30-DELUX(サーティーデラックス)の新たな挑戦、歌舞伎三大狂言のひとつを斬新に再構築する『新版 義経千本桜』。
先日レポートした<顔合わせ>に続き、<本読み>稽古の様子も取材してきました!
『新版 義経千本桜』、これまでもご紹介していますが、源平合戦の時代が舞台で、平氏を滅ぼした源義経が主人公。
勝利大将でありながら兄・頼朝から謀反を疑われている義経が、その追っ手を逃れながら、壇ノ浦の戦いから逃れた平氏方の大将たちの行く手を探す中で起きる様々な物語を描いていきます。
この源平の戦いは当の武士たちのみならず様々な階級にも影響は及び、朝廷・武士・庶民、そして人外のモノ...多様なドラマが生まれるのです。
<本読み>は各演者が座ったままで自分の役のセリフを読み進めていくのですが、30-DELUXの場合、演出助手さんが<ト書き>の部分を読む形で進めていくようです。
そしてこの脚本、その<ト書き>の部分までカッコいい!
体言止めの多い、淡々とした言葉が、逆に雰囲気を盛り上げ、時代ものならではの熱量を伝えていきます。
これは...テンション上がります!!
そんな、いかにもカッコいい雰囲気の中、義経役=水夏希さんの凛々しい声がさらにカッコよく空間を切り裂きます。
アルトの落ち着いた声で語られる七五調のリズムが心地よく、「されど」とか「ならぬ」とか、時代劇ならではの言葉遣いも、ピシッと決まります。
...と、そんなシリアスなまま物語が進むかと思いきや、森大さんのモノボケで早速お笑いの顔が...。
ああ、30-DELUXらしい。
もちろんこのお方も。
30-DELUX主宰・清水順二さん。
清水さんは語り部として物語の流れを作りつつ、様々な役で登場するようですが、その都度、声色が全然違う。
ベテランの"格の違い"を見せ、若者たちにハッパをかけているような気もしました。
お笑いと言えば、インタビュー時、清水さんに"完全にコメディ"と言われてしまっていた、平家チーム。
坂元健児さんと...
小笠原健さん。
なんだか、うろたえながら対策会議を開いているものの、建設的な意見は出ない人たち、みたいなしょーもなさが情けなくも面白い。平家の大将たちなのに。
そんな可愛らしい情けなさを発揮している坂元さんと、逆に腹から出る朗々とした声で大芝居めいて演じている小笠原さんのコントラストもユニークで、いやぁ、すでに面白いです、平家チーム!
水さんも笑っちゃってます ↓
そしてお笑いではない平家チームの一員、武藤晃子さんは、なんだかとっても...イイ女です。
こちらは庶民チーム、歌舞伎でもメインキャラであるいがみの権太=聖也さん(森さんとWキャスト)。
いかにも"ワカモノ"という感じを醸し出している聖也さんと、ちょっとアウトサイダーな雰囲気を出してくれそうな森さん、暴走する権太の物語をそれぞれどう作り上げていくのか、楽しみ!
(森さんは、権太を演じていない回は別の役として出演とのこと)
源氏チームは以下の方々。
静御前=新垣里沙さんは、情熱的でまっすぐな女性になりそうな予感。
静は言葉がちょっと現代的で、そんなところも新垣さんのポジティブさと似合っている気がします。
義経の文語的で重みのある言葉と、口語で語られる静のキリっとした躍動感の対比も面白く、30-DELUXらしい『義経千本桜』の物語だなあと改めて思います。
そんな静にくっついている、狐忠信=佐野岳さん。
このふたりの道行も美しい並びになりそうですね。
美しい並びと言えばこちらも。
武蔵坊弁慶=馬場良馬さん。
こちらも、水さん扮する義経との並びが楽しみ。
義経-弁慶の主従関係も、オーソドックスなものとはひと味違う、ちょっとヒリヒリしたものになりそうな。
いや、楽しみ。
ちなみに漢字だらけ、しかもこの時代ならではの用語もたくさん出てくるこの台本、若者を中心になかなか読むのに苦労しているようでありました(※稽古初日ですからね!)。
漢字が読めても、すこし口に出す前に身構えてつっかえてしまったりもするんですね。
しかし。
この取材中、水さんは一度も言葉が淀むことがなかった!
それだけでなく、義経の見せ場になりそうな長ゼリフも、なんだかもう背景に夜空と月が見えそうな(※どんな舞台セットになるのかわかりませんが...)切なさと情感を漂わせて義経を演じていて、引き込まれてしまいました。
おそらく相当の準備をして臨んでいるのであろう水さんの心意気に、さらにこの作品への楽しみが増した本読み稽古でした。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
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【公演情報】
7月16日(木)~20日(月・祝) サンシャイン劇場(東京)
7月22日(水)・23日(木) 名古屋市北文化小劇場(愛知)
7月28日(火) 福岡市民会館 大ホール
7月30日(木)・31日(金) サンケイホールブリーゼ(大阪)