日本でも絶大な人気を誇る作曲家、フランク・ワイルドホーン。
ブロードウェイの第一線で活躍する音楽家で、彼が手掛けた作品は『ジキル&ハイド』をはじめ、『スカーレット ピンパーネル』『ドラキュラ』『MITSUKO』『ルドルフ ザ・ラスト・キス』『ボニー&クライド』『アリス・イン・ワンダーランド』『GOLD~カミーユとロダン~』etc...とヒット作揃いであり、この日本でも数多く上演されています。
まもなくワールドプレミアが開幕する『デスノート THE MUSICAL』もワイルドホーン作品。
ミュージカルに詳しくない方でも、『ジキル&ハイド』の劇中歌「時が来た」は1992年アルベールビル冬季オリンピックの公式テーマ曲にもなっている、といえばその凄さが伝わるのではないでしょうか。
そんな偉大なる作曲家フランク・ワイルドホーンのコンサートが初来日決定!
フランクの楽曲を日本のミュージカルスターが歌うコンサート『フランク&フレンズ』というのは過去にも上演されていますが、今回は彼自身がプロデュースし、彼のバンドが演奏する形態で、海外でも上演されているバージョンの来日公演です。
3月25日、この来日記者会見が行われました。
登壇者はフランク・ワイルドホーン、和央ようか、トーマス・ボルヒャートの3名。
ということでまずはこのコンサートの出演者をご紹介。
●トーマス・ボルヒャート
ドイツ語圏ミュージカルで数々の主役・タイトルロールを務めているスター。
ワイルドホーン作品では『ジキル&ハイド』ジキルとハイド、『ドラキュラ』ドラキュラ伯爵、『モンテ・クリスト伯』エドモンなど。
ほかに印象的な役としては『ダンス オブ ヴァンパイア』のクロロック伯爵や、『モーツァルト!』初演のレオポルトなどがあります。
●和央ようか
元宝塚宙組トップスター。退団公演『NEVER SAY GOODBYE』はワイルドホーンが音楽を書き下ろしました。ブロードウェイの作曲家が宝塚に楽曲提供するのはこれが初めてのことでした。
その後『ドラキュラ』のドラキュラ伯爵役を演じ、これは世界で初めて女性が伯爵役を演じたことでも話題に。
そして、ワイルドホーン氏の婚約者でもあります!
会見の後半はほぼおふたりのラブラブな話題に質問が集中しました。
●サブリナ・ヴェッカリン
来日経験もあるので日本のミュージカルファンにもおなじみかもしれません。ヨーロッパで活躍する若手スターです。
『三銃士』のコンスタンス、ドイツ版『ウィキッド』初演のエルファバなど錚々たる役どころを演じていますが、日本と関係あるところでは、東宝制作のミュージカル『マリー・アントワネット』が初の海外進出したブレーメン公演で、主人公のひとりマルグリット・アルノーをオリジナルキャストとして演じています。
●ダグラス・シルズ
ブロードウェイからはトニー賞主演男優賞ノミネートの実力派が来日。
ダグラスは『スカーレット ピンパーネル』の主人公パーシーのオリジナルキャストです!
●ジャッキー・バーンズ
2009年、トニー賞で最優秀リバイバル・ミュージカル作品賞獲得を受賞した『ヘアー』のオリジナルキャスト。
『ウィキッド』のエルファバも長らく演じていました。
『If/Then』ではヒロイン・エリザベスも演じています(この役、ファーストキャストはあの『アナ雪』の、そして『RENT』モーリーンのイディナ・メンゼル!)
ヨーロッパ勢2人、ブロードウェイ勢2人、プラス日本代表1名、の豪華布陣です!
ワイルドホーンさんは
「今回のショーは色々な意味で初づくし。東京と大阪にこのメンバーを連れてくるのは初めてです。貴子(和央さんの愛称)とステージで共演するのも初めてです。皆さんも自分たちも、素晴らしい思い出を作る機会になると思います。12月はクリスマスシーズンで、私たちにとって大事な時期。それぞれが家族とはなれて東京と大阪に来ますが、その甲斐がある素晴らしいショーになると思います。12月には美しい曲と、魔法のようなショーをぜひここでご覧になっていただければ」
とアピール。
和央さんも
「『フランク&フレンズ』というコンサートは日本でも開催されていると思いますが、フランク自身がピアノを弾いて、彼のバンドが来て...というコンサートは本当に初めてのことで、ものすごく素晴らしいものになるだろうなと私も出演者でありながら一番ワクワクしています。
フランクは本当に、温かく大きな人柄が出ている、壮大でロマンチックで繊細な音楽を作る。本当に偉大な作曲家だと思います。ずっと隣にいさせていただいてとても幸せに思いますし、日本の皆さまに彼の音楽をきいていただけるのは...私が言うのもおこがましいですが、ありがとうございます(笑)。
トーマスにはグラーツで『ドラキュラ』を観た時にはまさか一緒に歌える日が来るとは思わなかったので本当に幸せに思いますし、サブリナ、ジャッキー、ダグラス、みなさん本当に素晴らしい方。いつもは私は彼らの歌を聴いている側ですので、心して頑張らないと。日本を代表して頑張りたいなと思っています。本当に楽しみにしています」と意気込みを。
そしてドイツ・エッセン出身、ドイツ語圏ミュージカルのスーパースターがわざわざこの会見のために来日!
