現在、東京・青山劇場にて上演中のミュージカル『ボニー&クライド』。
映画『俺たちに明日はない』のモデルとなったことでも知られる実在のギャング・カップル、ボニーとクライドを主人公にした作品です。
音楽を手がけたのは『ジキル&ハイド』などで日本でも大人気のフランク・ワイルドホーン。
キャストはボニーに濱田めぐみ、クライドに田代万里生という歌唱力抜群のふたりを配し、ミュージカルファン必見の舞台となっています。
ぴあでは開幕ニュースも配信しましたが、げきぴあではさらに初日前日に行われた取材会の模様をご紹介いたします。
―約1年ぶりの舞台出演ですが、今のお気持ちは
濱田「たぶん皆さんもそうだと思うんですが、今までずっとやっていた仕事が突然分断されてなくなった時って、人ってすごく自分の人生を振り返ると思うんです。その時改めて、舞台上が自分の生きる場所、そこがすごくなじみのある空間だと思いまして、この稽古に入った時に懐かしさとともに次の自分の新しいスタート地点なんだなって感じました。今は充実した気持ちです。このスタッフの方とキャストの方とで、新しいスタートを切れたらなという期待感と、ちょっと不安...大丈夫かなという気持ちがあります。でも期待の方が大きいですね」
―劇団時代と違う、と感じたところは
濱田「自己責任が伴うというのが第一印象です。フランクな状態の中でそれぞれが自立して自分を商品として出している、自分を自分で磨くという作業が重きにあって。自己コントロールの調整というのが人任せじゃいかない。私は魚が何もかもわからないままぽんと外の世界に出されて広い水の中で様子を伺っている、という状況だったのですが、周りを見渡したら実はすごくいい人だらけで。わからないところを常に訊いて、今やっとどこかの船場にたどり着いて、ああ、これでいいのかなってある程度腑に落とせたところです」
―その新しいスタートでの相棒・田代さんの印象は
濱田「すごく頼りがいがあります。私、抜けてるんですけど(笑)すごくフォローしてくれて、助かってます」
―田代さんは、濱田さんと合わせてみていかがですか
田代「稽古場でもすごく支えてもらっていたんですが、劇場に入ったら、また別人になった。稽古場で培ったものはもちろんなんですけど、《劇場ならではの濱田めぐみ》という新しい人間に出会えたという感じがしています」
―田代さんは初めてのアンチ・ヒーローへの挑戦ですが
田代「最初は"えー"って思ったんです。でも変な先入観でクライドは悪役で見た目も中身もワルで、って思っていたのが、実在したふたりの資料を調べたり、台本をもとに稽古していく中で、自分の中でしっくりくるものがたくさんあった。もちろん今までの役とは違うんですが、今までの役では出せなかった自分、知らなかった自分を発見しました。多分僕、一人称で"俺"っていう役が今までなかったんですよ。最初、クライドなのに"僕は~"ってつい出ちゃっていたんですが、今はもう出ません。でも僕、普段"俺"って言う時もあるんですよ。意外に男っぽいんですよ!(笑)。お客さんが思ってる僕のイメージだけじゃない僕もいるんだぞ、それが別に無理しないでも出せる、っていうのは発見できたかな」
―日本でも人気のワイルドホーン作品です。本格的に触れるのはおふたりとも初めてですが、その魅力はどこにあると思いますか
田代「ほかのワイルドホーンさんの作品にくらべて、この『ボニー&クライド』というのは特殊な部類に入ると思います。スタンダードないわゆるミュージカル、という音楽というよりは、カントリーとかロックとか、ジャズっぽい。ちょっと日本にはなかなかない香りがします。でもすごく役柄によって求められる歌の力というのが必要になってくる作曲家で、実はすごく複雑なんですけど、お客さんにとっては難解ではない。特にこの作品はアメリカ中のアメリカという、ノリのいい曲もたくさんあるので、僕らも舞台に立っているとテキサスにいるような気持ちになります」
濱田「手ごわいです。聴くと気持ちがいいんですが、実際歌うとなると、それを普通に歌ったところでそういう表現になりずらい。遊びがたくさん入っているイメージで、基本どおりに歌ってもその曲のよさが出ないんです。いろいろアレンジしてもらったり、お稽古も何回もやって今の形に落ち着きました。音域がすごく広いので、私にとっても万里生君にとっても一番苦手な音域がずーっと続いていたりするので、それも挑戦でしたね」
―『ボニー&クライド』の魅力を一言で言うと
濱田「実は男の子だったら誰でも好きな世界観なんですよ。拳銃だったり保安官が出てきたりとか。そういう小道具がたくさんある。内容もさることながら、音楽も舞台空間も、"あの時代のアメリカ"の空気感がすごく出てる。発砲シーンとかもたくさんあります。...木場(勝己)さんは銃がすごくお好きで、ご自分のモデルガンの話とかよくされてたりしてました」
田代「自前のモデルガンを持って稽古してましたね。ガンホルダーとか、本番でも自前のを使うみたい(笑)」
濱田「お稽古の服と本番の服があまりかわらなくて(笑)。警察のバッチとかも持ってるの。ニヤニヤしながら(稽古場に)持ってきてましたね」
―今年一年はどんな年にしたいですか?
濱田「とにかく新しい場所で全部脱ぎ捨ててすっぽんぽんの状態なので、そのままでどこまで走り続けれるかな、というところ。地に足を着けずに走って走って走り抜いて今年一年を、年末の12月31日に振り返ってみたいなと思います。あまり考えないでやれることを精一杯やって。いろんな方達と会える機会がこれから増えると思うのですべてを楽しみながら、常に走り続けて全速力で駆け抜けたいと思います」
田代「この作品ではじめてタイトルロールやらせていただき、新しい自分との出会いもあります。でもまだまだ未熟な部分もたくさんあるので、ちゃんとひとつひとつの公演を大切して、着実に力をつけていく年にしたいです」
東京公演は1月22日(日)まで。1月28日(土)・29日(日)には大阪・新歌舞伎座でも上演されます。チケットはともに発売中です。