■『ラディアント・ベイビー』#4■
今も世界で愛され続けているポップ・アートの先駆者、キース・ヘリングの生涯を、疾走感溢れるロックミュージックで綴ったミュージカル『ラディアント・ベイビー~キース・へリングの生涯~』。
その日本初演が、6月の上演に向けて本格的に動き出しています!
4月末の某日、柿澤勇人、平間壮一、知念里奈、松下洸平ら出演者、演出の岸谷五朗をはじめとするスタッフが一堂に会する"顔寄せ"が開催されました。
すでに稽古は始まっているようですが、関係者一同が顔を揃えるとやはり、いよいよ作品がここから動き出す感じがします。現場も、心地のよい緊張感がありました。
主催の池田篤郎東宝株式会社取締役からも「キースが生きていた1980年代のNYは荒れていて犯罪も多かった時代。その中でも特に危ないところだった地下鉄からはじまった彼のアートが"サブウェイ・ドローイング"と呼ばれ、どんどん大きく取り上げられていったのは、閉塞感を抱いていた人々に、キースの才能、アートが、自由と光を与えたからじゃないかなと思います。この作品はもちろんキースの生涯ですが、その生涯を影で支えていくキースの素敵な仲間達も描かれています。温かくて、ブロードウェイの香りがする素晴らしい作品を、パワー溢れるフレッシュなキャストの皆さん、そして岸谷さんと一緒に出来て光栄です。チーム岸谷が今日から始動します」とご挨拶が。
主人公キース・ヘリングを演じるのは、柿澤勇人さん。
キースの生涯の友人であり写真家、ツェン・クワン・チー役、平間壮一さん。
キースのアシスタント、アマンダ役は知念里奈さん。
キースの恋人であるクラブDJカルロス役、松下洸平さん。
カンパニーには『RENT』出演経験者が大勢いるのも特筆したいところ。
平間さんをはじめ、Spiさん、Mizさん、汐美真帆さん、エリアンナさん、MARUさん、戸室政勝さん...。
たしかに『ラディアント・ベイビー』、80年代のNY、閉塞した社会から何かを掴もうと足掻いている若きアーティストたち、何よりもキャッチーなロック・ミュージック...という要素は、『RENT』に通じるような気がします。
顔寄せ最後には、演出の岸谷さんから素敵な意気込みが語られました。
「キースのことをずっと考えていると、時間ということ、人と出会うということの重さ...を考えていることに気付きます。「人生より速いスピードで自分は進んでいるんだ」とキースは言い続け、焦って、31歳で亡くなります。
僕は俳優を目指し作品を作るようになって今年で32年目。キースが生まれて死ぬより、僕が芝居を志した年数の方が1年上回っている。キースより長いその1年分、何かを得ていなきゃいけないんだろうな、とか...やっぱり時間ということをすごく考えさせられます。皆さんとも、時間について考えていきたい。1時間の稽古の重さや、ひとこと「ありがとう」というセリフの中にこめられる思い。そういうものを大切にしなきゃいけない作品なんだなと思っています。
舞台は100%出来た、これでは観客は感動しません。感動の域に行くには120%、130%行かないといけない。そして俳優にとっても、その100を超えた20、30のところに何かトランス状態があって、そこで光を浴び演技をして音楽の中で歌っているとき、たぶんそこが快楽になる。そしてキースはその20・30を求めて生きていたんじゃないかなとも思っています。「人生より速いスピードで自分は進んでいるんだ」「モア・スペース(スペースがもっと欲しい、自分の表現する場がもっと欲しい)」と言い、でも出来なくて31歳の若さで死んでいった。これを我々が継いで、キースの100を超えた20・30の場所を観客に提供していくことが出来たら、この作品は幸せな作品になるんじゃないかなと今漠然と思っています。それが出来たら芸術家キースが、我々芸術家を褒めてくれるんじゃないかな。
千秋楽を迎えたときに、全員、1センチでも1ミリでも大きな俳優になっていましょう」
岸谷さんの意気込みを聞いているだけで、ちょっと泣きそうになってしまいました...。
これは熱い、素敵なミュージカルが生まれそうです!
取材・文・撮影:平野祥恵
【公演情報】
・6月6日(月)~22日(水) シアタークリエ(東京)