トーマス・ボルヒャートは「日本は今回が初めてですのでとてもワクワクしています。日本は、みなさん礼儀正しくてフレンドリーで、お互いに尊重しあっている国民だな感じました。東京ではすごく忙しそうに人が歩いているのですが、ぶつかられたり、殴られたりしない(笑)」とまずは来日の感想を。
そしてワイルドホーンの音楽については
「彼の曲はとても特別なのですが、彼自身がとてもスペシャルな人物なんです。彼の曲を歌うというのは歌い手にとって、まるで飛び立つための翼を頂いたようなかんじ。彼の歌を歌うのは天に舞う気分です。(これまでにも出演経験のある『フランク&フレンズコンサート』については)作曲家はたくさん知っていますが、フランクのような人はいない。ふつう作曲家は音楽を作って舞台裏でショーを見守りますが、彼は一緒にステージにあがって、しかもピアノを自分で弾いてくれる。まさしくこのタイトルのとおり、友人が集まって作っているという構成のショー。彼自身本当にスターなのですが、スターらしさを感じさせず、親しい友人と一緒に楽しいショーを作っている、そういう雰囲気を作ってくれます」と話しました。
さて、前述のとおりフランクと和央さんは婚約中なのですが、日本人キャストして和央さんの出演を決めた理由についてフランクは
「だいぶ前のことなのですが、彼女に出会う前、宝塚のために曲を作る機会をいただきました。そのプロジェクトが自分にとってどんなに重要なのかその時は気付いていませんでした。もちろん作曲する喜びもあったのですが、将来自分の伴侶となる女性のためにまさか曲を書いているとは。ミュージカルにしたいような私の素晴らしいストーリー」
「彼女は素晴らしいアーティスト。それは婚約する以前から思っていたことです。彼女のために作曲できることは素晴らしいですし、愛のために作曲するというのも素晴らしいこと。彼女はとても控えめで日本人的な女性。それにスペシャルなアーティストで、彼女のプロフェッショナルなところを尊敬しています。それから内面も、もちろん外見も美しい。僕は日本のオードリー・ヘップバーンだと思っています。すごく優雅なんです」
...と、もう、お惚気全開なのです...。
ちなみに一緒の生活は
「いろいろ思い描く夢があるのですが、実際は夢以上に素晴らしいです」
で、暮らしていて作曲は進むか、という質問については
「私のミューズですから」。
(この発言に対しては、トーマスがさも残念そうに「(フランクのミューズは)僕だと思っていたよ!」というお茶目なジョークも...)
話題が尽きないこの会見ですが、ここで歌唱披露の模様をご紹介。
まずは和央さんとトーマスさんがともに演じた『ドラキュラ』ドラキュラ伯爵のナンバー「The Longer I Live」。
「おそらくドラキュラ役がふたり共演するのは今回が初めて。しかもそれぞれが異なった言語で歌います。我々にとっても特別な体験ですので皆さまにもその感覚が伝われば」とワイルドホーンさん。
和央さんのドラキュラを観ていないというトーマスさんが「ぜひ次回やるときは観たい。それか、あらすじを変えて同じ舞台に(自分と和央さんの)ふたりのドラキュラを出してもらいましょうか。それでお互い噛みつきあうんです(笑)」。
で、噛み付きあうWドラキュラ伯爵(笑)。
続けてトーマスさんが『ジキル&ハイド』の、そしてワイルドホーン・メロディの代表格「時が来た」を大迫力で披露!
