとしたキャロルに対して、でもその母親がそうは言いながら、自分がした苦労をキャロルにさせたくない、普通に幸せになってほしいと一番思っている。ちゃらんぽらんに見えながら、愛情深い母親像がどこかで見えればいいなと思います」


――最後に、主演のふたりに意気込みを。

水樹「初めてのミュージカル挑戦で、しかも主演、そしてこの伝統ある帝国劇場に立たせていただけるなんてこの上ない幸せでいっぱいです。最初は何がわからないのかもわからない...という状態から飛び込んだのですが、カンパニーの皆さんにもたくさんの手を差し伸べていただいて、なんとかこの舞台にしっかり主役として上がれるところまでやってきました。この2ヵ月間の稽古期間を信じて、カンパニー一丸で最高の舞台を届けたいと思っています。日本初演ですので、「『ビューティフル』ってどんな作品なんだろう」と様子を見ている方もいらっしゃると思うのですが、とにかく絶対楽しい、そして沢山の感動がつまった作品。来ていただいたら、その時間は絶対に最高のものになると信じていますので、ぜひ劇場にいらしてください」

平原「このミュージカルは本当に最高です。私も自分の人生も精一杯生きていて、そしてキャロル・キングという人生を生きていて、カンパニーのみんなもそれぞれの人生を生きながらこの役に没頭している。それが見ていると本当にかっこよくて、みんなの人間性や歌声に惹かれて、わたしは帝国劇場生活をおくっています。とにかく、見終わったあとはビューティフルな気持ちで帰っていただけるような、本当に素晴らしい作品なので、ぜひいらしていただきたいです。帝国劇場のファントムも喜んでくれると思うので、しっかり頑張りたいと思います。劇場でお待ちしています」
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:守屋美来(ぴあ)
  

【バックナンバー】
# 製作発表会見レポート
# 今の時代の楽しみ方ができるミュージカルだと思います――『ビューティフル』出演、中川晃教インタビュー
# 公開稽古レポート


【公演情報】
・7月26日(水)~8月26日(土) 帝国劇場(東京)

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