ワイルドホーンさんによると「ウィーンでも彼に歌ってもらった『ジキル&ハイド』ですが、本当に素晴らしく歌いこなしてくださいますのでぜひ日本のみなさんにお聞かせしたいです」とのことです。
本当に圧巻の歌唱でした。
最後に和央さんがミュージカル『GOLD』のナンバーと、『NEVER SAY GOODBYE』のナンバー(の一部)を続けて歌いました。
「先ほども話しました宝塚に音楽を書き下ろすという機会をいただいたときに彼女のために書いた曲です。その時に彼女が歌手としても本当に素晴らしいということに気付かされました。彼女と出会って10年になりますが、この「NEVER SAY GOODBYE」自体が、彼女とのアンセムになりました」とワイルドホーンさん。
以下、様々に話題が飛んだ会見でしたので、会見後の囲み取材の模様も含め、一問一答形式にまとめてご紹介します。
――ワイルドホーンさん、ほかの3名の来日キャストについて教えてください。
フランク「まずは私のバンドもNYから連れて来られることになりました。世界一のジャズ・ミュージシャンですので、皆さんの前でそれが披露できることを嬉しく思っています。
サブリナ・ヴェッカリン、ダグラス・シルズ、ジャッキー・バーンズはそれぞれとは一緒のステージに立ったことがありますが、共演したことはないんですね。彼らが共演するというシチュエーションだけでも私はワクワクします。トーマスとダグラスの共演なんかはわたし自身も楽しみですし、それからドイツ語、日本語、英語の共演になりますので、トーマスが日本語の曲にチャレンジして、貴子が英語かドイツ語で歌う...かもしれないです。まだ具体的には話せませんがすごく楽しいショーになることは間違いありません」
――和央さん、一緒に暮らしていて「フランクはこうやって作曲するんだ」と思ったことがあれば教えてください。
和央「フランク・ワイルドホーンは偉大なる作曲家なので...アーティストというのは家で「あぁ曲が出来ない!」(と頭をかきむしるジェスチャーで)と、ナーバスになったりイライラしていたり、そういうことが多いのかなと思っていたんですが、実際には24時間スポーツチャンネルか映画がついていて、その中で突然ピアノに向かってさらさらさらと弾きだす。フットボールの試合を見ながら作るんです、すごいですよね」
――トーマスさん、ふたりの婚約はどう思った?
トーマス「驚きましたが、その反面実は期待していたところもあります。フランクはもう長いこと私の友人で、彼の幸せを常々願っていましたので、ふたりが一緒になって本当に良かった。ある時、親友としてのフランクが「すごい恋に落ちちゃってもうダメなんだ」と告白してくれたんです。それでふたりのことを知り、貴子さんと知り合い、こんなに素晴らしい人に出会えて本当に良かったと友人として心から嬉しく思いました。ですので、質問に対する答えは「驚いたけれど、驚いていない」です」
――ワイルドホーンさんへの質問。和央さんと出会って書く音楽が変わったと聞いたことがある。具体的にはどう変わったのか?
フランク「恋に落ちたり、新しい体験をして新しい感情が生まれると人間は変わっていくと思うんです。それに、恋愛をするのには歳をとりすぎることはないということも実感しています。ですので彼女からインスピレーションをたくさんもらっていますし、自分の音楽にそういった気持ちが反映できていたらいいなと思います。音楽というのは愛と同じで国境はないというのが私の哲学ですので、それを実践しています」
――このコンサートで和央さんのために新曲を書く予定は?
フランク「もちろんあります」
和央「ほんとかな?(笑)」
――現在おふたりは婚約中ですが、12月のコンサートの時には正式に結婚されてるということは...
和央「ぜひその報告ができればと思います。フィアンセから妻に変わって舞台に立ちたいなとは思っています。(具体的なご予定は?)ございます。今年の夏に結婚しようと思っています」
――フランクさん、今の話のとおりですか?
フランク「もちろんです。彼女がボスなので(笑)」
――具体的に決まっているのか?
和央「今年の夏に私たちの好きなハワイで挙式しようかなと思ってます。本当は小さな挙式をしようと思ってましたが、徐々に膨らみつつある気がします(苦笑)」
――彼女がボスだとおっしゃってましたが私生活はそんなかんじ?
フランク「実際はとってもいいパートナーシップでいい生活を送っています。自分の親友と結婚できるほど幸せな事はない。いろいろな意味でふたりはとてもいいパートナー。毎日を最大限に幸せに暮らしたいと思っています。愛、音楽、そういったものを家族、友人たちと共有したいと思っています。日々を感謝して精一杯生きて生きたい」
――ミュージカルのような出会いだったと仰っていましたが、おふたりのラブストーリーをご自身でミュージカル化する予定は?
フランク「それはぜひ他の方にやっていただきたい(笑)。僕はクレイジーですが、そこまでクレイジーじゃないです(笑)」
――和央さん、結婚式はドレスで?
和央「そうですね...タキシード、(自分は)かなり似合う思うんですが...たいがいの男性よりはタキシードは似合うと思って過ごしてきましたが(笑)。彼は立派な体型をしていて、本当にタキシード姿も素敵ですので、私はドレスで頑張りたいです」
...と、結婚への具体的な予定も語られたのでした。
ワイルドホーンさんと和央さんの2ショット撮影では、報道陣から「もっと顔を近づけて」と言われて、照れてしまう和央さんの顔も...。
公演は12月に東京・大阪にて。
まだまだ先ですが、今のうちに予定をあけておきましょう!
取材・文・撮影:平野祥恵
【公演情報】
・12月23日(水・祝) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
・12月26日(土)・27日(日) 東急シアターオーブ(東京)
一般発売:8/1(土)予定